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年金、もし二つ以上
貰えるようになったら
その質問、 slowsteps がお答えします
前回までの説明で
年金って、まぁ、普通に払っていれば65歳から
もらえそう、でも、その他の場合でももらえちゃう
かも、って、なんとなく思いませんでしたか?
あ、自分がもらうケースで考えてたから、そうい
う見方をしてませんでしたね。
もし、複数もらう権利がきちゃたら
どうなるでしょう
話を始める前に、ちょっとお断り
今回の話も、思いっきり日本国内の年金に絡む話をします。
ということは。。。
私が一般論を話すのは Affiliate Financial Plannerや社労士の見習いとして
はいいけれども、個別案件に関する検討・助言・書類作成などをすると社労
士法とかに抵触する
という、(私にとっていつもの)ちょっとやっかいな話が待っていますので、いつものことながらご自分
のお財布に関するお話に対しては
自己責任、もしくは適切な社労士さんもしくはFPと相談の上で
ということで。
というか、私、FPですからそういうの「も」お仕事なんです。
みなさん、忘れないでね。
また、もうひとつ精神的なところで
前回、自分がどうやって回収する?と言う側面で話を進めてき
たので気づかなかったかもしれませんが、今回はその反対側
になる、「あなた」に「近い誰かさんの都合で」年金を受け取る
場合、と言う話もします。
そもそも、年金受給って人の触れたくない
歳や病気、生き死にの話に直結しているので
その背景を想像するだけで、どの話もある意味センシティブな
ので、そんなことに触れるとは「人でなし」、とか言われそうです
が、そこは法律に従ったお話、と言うことで。。。
まず年金の制度についておさらい
日本には国民年金法と厚生年金法の二つの年金に関
する法律があって、それに基づいて、少なくともどちら
かの年金制度に強制参加させられるています。
そのおかげで、20歳になった月から少なくとも60歳に
なるまでは年金の保険料を何かしらの形で払わされて
います。
で、色々な話をすっ飛ばすと、ちゃんと払っていれば65
歳から年金がもらえるのですが、いくらを誰からもらえ
るか、というのは、20歳から65歳までにどういう形で国
民年金か厚生年金に加入してたか、に掛かっていま
す。
年金の構造のおさらい
端的に言えば、
日本の居住者は20歳になったら国民年金に必ず加入するが、
企業等に働くと国民年金の第2号加入者として厚生年金に加入し、
厚生年金に加入する配偶者は第3号加入者として国民年金に加入します。
図で書くとざっくりこんな感じ(高さで金額を表していません。手抜きでごめんなさい)。
第1号加入者 第2号加入者 第3号加入者
厚生年金
国民年金
で、最近のiDeCoとか入れると
こんな感じになる(金額を厚みにする、とかせず
に超単純だけど)
第1号加入者 第2号加入者 第3号加入者
厚生年金
国民年金
付加年金
国民年金基金
iDeCo iDeCo DC 厚生年
金基金 iDeCo
まず、自分が65歳になると
老齢年金を受給することが出来ました。
国民総年金制度のおかげで自営業の人などみんなが(ただし、ちゃんと保険料
を払っていれば)「老齢基礎年金」を、
もし、企業等に1年以上勤めていたら、「老齢厚生年金」も「老齢基礎年金」と合
わせて
(で、人によってはiDeCoとかDCとかその他の年金制度も)
受給することが出来ます。
ま、これを遅らせることも早めることも(受給額が変わりますが)可能、と言うこと
でしたよね。
で、前回はこれに合わせて
年金の基本的な目的は老後の生活費を支える年金、でしたが
前回、
もしも働けなくなるような傷病等に罹った場合に受給できる「障
害年金」
と
家族の中の働き手が亡くなった時にその後の家族の生活を維
持できるよう受給できる「遺族年金」
の二つもあることを学びました。
もし、不慮の事故で働けなくなったら
障害年金を受給することが出来ました。
国民総年金制度のおかげで自営業の人など加入者であるみんなが(ただし、
ちゃんと保険料を払っていれば)「障害基礎年金」を、
もし、企業等に勤めていた時ならば、「障害厚生年金」を
受給することが出来ます。
ただし、障害年金を受給する原因で、労働基準法に基づく遺族補償を受けるこ
とになると6年間障害年金の受給権が中断しますが、労災保険での障害年金を
受けた場合は中断されないことになっています。
もし、あなたの家族が亡くなると
遺族年金を受給することが出来る可能性がありました。
あなたに18歳未満の子供がいて、国民総年金制度のおかげで自営業の人や主婦なども加入
者であるあなたの配偶者(ただし、ちゃんと保険料を払っていれば)が亡くなったら「遺族基礎
年金」を、
もし、(あなたが男性なら55歳以上、女性ならいつでも)あなたの配偶者や(あなたが18歳未満
なら)親、(あなたが55歳以上なら)子、(あなたが18歳未満なら)祖父母、(あなたが55歳以上
なら)孫が、企業等に勤めていた時に亡くなったならば(そして、この順序に従って決まっていく
受給権者で、、あなたより先がいなければ)、「遺族厚生年金」を
受給することが出来ます。
ただし、遺族年金を受給する原因で、労働基準法に基づく遺族補償を受けることになると6年
間年金の受給権が中断しますが、労災保険での遺族年金を受けた場合は中断されないことに
なっています。
また、親御さんや祖父母を亡くした場合なら18歳になった3月まで払われ、男性の配偶者や子、
孫を亡くした場合なら、60歳からやっと支払われます。
どう言うことか、と言うと
基本的に年金は、65歳からもらえるはずなのですが、繰上げ受給をせずとも
65歳より前に受給権を得ることがあり、そのまま65歳になると老齢年金の受
給が始まることから、どうなるの?と言う問題があります。
なんとなく、全部もらえるんじゃないの?なんて期待したくなりますよね。
何せ、自分の老齢年金の原資と別の原資を元にした受給権なのですから、
大事にもらい続けて当然、って思いますよね?でも、そうはいかないのです。
あ、ちなみに、老齢年金以外を65歳以前に受給していると、老齢年金の繰り
下げ受給は出来ません。
ま、テストで出るので
図的にはこんな感じで覚えるらしいのだけどね。
原則:国民年金と厚生年金は同じ原因で受給資格を得た場合には併給可能。
仮に二つの国民年金や厚生年金の受給権を得た場合にはどちらか一つを選択。
しかも、組み合わせるとしたら、下記の組み合わせに基づく。
◎: 問題なし / ○(65): 65歳以上ならば / X: 不可
老齢基礎年金 遺族基礎年金 障害基礎年金
老齢厚生年金 ◎ X ○(65)
遺族厚生年金 ○(65) ◎ ○(65)
障害厚生年金 X X ◎
なんか、このチャートだと
ちょっとイメージが湧かないですよね。
と言うことで、少しどういう状態だから選択可能なのか、
または選択できないのか、を考えてみます。
こういう言い方は偏りがあるものの
ぶっちゃけ選択肢が発生するのは大抵の場合65歳ですから、
障害基礎年金の受給をしていなければ、55歳以降に死別した
方のおかげで受給権を得た遺族厚生年金の受給を受けている
かいないか、が想定できる一般的なケースです。
18歳未満の子がいることで受給できる遺族基礎年金を65歳で
受けることが可能なケース、って、単純に考えると、47歳以上で
生まれた子がいる場合ですので、高齢出産ののちに夫に先立
たれたかもしくは歳の差結婚で生まれた子を残して妻に先立た
れたか、もしくは、養子を迎えた場合です。他にも連子で来たと
か、人生いろいろなので決めつけられないのですが、中々想像
するのもハードなケースが多そうです。
と言うことは。。。
いずれの場合でも、受給開始の65歳以降、子供の成長の
結果としてそんなに長く遺族基礎年金を受給し続けること
が出来ないので、遺族基礎年金と老齢厚生年金(や障害
厚生年金)の組み合わせを想定してせず、最初から(死亡
で給付が終了する)老齢基礎年金に移行してほしい(か
元々の障害基礎年金のままでいて欲しい)、と考えている
ように思われます(個人的直感)。
ただ、全員が老齢厚生年金がもらえるわけではないので、
老齢基礎年金と老齢厚生年金だけに限定せずに、遺族厚
生年金や障害厚生年金の組み合わせも許容されている
のでは、と考えられます(これも個人的直感)。
で、これで実は以外の
老齢基礎年金 遺族基礎年金 障害基礎年金
老齢厚生年金 ◎ X ○(65)
遺族厚生年金 ○(65) ◎ ○(65)
障害厚生年金 X X ◎
丸で囲った遺族年金関連の背景がわかってきたのです
が、残りの障害年金と老齢年金の関係はどうでしょう?
障害年金と老齢年金
表で問題になるのは、なぜ
「老齢基礎年金」と「障害厚生年金」の組み合わせがダメで
「老齢厚生年金」と「障害基礎年金」の組み合わせがいいのか
です。
ここからは直感的なところですが
「老齢基礎年金」と「障害厚生年金」の組み合わせを選べる場合、障
害等級3級でない限り、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」も選択肢
に入ってきます(と言うのも、条文上違いはありますが、障害厚生年
金の受給資格を満たすと障害基礎年金の受給資格を得られます)。
この場合、老齢基礎年金は年額780,900円を上限に加入期間の納付
条件で金額が変わりますが、障害基礎年金は障害等級2級で
780,900円、1級ならばその125%の976,125円です(もちろん、それぞ
れインフレ等の調整の改定率を一律掛けますが)。
としたら、どうみても、「老齢基礎年金」と「障害厚生年金」の組み合
わせより「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の方が有利です。なの
で、不利な選択肢をさせないようにしたのでは、と考えるのです。
じゃあ、障害基礎年金を軸にして
今度は「老齢厚生年金」と「障害基礎年金」と「老齢厚生年金」と「老
齢基礎年金」を比較しましょう。
あまり想像ができないのですが、「障害基礎年金」をもらえる状況は
障害等級2級が前提ですので、老齢厚生年金をもらえるより先に「障
害厚生年金」をもらえていてもおかしくはないのですが、厚生年金加
入していたけれども、加入期間じゃない時の傷病で障害基礎年金受
給権を得た場合にこのようなケースが想定されます。
となると、障害厚生年金の受給権なく65歳まで過ごしてきた可能性
があるので、確かに、前述の通り65歳から受給可能な「老齢基礎年
金」より有利な「障害基礎年金」の受給権を維持しながら「老齢厚生
年金」を受給できるようにしてあげる必要がありそうです。
ん?ちょっと待って
そうなると、障害等級3級の障害厚生年金を受給してきた人が65歳になった時ど
うなるのか、と言う問題が出てきます。
この人は、障害等級3級ですので、障害厚生年金は障害認定の時から受給でき
ますが、3級ですので障害基礎年金の受給は出来ません。
他方で、働けるかどうかはさておき、最低でも国民年金の加入は継続せねばな
りません。2級以上であれば法定免除の措置がありますが、そもそも3級の概念
は厚生年金法だけで国民年金法にないので、法定免除されませんので所得等
からの免除申請の結果次第、と言うところです。
ちなみに、3級は労働に制限のある、もしくは制限が必要とされる人、ですので、
障害者雇用枠での就労や時短勤務などしながら障害厚生年金を受給しつつ就
労するケースもありますし、障害等級認定される前の保険料支払い分から老齢
厚生年金の受給権も発生し得ます。
となると、ここが多分一番厳しい選択肢である
「障害厚生年金」のみか、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の合算か
のを問われることになります。
そうそう。一番大事なことを忘れてた
遺族年金と障害年金は、非課税です。
それに対して、老齢年金は所得税による課税対象で雑所得(公的年
金等)扱いです。
と考えると、仮に年金としての合計額がそれぞれ計算されたとしても、
税引き後で考えて選択した方が良い、となりますが、年金額の計算
式を踏まえると、自ずと答えが見えてくるのですが。。。
まとめ
自分が複数どころか、一つの年金の受給権を得ること、と言うのがま
だ想像できないものの、どう言う状態になるのか考えるいいきっかけ
になりました。
とはいえ、人様の人それぞれの人生をこう言う法律の想定するストー
リーに当てはめる、と言うのは難しいものです。。。
Slowsteps Inc.
your ambitions, through power of finance

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