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私の年金って
どうなってるの?
その質問、 slowsteps がお答えします
よく、iDeCoとかDCとか聞くけど
日本の年金制度、最近でこそあれこれ聞くよう
になったけど、そもそもどういう仕掛けで、いくら
払ってていくら貰える、とか、知ってます?
ある程度の計算はざっと出来ますので
改めて計算してみましょうか。
話を始める前に、ちょっとお断り
今回の話は、思いっきり日本国内の年金に絡む話をします。
ということは。。。
一般論を話すのは Affiliate Financial Plannerや社労士の見習いとしてはい
いけれども、個別案件に関する検討・助言・書類作成などをすると社労士法
とかに抵触する
という、(私にとっていつもの)ちょっとやっかいな話が待っていますので、いつものことながらご自分
のお財布に関するお話に対しては
自己責任、もしくは適切な社労士さんもしくはFPと相談の上で
ということで。
というか、私、FPですからそういうのがお仕事なんです。
みなさん、忘れないでね。
まず年金の制度について
ガッツリ説明すると、ちゃんとした話の部分だけでも十
分話が長くなるのでざっくりまとめると
日本には国民年金法と厚生年金法の二つの年金に関
する法律があって、それに基づいて、少なくともどちら
かの年金制度に強制参加させられるています。
そのおかげで、20歳になった月から少なくとも60歳に
なるまでは年金の保険料を何かしらの形で払わされて
います。
で、短くまとめたから余談だけど
ちなみに、冒頭に書いたiDeCoとかDCとかは、国民年金や厚
生年金に自主的に上乗せする年金制度のこと。
このスライドが終わると、多分何かしらやらないと
老後がまずい
と思ってくれたら、このスライドは成功だった、ということで。。。
で、どういう構成になっているか?
端的に言えば、
日本の居住者は20歳になったら国民年金に必ず加入するが、
企業等に働くと国民年金の第2号加入者として厚生年金に加入し、
厚生年金に加入する配偶者は第3号加入者として国民年金に加入します。
図で書くとざっくりこんな感じ(高さで金額を表していません。手抜きでごめんなさい)。
第1号加入者 第2号加入者 第3号加入者
厚生年金
国民年金
で、最近のiDeCoとか入れると
こんな感じになる(金額を厚みにする、とかせず
に超単純だけど)
第1号加入者 第2号加入者 第3号加入者
厚生年金
国民年金
付加年金
国民年金基金
iDeCo iDeCo DC 厚生年
金基金 iDeCo
こう見ちゃうと、余談ですが
確かに、離婚したら、厚生年金の半分を年金によこせって言い
たくなりますよね>第3号加入者になるためには第2号加入者
の収入の少ない配偶者
第1号加入者 第2号加入者 第3号加入者
厚生年金
国民年金
付加年金
国民年金基金
iDeCo iDeCo DC 厚生年
金基金 iDeCo
ここが空っぽ
本題はそこではなく。。。
いくら年金に払って、いくら返ってくるか、が今回の本題。
そもそも、いくら払っている、とか、いくらが年間
払われるとか、知ってますか?
それを知った上でiDeCoとかいくら積み立てなきゃいけない
か、って考えるべき、であって、
年末調整でいくら税金が返ってくるから、で考えるべきじゃない
んですよ!
>銀行のiDeCOマーケティングの方向性が悪いのですが
まず、いくら保険料を払っているか?
今、この瞬間(2021年)で言うならば、
自営業などの第1号加入者は月額で 16,610円です。
平成16年以降令和元年までスライド式に月額で 17,000円まで値上げすること
が予定通りされていました。が、実際には前年との物価上昇率や賃金上昇率を
勘案した額とすることから、ターゲットの17,000円よりちょっとお安くなっています。
企業にお勤めな第2号加入者は標準報酬の9.15%です。
こちらも平成16年以降平成29年9月までこの料率が徐々に増えて今の9.15%と
なりました。ちなみに、標準報酬というのは 月額93,000円未満の月額88,000円
から、月額635,000円以上の650,000円まで32等級に分けて、その金額で保険
料を計算するための金額、というのが決まっています。
ということは、国民年金の場合
20歳から60歳までの 40年 = 480ヶ月、ずっと自営業だった場合
(便宜上、今加入して、その後の物価上昇率とかを全部すっ飛ばして計算する
と)
17,000円/月 x 480ヶ月 = 8,160,000円
年金保険料として払うことになります。
それに対して、年金の支払いは
前ページの 40年間ちゃんと毎月 17,000円を払い続けた彼、もしくは彼女が
65才になったところでもらえる年金額は(これまた、議論を簡単にするため、
物価上昇率とか、後で議論する、70歳まで年金の受給を遅らせたり、もしく
は60歳でもらうと前倒すとか、相方に先立たれた遺族年金が出るの出ない
の、とか全部すっ飛ばすと)
毎年、780,900円が年金として支払われます。
(実際には、年6回、2/4/6/8/10/12月にこれを6で割った 130,150円が支払わ
れます。月額にすると、65,075円ですね。でも、これに雑所得としての所得税
が掛かります。)
ということは、何年貰えばお得?
単純に考えると、この超低金利で年金保険料で納めた額が全く増えなかった、という簡
単な計算でいいならば(GPIFさんが運用で頑張ってるのにごめんなさい)
8,160,000 / 780,900 = 10.44948
なので、10年5か月を越えれば納めた保険料を単純に回収した、ように思えるのですが、
実は、年金保険料と同額だけ、国庫から年金の基金に拠出されているので、実は、あな
たの年金保険料は 8,160,000 x 2 = 16,320,000円分の権利を持っているので回収期間を
考えると
8,160,000 x 2 / 780,900 = 20.89896
となって、20年10か月を超える必要があります。支払いが2ヶ月ごとですので、ざっくり 86
歳になった時の年金の払い込みで(税込ベースで)やっと回収できることになります。
それでどういう生活ができるかどうかは別として、ですが。
では、厚生年金の場合は?
厚生年金の場合、これも今から加入するケースで簡単に話をします。まず、納める総額ですが20歳
から60歳までの480ヶ月ずっと厚生年金に加入していた場合
報酬月額 x 9.15%
ですので、総額として
報酬月額の総額 x 9.15%
になります。
ざっくりと、もし、20歳から60歳まで月給40万円(話をまた簡単にするためにボーナスなしで年収480
万円、と、令和元年度の民間給与実態調査にある平均年収の436万円に近いところ)だったら、単純
に
40万 x 12 ヶ月 x 40年 x 9.15% = 19,200万 x 9.15% = 1,756.8万円
と、生涯年収が大体2億っていう数字にも近いところで結構現実味があります(よね?)。
でも、実際は月収40万円だと、報酬月額では41万円で計算するので月37,515円、年額で450,180円、
40年だと18,007,200円です。
では、厚生年金の年金は?
これも今から加入するケースで簡単に話をします。まず、年金
額ですが20歳から60歳までの480ヶ月ずっと厚生年金に加入し
ていた場合
払い込んだ報酬月額の総額 x 5.481 / 1000
が月額で支払われます。先ほどの平均的な人の場合、
18,007,200 x 5.481 / 1000 = 98,697円
ですので、年額で1,184,364円になります。
ということは、何年貰えばお得?
先ほどと同じ条件で、年金保険料で納めた額が全く増えなかった、という簡単な計算でいいならば
18,007,200 / 1,184,364 = 15.2041
なので、15年3か月を越えれば納めた保険料を単純に回収した、ように思えるのですが、実は、厚生年金も
年金保険料と同額だけ、あなたの勤めていた会社から年金保険料が拠出されているので、実は、あなたの
年金保険料は 18,007,200 x 2 = 36,014,400円分の権利を持っています。それを踏まえ回収期間を考えると
18,007,200 x 2 / 1,184,364 = 30.4082
となって、30年5か月を超える必要があります。それでも十分っぽいですが、これだと、国民年金は国庫から
半分出してもらっているのにずるい、ってなりそうですよね。ですので、支払われる年金のうち、国民年金と
同じ部分を基礎年金部分、と呼んで(残りは報酬比例部分、と呼びます)、そのための拠出部分に対して同
じ程度国庫から半分出すということで、
(18,007,200 x 2 + 8,160,000) / 1,184,364 = 37.30
支払いが2ヶ月ごとですので、ざっくり 65歳からもらい始めても102歳になって2回目の支払いになった時の
年金の払い込みで(税込ベースで)やっと回収できることになります。多分、想像よりちょっと長い期間が回
収にかかる、って思いますよね?
さて、簡単じゃない話でも
なんで、年金の支払いって 5.481/1000って中途半端な数字なのでしょう。
もともと、7.5/1000だったところに、将来の年金受給者のために、と5%削減を平成12 年の
法改正で導入したことで、7.125/1000となり、
それまで保険料計算に使われていた報酬給与というのが月給にだけ適用されていてボー
ナスには年金保険料が掛かっていなかったのが、それならボーナスたっぷり月給は薄給
にして保険料負担を減らしちゃえ、ということになると不公平になるので、と平成15年4月
からボーナスにも年金保険料がかかるようになったのです。
そこで、その際に、それまでの人たちの基準が月給だけだったことと、通常のボーナスが
年収の3割だという判断から、この掛け目も1.3で割ることとなり
7.125/1.3 = 5.4807で、5.481になった
というわけ。おかげで期間によって使う掛け目が変わるのです。
また、このせいで、平成15年3月以前の加入者のための標準報酬額の総計を計算する時
には、平成15年3月までの「月給だけで計算した」標準報酬の 7.125/1000と、平成15年4月
以降の「月給とボーナスで計算した」標準報酬の 5.481/1000を足す、という、ややこしい計
算が必要になるのです(だから話を簡単にしたいのですよ)。
さらに言うならば
厚生年金の例で月収40万円を例に出しましたが、今の標準報酬月額の
最高金額は 63.5万円以上が対象となる「65万円」で、保険料は月額
59,475円。ということは、それ以上いくら稼いでも保険料(言い換えると、
先ほど見たように、将来の年金へのプールに積める金額)は 59,475円
のまま。
また、ボーナスに対しても、1ヶ月あたり150万円の上限というルールが
ありますので、一般的にボーナスを一回あたりそれ以上もらっても、
150万円 x 9.15% = 137,250円
しか年金へのプールに「積めない」ことになります。
そのため、高額所得者になればなるほど、年金受給時に貰える額が少
なく感じる、なんて言われるのですが、これがその理由です。
ところで、受給額を変える技ですが
年金は65歳から受給できますが、これを(金額が減ってもいいから)60
歳から前倒しでもらったり、(一回の金額を増やしたいから、もしくはバリ
ばり働いているからまだ受け取らない、と)70歳(今回の法改正で75歳ま
で延びたんでした。。。)まで繰り延べる、ということが出来ます。
前倒しして年金生活を早くする
前に倒すには1ヶ月ごとに5/1000ほど割り引かれます。
ということは最大 5 x 12 = 60ヶ月ですので 60 x 5 / 1000 = 30%割り引か
れます。国民年金ですと 780,900 x 0.7 = 546,630円が年金額になります
ので、回収期間が 8,160,000 x 2 / 546,630 = 29.86 年になります。ちょう
ど90歳になると回収完了ですね。
年取ってからもらうから増やして!
逆に後ろに倒すと、1ヶ月ごとに6/1000ほど割増になります。
70歳でもらうと 42%の割増ですので、国民年金なら 780,900 x 1.42 =
1,108,878円が年金になります。そうしたら回収期間は 8,160,000 x 2 /
1,108,878 = 14.71年ですから、85歳になる前に回収完了ですから、結果
的に一年前倒しになります。
ちなみに厚生年金についても
厚生年金も国民年金と同率での割引での前倒し、同率での割増での繰
延があります。
ですが、計算対象となる年金額が単純にいかないので、ここでは割愛し
ますが、まぁ、インパクトはそれなりにありますよ。長生きする、という前
提で頑張れば最大42%増額ですからねぇ。
注意 – 数字に騙されるなよ
年金の原資は、国民年金の場合「固定額 x ファクター」のような計
算ばかりなのである意味誰にとっても同じ結果、になりますが、厚
生年金の場合「変動額 x ファクター」 +「固定額」、となるため、前
提条件(年収ね)が変わると年金の原資(ということは回収期間
も)とか色々と変わります。
今回はたまたま平均年収、平均生涯年収なレベルのケースを使
いましたが、当然あなたの生活と違う結果になっています。
また、実際には40年間ずっと国民年金はあり得るものの、四十年
間ずっと厚生年金、ということは高卒で同じ会社にずっといない限
りそうそうないので、実際の人生は今回見た数値の間のどこかに
落ちる、くらいに今回の資料を見てもらえれば、と思います。
まとめ
とはいえ、これくらいの年金になる、というイメージが持てた
ら、もらえる年金がその時の生活に対して足りると思うか足
りないと思うかはあなた次第。
足りないと思ったあなた。どうしたらいいか、将来のプランを
一緒に考えてみませんか?
なんて、FPらしいことを言ってみますが本当に将来への準備
は「時間をかけて」、そして「時間を味方につけて」やらない
と大変ですからね。
Slowsteps Inc.
your ambitions, through power of finance

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