©2013 Mori Hamada & Matsumoto all rights reserved
オープン・イノベーションとスタートアップエコシステム
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November 8th, 2014
弁護士 増 島 雅 和
森・濱田松本法律事務所
masakazu.masujima@mhmjapan.com
第2回 アントレプレナーシップ研究コミュニティ 研究会
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自己紹介
増 島 雅 和(ますじま まさかず)
森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士
2001 弁護士登録
2006 米国ウィルソン・ソンシーニ法律事務所(シリコンバレー)勤務(-2007)
2007 ニューヨーク州弁護士登録
2010 金融庁監督局保険課兼銀行第一課 課長補佐 (-2012)
2011 日経CSISバーチャルシンクタンク フェロー
主な取扱業務: M&A、ベンチャーファイナンス、保険・金融レギュレーション
イニシアチブ: シリコンバレー流のリスクカルチャーのもとで新事業創出のインフラとしてのベンチャー
エコシステムの構築を目指す、「Startup Innovators」を主宰
2
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1.今、なぜオープン・イノベーションなのか
「オープン・イノベーション」 : クローズド・イノベーションに対置されるイノベーションへの新しいアプローチ
3
• 自ら優秀な人材を抱える
• 自ら開発を行う
• 最初にマーケットに新製品を出した者が勝つ
• 多大な研究開発投資が市場に勝つためのカギ
• 知的財産を守り他者に真似をされないことが大事
研究開発投資
新技術発明
新製品発売
売上・利益増
<クローズド・イノベーションのサイクル>
クローズド・イノベーション:20世紀型イノベーション
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1.今、なぜオープン・イノベーションなのか
クローズド・イノベーションの衰退
4
• 高度人材の増加により大企業以外にも高度知識が拡散、高度人材の流動化
• 製品開発のスピードアップにより、クローズド・イノベーションが新製品寿命の短さに追いつけず
• 情報革命により賢くなった顧客、サプライヤーから収益を上げることが困難に
• 海外事業者を巻き込んだ競争の激化
時代はオープン・イノベーションへ
⇒ 単線的なクローズド・イノベーションのサイクルが寸断され、持続可能なモデルでなくなる
イノベーションに対する新しいアプローチとして、オープン・イノベーション
研究 開発
新市場
既存市場
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1.今、なぜオープン・イノベーションなのか
オープン・イノベーションの特徴
5
• 社内に優秀な人材は必須ではなく、社外の優秀な人材と協働すればよい
• 社内研究開発は必要だが、外部研究開発からも価値を創出できる
• 早い製品化よりもビジネスモデルの構築の方が重要
• 研究開発投資の額よりも社内と社外のアイディアをいかに効率的に活用するかがカギ
オープン・イノベーション: 21世紀型イノベーション
• 知的財産の囲い込みではなく、適切な社外活用や外部の知的財産の取入れが重要
研究 開発
新市場
既存市場
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1.今、なぜオープン・イノベーションなのか
6
オープン・イノベーションとベンチャー企業
オープン・イノベーションにおけるベンチャー企業の位置付け
• 自社では行えない新たなビジネスモデルの開発の場
• 協働対象となる社外の優秀な人材の供給元
• 社内の研究開発の活用先
ベンチャー企業のニーズ
• アイディアはあるがリソースが不足
• 売上げを上げることでビジネスモデルを確立したい
• 投資家にエグジット先を提供する必要
事業協働(コラボレーション)
資本業務提携
買収
大企業とベンチャー企業とのコラボレーション・資本業務提携・買収を成功させるためには、ベンチャー
企業を成り立させているロジックやエコシステムを正しく理解することが必要
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ベンチャービジネスの投資構造
2.ベンチャー企業の特徴
ベンチャービジネスは、「スケーラブルなビジネスモデルの開発に向けて、起業家と投資家が、事業ビー
クル(スタートアップ企業)に対して、異なる資本を投下する経済活動」
投資家 起業家
ベンチャー企業
事業アイディア
フルコミット労力
資金
アドバイス・紹介
モニタリング
株主間契約
普通株インセンティブ
起業家と投資家のそれぞれの「投資」と「リターン」をどのように調和させるか、ベンチャー企業の資本
政策は、この均衡点を見定めて策定される
7
投資契約
優先株式
<概念図>
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ベンチャーエコシステム
2.ベンチャー企業の特徴
ベンチャー企業はビジネスモデル確立までの間、単独では持続性がなく、エコシステムの中で初めて存
続できる存在
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起業家
シード投資家
スタートアップ スケーラブル事業
アイディア/時間/労働
資金・アドバイス ビジネスモデル開発
Exit
起業家, 従業員
VC
LP投資家
株式市場
既存企業
既存企業
資本業務提携
創業者株式、優先株
投資、ストックオプ
ションetc
コンバーティブル
ノートファイナンス
コンバーティブルノエクイ
ティファイナンス
シードアクセラレータ
クラウドファンディング
銀行
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持続可能なエコシステム構築のカギ
2.ベンチャー企業の特徴
1.まずは起業家ありきのシステム
 起業家 : 「スケーラブルなビジネスモデルを超速で創る」プロジェクトの発案者兼実行者
 企業内プロジェクトと異なり、発案は誰に強制されるわけでもなく、プロジェクト成功までの生活
を保証する後ろ盾もない
⇒ アントレプレナーシップ(セルフモチベーション能力)が必要
⇒ その上で、難事業ゆえに高い能力(分析力、コミュニケーション力etc)が必要
2.適格性ある起業家は一流企業の幹部候補なみの優秀さが必要
 起業家を生み出すシステムは、期待収益が一流企業幹部並みとなっている必要
 (期待収益)=(将来収益の見込み)×(見込み実現の可能性)
⇒ 一流企業幹部候補との人材競争のためには「将来収益の見込み」が極めて高くなる必要
9
プロジェクト発案者かつ実行者である起業家(及びこれを支える従業員)に対し、成功時に極めて大
きなリターンをもたらすため(=次の起業家のシードマネー提供者を創出するため)にデザインされたも
のが、ベンチャーファイナンスの資本構成
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持続可能なエコシステム構築のカギ
1.ベンチャー企業の本質
1.まずは起業家ありきのシステム
 起業家 : 「スケーラブルなビジネスモデルを爆速で創る」プロジェクトの発案者兼実行者
 企業内プロジェクトと異なり、発案は誰に強制されるわけでもなく、プロジェクト成功までの生活
を保証する後ろ盾もない
⇒ アントレプレナーシップ(セルフモチベーション能力、リスクアペタイト)が必要
⇒ その上で、難事業ゆえに高い能力(分析力、コミュニケーション力etc)が必要
2.適格性ある起業家の代替職は一流企業の幹部候補
 起業家を生み出すシステムは、期待収益が一流企業幹部並みとなっている必要
 (期待収益)=(将来収益の見込み)×(見込み実現の可能性)
⇒ 一流企業幹部候補との人材競争のためには「将来収益の見込み」が極めて高くなる必要
10
① 成功時に、プロジェクト発案者かつ実行者である起業家(及びこれを支える従業員)に大きなリ
ターンをもたらすこと
② 起業家(と従業員)が、手にしたリターンを次の起業家のために投資すること
この2つが、ベンチャーファイナンスのエコシステムのコア
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優先株利用の必然性
2.創業者株式の戦略
優先株式を利用しないと創業者が大きなリターンを得ることができない理由
優先株は、IPO前の事業売却に際し、投資家に対し、
• 売却価額から、予め定めた金額まで起業家に優先して投資回収できる権利
• 売却価額が高い場合には、普通株に転換して起業家と同条件で投資回収できる権利
を与える点に意義
IPO前の優先株は、常に普通株より企業価値に対する1株あたりの「分け前」が多い
普通株は、優先株より安い時価を設定する理論的根拠がある
優先株を使えば、起業家と従業員に安く株式(普通株)を割当て、投資家に高く株式(優先
株)を発行することが可能
※ 税制適格のストックオプションの行使価格は普通株の価格が下限なので、ストックオプションを意
味があるものにするためにも、投資家には優先株を発行する必要。
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創業者同士のただ乗りの防止
2.創業者株式の戦略
優先株式を利用して創業者が大きなリターンを得られる仕組みを採用する以上は、共同創業者の
ただ乗り防止策を講じておく必要
創業者A(CEO)
創業者B(CTO)
創業者C(CFO)
40,000株
30,000株
30,000株
100円/株 2,000円/株 8,000円/株 20,000円/株
Series A Series B Series C
創業者C離脱
30,000株?
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人事戦略
2.創業者株式の戦略
創業者株式戦略は、優秀な人材を外部から集めてくるためのスタートアップの唯一の武器であるス
トック・オプションの「効き」に決定的インパクトを与える
ストック・オプション:行使によって普通株式を取得することができる権利
行使価格は、税制適格となるためには付与時の普通株式の価格以上である必要
普通株式で資金調達すると、投資家に渡した株価以上の行使価格をつけざるを得なくなってしまう。
かなり引上げた価格
税制非適格のストック・オプションは、行使時に給与所得課税されてしまう。
ストック・オプション設計のポイント
非上場会社のストックオプションは、従業員にエグジット時の分け前を与える制度としてとらえる。
IPOの場合を除き、従業員が株式を保有する必要はない。
会社への長期コミットを確保するため、1年に25%ずつ行使可能となる仕組みを導入
エグジットが発生した場合には、付与分全体が行使可能となるような仕組みを導入
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ベンチャー企業の資本構成
3.ベンチャー企業の資本戦略
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シード設立 アーリー グロース レイター 上場
3~5年
創業者普通株式(penny stock)
シード投資家(CB) シード投資家(シリーズA優先株式)
VC投資家(シリーズA優先株式)
ストラテジック投資家(シリーズB優先株式)
VC投資家(シリーズC優先株式)
金融投資家(シリーズD優先株式)
従業員ストック・オプション
定款
株主間契約
試作
事業開発
顧客開拓
スケール化
内部統制
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ベンチャー投資の条項
3.ベンチャー企業の資本戦略
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優先配当条項
残余財産優先分配条項(Liquidation Preference)
普通株式への転換請求権(取得請求権) - 稀釈化防止条項
[償還請求権]
普通株式への強制転換権(取得条項)
取締役選任権
拒否権(Protective Provision)
情報請求権(オブザーバー権、報告義務、立入検査等)
エグジットに関する誓約(上場努力義務、マーケットスタンドオフ等)
新株引受権
先買権(Right of First Refusal)
共同売却権(Co-Sale Right)
強制売却権(Drag Along Right)
[買戻請求権]
キーマン条項(職務専念義務、競業避止義務等)
定款記載事項
株主間契約
記載事項
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4.ベンチャー企業と事業会社のコラボレーション
事業会社がベンチャー企業とのコラボレーションを実現するための必要条件
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① 誰と?
ベンチャー企業を社内にないスキルセットを持つ社外の有能なチームとして扱う
⇒ 自社でできることをベンチャー企業にアウトソースするのではなく、同じ時間軸で自社ではでき
ないことをベンチャー企業と協働することで実現する
イコールパートナーシップ(相互尊重)の精神が貫かれなければ必ず失敗する
② 何を?
共通の目標(新たな事業モデルの開発等)を達成するため、それぞれの強みを持ち寄る
⇒ 明確な目標の設定、目標達成のための透明性の高いプロセス、明確な役割分担
③ どうやって?
財産的価値のある情報やその果実を囲い込まずにシェア
⇒ 知的財産権、データ(個人データ等)の取扱い、秘密保持の範囲を的確に設定、チーム間のコ
ミュニケーション戦略、成果物の帰属ルールの公正性、シェア対象となる収益算出の透明性
④ リスク管理
コ・イノベーションリスク(エコシステム型の場合にはアダプションリスクを含む)の管理
⇒ 役割分担に応じた責任分担、公正な解消プロセス、コンティンジェンシープラン
締結する契約は業務委託契約ではなく無名契約
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事業会社との資本業務提携を行う場合の留意事項
4.ベンチャー企業と事業会社のコラボレーション
資本提携と業務提携を切り分け、資本提携部分はベンチャーファイナンスの資本構成に適合する形で
座組みを作る必要
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① 取得する株式
次ラウンドの優先株式
※ 投資の是非の判断に際し、キャピタルゲインによる収益のみを頼みとしなければならないVCと異なり、事業
上の収益も勘案することができる点で、金融面での投資条件はVCと大きく異なる。
(例) コラボレーションをコミットしながらダウンラウンド防御は必要なのか
⇒ VCラウンドとは異なるラウンドで投資することに合理性
② 契約の建付け
⇒ 資本提携部分と業務提携部分の契約を分け、資本提携部分は他の投資家との株主間契約の
枠組みで、必要な条件につき検討する。
業務提携部分については、イコールパートナーシップを前提とした協業契約
③ 株主間契約の条項
業務提携終了時の株式処分については先買権、出資比率維持、取締役選任、買収を見据えた強
制売却条項
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M&Aエグジット時の留意事項
5.ベンチャー企業のM&A戦略
 事業会社に対する売却によるエグジットは、事業上のコラボレーションがある中で、あるいは資本提
携まで進んでいる中で買収を打診するパターン等がある
 買収者としての大企業もベンチャーエコシステムの中で想定されたプレイヤー、ベンチャーエコシス
テムのロジックの枠内でディールを組み立てていく
18
<留意事項>
• Liquidation Preferenceに沿った対価の支払
• ストックオプションの処理
• 経営陣のリテンション
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Liquidation Preferenceに沿った対価の支払
5.ベンチャー企業のM&A戦略
1.M&Aエグジットの大前提
会社法上の残余財産優先権は清算時のみを想定しているが、ベンチャーファイナンスでは、優先株
式投資を行うすべてのエコシステム内のプレイヤーが、支配権移転時には残余財産の優先分配
ルールに沿って企業価値が各株主に配分されるものと了解している。
⇒ M&Aでエグジットする場合、その対価の株主間の分配はLiquidation Preferenceに沿って行われ
る必要
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2.Liquidation Preferenceの仕組み
 一般的には遅いラウンドほど優先する(D種→C種→B種→A種→普通)
 残余財産の分配は、①優先分配額の定めと、②参加条項の定めが重要
① 優先分配額: 劣後する株式に先立って分配される額
取得価額相当額の優先分配がなされる場合を1倍とし、それ以上の倍率が定められる
場合もある。
② 参加条項: 優先株式への分配の終了後に普通株式に対する分配に与れるか否か。
優先分配額と合算した分配上限が定められる場合もある(例えば取得価額の2倍等)。
エグジット価格が大きく分配上限に達する場合、普通株式に転換して分配を受けることを
想定
①②の定めは、ラウンドごとに異なる場合がある。
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Liquidation Preferenceの例
5.ベンチャー企業のM&A戦略
T社: 普通株式 10万株
A種優先株式 2万株 (@15,000円 優先分配1.5倍 参加上限2倍)
B種優先株式 3万株 (@30,000円 優先分配1倍 参加上限なし)
(1) A社に15億円で買収される場合
B種優先分配: 30,000 x 30,000 = 9億
A種優先分配: 15,000 x 20,000 x 1.5 = 4.5億
普通株式: [15億 - (9億 + 4.5億)] / 15万 = 1,000円/ 株
普通株主: 1,000 x 100,000 = 1億 +1億
A種株主: 4.5億 + 1,000 x 20,000 = 4.7億 (< 3億 x 2) +1.7億
B種株主: 9億 + 1,000 x 30,000 = 9.3億 +0.3億
(2) A社に150億円で買収される場合
B種優先分配: 9億
A種優先分配: 4.5億
普通株式: (150億 - 13.5億) / 15万 = 91,000円 / 株
A種: 4.5億 + 91,000 x 20,000 = 18.2億 (> 6億) ⇒ 普通株に転換
普通株式: (150億 - 9億) / 15万 = 94,000円 / 株
普通株主: 94億 +94億
旧A種株主:18.8億 +15.8億
B種株主: 37.2億 +28.2億
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ストックオプションの処理
5.ベンチャー企業のM&A戦略
1.ベンチャーファイナンスにおける従業員ストックオプション
 資金のないベンチャー企業にとって人材が唯一のリソース。ストックオプションは高度人材を
惹き付けるための唯一の武器
 ベンチャーファイナンスの資本政策は、(創業者株式の高エグジット倍率とともに)従業員ス
トックオプションを高倍率とすることを目的として導入されているともいえるほど、従業員ス
トックオプションの意義は大きい
 全部行使のためには一定期間(通常4年)のコミットを要するが、買収時等の例外が定めら
れる(single trigger)
※ 付与後2年間は行使できず、継続雇用を前提に、2年後に50%、その後1年ごとに25%ずつ行使できる等
21
2.買収時の処理
 インザマネーのオプションについては、企業価値の中から、普通株式の対価から行使価格を
差引いた額をオプション保有者に支払うのが筋
 支払い方については、買収後の継続雇用を確保するため一定期間の分割払い等もありうる
 従業員に対するエグジット時のオプション現金化は、自身の次の起業のシードマネーや他の
起業家のシード資金供給に充てられることがエコシステム上予定されていることを踏まえて、
公正な処理をしなければならない
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経営陣のリテンション
5.ベンチャー企業のM&A戦略
1.ベンチャー企業買収の特徴
 ベンチャー企業の買収は、テクノロジーと経営チームの買収の側面(企業価値の多くを占める
認知資産が創業メンバーに付随)
 創業メンバーにとって買収は自己の労務投資のエグジット
⇒ サラリーマン社長会社の買収、社歴の長い中小企業のオーナー引退に伴う買収とは大きく異
なる
22
企業価値の源泉となる創業メンバーが、買収企業での永続勤務を必ずしも常には望んでいない中
で、買収企業は、望むものをどのように手中にするか?
⇒ チームやテクノロジーなどの価値を適切に承継するために必要な期間、経営陣に対し、買収目的
達成に必要なインセンティブ付けを実施
(ダメ買収例) 創業者に対して2年間辞めないことを約束させる
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経営陣のリテンション
5.ベンチャー企業のM&A戦略
23
2.リテンションプラン
 買収に伴い支払われる株式対価の支払い方を、買収目的実現に向け適切にインセンティブ
付けるようデザイン
(例) 対価の一部を買収者の累積配当優先株(1年で25%ずつの償還権付)で支払い
通常のアーンアウト条項(EBITDA等を指標とした1-3年のアーンアウト期間中の変動型支払)
創業者株式の一部のみを取得し、残余を一定の条件の下でcall & put
 Management Carve Out Plan (MCOP)の活用
MCOP: 普通株式保有者である経営陣に対し、買収正味対価の一定割合(5-10%程度)をベンチャー
企業が支払う
• ラウンドが進み創業者持分割合が小さくなった会社で、投資家に対するliquidation preferenceが
大きくなりすぎた場合、普通株式の売却価額に加えて支払い
• 支払い方法をデザインすることで買収目的実現をインセンティブ付け
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Acquihire
4.ベンチャー企業の買収戦略
1.Acquihireとは
 ベンチャー企業のプロダクトではなく経営チーム(エンジニア)を買収
※ facebook, twitter, Yahoo!, Googleなど大規模テクノロジー企業が、人員獲得目的でアーリースタートアップを買収
日本ではKLab等
24
2.ストラクチャー
 通常の株式買収後に転籍
 対象会社にターゲット人材の引き抜き許容(職務専念請求権の放棄)の対価を支払い、対
象会社を解散・清算
⇒ 投資家や創業者株主には残余財産分配の形で対価を受領
⇒ 引き抜き対象者以外は解散に伴って離散
 引き抜き対象者には従業員リテンションプランを提供
<リテンションプランのポイント>
 対価の種類: 現金、株、混合
 対象者の決定:
 ファンドの分配:
 行使条件: 期間、アクセラレーションのトリガー事由等
 分配停止事由: 買収後一定期間で辞めた場合の対処
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5.連絡先
masakazu.masujima@mhmjapan.com
tel. 03.5220.1812
森・濱田松本法律事務所
増島 雅和
25

アントレプレナー研究会

  • 1.
    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved オープン・イノベーションとスタートアップエコシステム ©2013 Mori Hamada & Matsumoto all rights reserved November 8th, 2014 弁護士 増 島 雅 和 森・濱田松本法律事務所 masakazu.masujima@mhmjapan.com 第2回 アントレプレナーシップ研究コミュニティ 研究会
  • 2.
    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved 自己紹介 増 島 雅 和(ますじま まさかず) 森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 2001 弁護士登録 2006 米国ウィルソン・ソンシーニ法律事務所(シリコンバレー)勤務(-2007) 2007 ニューヨーク州弁護士登録 2010 金融庁監督局保険課兼銀行第一課 課長補佐 (-2012) 2011 日経CSISバーチャルシンクタンク フェロー 主な取扱業務: M&A、ベンチャーファイナンス、保険・金融レギュレーション イニシアチブ: シリコンバレー流のリスクカルチャーのもとで新事業創出のインフラとしてのベンチャー エコシステムの構築を目指す、「Startup Innovators」を主宰 2
  • 3.
    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved 1.今、なぜオープン・イノベーションなのか 「オープン・イノベーション」 : クローズド・イノベーションに対置されるイノベーションへの新しいアプローチ 3 • 自ら優秀な人材を抱える • 自ら開発を行う • 最初にマーケットに新製品を出した者が勝つ • 多大な研究開発投資が市場に勝つためのカギ • 知的財産を守り他者に真似をされないことが大事 研究開発投資 新技術発明 新製品発売 売上・利益増 <クローズド・イノベーションのサイクル> クローズド・イノベーション:20世紀型イノベーション
  • 4.
    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved 1.今、なぜオープン・イノベーションなのか クローズド・イノベーションの衰退 4 • 高度人材の増加により大企業以外にも高度知識が拡散、高度人材の流動化 • 製品開発のスピードアップにより、クローズド・イノベーションが新製品寿命の短さに追いつけず • 情報革命により賢くなった顧客、サプライヤーから収益を上げることが困難に • 海外事業者を巻き込んだ競争の激化 時代はオープン・イノベーションへ ⇒ 単線的なクローズド・イノベーションのサイクルが寸断され、持続可能なモデルでなくなる イノベーションに対する新しいアプローチとして、オープン・イノベーション 研究 開発 新市場 既存市場
  • 5.
    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved 1.今、なぜオープン・イノベーションなのか オープン・イノベーションの特徴 5 • 社内に優秀な人材は必須ではなく、社外の優秀な人材と協働すればよい • 社内研究開発は必要だが、外部研究開発からも価値を創出できる • 早い製品化よりもビジネスモデルの構築の方が重要 • 研究開発投資の額よりも社内と社外のアイディアをいかに効率的に活用するかがカギ オープン・イノベーション: 21世紀型イノベーション • 知的財産の囲い込みではなく、適切な社外活用や外部の知的財産の取入れが重要 研究 開発 新市場 既存市場
  • 6.
    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved 1.今、なぜオープン・イノベーションなのか 6 オープン・イノベーションとベンチャー企業 オープン・イノベーションにおけるベンチャー企業の位置付け • 自社では行えない新たなビジネスモデルの開発の場 • 協働対象となる社外の優秀な人材の供給元 • 社内の研究開発の活用先 ベンチャー企業のニーズ • アイディアはあるがリソースが不足 • 売上げを上げることでビジネスモデルを確立したい • 投資家にエグジット先を提供する必要 事業協働(コラボレーション) 資本業務提携 買収 大企業とベンチャー企業とのコラボレーション・資本業務提携・買収を成功させるためには、ベンチャー 企業を成り立させているロジックやエコシステムを正しく理解することが必要
  • 7.
    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved ベンチャービジネスの投資構造 2.ベンチャー企業の特徴 ベンチャービジネスは、「スケーラブルなビジネスモデルの開発に向けて、起業家と投資家が、事業ビー クル(スタートアップ企業)に対して、異なる資本を投下する経済活動」 投資家 起業家 ベンチャー企業 事業アイディア フルコミット労力 資金 アドバイス・紹介 モニタリング 株主間契約 普通株インセンティブ 起業家と投資家のそれぞれの「投資」と「リターン」をどのように調和させるか、ベンチャー企業の資本 政策は、この均衡点を見定めて策定される 7 投資契約 優先株式 <概念図>
  • 8.
    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved ベンチャーエコシステム 2.ベンチャー企業の特徴 ベンチャー企業はビジネスモデル確立までの間、単独では持続性がなく、エコシステムの中で初めて存 続できる存在 8 起業家 シード投資家 スタートアップ スケーラブル事業 アイディア/時間/労働 資金・アドバイス ビジネスモデル開発 Exit 起業家, 従業員 VC LP投資家 株式市場 既存企業 既存企業 資本業務提携 創業者株式、優先株 投資、ストックオプ ションetc コンバーティブル ノートファイナンス コンバーティブルノエクイ ティファイナンス シードアクセラレータ クラウドファンディング 銀行
  • 9.
    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved 持続可能なエコシステム構築のカギ 2.ベンチャー企業の特徴 1.まずは起業家ありきのシステム  起業家 : 「スケーラブルなビジネスモデルを超速で創る」プロジェクトの発案者兼実行者  企業内プロジェクトと異なり、発案は誰に強制されるわけでもなく、プロジェクト成功までの生活 を保証する後ろ盾もない ⇒ アントレプレナーシップ(セルフモチベーション能力)が必要 ⇒ その上で、難事業ゆえに高い能力(分析力、コミュニケーション力etc)が必要 2.適格性ある起業家は一流企業の幹部候補なみの優秀さが必要  起業家を生み出すシステムは、期待収益が一流企業幹部並みとなっている必要  (期待収益)=(将来収益の見込み)×(見込み実現の可能性) ⇒ 一流企業幹部候補との人材競争のためには「将来収益の見込み」が極めて高くなる必要 9 プロジェクト発案者かつ実行者である起業家(及びこれを支える従業員)に対し、成功時に極めて大 きなリターンをもたらすため(=次の起業家のシードマネー提供者を創出するため)にデザインされたも のが、ベンチャーファイナンスの資本構成
  • 10.
    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved 持続可能なエコシステム構築のカギ 1.ベンチャー企業の本質 1.まずは起業家ありきのシステム  起業家 : 「スケーラブルなビジネスモデルを爆速で創る」プロジェクトの発案者兼実行者  企業内プロジェクトと異なり、発案は誰に強制されるわけでもなく、プロジェクト成功までの生活 を保証する後ろ盾もない ⇒ アントレプレナーシップ(セルフモチベーション能力、リスクアペタイト)が必要 ⇒ その上で、難事業ゆえに高い能力(分析力、コミュニケーション力etc)が必要 2.適格性ある起業家の代替職は一流企業の幹部候補  起業家を生み出すシステムは、期待収益が一流企業幹部並みとなっている必要  (期待収益)=(将来収益の見込み)×(見込み実現の可能性) ⇒ 一流企業幹部候補との人材競争のためには「将来収益の見込み」が極めて高くなる必要 10 ① 成功時に、プロジェクト発案者かつ実行者である起業家(及びこれを支える従業員)に大きなリ ターンをもたらすこと ② 起業家(と従業員)が、手にしたリターンを次の起業家のために投資すること この2つが、ベンチャーファイナンスのエコシステムのコア
  • 11.
    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved11 優先株利用の必然性 2.創業者株式の戦略 優先株式を利用しないと創業者が大きなリターンを得ることができない理由 優先株は、IPO前の事業売却に際し、投資家に対し、 • 売却価額から、予め定めた金額まで起業家に優先して投資回収できる権利 • 売却価額が高い場合には、普通株に転換して起業家と同条件で投資回収できる権利 を与える点に意義 IPO前の優先株は、常に普通株より企業価値に対する1株あたりの「分け前」が多い 普通株は、優先株より安い時価を設定する理論的根拠がある 優先株を使えば、起業家と従業員に安く株式(普通株)を割当て、投資家に高く株式(優先 株)を発行することが可能 ※ 税制適格のストックオプションの行使価格は普通株の価格が下限なので、ストックオプションを意 味があるものにするためにも、投資家には優先株を発行する必要。
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved12 創業者同士のただ乗りの防止 2.創業者株式の戦略 優先株式を利用して創業者が大きなリターンを得られる仕組みを採用する以上は、共同創業者の ただ乗り防止策を講じておく必要 創業者A(CEO) 創業者B(CTO) 創業者C(CFO) 40,000株 30,000株 30,000株 100円/株 2,000円/株 8,000円/株 20,000円/株 Series A Series B Series C 創業者C離脱 30,000株?
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved13 人事戦略 2.創業者株式の戦略 創業者株式戦略は、優秀な人材を外部から集めてくるためのスタートアップの唯一の武器であるス トック・オプションの「効き」に決定的インパクトを与える ストック・オプション:行使によって普通株式を取得することができる権利 行使価格は、税制適格となるためには付与時の普通株式の価格以上である必要 普通株式で資金調達すると、投資家に渡した株価以上の行使価格をつけざるを得なくなってしまう。 かなり引上げた価格 税制非適格のストック・オプションは、行使時に給与所得課税されてしまう。 ストック・オプション設計のポイント 非上場会社のストックオプションは、従業員にエグジット時の分け前を与える制度としてとらえる。 IPOの場合を除き、従業員が株式を保有する必要はない。 会社への長期コミットを確保するため、1年に25%ずつ行使可能となる仕組みを導入 エグジットが発生した場合には、付与分全体が行使可能となるような仕組みを導入
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved ベンチャー企業の資本構成 3.ベンチャー企業の資本戦略 14 シード設立 アーリー グロース レイター 上場 3~5年 創業者普通株式(penny stock) シード投資家(CB) シード投資家(シリーズA優先株式) VC投資家(シリーズA優先株式) ストラテジック投資家(シリーズB優先株式) VC投資家(シリーズC優先株式) 金融投資家(シリーズD優先株式) 従業員ストック・オプション 定款 株主間契約 試作 事業開発 顧客開拓 スケール化 内部統制
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved ベンチャー投資の条項 3.ベンチャー企業の資本戦略 15 優先配当条項 残余財産優先分配条項(Liquidation Preference) 普通株式への転換請求権(取得請求権) - 稀釈化防止条項 [償還請求権] 普通株式への強制転換権(取得条項) 取締役選任権 拒否権(Protective Provision) 情報請求権(オブザーバー権、報告義務、立入検査等) エグジットに関する誓約(上場努力義務、マーケットスタンドオフ等) 新株引受権 先買権(Right of First Refusal) 共同売却権(Co-Sale Right) 強制売却権(Drag Along Right) [買戻請求権] キーマン条項(職務専念義務、競業避止義務等) 定款記載事項 株主間契約 記載事項
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved 4.ベンチャー企業と事業会社のコラボレーション 事業会社がベンチャー企業とのコラボレーションを実現するための必要条件 16 ① 誰と? ベンチャー企業を社内にないスキルセットを持つ社外の有能なチームとして扱う ⇒ 自社でできることをベンチャー企業にアウトソースするのではなく、同じ時間軸で自社ではでき ないことをベンチャー企業と協働することで実現する イコールパートナーシップ(相互尊重)の精神が貫かれなければ必ず失敗する ② 何を? 共通の目標(新たな事業モデルの開発等)を達成するため、それぞれの強みを持ち寄る ⇒ 明確な目標の設定、目標達成のための透明性の高いプロセス、明確な役割分担 ③ どうやって? 財産的価値のある情報やその果実を囲い込まずにシェア ⇒ 知的財産権、データ(個人データ等)の取扱い、秘密保持の範囲を的確に設定、チーム間のコ ミュニケーション戦略、成果物の帰属ルールの公正性、シェア対象となる収益算出の透明性 ④ リスク管理 コ・イノベーションリスク(エコシステム型の場合にはアダプションリスクを含む)の管理 ⇒ 役割分担に応じた責任分担、公正な解消プロセス、コンティンジェンシープラン 締結する契約は業務委託契約ではなく無名契約
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved 事業会社との資本業務提携を行う場合の留意事項 4.ベンチャー企業と事業会社のコラボレーション 資本提携と業務提携を切り分け、資本提携部分はベンチャーファイナンスの資本構成に適合する形で 座組みを作る必要 17 ① 取得する株式 次ラウンドの優先株式 ※ 投資の是非の判断に際し、キャピタルゲインによる収益のみを頼みとしなければならないVCと異なり、事業 上の収益も勘案することができる点で、金融面での投資条件はVCと大きく異なる。 (例) コラボレーションをコミットしながらダウンラウンド防御は必要なのか ⇒ VCラウンドとは異なるラウンドで投資することに合理性 ② 契約の建付け ⇒ 資本提携部分と業務提携部分の契約を分け、資本提携部分は他の投資家との株主間契約の 枠組みで、必要な条件につき検討する。 業務提携部分については、イコールパートナーシップを前提とした協業契約 ③ 株主間契約の条項 業務提携終了時の株式処分については先買権、出資比率維持、取締役選任、買収を見据えた強 制売却条項
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved M&Aエグジット時の留意事項 5.ベンチャー企業のM&A戦略  事業会社に対する売却によるエグジットは、事業上のコラボレーションがある中で、あるいは資本提 携まで進んでいる中で買収を打診するパターン等がある  買収者としての大企業もベンチャーエコシステムの中で想定されたプレイヤー、ベンチャーエコシス テムのロジックの枠内でディールを組み立てていく 18 <留意事項> • Liquidation Preferenceに沿った対価の支払 • ストックオプションの処理 • 経営陣のリテンション
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved Liquidation Preferenceに沿った対価の支払 5.ベンチャー企業のM&A戦略 1.M&Aエグジットの大前提 会社法上の残余財産優先権は清算時のみを想定しているが、ベンチャーファイナンスでは、優先株 式投資を行うすべてのエコシステム内のプレイヤーが、支配権移転時には残余財産の優先分配 ルールに沿って企業価値が各株主に配分されるものと了解している。 ⇒ M&Aでエグジットする場合、その対価の株主間の分配はLiquidation Preferenceに沿って行われ る必要 19 2.Liquidation Preferenceの仕組み  一般的には遅いラウンドほど優先する(D種→C種→B種→A種→普通)  残余財産の分配は、①優先分配額の定めと、②参加条項の定めが重要 ① 優先分配額: 劣後する株式に先立って分配される額 取得価額相当額の優先分配がなされる場合を1倍とし、それ以上の倍率が定められる 場合もある。 ② 参加条項: 優先株式への分配の終了後に普通株式に対する分配に与れるか否か。 優先分配額と合算した分配上限が定められる場合もある(例えば取得価額の2倍等)。 エグジット価格が大きく分配上限に達する場合、普通株式に転換して分配を受けることを 想定 ①②の定めは、ラウンドごとに異なる場合がある。
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved Liquidation Preferenceの例 5.ベンチャー企業のM&A戦略 T社: 普通株式 10万株 A種優先株式 2万株 (@15,000円 優先分配1.5倍 参加上限2倍) B種優先株式 3万株 (@30,000円 優先分配1倍 参加上限なし) (1) A社に15億円で買収される場合 B種優先分配: 30,000 x 30,000 = 9億 A種優先分配: 15,000 x 20,000 x 1.5 = 4.5億 普通株式: [15億 - (9億 + 4.5億)] / 15万 = 1,000円/ 株 普通株主: 1,000 x 100,000 = 1億 +1億 A種株主: 4.5億 + 1,000 x 20,000 = 4.7億 (< 3億 x 2) +1.7億 B種株主: 9億 + 1,000 x 30,000 = 9.3億 +0.3億 (2) A社に150億円で買収される場合 B種優先分配: 9億 A種優先分配: 4.5億 普通株式: (150億 - 13.5億) / 15万 = 91,000円 / 株 A種: 4.5億 + 91,000 x 20,000 = 18.2億 (> 6億) ⇒ 普通株に転換 普通株式: (150億 - 9億) / 15万 = 94,000円 / 株 普通株主: 94億 +94億 旧A種株主:18.8億 +15.8億 B種株主: 37.2億 +28.2億 20
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved ストックオプションの処理 5.ベンチャー企業のM&A戦略 1.ベンチャーファイナンスにおける従業員ストックオプション  資金のないベンチャー企業にとって人材が唯一のリソース。ストックオプションは高度人材を 惹き付けるための唯一の武器  ベンチャーファイナンスの資本政策は、(創業者株式の高エグジット倍率とともに)従業員ス トックオプションを高倍率とすることを目的として導入されているともいえるほど、従業員ス トックオプションの意義は大きい  全部行使のためには一定期間(通常4年)のコミットを要するが、買収時等の例外が定めら れる(single trigger) ※ 付与後2年間は行使できず、継続雇用を前提に、2年後に50%、その後1年ごとに25%ずつ行使できる等 21 2.買収時の処理  インザマネーのオプションについては、企業価値の中から、普通株式の対価から行使価格を 差引いた額をオプション保有者に支払うのが筋  支払い方については、買収後の継続雇用を確保するため一定期間の分割払い等もありうる  従業員に対するエグジット時のオプション現金化は、自身の次の起業のシードマネーや他の 起業家のシード資金供給に充てられることがエコシステム上予定されていることを踏まえて、 公正な処理をしなければならない
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved 経営陣のリテンション 5.ベンチャー企業のM&A戦略 1.ベンチャー企業買収の特徴  ベンチャー企業の買収は、テクノロジーと経営チームの買収の側面(企業価値の多くを占める 認知資産が創業メンバーに付随)  創業メンバーにとって買収は自己の労務投資のエグジット ⇒ サラリーマン社長会社の買収、社歴の長い中小企業のオーナー引退に伴う買収とは大きく異 なる 22 企業価値の源泉となる創業メンバーが、買収企業での永続勤務を必ずしも常には望んでいない中 で、買収企業は、望むものをどのように手中にするか? ⇒ チームやテクノロジーなどの価値を適切に承継するために必要な期間、経営陣に対し、買収目的 達成に必要なインセンティブ付けを実施 (ダメ買収例) 創業者に対して2年間辞めないことを約束させる
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved 経営陣のリテンション 5.ベンチャー企業のM&A戦略 23 2.リテンションプラン  買収に伴い支払われる株式対価の支払い方を、買収目的実現に向け適切にインセンティブ 付けるようデザイン (例) 対価の一部を買収者の累積配当優先株(1年で25%ずつの償還権付)で支払い 通常のアーンアウト条項(EBITDA等を指標とした1-3年のアーンアウト期間中の変動型支払) 創業者株式の一部のみを取得し、残余を一定の条件の下でcall & put  Management Carve Out Plan (MCOP)の活用 MCOP: 普通株式保有者である経営陣に対し、買収正味対価の一定割合(5-10%程度)をベンチャー 企業が支払う • ラウンドが進み創業者持分割合が小さくなった会社で、投資家に対するliquidation preferenceが 大きくなりすぎた場合、普通株式の売却価額に加えて支払い • 支払い方法をデザインすることで買収目的実現をインセンティブ付け
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved Acquihire 4.ベンチャー企業の買収戦略 1.Acquihireとは  ベンチャー企業のプロダクトではなく経営チーム(エンジニア)を買収 ※ facebook, twitter, Yahoo!, Googleなど大規模テクノロジー企業が、人員獲得目的でアーリースタートアップを買収 日本ではKLab等 24 2.ストラクチャー  通常の株式買収後に転籍  対象会社にターゲット人材の引き抜き許容(職務専念請求権の放棄)の対価を支払い、対 象会社を解散・清算 ⇒ 投資家や創業者株主には残余財産分配の形で対価を受領 ⇒ 引き抜き対象者以外は解散に伴って離散  引き抜き対象者には従業員リテンションプランを提供 <リテンションプランのポイント>  対価の種類: 現金、株、混合  対象者の決定:  ファンドの分配:  行使条件: 期間、アクセラレーションのトリガー事由等  分配停止事由: 買収後一定期間で辞めた場合の対処
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    ©2013 Mori Hamada& Matsumoto all rights reserved 5.連絡先 masakazu.masujima@mhmjapan.com tel. 03.5220.1812 森・濱田松本法律事務所 増島 雅和 25