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ICO/トークンセールの正体
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November, 2017
森・濱田松本法律事務所
パートナー弁護士 増 島 雅 和
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<自己紹介>
増 島 雅 和(ますじま まさかず)
森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士
2001 弁護士登録
2006 米国ウィルソン・ソンシーニ法律事務所(シリコンバレーオフィス)
2007 ニューヨーク州弁護士登録
2010 金融庁監督局銀行第一課(RRP担当)兼保険課
日経CSISバーチャルシンクタンク・フェロー
イニシアチブ: 金融の力で我が国産業構造のイノベーションを加速する“Startup Innovators”主宰
http://startupinnovators.jp/
2013 経済産業省 新事業創出支援関係者会議 委員
2015 IMF外部カウンセル(米国FSAP:金融破綻処理法制担当)
日本クラウドファンディング協会理事、日本ベンチャーキャピタル協会顧問、FINOVATORS代表、日本ブロック
チェーン協会アドバイザー、仮想通貨事業者協会顧問、ブロックチェーン推進協会アドバイザー 等
2016 経済産業省 FinTech研究会 ブロックチェーン研究会 委員
内閣官房IT総合戦略本部 シェアリングエコノミー検討会合 委員
全銀協オープンAPIのあり方に関する検討会 委員
(法定通貨も可)
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 イノベーションサイドから金融規制を解説
 法律ではなくビジネスについて記載したQ&A
ー プラットフォーム型ビジネスモデルとは?
ー エコシステム型ビジネスモデルとは?
ー ディスラプティブイノベーションの構図とは?
ー オープンイノベーションの取り組み方は?
ー FinTechによる地方創生とは?
ー FinTechによる貧困対策とは?
 FinTech、データ、競争政策にわたって政府の動向を網羅
 API、ブロックチェーンなど核となる技術もカバー
 InsurTechもカバー
 海外ビジネスモデルの分析と日本法上の展開可能について検討
日経FinTech選書(税込2,916円)
スマートコントラクトに関する論稿を掲載
日本経済新聞出版社(2,000円+税)
シリコンバレーにおけるCVCの実例50例を
取り上げ、オープンイノベーションに対する
正しいアプローチと考え方、コーポレートベ
ンチャリングの具体的な方法論を披露
ダイヤモンド社(税込2,376円)
<関連書籍>
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1-1 ICOの全体像
ICOは、プロジェクト実現のための資金をブロックチェーン上で発行・管理されるトークンを販売
することで集める資金調達方法
 便宜上「トークン」といっているが、実態はブロックチェーン上の残高の記録にすぎない
 プログラマブルなプロトコルのもとで発行することで、一定のコントラクトとしての性質を持つことがある
 トークンの機能(ファンクショナリティ)に応じて以下のとおり分類される。
 プロジェクトの収益の分配権: エクイティ・トークン
 プロジェクトにより開発されたプロダクトへのアクセス権: ユーティリティ・トークン
 エクイティ・トークンは有価証券(集団投資スキーム)。金商法に従って取り扱われる。
 日本の投資家向けに発行する場合には、第二種金融商品取引業者が関与する必要
• 自らが第二種金融商品取引業の登録を取る
• 第二種金融商品取引業者をアドバイザリーに起用する
 勧誘する先の国ごとの証券業規制を遵守する必要(グローバルオファリングは難しい)
 発行したトークンは仮想通貨取引所で取り扱うことができない
• 流動性を付与するのであれば、金融商品取引所が取り扱うことになる
• 分散型取引所(Decentralized Exchange、DEX)の利用可能性
 ユーティリティ・トークンは、プロダクトのビジネスモデルに応じて以下のいずれかの性質を持つ
 中央集権型ビジネスモデル: 前払式支払手段(電子マネー)
 分散型ビジネスモデル: 仮想通貨または単なるデジタルアセット
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1-2 ICOの全体像
ICOは、プロジェクト実現のための資金をブロックチェーン上で発行・管理されるトークンを販売
することで集める資金調達方法
<中央集権型ビジネスモデル>
 従来型のビジネスモデルのすべて
• サービスに必要なリソースを自ら調達して提供
• サービスの管理者(提供者)が存在し、サービスをコントロールする
例:トヨタ、東芝、○○銀行、△△証券、XX保険、Apple、Amazon、Google、Facebook、Dropbox、Airbnb
 調達者=サービスの管理者なので、サービスにアクセスすることができるトークンは、「発行者や発行者がコントロールできる
者に対してサービス提供を求めることによって消費するもの」になってしまう
• ゲーム開発会社の発行するトークンは、調達資金で開発したゲームを遊ぶことができるトークン
• ストレージサービス会社の発行するトークンは、調達資金で調達したストレージを使うことができるトークン
電子マネー(前払式支払手段)
• 発行額の50%を供託しなければならない
• 発行に際して届出(自家型)又は登録(第三者型)が必要
<分散型ビジネスモデル>
 これまで存在していたサービスを管理者なしで実現するもの
• サービスに必要なリソースはリソースを持っている人が拠出
• サービスはプロトコルによってコントロールされる
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2-1 あらためて仮想通貨の本質を考える
「仮想通貨」とは「通貨と関係する何か」ではなく、分散型サービスに対して使用される支払手段かつリソース提
供者に対する報酬として、従来型サービスにおける電子マネー(前払式支払手段)と同列のもの
(例1)ビットコイン : ペイメントの分散型アプリケーション
 ペイメントとは、ユーザーの残高を追跡・更新する(=管理する)ことができる機能
 紙幣など物理的な形態をとらずにこれを行うため、信頼できる残高管理の主体が必要
 ナカモトサトシ論文の提案する解決方法は以下のとおり
• P2Pネットワークを作り、すべての取引を全員に通知する
• 通知では、ネットワーク上で消費したい資金を特定、これを暗号を用いて署名することでその取引が自ら行ったものであることが分かるように
する
• 二重消費を防止するためのタイムスタンプが必要になる。その方法として①誰かに最初の取引につきタイムスタンプを押させる方法、②タイ
ムスタンパーを競争によって都度決める方法がある
• 競争による解決はマーケットソリューション、そのためには報酬が必要になる。これがビットコイン
• 競争の手段は電気代を食う計算競争とする。コストを掛けさせてリワードすることで、同じコストを割いて悪事を働くインセンティブを下げる。
これによりアダム・スミスの言う「我々が食事をできるのは、肉屋や酒屋やパン屋の主人が博愛心を発揮するからではなく、自分の利益を追
求するからである」と同じ原理を作り出し、ペイメントの仕組みを回す
• 電気代の支払いのためにマイナーはビットコインを売却することになり、これによりビットコインが流通することになる
• ビットコインは、中央管理者を市場競争に置き換えるためのリワードとして機能するとともに、支払ネットワーク上の支払手段として機能する
(例2)Filecoin : ストレージサービスの分散型アプリケーション
 余剰ハードディスクスペースの提供者に対し、報酬としてFilecoinが提供される
 ユーザーは、P2Pネットワーク上のストレージを用いるためにFilecoinが必要となる。
(例3)Ethereum : 分散型サービスを組成するための分散型アプリケーション(world computer)
 Ethereumの利用者(開発者)は、etherによるP2Pネットワークが既に組成されている上にアプリケーションを展開することができる
 コンピューティングリソースの提供者に対し、報酬としてetherが提供される
最初にうまれたビットコインが、たまたまペイメントアプリケーションのためのトークンだったため、仮想通貨は通貨に替わるなにか
なのではないかと世界中の人が誤解した可能性がある
• 残高を表示する帳簿技術なので、ブロックチェーンは技術的には電子マネーを扱うこともできるし、法定通貨を扱うこともできる
• 電子マネーが通貨ではないのと同レベルで、仮想通貨も通貨ではなく、分散型アプリケーションを機能させるために、サービス利用者がリソー
ス提供者に対して支払うとともに、リソースの提供者への報酬として機能するもの
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3-1 あらためてICOとはなにかを考える
ICOは、分散型サービスの開発(ソフトウェア開発+P2Pネットワーク開発)のための費用を調達するための手
法であり、新たなクラウドファンディングの形として捉えられる
購入型クラウドファンディング: 中央集権型サービスの開発費用を調達するための手法
 開発者は、サービスの利用料金をあらかじめ受け取る
 見返りとして提供されるものが、提示型のもの(=保有者が提示すればアプリケーションを入手・利用できるもの)である場合は、前払式支払手段
として取り扱われる
 見返りはブロックチェーン(ERC20)ベースのトークンであることも可能だが、これはあくまでも前払式支払手段であって真正なICOトークンではない
ICO型クラウドファンディング: 分散型サービスの開発費用を調達するための方法
 分散型サービスは、①サービスプラットフォームとしてのソフトウェアのほかに、②リソースの提供者のP2Pネットワークを開発することが必須
 開発者は、①②を開発するために必要な資金を、サービスに利用できるトークンを販売することで獲得
 販売するトークンが、仮想通貨の定義に当てはまる場合には、仮想通貨として取り扱われる結果、販売者は仮想通貨交換業の登録を要すること
になる
 1号仮想通貨:法定通貨により売買可能なトークン
 2号仮想通貨:1号仮想通貨により売買可能なトークン
 仮想通貨に当たるためには、「不特定の者との間で」上記の性質を持たなければならないことになっていることとの関係で、ICOトークンが「発行の時
点で」仮想通貨の定義に当てはまっているかどうかが問題となる
 考え方その1:将来、不特定の者との間で上記の性質を持たせることを期している以上は、仮想通貨の定義に当たる
 考え方その2:発行の時点ではまだ不特定の者との間で上記の性質は持っていないので、仮想通貨の定義に当たらない
 FATFが立てた仮想通貨へのマネロン対策の基本方針は、「法定通貨の世界との交差点でAML対策を立てる」という水際作戦なので、この基本方
針に抵触しかねない「トークンを法定通貨で販売する」という手法は、日本ではリスクが高すぎて採用できない
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3-2 あらためてICOとはなにかを考える
ICOは、典型的なプラットフォーム型ビジネス(シェアリングエコノミー型サービス)が2つのネットワークを回すの
に対し、もう一軸のネットワークを追加するモデル
Platform(サービス管理者)
〈中央集権型のプラットフォーム型ビジネス〉
供給者
利用者
〈ICOトークンを用いた分散型ビジネスモデル〉
トークン
(DApp)
利用者 供給者
投資家
 ICOを開始した人(開発者)はどこでマネタイズするのか?
• サービス管理者は不要なので、中央集権型サービスで通用
したマネタイズポイントは通用しない
× 課金手数料 ← P2Pペイメント
△ 広告モデル ← データがたまらない?
 検索サービスも、かつては「いったいどこで儲けるんだ?」と酷評さ
れていた
 サービス管理者がマネタイズする方法
• 供給者から利用者に対する課金への手数料
• 供給者が利用者にアクセスするための広告料
• その他、データをマネタイズするビジネスモデル
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4-1 ICOの評価 調達手段としての仕組み上の脆弱性
分散型サービスの開発に必要なリソースをICOトークンで調達するモデルには、これまで人類が経験を通じて生
み出してきた利用者保護のプリンシプルとのコンフリクトが垣間見られる
<ICOの弱点>
ICOは、ファイナンスの仕組みとしてプリンシプルベースで見たときのリーガル面での脆弱性を払拭しきれない
 マーケットを不可避的に用いることになるがゆえの問題点(マーケット法制の未整備)
 ネットワーク効果の獲得のために国境を超えることが重要になる反面、各国規制の問題に直面
 国境を超えるトランザクションは、AML/CFTの枠組みではハイリスク類型に属することになっている
• 調達額の大きさもAML/CFTの枠組みではハイリスクと認定される要因
 分散型アプリケーションは、中央集権型アプリケーションに比べて、金融を含むレギュレーションの必要性の根幹をなす「情報の
非対称性」が定型的に大きい
 トークンの販売につき消費税が課されるとともに、販売額は売上に計上(購入型クラウドファンディングと同じ)
• 海外ではファウンデーションを用いた寄付型クラウドファンディングモデルも
<分散型サービスの開発資金の調達のための代替的手法>
制度が整った中央集権型資金調達の枠組みを借用するSimple Agreement for Future Tokens(J-SAFT)
 集団投資持分の募集として、第二種金融商品取引業者がこれを取扱う(事業投資型クラウドファンディング)
 通常の投資型クラウドファンディングと同じように投資家から資金を調達(法定通貨も可)
 プロダクトの開発が終わり、分散型サービスが稼働する段階でファンドを解散し、投資家にトークンを分配
 投資家に対しては、KYCとともに金商法上の情報提供の枠組みが用意される(前書面、時書面、金販法)
 開示規制と運用規制は適用されない
 調達資金はエクイティとして取り扱われ、消費税も課されない
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4-2 ICOの評価 伝統的資金調達手段との関係
分散型サービスが従来の中央集権型サービスと共存するのと同じように、ICOは伝統的な資金調達を亡きもの
とするものではない
<クラウドファンディングと伝統的資金調達の関係>
クラウドファンディングによる調達の成功は、伝統的資金調達における資金供給者による資金提供を促進する
 クラウドによるプロダクトの目利き(マーケットフィットの証明)が伝統的な金融セクターにコンフィデンスを提供
 テスラによる40万台のモデル3の予約 ⇒ 14億ドルの株式市場による公募増資
 購入型クラウドファンディングによる調達成功 ⇒ 銀行や公庫からの借入れ
 購入型クラウドファンディングによる調達成功 ⇒ シードラウンドにおけるVCからのエクイティ調達の成功
<ICOと伝統的資金調達の関係>
伝統的手法による資金調達の成功は、ICOにおける資金供給者による資金提供を促進する
 伝統的な金融セクターによるデューディリジェンスとその結果の与信提供が、ICOにおける情報非対称性を縮小する
 TechBureau社による16億円のシリーズB調達 ⇒ 100億円超のICOによる資金調達
同様に、ICOはプロダクト開発のための調達手段なので、事業体の資本戦略と両立すると考えるのが合理的
 購入型クラウドファンディングで資金調達したからといってIPO不適格とならないのと同じ
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4-3 ICOの評価 目先の現象の理解
仮想通貨の価格が急上昇し、ICOトークンが激売れしているのはなぜなのか?
現状の仮想通貨・ICOトークンのブームは、行動経済学におけるメンタルアカウンティングの一種であるハウスマネー効果に
より説明することができる
 ギャンブルに勝った人は、これによる棚ぼた的利益を通常の労働対価分とは異なるアカウントで把握、労働対価分の
収入では行わないようなリスクを取ったギャンブルを行うことが知られている(ハウスマネー効果)。
 現在の仮想通貨・ICOトークンの相場は、初期のビットコインやイサリアムの投資家が得た棚ぼた的利益が、更に別の
仮想通貨やICOトークンへの投資に回るという、ハウスマネー効果によって主導されている。
 上記の相場が現出すると、それ以外の者もFOMOに陥り、相場が崩れるまでこれが続くことになる。
 「理解できないものに投資をするべきではない」という投資の黄金律に反して知人が次々ビリオネアになるのを見ると、
「理解できないものこそ投資をするべきである」という認知に達してしまい、投資リテラシーの低い者が次々に投資に参
入することになる。
上記サイクルは、ICOトークンの取得が分散型アプリケーションへのアクセス(利用)権の獲得というよりも売買差益の獲
得によって、より強く動機づけられてしまう結果をもたらす。
 分散型アプリケーション開発のクラウドファンディングも、本来であれば中央集権型アプリケーション開発のクラウドファン
ディングと同じ動機付けで拠出に応じるというロジックにならなければならないはず
 マーケットがブームになっているため、動機がねじれてしまい、現在のICOではマーケットフィートの証明手段としてクラウド
ファンディングが機能していない可能性がある。
 リクイディティが供給されるということと価格が上昇するということは、流動性ディスカウント分を除いては相関性がないは
ず
マーケットがいったんはじけるか、マーケットの理解が進んで収束するかした後に、トークンを中心に据えた分散型ビジネスモ
デルの真価が問われることになる。
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増島 雅和
森・濱田松本法律事務所
tel. 03.5220.1812
email. masakazu.masujima@mhmjapan.com
skype: masakazu.Masujima
twitter: @hakusansai
Thank you!
本日のスライドのアクセス先:
Facebookページ「StartupInnovators」
※ 正午に公開されます。

icoトークンセールの正体

  • 1.
    Copyright © 2017Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 0‐ ICO/トークンセールの正体 ©2017 Mori Hamada & Matsumoto all rights reserved November, 2017 森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 増 島 雅 和
  • 2.
    Copyright © 2017Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 1‐ <自己紹介> 増 島 雅 和(ますじま まさかず) 森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 2001 弁護士登録 2006 米国ウィルソン・ソンシーニ法律事務所(シリコンバレーオフィス) 2007 ニューヨーク州弁護士登録 2010 金融庁監督局銀行第一課(RRP担当)兼保険課 日経CSISバーチャルシンクタンク・フェロー イニシアチブ: 金融の力で我が国産業構造のイノベーションを加速する“Startup Innovators”主宰 http://startupinnovators.jp/ 2013 経済産業省 新事業創出支援関係者会議 委員 2015 IMF外部カウンセル(米国FSAP:金融破綻処理法制担当) 日本クラウドファンディング協会理事、日本ベンチャーキャピタル協会顧問、FINOVATORS代表、日本ブロック チェーン協会アドバイザー、仮想通貨事業者協会顧問、ブロックチェーン推進協会アドバイザー 等 2016 経済産業省 FinTech研究会 ブロックチェーン研究会 委員 内閣官房IT総合戦略本部 シェアリングエコノミー検討会合 委員 全銀協オープンAPIのあり方に関する検討会 委員 (法定通貨も可)
  • 3.
    Copyright © 2017Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 2‐  イノベーションサイドから金融規制を解説  法律ではなくビジネスについて記載したQ&A ー プラットフォーム型ビジネスモデルとは? ー エコシステム型ビジネスモデルとは? ー ディスラプティブイノベーションの構図とは? ー オープンイノベーションの取り組み方は? ー FinTechによる地方創生とは? ー FinTechによる貧困対策とは?  FinTech、データ、競争政策にわたって政府の動向を網羅  API、ブロックチェーンなど核となる技術もカバー  InsurTechもカバー  海外ビジネスモデルの分析と日本法上の展開可能について検討 日経FinTech選書(税込2,916円) スマートコントラクトに関する論稿を掲載 日本経済新聞出版社(2,000円+税) シリコンバレーにおけるCVCの実例50例を 取り上げ、オープンイノベーションに対する 正しいアプローチと考え方、コーポレートベ ンチャリングの具体的な方法論を披露 ダイヤモンド社(税込2,376円) <関連書籍>
  • 4.
    Copyright © 2017Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 3‐ 1-1 ICOの全体像 ICOは、プロジェクト実現のための資金をブロックチェーン上で発行・管理されるトークンを販売 することで集める資金調達方法  便宜上「トークン」といっているが、実態はブロックチェーン上の残高の記録にすぎない  プログラマブルなプロトコルのもとで発行することで、一定のコントラクトとしての性質を持つことがある  トークンの機能(ファンクショナリティ)に応じて以下のとおり分類される。  プロジェクトの収益の分配権: エクイティ・トークン  プロジェクトにより開発されたプロダクトへのアクセス権: ユーティリティ・トークン  エクイティ・トークンは有価証券(集団投資スキーム)。金商法に従って取り扱われる。  日本の投資家向けに発行する場合には、第二種金融商品取引業者が関与する必要 • 自らが第二種金融商品取引業の登録を取る • 第二種金融商品取引業者をアドバイザリーに起用する  勧誘する先の国ごとの証券業規制を遵守する必要(グローバルオファリングは難しい)  発行したトークンは仮想通貨取引所で取り扱うことができない • 流動性を付与するのであれば、金融商品取引所が取り扱うことになる • 分散型取引所(Decentralized Exchange、DEX)の利用可能性  ユーティリティ・トークンは、プロダクトのビジネスモデルに応じて以下のいずれかの性質を持つ  中央集権型ビジネスモデル: 前払式支払手段(電子マネー)  分散型ビジネスモデル: 仮想通貨または単なるデジタルアセット
  • 5.
    Copyright © 2017Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 4‐ 1-2 ICOの全体像 ICOは、プロジェクト実現のための資金をブロックチェーン上で発行・管理されるトークンを販売 することで集める資金調達方法 <中央集権型ビジネスモデル>  従来型のビジネスモデルのすべて • サービスに必要なリソースを自ら調達して提供 • サービスの管理者(提供者)が存在し、サービスをコントロールする 例:トヨタ、東芝、○○銀行、△△証券、XX保険、Apple、Amazon、Google、Facebook、Dropbox、Airbnb  調達者=サービスの管理者なので、サービスにアクセスすることができるトークンは、「発行者や発行者がコントロールできる 者に対してサービス提供を求めることによって消費するもの」になってしまう • ゲーム開発会社の発行するトークンは、調達資金で開発したゲームを遊ぶことができるトークン • ストレージサービス会社の発行するトークンは、調達資金で調達したストレージを使うことができるトークン 電子マネー(前払式支払手段) • 発行額の50%を供託しなければならない • 発行に際して届出(自家型)又は登録(第三者型)が必要 <分散型ビジネスモデル>  これまで存在していたサービスを管理者なしで実現するもの • サービスに必要なリソースはリソースを持っている人が拠出 • サービスはプロトコルによってコントロールされる
  • 6.
    Copyright © 2017Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 5‐ 2-1 あらためて仮想通貨の本質を考える 「仮想通貨」とは「通貨と関係する何か」ではなく、分散型サービスに対して使用される支払手段かつリソース提 供者に対する報酬として、従来型サービスにおける電子マネー(前払式支払手段)と同列のもの (例1)ビットコイン : ペイメントの分散型アプリケーション  ペイメントとは、ユーザーの残高を追跡・更新する(=管理する)ことができる機能  紙幣など物理的な形態をとらずにこれを行うため、信頼できる残高管理の主体が必要  ナカモトサトシ論文の提案する解決方法は以下のとおり • P2Pネットワークを作り、すべての取引を全員に通知する • 通知では、ネットワーク上で消費したい資金を特定、これを暗号を用いて署名することでその取引が自ら行ったものであることが分かるように する • 二重消費を防止するためのタイムスタンプが必要になる。その方法として①誰かに最初の取引につきタイムスタンプを押させる方法、②タイ ムスタンパーを競争によって都度決める方法がある • 競争による解決はマーケットソリューション、そのためには報酬が必要になる。これがビットコイン • 競争の手段は電気代を食う計算競争とする。コストを掛けさせてリワードすることで、同じコストを割いて悪事を働くインセンティブを下げる。 これによりアダム・スミスの言う「我々が食事をできるのは、肉屋や酒屋やパン屋の主人が博愛心を発揮するからではなく、自分の利益を追 求するからである」と同じ原理を作り出し、ペイメントの仕組みを回す • 電気代の支払いのためにマイナーはビットコインを売却することになり、これによりビットコインが流通することになる • ビットコインは、中央管理者を市場競争に置き換えるためのリワードとして機能するとともに、支払ネットワーク上の支払手段として機能する (例2)Filecoin : ストレージサービスの分散型アプリケーション  余剰ハードディスクスペースの提供者に対し、報酬としてFilecoinが提供される  ユーザーは、P2Pネットワーク上のストレージを用いるためにFilecoinが必要となる。 (例3)Ethereum : 分散型サービスを組成するための分散型アプリケーション(world computer)  Ethereumの利用者(開発者)は、etherによるP2Pネットワークが既に組成されている上にアプリケーションを展開することができる  コンピューティングリソースの提供者に対し、報酬としてetherが提供される 最初にうまれたビットコインが、たまたまペイメントアプリケーションのためのトークンだったため、仮想通貨は通貨に替わるなにか なのではないかと世界中の人が誤解した可能性がある • 残高を表示する帳簿技術なので、ブロックチェーンは技術的には電子マネーを扱うこともできるし、法定通貨を扱うこともできる • 電子マネーが通貨ではないのと同レベルで、仮想通貨も通貨ではなく、分散型アプリケーションを機能させるために、サービス利用者がリソー ス提供者に対して支払うとともに、リソースの提供者への報酬として機能するもの
  • 7.
    Copyright © 2017Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 6‐ 3-1 あらためてICOとはなにかを考える ICOは、分散型サービスの開発(ソフトウェア開発+P2Pネットワーク開発)のための費用を調達するための手 法であり、新たなクラウドファンディングの形として捉えられる 購入型クラウドファンディング: 中央集権型サービスの開発費用を調達するための手法  開発者は、サービスの利用料金をあらかじめ受け取る  見返りとして提供されるものが、提示型のもの(=保有者が提示すればアプリケーションを入手・利用できるもの)である場合は、前払式支払手段 として取り扱われる  見返りはブロックチェーン(ERC20)ベースのトークンであることも可能だが、これはあくまでも前払式支払手段であって真正なICOトークンではない ICO型クラウドファンディング: 分散型サービスの開発費用を調達するための方法  分散型サービスは、①サービスプラットフォームとしてのソフトウェアのほかに、②リソースの提供者のP2Pネットワークを開発することが必須  開発者は、①②を開発するために必要な資金を、サービスに利用できるトークンを販売することで獲得  販売するトークンが、仮想通貨の定義に当てはまる場合には、仮想通貨として取り扱われる結果、販売者は仮想通貨交換業の登録を要すること になる  1号仮想通貨:法定通貨により売買可能なトークン  2号仮想通貨:1号仮想通貨により売買可能なトークン  仮想通貨に当たるためには、「不特定の者との間で」上記の性質を持たなければならないことになっていることとの関係で、ICOトークンが「発行の時 点で」仮想通貨の定義に当てはまっているかどうかが問題となる  考え方その1:将来、不特定の者との間で上記の性質を持たせることを期している以上は、仮想通貨の定義に当たる  考え方その2:発行の時点ではまだ不特定の者との間で上記の性質は持っていないので、仮想通貨の定義に当たらない  FATFが立てた仮想通貨へのマネロン対策の基本方針は、「法定通貨の世界との交差点でAML対策を立てる」という水際作戦なので、この基本方 針に抵触しかねない「トークンを法定通貨で販売する」という手法は、日本ではリスクが高すぎて採用できない
  • 8.
    Copyright © 2017Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 7‐ 3-2 あらためてICOとはなにかを考える ICOは、典型的なプラットフォーム型ビジネス(シェアリングエコノミー型サービス)が2つのネットワークを回すの に対し、もう一軸のネットワークを追加するモデル Platform(サービス管理者) 〈中央集権型のプラットフォーム型ビジネス〉 供給者 利用者 〈ICOトークンを用いた分散型ビジネスモデル〉 トークン (DApp) 利用者 供給者 投資家  ICOを開始した人(開発者)はどこでマネタイズするのか? • サービス管理者は不要なので、中央集権型サービスで通用 したマネタイズポイントは通用しない × 課金手数料 ← P2Pペイメント △ 広告モデル ← データがたまらない?  検索サービスも、かつては「いったいどこで儲けるんだ?」と酷評さ れていた  サービス管理者がマネタイズする方法 • 供給者から利用者に対する課金への手数料 • 供給者が利用者にアクセスするための広告料 • その他、データをマネタイズするビジネスモデル
  • 9.
    Copyright © 2017Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 8‐ 4-1 ICOの評価 調達手段としての仕組み上の脆弱性 分散型サービスの開発に必要なリソースをICOトークンで調達するモデルには、これまで人類が経験を通じて生 み出してきた利用者保護のプリンシプルとのコンフリクトが垣間見られる <ICOの弱点> ICOは、ファイナンスの仕組みとしてプリンシプルベースで見たときのリーガル面での脆弱性を払拭しきれない  マーケットを不可避的に用いることになるがゆえの問題点(マーケット法制の未整備)  ネットワーク効果の獲得のために国境を超えることが重要になる反面、各国規制の問題に直面  国境を超えるトランザクションは、AML/CFTの枠組みではハイリスク類型に属することになっている • 調達額の大きさもAML/CFTの枠組みではハイリスクと認定される要因  分散型アプリケーションは、中央集権型アプリケーションに比べて、金融を含むレギュレーションの必要性の根幹をなす「情報の 非対称性」が定型的に大きい  トークンの販売につき消費税が課されるとともに、販売額は売上に計上(購入型クラウドファンディングと同じ) • 海外ではファウンデーションを用いた寄付型クラウドファンディングモデルも <分散型サービスの開発資金の調達のための代替的手法> 制度が整った中央集権型資金調達の枠組みを借用するSimple Agreement for Future Tokens(J-SAFT)  集団投資持分の募集として、第二種金融商品取引業者がこれを取扱う(事業投資型クラウドファンディング)  通常の投資型クラウドファンディングと同じように投資家から資金を調達(法定通貨も可)  プロダクトの開発が終わり、分散型サービスが稼働する段階でファンドを解散し、投資家にトークンを分配  投資家に対しては、KYCとともに金商法上の情報提供の枠組みが用意される(前書面、時書面、金販法)  開示規制と運用規制は適用されない  調達資金はエクイティとして取り扱われ、消費税も課されない
  • 10.
    Copyright © 2017Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 9‐ 4-2 ICOの評価 伝統的資金調達手段との関係 分散型サービスが従来の中央集権型サービスと共存するのと同じように、ICOは伝統的な資金調達を亡きもの とするものではない <クラウドファンディングと伝統的資金調達の関係> クラウドファンディングによる調達の成功は、伝統的資金調達における資金供給者による資金提供を促進する  クラウドによるプロダクトの目利き(マーケットフィットの証明)が伝統的な金融セクターにコンフィデンスを提供  テスラによる40万台のモデル3の予約 ⇒ 14億ドルの株式市場による公募増資  購入型クラウドファンディングによる調達成功 ⇒ 銀行や公庫からの借入れ  購入型クラウドファンディングによる調達成功 ⇒ シードラウンドにおけるVCからのエクイティ調達の成功 <ICOと伝統的資金調達の関係> 伝統的手法による資金調達の成功は、ICOにおける資金供給者による資金提供を促進する  伝統的な金融セクターによるデューディリジェンスとその結果の与信提供が、ICOにおける情報非対称性を縮小する  TechBureau社による16億円のシリーズB調達 ⇒ 100億円超のICOによる資金調達 同様に、ICOはプロダクト開発のための調達手段なので、事業体の資本戦略と両立すると考えるのが合理的  購入型クラウドファンディングで資金調達したからといってIPO不適格とならないのと同じ
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    Copyright © 2017Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 10‐ 4-3 ICOの評価 目先の現象の理解 仮想通貨の価格が急上昇し、ICOトークンが激売れしているのはなぜなのか? 現状の仮想通貨・ICOトークンのブームは、行動経済学におけるメンタルアカウンティングの一種であるハウスマネー効果に より説明することができる  ギャンブルに勝った人は、これによる棚ぼた的利益を通常の労働対価分とは異なるアカウントで把握、労働対価分の 収入では行わないようなリスクを取ったギャンブルを行うことが知られている(ハウスマネー効果)。  現在の仮想通貨・ICOトークンの相場は、初期のビットコインやイサリアムの投資家が得た棚ぼた的利益が、更に別の 仮想通貨やICOトークンへの投資に回るという、ハウスマネー効果によって主導されている。  上記の相場が現出すると、それ以外の者もFOMOに陥り、相場が崩れるまでこれが続くことになる。  「理解できないものに投資をするべきではない」という投資の黄金律に反して知人が次々ビリオネアになるのを見ると、 「理解できないものこそ投資をするべきである」という認知に達してしまい、投資リテラシーの低い者が次々に投資に参 入することになる。 上記サイクルは、ICOトークンの取得が分散型アプリケーションへのアクセス(利用)権の獲得というよりも売買差益の獲 得によって、より強く動機づけられてしまう結果をもたらす。  分散型アプリケーション開発のクラウドファンディングも、本来であれば中央集権型アプリケーション開発のクラウドファン ディングと同じ動機付けで拠出に応じるというロジックにならなければならないはず  マーケットがブームになっているため、動機がねじれてしまい、現在のICOではマーケットフィートの証明手段としてクラウド ファンディングが機能していない可能性がある。  リクイディティが供給されるということと価格が上昇するということは、流動性ディスカウント分を除いては相関性がないは ず マーケットがいったんはじけるか、マーケットの理解が進んで収束するかした後に、トークンを中心に据えた分散型ビジネスモ デルの真価が問われることになる。
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    Copyright © 2017Mori Hamada & Matsumoto All rights reserved.‐ 11‐ 増島 雅和 森・濱田松本法律事務所 tel. 03.5220.1812 email. masakazu.masujima@mhmjapan.com skype: masakazu.Masujima twitter: @hakusansai Thank you! 本日のスライドのアクセス先: Facebookページ「StartupInnovators」 ※ 正午に公開されます。