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私の年金
老後以外の貰い方
その質問、 slowsteps がお答えします
前回の説明で
年金って、まぁ、普通に払っていれば65歳から
もらえそう、ってのはわかったし、多分その他の
準備も必要だからiDeCoとかやるのはわかった。
その他の貰い方ってあるの?
話を始める前に、ちょっとお断り
今回の話も、思いっきり日本国内の年金に絡む話をします。
ということは。。。
私が一般論を話すのは Affiliate Financial Plannerや社労士の見習いとして
はいいけれども、個別案件に関する検討・助言・書類作成などをすると社労
士法とかに抵触する
という、(私にとっていつもの)ちょっとやっかいな話が待っていますので、いつものことながらご自分
のお財布に関するお話に対しては
自己責任、もしくは適切な社労士さんもしくはFPと相談の上で
ということで。
というか、私、FPですからそういうの「も」お仕事なんです。
みなさん、忘れないでね。
まず年金の制度についておさらい
日本には国民年金法と厚生年金法の二つの年金に関
する法律があって、それに基づいて、少なくともどちら
かの年金制度に強制参加させられるています。
そのおかげで、20歳になった月から少なくとも60歳に
なるまでは年金の保険料を何かしらの形で払わされて
います。
で、色々な話をすっ飛ばすと、ちゃんと払っていれば65
歳から年金がもらえるのですが、いくらを誰からもらえ
るか、というのは、20歳から65歳までにどういう形で国
民年金か厚生年金に加入してたか、に掛かっていま
す。
で、短くまとめたから余談だけど
なんとなく、前回の資料では、厚生年金に入れるな
ら入った方が、老後は少しはよさそうで、その上で、
iDeCoとかDCとか追加の準備をした方がよさそうだ
よね、ってまとめたのですが響いてますか?
どういうことだったか、というと
年金の構造のおさらい
端的に言えば、
日本の居住者は20歳になったら国民年金に必ず加入するが、
企業等に働くと国民年金の第2号加入者として厚生年金に加入し、
厚生年金に加入する配偶者は第3号加入者として国民年金に加入します。
図で書くとざっくりこんな感じ(高さで金額を表していません。手抜きでごめんなさい)。
第1号加入者 第2号加入者 第3号加入者
厚生年金
国民年金
で、最近のiDeCoとか入れると
こんな感じになる(金額を厚みにする、とかせず
に超単純だけど)
第1号加入者 第2号加入者 第3号加入者
厚生年金
国民年金
付加年金
国民年金基金
iDeCo iDeCo DC 厚生年
金基金 iDeCo
で、今回はこれを踏まえて
前回は老後の生活費を支える年金、でしたが
年金は、65歳より前でも受け取れる
という話をします。
と言っても、頑張って積み立てた年金を引き出す裏技
でもなんでもないですのでガッカリしてくださいね。
まず、自分で65歳になる前に何がな
んでも受け取りたい!
前回、年金をどれくらい掛けると元がとれるか、と言う下世話な話をした際
厚生年金や国民年金の繰上げ給付が最大5年前倒しで出来る
という話をしました。その代わり、1ヶ月前倒すと 0.5%割り引かれますので、最大
0.5% x 5 x 12 = 30%割り引かれた 70%で毎年支給されますので、最長30年間掛けな
いと払った分の回収が出来ない、と言う話をしました。
まぁ、これは昭和41年4月2日以降の、要は著者と同世代から若い人たちにだけ、適
用されるルールです。
ちなみに、今度、この割引率が2022年4月から、1962年/昭和37年4月2日以降生ま
れの人たちに対して0.4%に変わるそうなので、最大24%に抑えられるそうです。
そういえば私たちの親世代って
60歳定年の後、すぐに年金もらってませんか?
年金のルール変更の都合で
実は年金支給の開始時期が生まれた年によって異なっています。と言うのも、昭
和 60年の年金の制度変更で支給時期を60歳から65歳に遅らせることを決定し
たのですが、その際に厚生年金はさすがに急に変えられないから、と言うことで
平成14年改正・施行の改正法で段階を踏んで、となったのです。
よくテキスト的に書かれる開始時期の表はこんな感じですが解説は次でね。
生年月日 定額部分
開始年齢
生年月日 報酬比例
部分開始
S16.4.2-18.4.1 61歳 S28.4.2-30.4.1 61歳
S18.4.2-20.4.1 62歳 S30.4.2-32.4.1 62歳
S20.4.2-22.4.1 63歳 S32.4.2-34.4.1 63歳
S22.4.2-24.4.1 64歳 S34.4.2-36.4.1 64歳
S24.4.2- 65歳 S36.4.2- 65歳
生年月日 定額部分
開始年齢
生年月日 報酬比例
部分開始
S21.4.2-23.4.1 61歳 S33.4.2-35.4.1 61歳
S23.4.2-25.4.1 62歳 S35.4.2-37.4.1 62歳
S25.4.2-27.4.1 63歳 S37.4.2-39.4.1 63歳
S27.4.2-29.4.1 64歳 S39.4.2-41.4.1 64歳
S29.4.2- 65歳 S41.4.2- 65歳
男性(と、国家公務員等の女性) 女性(民間企業に限る)
どう言うことか、と言うと
基本的に年金は、国民年金加入者全員(と言うことは、給付資格を得る全ての国民)の受
領する老齢基礎年金と、2号加入者(と言うことは、現役時代に厚生年金保険料を払った、
受給資格を得る人)の受領する老齢厚生年金、の二階建てになっていたのは先ほどの図
表の通りでした。
先ほどのテーブルで、元々厚生年金の支給時期が平成14年までは 60歳だったものを、65
歳に遅らせるために、この二階建てのうち、老齢基礎年金(覚えてますよね、みんな一律
の年額 780,900円の年金給付部分)については、昭和16年4月2日生まれ以降の人たちは
2年ずつ、段階を追って1歳ずつ給付時期を遅らせます、と言うものです。
また、老齢厚生年金(言い換えると、収入に応じて保険料と年金が比例する部分)につい
ては、昭和 28年4月2日生まれ以降の人たちは2年ずつ、段階を追って1歳ずつ給付時期
を遅らせます、と言うものです。
そのため、60歳から65歳までの厚生年金の年金給付のことを「特別支給の老齢厚生年
金」と呼びます。
ちなみに、女性の該当する年齢が5歳ずつ遅くなっているのは、そもそも昭和60年の法改
正の時まで、元々55歳給付だったものを60歳からの給付に変更して男女の給付の時期を
揃えた都合があるのでその分遅らせた、そうな。
ま、テストで出る以外には
昭和41年4月2日以降の良い子のみんなには関係ないけどね。
ただ、ちょっと厄介なのが
この特別支給のルールがあることで、
まずは、給付の前倒しの計算が人によって60歳まで3
年だったりとか4年だったりとか変わってしまう問題が
ある以上に
扶養家族がいる場合の年金給付のルールにも話を広
げる必要が出来てしまう、のです。どう言うことかとい
うと。。。
厚生年金受給者の扶養者問題
例えば、特別支給の厚生年金のうち定額部分について受給する人(男性で言えば昭和24年4月1日
生まれまで、女性なら昭和29年4月1日生まれまで)が、20年以上の厚生年金加入期間があって、ま
だ、共に生計を維持している
• 65歳未満の配偶者がいる、もしくは
• 18歳未満の子供(もしくは20歳未満の(後で説明する)1級もしくは2級の障害のある子供)
がいると、配偶者一人に224,700円(まぁ、配偶者二人いることはないですが。。。)、お子様も、最初
の二人まではそれぞれ 224,700円ずつ、3人目からはその1/3の 74,900円が、それぞれ加給年金額と
して年金額に上乗せされるのです。
さらに言えば配偶者加給年金額は昭和9年4月2日生まれ以降(と言うことは、事実上、男性ならば、
昭和24年4月1日生まれまで、女性ならば昭和29年4月1日生まれまで)の受給者について、その(配
偶者ではなく)受給者の誕生日によってさらに上乗せがあります。
大事なことなので繰り返しますが、これは特別支給の厚生年金の受給者のみ適用なので
昭和41年(ドコロか昭和29年)4月2日以降生まれの私たちには
テストの問題以外では全く縁のないルール
です。
加給年金額の問題はさらに続く
まぁ、60歳過ぎで18歳未満の扶養者がいるってどういう状況かは深くは掘り下げな
いものの、この加給年金額を受け取った人について、じゃあ、特別給付の厚生年金
が65歳を迎えることで通常の老齢厚生年金に移行するのですが、この加給年金額
も引き続き年金額に加算される、のです。
もちろん、この扶養者、特に配偶者については、配偶者本人が年金を受給するまで
の、ある意味「扶養者手当」の性質が強いので、配偶者が老齢厚生年金や65歳に
になる前に(後で触れる)障害年金の受給者になったら、この加算は中止になりま
す。
とはいえ、これって、老齢厚生年金の受給者のみなので、自営業などの1号国民年
金保険加入者や厚生年金加入者の配偶者である3号国民年金保険加入者にはな
い制度、なのです。後者はその配偶者が受け取るからいいのですが、自営業の方
のように個人事業主だから厚生年金に入れなかった、と言う人には、その分保険料
が安かったとはいえ、ちょっと。。。ですよねぇ。
さて、生まれ年に関係ない話でも
ずっと老齢年金の話をしていましたので、結局どんなに頑張っ
ても60歳以上にならないともらえない、と言うことだけ話してい
ました。
じゃあ、60歳未満でも年金は貰えないのか?
と言う問題にそろそろ取り組みたいと思います。どの話もある
意味センシティブなので、そんなことに触れるとは「人でなし」、
とか言われそうですが、そこは法律に従ったお話、と言うこと
で。。。
まずは自分で受け取るなら
もしあなたが、日本国籍を持っておらず、たまたま日本で6ヶ月以上住むから、と
いうことで国民年金に保険料を納付した月数(もし4分の1免除の月があったら、
その月は払った3/4、半額免除なら払った1/2、4分の3免除の月ならば1/4とそれ
ぞれ換算して足した月数)で6ヶ月以上加入することになったり、6ヶ月以上働い
たことで厚生年金に加入したのだけど、何かしらの年金を受け取ることなく、日
本を離れることになったならチャンスです。
日本を離れて2年以内に脱退一時金を請求することが出来ます!
国民年金なら、最後の支払った月の保険料の1/2に保険料納付済等の月数に
応じて政令で定める数を掛けた額を
厚生年金なら、被保険者であった期間の平均標準報酬額に最後に被保険者
だった月の属する年の10月の保険料率と1/2を掛けて、被保険者であった期間
に応じて政令で定める数を掛けた額
なので、まぁ、全額は返ってこないのですが。。。
ごめん、日本国籍あるわ。。。
そうなると、日本を離れたとしても脱退一時金の対象にならず、
その国の年金制度に加入しつつも、国民年金の任意加入者に
すらなるチャンスがある、という、もらえないけど払わされる仕
掛けになっています。
となると、もし自分でもらうことに拘るならば、これしかありませ
ん。
障害年金という選択肢
病気や怪我などの都合で、年金制度でいう障害等級が認定されると
障害年金の受給資格を得ることが出来ます。
国民年金だと、次が当てはまると障害基礎年金の受給資格を得ます。
(1) 被保険者であるか、被保険者であった60歳から65歳未満の国内
在住の人が、
(2) その傷病についての初診日の属する月の前々月までに被保険
者期間がある場合には保険料納付済期間と保険料免除期間の
合計が被保険者期間の2/3以上あって、
(3) その障害認定日(初診日から18ヶ月経過したか、それまでにその
傷病が治った、というかこれ以上の改善が見込めないと判断さ
れた日)に、障害等級が1級か2級と認定されたとき
障害厚生年金だと
厚生年金だと、次が当てはまると障害厚生年金の受給資格を
得ます。
(1) その傷病についての初診日に被保険者である人が、
(2) その傷病についての初診日の前日において、初診日の属
する月の前々月までに国民年金の被保険者期間がある場
合には保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が被保
険者期間の2/3以上あって、
(3) その障害認定日に、障害等級が1級か2級か3級と認定され
たとき
ちなみに、障害等級ですが
よく障害手帳ってあるじゃないですか。あれの等級と思われがちですが、法律が別なこともあって、別物です。わかり
やすい例で言うと、あれって喘息で1級とか昔は貰えましたし、それくらい辛いですが、でも年金受給の対象になりま
せん。
年金機構の解説によると
1級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずる ことを不能ならしめる程
度のもの。
この「日常生活の用を弁ずることを不能なら しめる程度」とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ず
ることができな い程度のもので、例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの
又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむ ねベッド周辺に限られるもの
であり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね 就床室内に限られるもの。
2級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生
活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。
この「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを 必要とする程度」とは、必ずしも
他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて 困難で、労働により収入を得ることができない程度のもの、
例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、 それ以上の活動はできないもの又
は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活 でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、
家庭内の生活でいえ ば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるもの。
3級:労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度 のもの。 また、「傷病が治
らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。(「傷病が治
らないもの」については、 第3の第1章に定める障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であって も3級
に該当する。)
なので、まぁ、2級までは、ほぼ動けない、とか少なくとも家などの建物からは自力で出られない、ですね。
障害基礎年金の年金額は
国民年金は、比較的計算がわかりやすく
2級で年額 780,900円(にその年の改定率を掛けたもの)
1級だとこれに1.25倍したもの
これに加えて、もし生計を一にする子(18歳になって最初の3月
を迎えるまで、もしくは障害等級に該当する20歳未満)がいたら、
最初の二人まで224,700円、3人目からこの1/3の74,900円にそ
れぞれ改定率をかけた額が加算されます。
あ、例によって、国民年金系では配偶者をカウントしません。
障害厚生年金の年金額は
厚生年金も、まだ比較的計算がわかりやすく
2級と3級では老齢厚生年金の年金額の計算方法そのままで、もし被保険者期間が300月(25年)に
満たない場合には300月と見做して計算
1級だとこれに1.25倍したもの
(もし、障害厚生年金を給付事由で国民年金から障害基礎年金が
給付されない場合に、障害厚生年金の額が障害基礎年金額の3/4に満たないならば、その額-
780,900円 x 改定率 x 3/4 – を最低保障額として給付します)
これに加えて、1級と2級については、もし生計を一にする65歳未満(ただし、大正15年4月1日以前生
まれの場合、年齢関係なし)の配偶者がいたら、224,700円に改定率をかけた額が加算されます。
例によって、厚生年金系は子供をカウントしません。
また、初診日から5年以内に傷病が治った(というか症状が固定した)状態が3級ほどではないけど、
一定の状態にある場合で年金受給者じゃない(とか、障害年金をもらっていたけど症状が改善して障
害状態に該当することなく3年が経過して、障害状態にない人)には、老齢厚生年金の年金額(300月
の保証も適用して)の2年分(また、これも最低保障額の2倍未満だと最低保障額の2倍)が障害手当
金として支払われます。
ここまで言ってなんですが
この障害年金、受け取るためにまだちょっとだけ条件がありまして。。。
• 障害の原因が労災保険の給付範囲だと、6年間障害年金の支払
いが停止されます。
• 認定後、症状が改善されて等級に該当しなくなった場合(なので3
級にすら、という意味ですね)、その状態の期間も障害年金の支
払いが停止され、それが3年続いて65歳以上だと障害年金の受給
権が消滅します(この場合、老齢年金の対象になり、また厚生年
金については障害手当金の対象になるんですね)。
• 当然、死亡すると受給権は無くなります。
また、後で、あの年金とこの年金は合わせてもらえない、というルー
ルがあるので、選択を迫られるケースも出てきます。
もし自分で受け取らなくていいなら
ん?何を言っているんだ?と思ったあなた。
申し訳ないけど、65歳過ぎても年金を受け取る以外に、今まで
の方法のどれも使えなかったら、じゃあ、ここまでのどれにも当
てはまらないから払い損じゃねーか、って話ですよね。
(まぁ、それなら老齢年金もらいましょうよ)
となると、もう後は残された誰かさんに受け取ってもらうしかあ
りません。
と言うことで、遺族年金という制度があります。もちろん、その
名の通り、加入者が死亡した際に、一定の条件を満たしていれ
ば遺族の方にその後の生活を支える年金が支払われる、と言
う仕組みです。
どう言う条件かと言うと
二つ見るべき条件があります。一つは加入者側、もう一つは遺族側です。
加入者側の条件は
国民年金であれば、
• (1) 被保険者であるか(2) 被保険者であった人で日本国内に住所を有し、60歳以上65歳未満であるか(3) 老齢基
礎年金の受給者(で、原則、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が25年以上あること)
• また、上記の(1)と(2)の場合は死亡日の前日において、その日の属する2ヶ月前までに被保険者期間がある場
合には、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が被保険者期間の2/3以上あること(言い換えると、未納
期間が1/3未満であること) ((3)と(4)の場合は、保険料の納付で25年払っていれば良いことになります)
厚生年金であれば
• (1) 被保険者であるか、(2)被保険者であった者が被保険者の資格喪失後に、被保険者であった間に初診日が
ある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡した場合(3)障害等級1級もしくは2級の障害
厚生年金の受給者が死亡した場合、(4)老齢厚生年金の受給者(で、原則、保険料納付済期間と保険料免除期
間の合計が25年以上あること)か保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が25年以上ある人
• また、死亡日の前日において、その日の属する2ヶ月前までに被保険者期間がある場合には、保険料納付済期
間と保険料免除期間の合計が被保険者期間の2/3以上あること(言い換えると、未納期間が1/3未満であるこ
と)。ただし、令和8年4月1日までは、死亡日の前日において、死亡日の属する月の2ヶ月前までの1年間のうち
に保険料納付済期間と保険料免除期間以外の国民年金の被保険者期間がなければ良い、と言う特例がありま
す。
と、加入期間と保険料納付要件と二つのハードルがあります。
遺族の条件は?
遺族側は、というと、ちょっと厄介です。
国民年金の場合
• 18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にある子、もしくは
• 20歳未満で障害等級に該当する障害があり、かつ婚姻をしていない子
と、これらの子と生計を維持する配偶者(ちなみに、配偶者が受給している間は子は受給停止なのこ
の配偶者が死亡したり、再婚して子供を置いてどこかに行っちゃったら(!)子が受給することが出来
る、のです。)
厚生年金の場合
• 配偶者、子、父母、孫または祖父母であって、被保険者または被保険者であった者の死亡の当
時その者によって生計を維持していたもの
• 配偶者(事実婚も含む)と言っても、妻だと無条件だけど夫だと死亡の時点で55歳以上であること。
ただし、遺族基礎年金の受給権を有する(後、平成8年4月1日前の死亡に限って、その時に障害
等級が1級または2級に該当する障害の状態にある場合の)夫を除いて、60歳まで遺族厚生年金
の支給は停止(と言うことは最大5年間給付されません)
• 子や孫については国民年金の場合の子と同じ条件
• 父母や祖父母も夫と同じく死亡時に55歳以上であることと60歳まで給付は停止
• 遺族の優先順位は、(1)配偶者と子、(2)父母、(3)孫、(4)祖父母、の順で、この優先順位で誰かが
受給権を取得したら、それより下の人は受給権を受け取ることができる遺族としない(ので、受給
権を持つ人が亡くなっても次の優先順位のある人に転給といって、引き継いで受給出来ない)
で、いくら貰えるかというと
遺族基礎年金の場合
• 配偶者と子の遺族に対しては 780,900円に子について最初の2名は 224,700円ずつ、三番目以
降には 74,900円の合計額に改定率をかけた額を
• 子だけの遺族に対しては、780,900円に2番目以降の2名は 224,700円ずつ、4番目以降には
74,900円の合計額に改定率をかけた額を
毎年(というか年6回に分けて)年金として支払われます。
遺族厚生年金の場合
1. 老齢厚生年金の計算式に当てはめて計算される額(ただし、被保険者期間が300月に満たない
場合には300月として計算、は障害厚生年金と同じですね)に3/4を掛けた額、か
2. もし老齢厚生年金の受給権を有する65歳以上の配偶者が遺族厚生年金の受給権を取得した
とき、上記の1.の額か次の二つの額の合計額のいずれか多い額
• 上記の1の額 x 2/3
• 受給している老齢厚生年金の年金額 x ½
ただし、遺族厚生年金と同じ事由による遺族基礎年金の支給を受けるときには1.のみ。
また、老齢厚生年金を受給している場合、遺族厚生年金のうち老齢厚生年金(加給年金額以外の部
分)に相当する部分の支給が停止されるので、結果的には老齢厚生年金か、遺族厚生年金のどちら
か多い額が上限で支給される、という計算になります。
ってことは
極論を言うと、例えば、国民年金に入っていて25年間しっかり払ったけど(っ
てことは45歳として)
独身だけど、両親は健在です
結婚して子供もいるけど(やんちゃなど、諸般の人生のお陰で)子供が全員無事に健
やかに高校卒業しちゃったり、障害はあるけど成人しちゃってる
と言う状態で死亡しても、遺族の誰も遺族基礎年金を受給できなかったり
さらに、厚生年金も25年しっかり払ったけど
やっぱり、独身だし、弟とか妹とかいるけど、とか
妻に先立たれたけどまだ50歳で、子供も既に成人しました
と言う場合も遺族の誰も受給できない、ことになります。
何か払い損、な気分になりそうですね。
そう言う場合の最後のチャンス
厚生年金は、それでも色々と遺族の範囲が広いのでそこに当てはまらないときは諦めざ
るを得ません。
でも国民年金については死亡一時金、という制度があります。
条件は:
死亡した者については、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの第1号
被保険者としての被保険者期間に係る
保険料納付済期間の月数、
保険料4分の1免除期間の月数の3/4に相当する月数、
保険料半額免除期間の月数の1/2に相当する月数、
保険料4分の3免除期間の月数の1/4に相当する月数
の合計額が36月以上あること。要は保険料として(額はさておき)36ヶ月分は払ってね、と
言うことですね。また、老齢基礎年金、もしくは障害基礎年金の支給を受けたことがない
こと、ですので、丸々支払った保険料が手付かずであること、ですね。
まぁ、これはまだわかりやすい前提です。
最後のチャンスはややこしい
死亡一時金の遺族側の条件は、遺族基礎年金を受け取ることがで
きる者がある場合はこの一時金は支給されません。と言う回りくどい
言い方をしています。まぁ、ダブりの給付がない、と言う意味ですね。
また、遺族基礎年金の支給が停止されている場合、と言うのがある
のですが、これがまぁ、わかりづらい。
死亡した者の子が遺族基礎年金の給付権を取得した場合で、死亡した者の配偶者が遺族基礎年金の受給権を取得した場合を「除いた」時、と言う通常思いつくケース
ではないちょっと不思議なシチュエーションの時、その子に生計を同じくする父もしくは母がいることで支給が停止されているとき、ってもう、親が死んでいるのに配偶者
以外の親と同居している、ってどう言うこと?(親が離婚して残された子に対して、再婚したけど子供がいないのもあって生活費を送ってくれていた方の親が亡くなった、
と言うケースなのですが)と言うとき、死亡した時の配偶者であって、その者の死亡の当時そのものと生計を同じくしていた者(前述の場合の、再婚相手である自分の子
のいない配偶者)に、払う、とされています。
絵で描くとこんな感じで、なんだか納得がいかない。。。
前妻 夫
(死亡)
後妻
子
生計同一 生計維持
死亡一時金
はこちらに
年金支給停止
(!)
まぁ、いずれにせよ
そういうシチュエーションの中、遺族でも死亡したものの配
偶者、子、父母、孫、祖父母または兄弟姉妹で、死亡時点
でそのものと生計を同じくしていたもの、に限定されていま
す。(やっとここで兄弟姉妹のチャンスが出てきますが生
計同一ですからねぇ。。。)
なお、死亡一時金はそんなに多くないです。先ほど
カウントして36月以上、を確認した月数ベースで
420ヶ月(と言うことは35年!)以上であっても32万円
36ヶ月だと12万円、となっております。
ところで、男女平等って世界なのに
実は、ご主人を亡くされたご婦人に対してはもう一つ
救済制度があります。
国民年金には寡婦年金が、厚生年金には中高齢の
寡婦加算(と昭和31年4月1日以前に生まれたならば
経過的寡婦加算)が、それぞれあります。
名前が似ているしまどろっこしいですよね。
ちょっと整理すると
国民年金の寡婦年金は
• 死亡した夫は死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保
険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上あること(ってことは、老齢基
礎年金の受給資格があることと一緒ね)、障害基礎年金の受給権者になったことがないこと、老
齢基礎年金の支給を受けたことがなこと(ということは払い込んだ年金に手をつけたことがない
こと、ですね)
• 妻の方も、夫の死亡当時、夫によって生計を維持していて、(事実上を含む)婚姻関係が10年
以上継続していたこと、65歳未満で繰上げ支給の老齢基礎年金の受給者でないこと(ということ
で、妻も払い込んだ年金に手をつけてないこと、ですね)
が満たしたら、妻が60歳以上なら夫の死亡日に属する月から、60歳未満なら60歳に達した日に属す
る月から、
死亡した日の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間について計算した夫の老齢基礎年金
額に3/4を掛けた額
が、支払われます。が、労働基準法に基づく遺族補償が行われるべきものだと、死亡日から6年間支
給停止されます。また、死亡してもそれが遺族に引き継がれませんし、再婚したり(相続の都合で)他
所の家の養子になったり、(繰り下げなければ)老齢基礎年金の受給が開始される65歳になるまで、
繰上げたら、その日以降失権しちゃいます。
もう一方の可能性も見るなら
厚生年金の中高齢の寡婦加算は、といえば
• 遺族厚生年金の受給者の妻(老齢厚生年金受給者の場合被保険者期間が240月以上あること)であって次の
条件のどちらかに該当するものが65歳未満であるとき
• 遺族厚生年金の受給権を得たのが40歳以上、65歳未満であった、もしくは
• 40歳に達した当時、遺族基礎年金を受け取ることが出来る遺族の範囲に属する子と生計を同じくしていた
• 中高齢寡婦加算として「遺族基礎年金の額(ただし、子の加算額を含まないので 780,900円)に3/4を掛けた
額」を加算する。
• ただし遺族基礎年金の支給を受けられる場合には(同額である)この中高齢寡婦加算の支給は停止されます。
経過的寡婦加算の場合、
• 遺族厚生年金の受給者の妻(老齢厚生年金受給者の場合被保険者期間が240月以上あること)であって昭和
31年4月1日以前に生まれていて、次の条件のどちらかに該当するとき
• 遺族厚生年金の受給権を得た当時65歳以上であった、もしくは
• 上述の中高齢寡婦加算がされた遺族厚生年金の受給者が65歳に達したとき
• 中高齢寡婦加算と満額の老齢基礎年金との差額(ざっくり780,900円x ¼)に生年月日に応じて定める数を掛け
た額を加算します。
• ただし、当該被保険者また被保険者であったものの死亡につい遺族基礎年金の支給を受ける場合や、障害
基礎年金や旧国民年金法による障害年金の受給権があるときにはこの加算は停止されます。
チャンスが微妙にありそうですが
国民年金の寡婦年金は、前述の死亡一時金と寡婦年金の両方の受
給権があったらどちらかを選ぶことになります。ということは、どういう
ケースかといえば、10年以上自営業をしつつ10年以上婚姻関係に
あったけど子のいない配偶者、というシチュエーションですが、ざっく
り、一括で12万円もらうか、年金の形で最低でも780,900 x 120/480 x
¾ = 146,460円を毎年もらうか、と言ったら。。。ねぇ。。。
厚生年金の寡婦加算は、40歳以上65歳未満の時に遺族厚生年金
の受給権を得るか、40歳未満で遺族厚生年金の受給権を得て、40
歳の時に遺族基礎年金の受給対象となるような遺族の範囲に属す
る子と生計を一緒にしないともらえませんが、後者だとその状態だと
普通に考えると遺族基礎年金も受給しているはずなので加算停止条
件に当たるので、前者で子のいない状態じゃないともらえないように
読めてしまいます。案外条件が厳しいようです。
しかも、色々と停止条件があり
遺族基礎年金は、労働基準法に基づく遺族補償が行われる場合だと死亡日から6年間支
給停止になるそうです。
また、配偶者が死亡したり再婚したり他所に養子に行ったり、行方不明が1年以上続いた
り、生計を同じくする子が全員18歳以上、もしくは障害があっても20歳以上になったら失
権します。
遺族厚生年金も、労働基準法に基づく遺族補償が行われる場合だと死亡日から6年間支
給停止になるそうです。また、
また、受給権者が死亡したり再婚したり他所に養子に行ったり、行方不明が1年以上続い
たりしたら失権します。
また、夫や父母、祖父母に対しては、60歳に達するまでは支給停止です。子の場合は、
配偶者(その子の父もしくは母、ですね)に支給されているときは支給停止になります。で
も、例えば、子の前に受給権を得た夫というかその子の父親が支給停止が解除される60
歳になるまでは子に支払われます。
あと、平成19年から、遺族である妻の場合、受給権を得たのが30歳未満の場合、遺族厚
生年金は5年間の有期年金だそうです。30歳を越えれば無期なのに。。。
まとめ
こう見ていくと、公的だから、私的な年金のように
「途中で払うのが辛いからやーめた」
は絶対に出来ませんし、何かの際の保障というのがいうほどではな
いのが分かりました。それを補うのが私企業の出す生命保険や傷害
保険、などなど、ということになるのですが、なかなかそういう理解を
して、保険屋さんと話なんてしませんよね。。。
と言って、全部に満足がいくほどの保障のあるってのも、そのライフ
ステージによって必要となる保障も変わるのでなかなか調整するの
も面倒だしコストもかかるものです。なので、色々とあるものを理解し
ながら出来ることで将来に備える必要が出てくる、というわけです。
Slowsteps Inc.
your ambitions, through power of finance

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