メディアとコンテンツ 第7回 キャンディーズとピンク・レディー

2. オールラウンダー
• キャンディーズは，現役中にドラマ・映
画に出演しなかったものの(多忙すぎて?)，
『8時だョ! 全員集合』『みごろ! たべご
ろ! 笑いごろ!!』の2番組にレギュラー出演
し，コントやミニドラマも演じていた
• テレビ番組やコンサートでも洋楽ポップ
スのカヴァーを手掛けるなど，オールラ
ウンドのエンタテナーとしての完成度も
高かった

3. みごろ! たべごろ! 笑いごろ!!
『みごろ! たべごろ! 笑いごろ!!』(NET，
月曜20:00-，76/10/-78)は『紅白歌のベ
ストテン』の裏番組。渡辺プロダクション/
ザ・ワークス制作
伊東四朗の『電線音頭』などでブレイク
キャンディーズはレギュラー出演者とし
て，スタジオ・コントに絡むほか，番組内
ドラマ『美しき伝説～三人の出発～』に主
演した

8. アイドルと子ども市場
• 天地真理(72-73)⇒アグネス・チャン
(73-74)⇒山口百恵(74-75)⇒ピンク
レディー(76-78)と子ども市場により
支えられるアイドルが相次いだ
• 高校生以上の男子に支えられたキャ
ンディーズとは好対照
• 80年代に入ると，アイドルは子ども
市場から除外されてしまう

9. メディアとコンテンツ⑦
70年代のグループアイドル♡
キャンディーズ/ピンク･レディー
リンリン・ランラン
詞:さいとう大三 曲:筒美京
平 74.4.15 60年生れの双
子。アメリカと中国のハー
フfrom香港。サンＭ

10. アイドルと巫女
現世と常世の媒介者
歌舞音曲で神をもてなす“神職補佐”
元来“処女性”は要求されなかったが，
武士階級の倫理(儒教)
・キリスト教的貞操観念によ
り，未婚者・処女が前提に
現代アイドルとは巫女の
変形との見方もできる

11. 巫女の舞
笠
間
稲
荷
神
社
(
茨
城
県
笠
間
市
)
の
巫
女
た
ち
に
よ
る
「
悠
久
の
舞
」
約
八
分
間
。
舞
台
正
面
に
は
本
殿
が
あ
る

12. 『恋は神代の昔から』
昭和37(1962)年に23歳でデビュー
した畠山みどりは，曲にちなんで巫
女姿(扇に袴)の“コスプレ”を舞台衣
裳としてスターダムを登った。
これを誰も“不謹慎だ”と言わなかっ
たところに，日本の“歌謡”の世界と
“神道“の世界の共通
性がある

14. アイドルの役割
• 神霊が依り憑く(よりつく)
対象物＝依り代・憑代
• 巫(かんなぎ)＝霊の依る人
• そのまま放置すると暴走しかねない衆生の
欲望や妄想の受け皿となり，神霊に委ねて
昇華させて，衆生の精神を浄化する
• パワーが必要なだけに，依り代としての能
力を発揮できる期間は短いのではないか
門松は歳神を家に迎え
入れるための依り代

15. コメント課題
• キャンディーズとピンク・レディー
の映像を見て講義を聴き，大福帳に
感想(コメント)を記しなさい。敢え
て言えばどちらのグループが，そし
て誰の推しか，どの曲が良かったか，
こんなアイドルに熱狂した1970年代
の人々をどう思うのかなど自由に書
いてかまわない。

16. キャンディーズ1670日
73/9/1 レコード・デ
ビュー(あなたに夢中)
追っかけは当時の高
校・大学生の義務^^;
78/4/4 解散コンサー
ト(後楽園球場)
73/4～76/3 赤尾は高校生

17. 三人揃ってキャンディーズです!
伊藤蘭＝ラン(55/1/13)
藤村美樹＝ミキ(56/1/15)
田中好子＝スー(56/4/8)
幼少時からレッスンを重ね，
芸能界での活躍を夢みた三人
渡辺プロダクションが，ザ・ピーナッ
ツ(75年引退)の後継と目した?

18. あなたに夢中(1st)
詞
:
山
上
路
夫
／
曲
:
森
田
公
一
七
三
・
九
・
一
八
・
一
万
枚
⑮
オ
リ
コ
ン
最
高
位
:
３
６
位
『
８
時
だ
ョ
！
全
員
集
合
』
で
レ
ギ
ュ
ラ
ー
。
麻
丘
め
ぐ
み
に
ポ
ー
ジ
ン
グ
で
対
抗
。
衣
裳
パ
タ
ー
ン
は
パ
フ
ュ
ー
ム
？
⑮は通例と異なり，キャンディーズ楽曲
17曲中の順位

19. 年下の男の子(5th)
詞
:
千
家
和
也
／
曲
:
穂
口
雄
右
七
五
・
二
・
二
一
二
六
・
〇
万
枚
⑦
オ
リ
コ
ン
最
高
位
:
九
位
初
の
ヒ
ッ
ト
で
紅
白
に
も
出
場

20. ①センターの重要性
• アイドルグループのセンター(扇の要)は
「束ね役」でも「キャプテン」でもなく，
「依り代としてのフロントエンド」であ
ることを知らしめた
• 「芸が上手い人」が座るのではなく，
「最も人気がある人」が座るポジション
• 秋元康はキャンディーズで「センターの
重要性」を悟ったと述懐している

21. ②歌詞世界の大転換
従来のアイドル・ポップに歌われて
きた男性像⇒ 同級生以上で，男らしく
て，頼りがいがある男性(アメリカ的に
いえば“マッチョ”な“ナイスガイ”)
キャンディーズは(戦略的に?)，内気
で弱々しく恥ずかしがり屋で，(しばし
ば嘲笑の対象となる)オタクで年下の男
の子(ナード)を「好き!」と歌った
妹キャラ→姉キャラ

22. 内気なあいつ(6th)
詞
:
千
家
和
也
／
曲
:
穂
口
雄
右
七
五
・
六
・
一
九
・
八
万
枚
⑬
オ
リ
コ
ン
最
高
位
:
１
８
位
※
こ
の
曲
に
ヤ
ラ
れ
て
、
高
三
の
赤
尾
は
つ
い
に
フ
ァ
ン
ク
ラ
ブ
に
入
会
ライブ本数が多かった

23. (参考)
好きよキャプテン
ザ
・
リ
リ
ー
ズ
。
六
〇
年
生
ま
れ
双
子
詞
:
松
本
隆
／
曲
:
森
田
公
一
七
五
・
九
・
二
〇
２
ｎ
ｄ
渡
辺
プ
ロ
。
「
一
つ
上
級
生
～
」

24. 男もすなる「おっかけ」
アイドル→女性やキッズのものと
いう先入観を覆し，10～20代男子
のおっかけ
ハチマキ，ウチワ，
ハッピ，ペンライト，
メガホン，テープ投
げなど様式美の追求

25. 厳しき「掟」＝彼らはヤンキー
握手・声掛け・待ち伏せはご法度など，
ストイックな行動原理(純愛路線?)
かけ声はオリジナルに限る
静かな曲は，歌い始めと終りに盛大な
拍手をし，曲中でのかけ声は厳禁
MCの時に名前を叫ぶのは厳禁
そんな人がいたら積極的に注意すべし
(周りの人が「シーッ」と言う)
“ヲタ芸”なんかもってのほか(^^;)

26. 全キャン連
大学生が各地で自然発生的に独自
ファンクラブを組織(契機はラジオ番
組やライブでの出会いなど)
75年夏に全国の「連
絡組織」:全国キャン
ディーズ連盟。各地で
個別に活動し，代表を
連盟に派遣
「連盟」結成自体は渡辺プロ側の仕掛けとの見方も根強い

27. ファンイベント
当初は公式ファンクラブ
が主体だったが，76年以
降は「全キャン連」主催に
(クラブとの“共催”も)
「全キャン連は“消費(鑑賞)
者”ではなく“生産(創造)
者”である」
会員数は最大で1万5000
フ
ァ
ン
ク
ラ
ブ
主
催
の
バ
ス
ハ
イ
ク
交流の集い(76.10 京都)

28. 芸能誌から男性誌へ
芸能雑誌の
2トップ
(75-76)
七
七
年
以
降
は
、
男
性
誌
の
表
紙
・
グ
ラ
ビ
ア
の
常
連
に
(
通
常
の
ア
イ
ド
ル
を
目
玉
に
す
る
の
は
稀
)

30. 3月 春の曲(うきうき)
『春一番』
6月 夏の曲(わくわく)
『夏が来た!』
9月 秋の曲(ちょっぴりセンチ)
『ハート泥棒』
11月 冬の曲(バラード!!)
『哀愁のシンフォニー』
ローテーション(76年)

31. 春一番(9th)～暑中お見舞い
詞
・
曲
:
穂
口
雄
右
七
六
・
三
・
一
三
六
・
二
万
枚
⑤
オ
リ
コ
ン
最
高
位
:
３
位
赤
尾
に
と
っ
て
、
高
校
生
活
・
大
学
受
験
の
終
焉
と
、
新
た
な
旅
立
ち
を
告
げ
た
曲
。
キ
ャ
ン
デ
ィ
ー
ズ
で
最
も
歌
い
継
が
れ
る
？

32. CM
ＴＤＫ，ハウス食品
森永製菓，三洋電機

33. 解散宣言
77年7月17日，日比谷野音ライブ
で「解散宣言」
TBS中継あり
「普通の女の
子に戻りたいん
です」

34. 蘭ちゃんの思い
伊藤蘭は日本大学芸術学部，田中
好子は東京成徳短期大学に在籍する
「女子大生」でもあった
事務所と協議し，
解散時期は78年
春に最終決定

35. 解散プロジェクトの推進体制
解散イベント
の企画・執行
解散イベント
の実務・啓蒙

36. 解散ライブツアー
「ありがとうカーニバル」
で全国縦断ツアー。仕切り
(会場警備など)は，プロモー
ターと「全キャン連」の共
管となる会場が多かった

37. 全キャン連からの「送辞」
『
ヤ
ン
グ
お
ー
お
ー
!!
』
(
Ｍ
Ｂ
Ｓ
)

38. 『わな』
詞
:
島
武
実
／
曲
:
穂
口
雄
右
七
七
・
十
二
・
五
三
九
・
二
万
枚
②
オ
リ
コ
ン
最
高
位
：
３
位
藤
村
美
樹
が
セ
ン
タ
ー
の
唯
一
の
曲

39. 微笑がえし(last single)
詞
:
阿
木
耀
子
／
曲
:
穂
口
雄
右
七
八
・
二
・
二
五
八
二
・
九
万
枚
①
オ
リ
コ
ン
最
高
位
:
１
位
１
７
作
「キャンディーズに悲願の１位を!」と全キャン連が運動した。
歌詞中には，キャンディーズのヒット曲のフレーズが散りばめられる

40. 「わたしたちはしあわせでした」 公
演
ス
タ
ッ
フ
(
警
備
員
含
む
)
は
二
六
〇
〇
人
、
費
用
一
億
円
，
興
行
収
入
一
億
五
〇
〇
〇
万
円
。
４
月
７
日
放
送
の
録
画
中
継
特
番
(
Ｔ
Ｂ
Ｓ
)
は
３
２
・
３
％

41. キャンディーズの意味
大学生以上のアイドリアンを生んだ
アイドルは「ファンとともに育つ」
という方法論を確立した
アイドルにとって「純真さ」が最も
重要だと改めて教えた(最高の瞬間で
“散る”ことの潔さ)
想い出を封印して“再光臨”しない

42. アイドル戦士のその後
青春期の通過儀礼として卒業し
た人たちが大多数。キャンディー
ズ一筋という“純愛主義者”も多い
しかし，一部のツワモノ(キャンディー
ズと他のアイドルを二股三股)は，他の
アイドルを「育てる」作業を続ける
アイドル・オタクの誕生である。彼ら
の存在が80年代アイドル全盛を支える
政界のキャンディ
ーズ・マニア，石
破茂(1957年生)

43. 後継者/ピンク・レディー
第
一
作
『
ペ
ッ
パ
ー
警
部
』
詞
:
阿
久
悠
／
曲
:
都
倉
俊
一
七
六
・
八
・
二
五
五
一
・
九
万
枚
(
七
七
年
)
オ
リ
コ
ン
最
高
位
:
４
位

44. ↓ピンク･レディー
↑キャンディーズ
キャンディーズとピンク･レディー
には相乗効果があったとみられる。
ピンク･レディー単行となった78
年4月以降約1年でピンク･レ
ディーの勢いは失速する。

45. ピンク･レディー
キャンディーズが「アイドルの王道」だ
とすると，ピンク･レディーは「外縁」
ピンク･レディーは「テーマパークのアト
ラクション」であり，増田恵子・根本美
鶴代という名前や容姿に意味がなかった
ポージングとダンスの中間形態の過激な
振り付けと楽曲は記憶されたとしても，
個人は記憶されない。芸を覚える暇がな
かったこともあり，再結成(現在は5回目)
が常習化

46. 事務所は総会屋で山師
ピンク･レディーの所属事務所「T&C」の
オーナーになった小川薫は総会屋。広島
の被爆者仲間だった社長・専務は金融機
関から「脱サラ」して，芸能界で一攫千
金を狙った山師
芸能ビジネスの
“近代化”を図ってき
た渡辺プロとは対照
的。解散(81年3月)
直後に事務所倒産

47. CM 日清焼そばUFO

48. 76～78年，全曲
詞:阿久悠/
曲:都倉俊一

49. 1978年(4月～)の市場
生年 学年 現在
1955 社2 57
1956 社1 56
1957 大4 55
1958 大3 54
1959 大2 53
1960 大1 52
1961 高3 51
1962 高2 50
1963 高1 49
1964 中3 48
1965 中2 47
1966 中1 46
1967 小6 45
1968 小5 44
1969 小4 43
1970 小3 42
1971 小2 41
1972 小1 40
1973 幼長 39
1974 幼中 38
1975 幼少 37
ピンク・レディーの楽曲は主に1970
年代生まれの幼児・児童市場から火
が付き，60年代後半生まれの世代に
飛び火した(現在は40代)。お小遣
い・年末年始のギフトなど。
ピンク・レディーの歌と振付を「完
コピ」できることは，その世代に
とっては当たり前のこと。
ピンク・レディーは本来20～30代の
アダルト市場をターゲットにしてい
たが，その戦略はみごとにはずれた

50. 『探偵! ナイトスクープ』2001年2月9日放送分。放送時の
「30代女性」はそのまま「40代女性」にシフトしている？

51. ピンク･レディーはアイドルか?
本来はアダルト指向だったが，意に反して天地
真理→山口百恵(初期)に続き，小学生など低年
齢層から強い支持を得て，冠番組，キャラク
ター商品が販売された点はアイドルといえる
若い男性層に「おっかけ」も生まれたが，量か
らするとキャンディーズには及ばず
過去も現在も，振り付け(by土居甫)
をマスターするかどうかが人々の最大
の関心事であり，ピンク･レディーが
「意思をもたない操り人形」は自明の
前提なのか?

52. ピンク・レディーは玩具だった?
スライド映写機
「FORTUNA」
ディズニー
ホームシアター
天井投影型

53. (小括)アイドルの意味
• アイドルは完成品であってはいけない。
–組み立ても塗装も済んだ完動のフィギュ
アはアイドルではない
• アイドルとは組み立てキットである。
–イマジネーション(妄想)と“手仕事”(完成さ
せるための“参加”)が入り込む余地がなく
てはいけない
• アイドルと楽曲(及び振付)は等身大に近
くなくてはいけない
–アイドルはショーだけどショーではない