1. オルタナティブ・メディア
総論①
メディアデザイン論②

2. 普遍性と特殊性
• マスメディアと同様，オルタナティ
ブ・メディアもそれぞれの国の社会
構造・文化の特殊性により，どのメ
ディアを選択するかは特殊性がある

3. 簡潔に
• アメリカ社会は開拓地(コミュニ
ティ)が基盤→公民権運動の結果，
ケーブルテレビ，コミュニティFMな
どコミュニティメディアで市民参加
• ヨーロッパ社会は移民・少数民族な
どが始めた「海賊放送」が起源→文
化と価値の多様性と人権保護

4. 日本の特殊性
• 第二次世界大戦後，自由/民主党，社
会党，共産党が冷戦構造をそのまま持
ち込んだ政治状況に
• 社会党と共産党は激しく対立していく
• その中で，左翼(政治)運動の手段とし
てオルタナティブ・メディアが持ち込
まれた

5. お上のメディア
• NHK・民放など放送メディアは「お
上」から免許・認可を受けるメディ
アであり，電波は神聖なもの
• なので，活字メディア，空間系メ
ディアを，社会運動のために活用す
るデザインを試みてきたのが日本の
オルタナティブ・メディア

6. 1960(昭和35)年6月17日
• 日本のマスメディア(とくに新聞・放
送)が，政府(国家権力)と共闘し，市
民の「声なき声」(異論/少数意見)の
代弁者ではないことを露呈した日
• ときには市民と利害が敵対することも
ありうる，否定的な意味での「第四の
権力」であることを露呈した
• 大東亞戦争推進の「戦争責任」から出
発したマスメディアが，再び国家権力
に屈服した

7. 樺美智子さんの死
• 6月15日。日米安保条約
改定に反対の市民約17万
人が国会を包囲し，警官
隊と対峙する
• その乱闘の中で，東京
大学学生，樺美智子さん
が死亡する

9. 全日本学生自治会総連合
• 1948年に145大学の学生自治会が集
まり結成された日本の学生自治会の
連合組織。略称が全学連
• 当初は日本共産党の影響下にあった
が，1955年の同党の路線変更(極左
冒険主義→微笑主義)以降，戦術・
理論面で分裂し，セクト間抗争も激
化していく

10. ノンポリ
• 国会周辺などでデモ行進した多くは
労働組合，全学連などで組織的に動
員されたラジカルかつ日常的にポリ
ティカルな人たち
• 組織されず，政治にも深い興味を抱
かない人々(ノンポリ)が多数派
• ノンポリ＝無党派層・浮動層。動員
されれば大きなうねりになる

11. 「声なき声」
• 国会を取り囲むデモ隊に
言及して，岸信介総理はこ
う言った
「これが国民のすべてではない。国
民の『声なき声』に私は耳を傾ける。
今日も銀座は人であふれ，後楽園球
場は満員だったそうじゃないか」

12. サイレント・マジョリティ
• アメリカのニクソン大統領は1969年
11月の演説で，「大多数のアメリカ
国民はベトナム戦争にけっして反対
していない」と言及した
• ベトナム反戦運動に対して，富裕
層・中流層・労働者階級まで幅広く
反感が広がっていることを知悉
• 1972年大統領選挙で圧勝した

13. 7社共同宣言
• 1960年6月17日，在京新
聞7社が共同宣言を掲載。
デモという表現を否定し，
議会制民主主義の
原点を守れと主張
日本経済新聞社 毎日新聞社
東京タイムズ社 朝日新聞社
東京新聞社 産業経済新聞社
読売新聞社 （イロハ順）

14. 共同宣言 暴力を排し 議会主義を守れ
六月一五日夜の国会内外における流血事
件は、その事の依ってきたる所以を別とし
て、議会主義を危機に陥れる痛恨事であっ
た。われわれは、日本の将来に対して、今
日ほど、深い憂慮をもつことはない。
民主主義は言論をもって争わるべきもの
である。その理由のいかんを問わず、また
いかなる政治的難局に立とうと、暴力を用
いて事を運ばんとすることは、断じて許さ
るべきではない。一たび暴力を是認するが
如き社会的風潮が一般化すれば、民主主義
は死滅し、日本の国家的存立を危うくする
重大事態になるものと信じる。

15. よって何よりも当面の重大責任を持つ政
府が、早急に全力を傾けて事態収拾の実を
あげるべきことはいうをまたない。政府は
この点で国民の良識に応える決意を表明す
べきである。同時にまた、目下の混乱せる
事態の一半の原因が国会機能の停止にもあ
ることに思いを致し、社会、民主の両党に
おいても、この際、これまでの争点を暫く
投げ捨て、率先して国会に帰り、その正常
化による事態の収拾に協力することは、国
民の望むところと信ずる。ここにわれわれ
は、政府与党と野党が、国民の熱望に応え、
議会主義を守るという一点に一致し、今日
国民が抱く常ならざる憂慮を除き去ること
を心から訴えるものである。

16. 新聞社の煽動/議会の機能停止
• 政権与党は国会で審議を打ち切って強
行採決した(議会の機能停止)
• 労働組合・学生運動などで組織的動員
で「実力行使」で事態打開を試みた
• 新聞各紙は論調の差はあるが，政権の
対応を痛烈に批判し「実力行使」も容
認。60年時点では「暴力」で応対した
のは，明らかに警官隊の側では?

17. 7社共同宣言の意味
• マイノリティ(少数派)とマジョリティ
(多数派)
• サイレントかノイジーかはある種の結果論
• 国家権力と市民運動体
• マスメディアはどちらの“味方”か?
• 議会制民主主義のマジョリティ(多数
派＝民意)は“絶対善”なのか?

18. マスコミとミニコミ
• 市民運動体などがマスコミとの付き
合い方を変える
• 一つは運動体が「メディア」を作る。
マスコミに対するミニコミ
• もう一つはマスコミに対し，少数派
による言論機会の提供を訴えるパブ
リック・アクセス運動の提唱

19. 意識産業
• マスメディアは「現存す
る支配体制をセメントで塗
り固める課題」を委託され，
支配の戦術的考慮の下で意識を生産
し，管理し，均質化し，統合する機
能を持つ「意識産業」
ドイツの詩人，エンツェンスベルガーの
著書(原典:1962年刊行)

20. ベンヤミン
• 「ブルジョワジー的な生産
装置と公報装置は，きわめて
大量の革命的テーマに対応し，
それどころか宣伝さえもしな
がら，それ自身の存在やそれ
を所有する階級を危険にさら
さないですますことができる」

21. 虚偽意識(イデオロギー)
• 客観的に外在するイデオロギーが，
教育・メディアなどを通して個人の
意識に投影されたものを個人的イデ
オロギー
• 現状を粉飾・隠蔽するための理念
(カール・マンハイム)
• 工業化，近代化，高度成長，ナショ
ナリズムなどもイデオロギー

22. オルタナティブ・メディア
• オルタナティブ＝もう一つの，(支
配的なものとは)別の，対抗的な
• オルタナティブな価値意識を伝えて
いくためには，オルタナティブなメ
ディアを作っていく