情報職業論 第3回

1. 情報職業論③
コンピューティングの進化
赤尾晃一

2. 科目適合性(職歴/業績)
• 電気(情報)通信総合研究所研究員(1983.3～
1985.3)
• 日経BP社 エレクトロニクス(電子)系記者・副
編集長
「日経コミュニケーション」「日経エンタテ
インメント」「日経ニューメディア」(1985.4
～1993.3)

3. AT&Tのタイムワーナー買収
• ワーナー・ブラザーズ，CNN，HBOなどを
854億ドル(約8兆9000億円)で買収
• (固定/携帯)通信事業とコンテンツ事業の総合力
• AT&TはIBMと並び，米司法省が“独占禁止法”
により，企業買収・他分野進出を規制してきた
• 新規参入(競争的事業)者を育成するための「非
対称規制」

4. AT&T
• 1970-80年代はコンピュータ事業への参入が規
制(91年にNCRを買収して参入)
• ただ，米最大の民間技術研究所(ベル研究所)では
コンピュータ関連技術の研究開発を継続
• 1968年にベル研が開発したOSがUNIX。C言語
で記述され，ソースコードがコンパクトなので移
植性が高くて無償で公開されたため，ワークス
テーションなどで用いられるようになった

5. アンバンドリング化
• IBMは独占禁止法の適用により，ハードとソ
フト(OS/アプリ)の分離販売(アンバンドリン
グ化)を余儀なくされた
• コンピュータの付随物だったソフトが“商品”
となったため，プログラムをオーダーメイド
で受注する情報サービス業が勃興した

6. 時期 経営におけるITの位置付け 構成
60年代前半 EDPS:データ処理 大量データの定期的・定型的処
理による省力化
汎用機/オフライン
60年代後半 MIS:経営情報システム 情報処理結果の経営管理者への
報告による管理・統制への利用
汎用機(事業所間ネット
ワーク)
70年代中頃 DSS:意志決定支援シ
ステム
検索データの多角的活用。非定
例・非定型的なデータへの模索
汎用機/TSSによる
EUC
80年代前半 OA:オフィスオート
メーション
パソコン利用によるオフィス業
務の生産性向上
企業間ネットワーク
(VAN)
80年代中頃 SIS:戦略情報システム 競争優位確立のための武器。企
業間でのデータ交換
オープン系システム
90年代前半 BPR:ビジネスプロセ
スリエンジニアリング
業務改革のインフラ。業務・組
織の抜本的改革
ダウンサイジング
90年代後半
以降
SCM:サプライチェー
ンマネジメント
顧客ニーズの把握・納期短縮・
在庫削減などを通じた顧客満足
の向上
インターネット

7. 理想と現実の狭間，の歴史
• MIS:経営情報の吸い上げによる組織のフラッ
ト化⇒経営学でMISが提唱されても，70年ご
ろのコンピュータでは実現できなかった
• DSS:営業・管理など意志決定者自らが端末か
ら検索し(EUC)，独自に加工されたデータを
取り出す情報検索⇒現実には90年代に“デー
タウェアハウス”が登場して使い物になった
EUC:End User Computing

8. データウェアハウスの定義
①サブジェクト(主題)指向⇒利用目的別には整
理ない
②あらゆるデータベースを論理的に統合する
③消さない・更新しない
④時系列を持つ

9. ②クライアント-サーバ時代
• 80年代以降，ミニコン，WS，PCが登場し，
汎用機システムからクライアント-サーバ型シ
ステムが中心に
• 集中から分散へ
• クライアント側
でも一定の処理が
できる

10. 戦略情報システム(SIS)
• Strategic Information System
• 情報システムをバックヤード(後処理)にとどめ
ず，経営に役立て，他者との競争優位を確保
するために用いるという考え方
• アメリカン航空の座席予約システム(SABRE)，
ヤマト運輸のNEKOシステム(荷物問い合わ
せ)，セブン-イレブン・ジャパンのPOSシス
テムなど

11. クライアントの管理
• 逆に，クライアント側で分散して実施された
処理やデータをどのように集約・管理するの
かという課題が発生した
• それがさまざまなコンピュータ資源をネット
で結びつけて相互接続し，一つのコンピュー
タとして運用するというクラウドコンピュー
ティングの発想につながる

12. ダウンサイジング，オープン化
• サーバとしてUNIX系コンピュータ，クライア
ントとしてIBM PC AT(OSはWindowsへと
移行)やMacintoshを使用する
• 処理の「集中」から「分散」へ。クライアン
トからサーバ側にデータを要求し，得られた
データを元にクライアント側でも処理を実行

13. ベンダーロックイン
• オープンシステムでも，既に完成しているプ
ログラムの内部仕様を開発元以外の第三者が
完全に解析することは不可能に近い
• このため，オープン化で，第三者が途中から
参加(あるいは交替)が期待されたが，現実には
不可能なことがほとんどで，昔から出入りし
てシステム構築に携わっていた企業の既得権
益は守られやすい

14. 汎用機の強さ(再評価)
• 企業・官公庁などの基幹業務システム，金融機
関の勘定系システム，航空路管制システム，コ
ンビニなどオンライン業務のDBサーバなどは
C/Sの要素を取り込みつつも，メインフレーム
によりシステムを構築している
• 官公需を寡占する「ITゼネコン」と呼ぶSIerに
とって，汎用機は力の源泉でもある

15. システムインテグレータ(SIer)
• メーカー系SIerが1960年代からの歴史を持つ
• NTT，日立，NEC，富士通，日本IBM，日本
HP，日本ユニシス，オラクルなど
• インフラ構築，機器設置，運用，メインテナン
スまで一括受注し，プログラミングやテスト作
業などを中小SIerに丸投げする
日立・NEC・富士通は旧電電ファミリー企業の中核である

16. クライアントの歴史