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まえがき
総論
• 未来を創るメガトレンド
• コンピューティング革命としての「クラウド」
• ジネス潮流の変化
• モノが“足りない”を前提とした「サステイナビリティ」
企業戦略の変化
• 「繋がる」を前提とする社会
• 「大企業」の概念が変わる
• 「バリュー・クリエイター」 ~求められる人材の変化
小売・流通サービス産業の未来の姿
企業経営
• 「モノ」 ~物流の変化
• 対顧客
• ビジネス・プロデュース ~「ビジネスを創る」
Takayuki Yamazaki
5. コンテンツ
まえがき
総論
• 未来を創るメガトレンド
• コンピューティング革命としての「クラウド」
• ジネス潮流の変化
• モノが“足りない”を前提とした「サステイナビリティ」
企業戦略の変化
• 「繋がる」を前提とする社会
• 「大企業」の概念が変わる
• 「バリュー・クリエイター」 ~求められる人材の変化
小売・流通サービス産業の未来の姿
企業経営
• 「モノ」 ~物流の変化
• 対顧客
• ビジネス・プロデュース ~「ビジネスを創る」
Takayuki Yamazaki
9. トリプル・ベロシティ: 商流 (コト) の変化
「商流」(コト)というのは「情報」であり、お客様やパートナーとの「コミュニケーション」である。新製品の情報などを伝える手段として、これまで一般的
だったのはテレビCMや新聞・雑誌の広告、ダイレクトメール(DM)などがある。だがこれらを作るためには、多額の費用がかかる。例えば雑誌の広
告なら数百万、テレビCMなら数億円の予算になることも珍しくない。そのためこれまでは「広告=大企業」が常識であり、中小企業や個人は広告
宣伝から縁遠かった。
しかし、SNSなど新しいタイプの広告が一般化し、従来よりはるかに低コストで情報発信することが可能になった。例えばFacebookの広告なら、
「大阪に住む」「猫が好きな」「40代の」「女性」だけにピンポイントで広告を出すことができる。費用は「数百円~」と個人でも負担できる金額だ。
文字情報であれ映像であれ、その気になれば自分自身で制作できる。広告代理店に依頼する必要はないので、低コストかつスピーディに対応が
できる。中小企業や個人は知名度が乏しいからこそ、自らの商品やサービスを認知してもらいたいという想いは強い。
検索エンジンやSNSを利用したネット広告は、その商品への関心が深いユーザーだけにピンポイントで訴求することができる。これは究極的とも言え
る、ターゲット・マーケティングが実現するのである。これによって、従来は顧客を見つけるのが難しかったニッチ商品にも、事業化の道が開けてくる。先
進国では消費の成熟化も進んでおり、大企業/マスマーケティングの時代は終わりを告げる。プロモーションの主役は、これから個人や中小企業へと
移り変わっていく。
インターネットは双方向であり、その気になれば「一人一人異なる」(=パーソナルな)コミュニケーションも可能である。さらにブロードバンドでは、映
像や音声を使った表現力豊かなコミュニケーションが可能になる。顧客との強いきずなが結ばれれば、競合他社に対して圧倒的に有利なポジション
を築くことができる。ビジネスを持続し、成長させるためには、多くの企業が「顧客との関係の在り方」を根本から見つめ直すことになるだろう。
Takayuki Yamazaki
10. トリプル・ベロシティ: 物流 (モノ) の変化
「物流」(モノ)の一番大きな変化は、「即日配送」が可能になることだ。2016年11月現在、アマゾンは東京23区・神奈川県、大阪府などで1時
間以内の即日配送サービス「Prime Now」を開始している。米国では2016年4月現在、27都市で「Prime Now」を提供している。グーグルも
即日配送サービスに乗り出しているほか、インスタカート(Instacart)など即日配送を専門に手掛けるベンチャーも登場している。米国の主要都市
では、今や即日配送は常識となりつつある。今後2~3年のうちに、日本でも都市部では一般的な商品であれば、注文から2時間以内に届くのが
当たり前になるだろう。
「即日配送」になると大きく変わるのは、野菜、魚、肉といった生鮮食品や惣菜など、「食品」がターゲットに入ってくることだ。ネット販売と百貨店や
家電量販店との競争は、年々激しくなっている。事実、アマゾンの日本事業の売上高は約1.1兆円(2016年)と、今や国内トップクラスの小売
業者となった。その一方で、家電量販チェーンの業績悪化が著しく、地元で長く続いていた書店やCDショップが店を畳む例が相次いでいる。さらに
今後、「即日配達」によって生鮮食品や日用品へ本格的な進出が始まると、その影響が地域のスーパーマーケットまで広がっていくことは必至であ
る。さらに弁当や寿司、ピザなどの注文を受けるようになれば、既存の飲食店や宅配ピザなどとも競争が始まることになる。「即日配送」のインパクト
は極めて大きい。
近年は買い物に行きたくても身体が動かない、あるいは交通手段がないなどの「買物難民」と呼ばれる高齢者が増加している。団塊世代の多くは
仕事の中でコンピューターを使った経験がある。これからはIT機器を普通に使いこなす高齢者が急速に増えていく。ネット通販の利用は高齢者にも
今後広がっていくだろう。身体が不自由だからこそ、高齢者にはデジタルサービスを利用する必然性があるからだ。
クラウド環境の浸透によって、個人間での商取引「CtoC」は今後さらに活発になっていく。ヤフオク!の利用料金の無料化やメルカリの成長など、個
人間取引を活発化させる環境は整いつつある。小口の物流ニーズは今後一層の拡大が予想される。
Takayuki Yamazaki
11. トリプル・ベロシティ: 金流 (カネ) の変化
「金流」(カネ)の変化というのは、具体的には「精算・決済」や「資金調達」などである。精算・決済と言えば一般に広く使われているのは「レジ」だが、
シンプルなものでも買えば数十万円はする。さらにクレジットカード対応となると、カード会社との個別契約が必要になる。どちらも導入には高いハー
ドルがあった。
しかし最近では、普通の個人事業主であっても、コストや手間をかけずにレジを導入したり、クレジットカード払いに対応できるようになった。例えば、
「Square」という周辺機器を使えば、スマートフォンやタブレット端末をレジ代わりに利用できる。手数料も3.25%(2017年3月現在)と低めに設
定されている。これ以外にも類似サービスが既にいくつか登場している。
決済分野ではこれから「マイクロペイメント」と呼ばれる少額決済が本格的に利用されるようになる。これは、端的に言えば1円単位の価値移動に
対応できる決済手段である。音楽や映画、電子書籍など、1件当たり数十~数百円程度の少額決済では、現在のクレジットカードシステムでは
対応が難しい。紙ベースでの手続きや専用リーダーを設置するなど、インフラの維持コストが重く、手数料率の低減に限界があるからだ。クレジット
カードのシステムは今や時代遅れになりつつある。
これからは個人間取引(CtoC)やポイント付与などで、少額の決済需要が増えていくと予想される。現在のネット取引ではクレジットカードが広く使
われているが、クラウドロニクスの広がりと共に、人手を介さないフルIPベースの決済システムを構築することが可能になる。マイクロペイメントは決済
規模が小さく、直接的な収益はほとんど期待できない。サービス提供者にとっての一番の魅力は、膨大な購買情報が手に入ることだ。その人は何
に関心があるのか? お金を払ってでも欲しいものは何か? これらのデータは、ネット販売では最も価値のあるものだ。できるだけ多くのデータを集める
ために、マイクロペイメントでは「手数料無料」が基本になるだろう。
Takayuki Yamazaki
14. コンテンツ
まえがき
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企業戦略の変化
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小売・流通サービス産業の未来の姿
企業経営
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19. コンテンツ
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• コンピューティング革命としての「クラウド」
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企業戦略の変化
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27. コンテンツ
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30. リアル店舗は「エンゲージメント」と新商品のプロモーション重視へ (1/2)
商品のブランド力やイメージを高めるためにも、メーカーがベストな演出で、実物を見て触ってほしい、実際に試してほしい、というニーズは将来的に
もなくならない。
百貨店はメーカーから宣伝費を受け取って運営する「ショールーム」に特化した業態へ転換すると予測する。販売もするが、目的はあくまでも「宣
伝」と「ブランド力の向上」とする業態を想定している。さらには、メーカーに店舗のスペースや棚を貸与するケースも出てくるだろう。つまり、百貨店は
「場所貸し」ビジネスと割り切り、集客と空間の演出に特化することになるだろう。
リアル店舗の多くは、これから顧客との「エンゲージメント」が最重要テーマとなり、「会員制」が当たり前になると予測する。これまでの小売店は、でき
るだけ手間をかけずに商品を販売する「手離れ」を重視してきた。だがこれからは、「いかに“手をかけて”顧客接点を拡大させ、顧客との関係性を
深めるか」を第一に考え、さまざまな取り組みを行うようになるだろう。
現在の小売店でも、独自のカード発行してスタンプを押したりポイントを付けたりするなど、「会員制」を導入しているところは多い。だが、ここで扱って
いるデータは、住所や名前、電話番号など、顧客リストに相当する静的なものにすぎない。これには、ダイレクトメール(DM)を送る時に利用する
くらいしか価値がない。一方、クラウド環境では顧客との「エンゲージメント」、つまりインターネットを通じて「つながる」ことが可能になる。顧客との関
係性が構築できれば、例えばWebサイトやスマホアプリに掲載した商品情報を「顧客」が定期的にチェックするようになる。小売店は、従来のチラシ
の制作や発送にかけていた手間やコストを削減できる。Webサイトやスマホアプリで「目玉商品の魅力」を動画で伝えたり、お得意様限定で特別オ
ファーを提案したりするなどして、顧客を店舗に足を運ばせるように仕向けることはごく普通の取り組みになるだろう。
リアル店舗の存在価値は、販売より「マーケティング」の役割の方が強くなっていく。現在、新商品などの宣伝はテレビCMが中心である。だが、特に
若者層は情報に触れる機会がネット中心になってきており、テレビ番組の視聴率は取れても、CMで狙っている層には十分なリーチができなくなって
いる。テレビCMに頼る宣伝手法は限界に来ており、新たなプロモーション手段が求められるようになる。
Takayuki Yamazaki
31. リアル店舗は「エンゲージメント」と新商品のプロモーション重視へ (2/2)
大型総合スーパーマーケット(GSM: General Merchandise Store)では、ショッピングの「エンターテインメント化」を本格化させるだろう。
店頭にディスプレイ(デジタル・サイネージ)を設置し、新商品を映像で訴求することは当たり前になる。店頭は販売の最前線であり、買物の直前で
宣伝した方がテレビCMよりも高い訴求効果が期待できるからだ。2030年には、スマートフォンなどを使って、AR(拡張現実)で商品に重ね合わせ
てプロモーション映像を流したり、3Dキャラクターに楽しく商品説明させたりするといった取り組みが珍しくなくなるだろう。さらには、顧客ごとの購買履
歴を参照しながら、スマートフォン上のコンシェルジュ(エージェント)がその人向けの「おすすめ商品」を紹介するなど、パーソナルなサービスも登場する
と予測される。メーカーはリアル店舗に対して「販売促進費」を支払うのが普通になり、リアル店舗はメーカーの販促活動によって「+αの収入」が得
られるようになる。これが補填として機能し、ネット販売との価格バランスが取りやすくなる。
リアル店舗では、マーケティング活動に加え、「新規ユーザーの獲得」に特化した業態も増えるだろう。これからは、クラウドを活用した「モノ+サービ
ス」型の商品が増えていく。メーカーにとっては、モノを販売した後にサービスによって安定した収益がもたらされることになる。そのため、新規契約者を
一人でも多く獲得することが今まで以上に重要になってくる。サービスの契約には複雑な手続きが必要になる場合が多い。インターネット上での説
明では限界があり、そこで販売員の「スキル」が求められるようになる。それがリアル店舗の新たな存在価値になっていく。メーカー側は、リアル店舗に
販売マージンを支払うだけではなく、サービス収入についても一定割合をリアル店舗とシェアするのが普通になる。リアル店舗はサービス収入が継続
的に得られるようになることで、店舗の収益が従来よりはるかに安定したものになるだろう。
大手小売流通チェーンでは、他社の商品ラインアップとの差別化を図るために、PB(プライベートブランド)商品を今以上に拡充するだろう。
2030年ごろには、アクアポニクスで野菜や魚の生産を本格的に手掛け、原材料レベルからの差別化を図るだろう。さらには、生産・加工・小売の
各プロセスから出てくる有機系廃棄物を利用し、「バイオ工場」を設置するようになる。
Takayuki Yamazaki
33. ZARA: 期間限定AR体験提供、画面に映し出されたモデルが動き出す
「ZARA」 はAR(拡張現実) アプリ「ZARA AR」を2018年4月18日から2週間、試験的に120店舗で導入した。
アプリをダウンロードし、QRコードを読み取った上で、店舗に設置された3つの専用のグラフィックマークの1つにスマートフォンをかざすと、モデルのレア・
ジュリアン (Lea Julian) とフラン・サマーズ (Fran Summers) が「ZARA」のルックを着て歩く映像が現実の空間に7〜12秒間投影される。
アプリはSNSへの共有機能も備えており、ユーザーは3D映像を撮影してSNSに投稿することもできる。
ZARAは、さまざまな支払い方法や店頭受け取りサービスを導入したり、紙のレシートをなくすなど革新を続けている。
ZARAは粗利益を最大化するのではなく、顧客が望むものと、顧客がより多くの商品を買う方法を模索し、常にそれによって会社を動かしている。
テクノロジーを活用し、店舗数を減らしつつ旗艦店の質を高め、規模を拡大することに注力している。
Takayuki Yamazaki
34. IKEA: IKEAの商品を部屋に置いてシミュレーション出来るARアプリ
「IKEA Place」アプリは、自宅やオフィス、学校、スタジオなどあらゆるスペースで、イケアの家具をバーチャルで設置できる。
全ての商品を空間に合わせて自動でサイズを調整し、3Dで表示する。(メジャーで長さを図る手間が省け、部屋においてみたらサイズが合わなかっ
たという失敗も避けることができる)
顧客は2,000点を超える商品を自宅に置くとどのような感じになるかを買う前に見て確認できる。
空間がどのように変わるかを体験・シェアできる。
買う前に試してみよう
新登場の「イケア・プレイス」アプリが、
ホームファニッシングをもっと手軽に
Takayuki Yamazaki
35. ヤマダ電機: ロボットによる店舗の在庫・売価チェックと来店客への商品提案を実現
ヤマダ電機の店舗にて、Fellow Robots社の自律移動型サービスロボット「NAVii(ナビー)」を活用した店頭での実証実験を実施した。
接客業務: 営業時間内に、NAViiが店内を巡回し、商品売場や店内施設を案内する。対話による商品案内(知的エージェント)も行う。
売場案内 • トイレ、レジ、サービスカウンターなどの店内施設を案内し、目的の施設まで自律移動により来店客を誘導する。
• 目的の商品の陳列場所まで自律移動により来店客を誘導する。
商品案内 • 来店客との対話を通じて、お薦め商品を提案します。商品の仕様等の詳細情報を紹介する。
• 基幹システムと連携して店頭で取り扱いのある商品を紹介する。
クーポン発行 • 来店客に、お得なクーポンを発行する。
ポイント付与 • ヤマダ電機の会員の来店客に、来店ポイントを付与する。
店員エスカレーション • 接客の過程で必要に応じ、販売員を呼ぶことができる。
従業員支援業務:営業時間外に、約10,000商品を対象として、NAViiが在庫チェックと売価チェックを実施する。
在庫チェック • 店頭で欠品している商品をチェックし、欠品商品リストを作成する。
売価チェック • 店頭の商品に表示されている売価が正しいかどうかを、システムに登録されている売価と突き合せてチェックし、不一致の商品
リストを作成する。
Takayuki Yamazaki
37. ウォルマート: 新技術テスト店舗Sam’s Club Nowがダラスでオープン
ウォルマートの会員制ディスカウントストア「Sam’s Club」が、最新の小売テクノロジーをテストする店舗「Sam’s Club Now」をダラスにオープン。
精算レジ担当者が置かれる代わりに、店舗にはコンシェルジュのように行動する「メンバーホスト」が配置されている。
新しい在庫管理と追跡技術は、700台を超すカメラを使い、在庫管理とストアレイアウトの最適化のために使われる。
棚では、電子的な棚ラベルのテストも行われており、簡単に価格を変更することが可能。これによって紙のラベルや値札を印刷する必要がなくなる。
Sam’s Club Nowモバイルアプリ:
• POSレジでアイテムをスキャンする代わりに、買い物客が商品をカートに入れる際にアプリでスキャンして支払いを行う。
• 指定された商品がある通路へのビルトインマップを提供し、やがてこのマップシステムはビーコンを使うようにアップグレードされて、消費者のショッピン
グリストに紐付けられ店内の最適ルートを表示するようになる。
• 機械学習と顧客の購買履歴を用いて、ショッピングリストには、頻繁に購買するものが事前に入力されるようになる。もし不要な場合には、リスト
から項目を取り除くこともできる。こうすることで、顧客は普段買う品物を買い忘れることがなくなる。
• 商品がどのような経路で得られたかの情報にアクセスするための手段も提供する。
• 1時間以内に店頭受け取りが可能になる注文を行ったり、同日配送を指定して注文を行ったりすることができる。
Takayuki Yamazaki
38. ウォルマート: 棚管理ロボットをテスト導入
2017年10月、米スーパー大手のウォルマートが、全米50以上の店舗に陳列棚管理ロボットを導入し、試験運用を開始した。
このロボットは店内を練り歩き、在庫数量、価格、商品の配置まちがいをチェックして回る。
3Dイメージングによる周囲認識機能を備え、積まれたダンボールや臨時に置かれたワゴンといった障害物を自動的に避けることが可能。
さらに障害物で通路が通れない場合はいったん引き返して別の通路を選択する機能も搭載している。
ウォルマートはこうした業務の自動化に熱心な企業として知られている。今回の棚管理ロボット以外にも、商品配送のドローンをテストしたり、オンライン
で注文した商品を受け取りに来た客に、商品をコンベア式に自動で取り出してくる機構を備えたピックアップタワーと呼ばれるシステムを複数の店舗に
展開するなど、自身の省力化や業務効率化だけでなく買い物の際の利便性を向上させることで、顧客の呼び込みを強化している。
Takayuki Yamazaki
39. 自走して売り場の欠品や値札の間違いを知らせてくれるロボット
2016年4⽉、サンフランシスコ市内にあるTargetで、米Simbe Robotics社が開発しているロボット「Tally」の試験運⽤がされた。
Tallyはスーパーマーケットやドラッグストアの店内を⼈や障害物を避けながら巡回して、商品陳列棚の状態をカメラで撮影し、画像認識機能によっ
て商品の品切れや配置間違い、値札の付け間違い、陳列の乱れなどを⾒つけ出す。
Tallyは⾼さ96.5cm、重さが13.6kg。本体下部に⾃⾛⽤の⾞輪を備え、内蔵するバッテリーによって8〜12時間の⾛⾏が可能。
本体の側⾯には商品陳列棚を撮影するイメージセンサーを2個搭載。これによって左右にある商品陳列棚を同時に撮影する。1回で撮影できる幅
は、⽶国の標準的な商品陳列棚の⼨法である122cm。撮影可能な⾼さは最⼤250cmで、棚が高い場合には本体が伸びて⾼い箇所を撮影。
顧客や障害物などを検出するLIDARや距離画像センサー、⾳響センサーを搭載。
Tallyは店内の3Dマップを基に店内の通路をくまなく巡回して、商品陳列棚を撮影する。1時間当たり
1万5000〜2万種類の商品を撮影でき、撮影した商品陳列棚の画像データは、Simbeが運⽤する
クラウドに送信され、物体認識や⽂字認識を実⾏して、商品の有無や値札の付け間違いなどを確認する。
店内の3Dマップは、閉店後など顧客のいない時間帯にTallyに店内を巡回させてあらかじめ作成しておく。
その3Dマップに、商品陳列棚のどこにどのような商品があるのかといった「棚割」のデータを登録する。
Takayuki Yamazaki
45. コンビニエンスストアは「無人vs.有人」ですみ分け
アマゾンは今後、リアル店舗での小売流通にも本格的に進出するのは確実である。リアル店舗の先駆けと言えるのは、書店「Amazon Books」
である。Amazon Booksで特徴的なのは、店内に「Amazon Echo」を設置していることだ。これによって、例えば顧客が探している音楽を実際
に聞かせるなど、人間以上の対応ができる。それ以上に重要なのは、Amazon Echoを店頭に置くことで「顧客の生の声」を収集できるようになる
ことだ。顧客との会話を通じて、顧客が今何を求めているか? どのような言葉が購入のきっかけになるか? など、有用な情報が入手できるようになる。
アマゾンの小売ビジネスで現在最も注目を集めているのは、無人のコンビニエンスストア「Amazon Go」である。Amazon Goの最大の特徴は、
店内にレジがないことである。客は商品棚から欲しい商品をピックアップして袋に入れるだけでよい。監視カメラとセンサーで客がどの商品を選んだか
をチェックし、客が店舗を出る時には購入金額が自動計算されてAmazonのアカウントで決済されるという。これが実現すれば、ショッピングのスタイ
ルは劇的に変わることになる。
Amazon Goは今後3年以内、つまり2020年までに日本に進出すると予測されている。日本は経済水準が高い上に、治安が良く、都市集中度
が高いからである。アマゾンは日本を米国に次ぐ重要マーケットと位置付けており、注文から1時間以内に商品を届ける「Prime Now」サービスを
実現するために、既にロボット倉庫の導入や独自流通網を構築するなど、大規模な投資を続けている。アマゾンが自らコンビニエンスストアを展開
することで、例えばAmazonサイトで注文したものの、配送時に不在にしていて受け取ることができなかった商品をAmazon Goで取り置きすると
いった相乗効果も期待できる。Amazon Goでも、Amazon Echoを店員の代わりして積極的に利用することが予想される。そして、究極的には
ほぼ無人での店舗運営を狙うだろう。Amazon Goが日本に上陸すれば、「有人vs.無人」のコンビニ戦争が勃発することになる、と予測される。
既存のコンビニエンスストアは、「有人」であることを強みとしてAmazon Goとの差別化を図るだろう。日本のコンビニは、宅配の受付や公共料金
の支払い、予約したチケットの発行のほかにも、おでんを煮たり、簡単な料理を作ったりするなど、幅広い業務に対応している。無人で対応すること
には限りがあり、2030年のコンビニエンスストアは「有人vs.無人」ですみ分けられると予測される。既存のコンビニエンスストアは、地域密着を強化
するためにも「会員制」が当たり前になる。近隣顧客との関係性を深め、各チェーン店では「デリバリーサービス」の強化が図られるだろう。顧客一人
一人の情報が把握できるようになることで、例えば常連客にはポイント優遇サービスを適用するなど、きめ細かな対応をするようになっていく。
Takayuki Yamazaki
46. Amazon Go公開 ~米中で無人コンビニ競争
Amazon Go
屋外に自動販売機を置ける治安の良さ。人口の都市集中度が高い(90%) + 高い所得水準。
「Prime Now」で既に独自流通網を構築中、自社倉庫にAmazon Roboticsのロボットを導入開始。
自社コンビニの展開で、取り置きオプションが可能に(再配達コストを削減)。
中国無人コンビニ「BingoBox」
支払いはAlipayとWeChatPayのみ。現金不可。
万引きすると閉じ込められる。Aripayなど使用停止も。
無人コンビニチェーンが2017年だけで30社も新設された。
Takayuki Yamazaki
47. 無人レジを使った小売店がサンフランシスコに開店 (Standard Cognition社)
サンフランシスコで、店舗の天井に設置したカメラの画像を元に精算するシステムを導入した無人店舗を実験的に営業。
来店客1人ひとりの行動を認識し、どの商品を棚から取り出し、どの商品を持って店舗から出たかを把握することで、顧客が商品を持って店を出る
だけで決済を済ませる。レジを操作する店員を配置する必要がなく、店舗の運用コストを削減できるとしている。
来店客の購入情報を蓄積し分析する機能も持ち、品ぞろえの見直しに役立てられる。カメラによる画像に基づくため、大規模な売り場のレイアウト
変更や、タイムセールなどの特売にも、そのまま対応できる。
店に入ったらスマホアプリからチェックインして
お店に入った事をAIに伝える。
AIが店内の天井に設置されているカメラの映像
からチェックインしたお客さんを識別し追跡。
顧客はお目当の商品を棚から取って自分の
カバンやカゴに入れる。
どの人がどの商品を持っているのかを識別。お目当の商品を持ったら、そのまま店を出る
だけで買い物完了。チェックアウトは不要。
代金はアプリに登録したクレジットカードから自動引き落とし。
買い物の明細、領収書は店を出た後にメールで自動送信。
1 2 3
6 5 4
Takayuki Yamazaki
48. 無人売店Zippin
Zippinは、Fast Company社が開発をすすめている無人レジサービス。既にアメリカで実験的に2店舗の運営を行っている。
Zippinの無人レジ決済ので買い物の流れ:
1. 入り口(出口)に設置されているゲートにスマートフォンをかざして入店。(事前にアプリをダウンロードして、クレジットカードを登録)
2. 目当ての商品を手に取ったりカバンに入れたりする。
3. 入り口(出口)に設置されているゲートを通過して買い物終了。
決済は、持ち帰った商品の合計代金が自動で計算されて、スマホアプリで登録しておいたクレジットカードなどから引き落とされる。
QRコードをスマートフォンに表示させて
スキャナーにかざすとゲートが開く。
店内に入れば、棚から好きなものを
手に取ることができる。
商品を選び終わったら、再びスキャナーの
あるゲートを通って外に出る。買い物完了。Takayuki Yamazaki
52. ロボット倉庫 ~倉庫の“スーパーハイテク化”
2030年には、都市部では注文から最速で1時間以内に商品を配送するのが当たり前になる。それを可能とするためには、流通システム全般のハ
イテク化が必要である。中でも鍵となるのは、倉庫の“スーパーハイテク化”である。アマゾンは2012年にキバシステムズ(Kiva Systems)というロ
ボット倉庫のベンチャー企業を買収している。その後、社名を「Amazon Robotics」に変更し、このテクノロジーを門外不出とした。
倉庫業務では、ハンディ端末を片手に作業員が倉庫内を歩き回って商品をピックアップしていくのが一般的である。だが、このロボット倉庫では、ロ
ボットが商品を搬送する。オペレーターは搬送された商品をピックアップするだけなので、作業時間や移動距離を大幅に削減できる。アマゾンでは
10万台以上の搬送ロボットが稼働しており(2017年9月時点)、これにより倉庫の運営コストが3割下がったという。ロボットであれば、24時間
/365日の稼働も可能である。これからの時代、人材の確保はますます厳しくなる。仮に人を集められたとしても、物流量が増えれば人件費も増え
ることになる。そして何より、人海戦術のままではアマゾンにスピードもコストも全く太刀打ちできなくなる。
倉庫業務をさらに効率化するために、「地上」だけではなく「空」も使う
ようになると予測されている。つまり、商品のピックアップにドローンを
使うようになるということだ。ドローンは重いものは運べないが、搬送用
ロボットよりもはるかにスピーディに動かすことができる。そして、倉庫の
中(=屋内)であれば航空法の規制は及ばない。近い将来、ドローン
が倉庫内を飛び回って荷物をピックアップして梱包エリアまで運んで
くるようになり、人間は最終チェックをするのみになると考えられる。
Takayuki Yamazaki
53. 倉庫で使われる最新テクノロジーとそのベンダー
Big retailers aim to save millions by optimizing warehouse operations, increasing
efficiency with wearables and software or using robots to replace workers altogether.
倉庫用ロボット
Takayuki Yamazaki
56. 人間作業者と協調する倉庫ロボット「Chuck」
マサチューセッツに拠点を置く「6 River Systems (6RS)」が、協調フルフィルメントシステムとロボット(Chuck)を開発。
Chuckは自律的で、自力で移動することが可能。同行者をリードしながら働くことができる。
このロボットは人間の側で協力するようにデザインされていて、ただ人間を置き換えることを目指してはいない。
Chuckは長さ約3フィート、幅2フィートであり、約3.5フィートの高さの棚を搭載して4フィートの高さになる。高さは、ほとんどの働き手たちが快適と
思える高さに調整することが可能。
働き手たちが、アイテムを棚から素早く下ろすことが可能になるようにガイドするために、Chuckは11インチのタッチスクリーンを搭載している。スクリー
ンにはこれからピックアップすべきアイテムの画像と、ピックアップすべき数、そしてSKUやバーコードのようなアイテム上の数字IDが表示される。そして、
働き手に次にどの方向へ行くべきかを指し示す。
倉庫運営者たちは、倉庫がどのように運営されているかをリアルタイムに知ることができるようになる。Takayuki Yamazaki
57. 倉庫用ピックアップロボット「IAM ROBOTICS」
IAM Robotics社の「Swift Product Suite」は、ロボットに倉庫内の移動とピッキングの両方を行わせることでそれらの問題を解決し、人間の労
働者がより価値の高い活動に専念できるようにする。
障害物検出技術を兼ね備えた自律型のロボット「Swift」は高さ約180cmで一回の充電で最大10時間稼働。
Swiftにはロボットアームがついており、倉庫内を移動しながら指定された在庫をピックアップして補充する。
IAM社のインテリジェントな自律運搬管理技術は、Swiftが人間に合わせた環境内を移動して、物体の場所を特定し、商品をピッキングしたり、
人間と同じ速さと正確さで梱包することを可能にした。
ビデオ ① https://youtu.be/B3qUCDgjnCE
② https://youtu.be/LmBgPOqscm4
Takayuki Yamazaki
62. Twidy: ライフ渋谷東店を対象に最短1時間で買い物代行
Twidyは誰かに買い物を依頼したいユーザー(リクエスタ)と、代わりに買い物をしてくれるクルーを繋げるサービス。
ユーザーは、スマホからサービス上に登録されているスーパーを選び、希望の日時と買ってきて欲しい商品をサイト上から登録し、決済する。
リクエストを受けたクルーが買い物を代行して、最短1時間で自宅まで配送する。商品代金とは別で代行代がかかるものの、その分指定した商品
がスピーディーに届くのが特徴。
第一弾として、2018年9月6日より渋谷区のライフ渋谷東店から、近辺のエリアの住民に対して同サービスの提供を開始。
メインの利用者として想定しているのは、小さな子どもを抱える育児中の共働き家庭。
今後は渋谷東店以外の店舗や他のスーパーなどが加わり、自宅の郵便番号を入れると対応している店舗が表示されるようになる予定。
ネットスーパーをやっているような企業でも『物はあるのに運ぶ人がいない』ことがネックになって、機会損失が発生しているケースがある。まずはネット
スーパーを持つ企業と組むところから始めて、ネットスーパーを持たないところとも連携を広げていく。Takayuki Yamazaki
64. コンテンツ
まえがき
総論
• 未来を創るメガトレンド
• コンピューティング革命としての「クラウド」
• ジネス潮流の変化
• モノが“足りない”を前提とした「サステイナビリティ」
企業戦略の変化
• 「繋がる」を前提とする社会
• 「大企業」の概念が変わる
• 「バリュー・クリエイター」 ~求められる人材の変化
小売・流通サービス産業の未来の姿
企業経営
• 「モノ」 ~物流の変化
• 対顧客
• ビジネス・プロデュース ~「ビジネスを創る」
Takayuki Yamazaki