同テーマのチーム制作における
再動機づけの工夫に関する事例
(予稿集p112~p115)
東京工科大学メディア学部
岸本 好弘 三上 浩司
2016年8月7日(日) 東京工芸大学中野キャンパス 1
日本デジタルゲーム学会2016年 夏季研究発表大会
背景
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
2
東京工科大学メディア学部のゲーム教育カリキュラ
ム(2004年度~)
- 専門技術の習得
- チーム制作の経験
- 1年生 基礎技術の習得
- 2~3年生 実践的なゲーム制作⇒学外発表
- 4年生 ゲームに関する卒業研究
背景
ゲーム制作教育
- 専門技術の習得
- チーム制作経験
以前の最初の学外発表
- 3年生夏の「東京ゲームショウ」出展
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
3
背景
Global Mathプロジェクト(2013年~)
- 株式会社ベネッセホールディングス
- インターネットの数学ゲーム専用プラットフォー
ム
- 「きまりを見つける」「解く順番を考える」など
数学的思考を促す
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
4
背景
『どんぐりシュータ―』
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
5
背景
Global Math
http://www.globalmath.info/globalmath_pfweb
/?locale=1
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
6
背景
「Global Mathコンテスト」応募(2014年~ )
- 春休み期間の自主参加
- 参加学年に制限を設けない
コンテストで1年生が成果
- 専門スキルは未熟な低学年生
- 適切な条件を備えた場を提供すれば成果を挙げら
れる
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
7
問題点
「Global Mathコンテスト」連続参加学生の課題
- 「伸び」が鈍い
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
8
研究内容
繰返しによる動機づけの減少
- 難易度のさほど高くない制作
- レベルの停滞
「再動機づけ」の工夫
-「Global Mathコンテスト」チーム制作
- 事後質問紙調査、コンテスト結果で評価
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
9
手法
プロジェクト制作の過程
- 春休み期間中に自主参加
- 過去3回,各年25~28名程度の1年生~4年生が参
加
- 企画案プレゼンおよびチーム編成(1月下旬)
- 企画発表会(2月上旬)
- 中間発表会(2月下旬)
- デバッグ・応募完了(3月上旬)
- 結果発表(3月下旬)
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
10
手法
年度別の参加人数と参加チーム数
- 参加人数は微増
- 参加チーム数は大幅増加
- 入賞チーム数の増加
⇒連続参加する学生の技量の向上
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
11
参加
人数
参加
チーム数
入賞
チーム数
2013年度 25 5 2
2014年度 25 8 2
2015年度 28 10 4
手法
再動機づけの工夫
(1) 作業部屋の用意
- 後輩・先輩のコミュニケーション活発化
- 他のチームへのライバル心
(2) チーム編成を優先
- 組みたい学生同士のチーム
- 1年生だけのチーム
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
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手法
再動機づけの工夫
(3) プログラムアドバイザー
- 技量の高い上級生プログラマーが後輩に教える
(4) 新たな目標設定とチーム内の役割の変更
-「最初から優勝を狙っての制作」「一人チームでの
制作」「企画からプログラマーなどチーム内でまだ
やったことがない役割への変更」「後輩の指導に当
たるプログラムアドバイザーへの任命」
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
13
評価
実績に応じた新たな目標設定の結果
「グローバルマス2014コンテスト」
- 連続参加者への促し「前回より少ないメンバーで
の制作」「異なった職種での制作」
プロジェクト終了後の質問紙調査結果
- 「1回目参加者」「2回目参加者役割変更なし」
「2回目参加者役割変更あり」の3郡に分ける
- 回答「そう思う」5点,「ややそう思う」4点,
「どちらでもない」3点,「あまりそう思わない」
2点,「思わない」1点
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会 14
評価
グローバルマス2014 参加者意識(平均)
役割変更あり
「楽しかった」+0.7点,「学んだ」+0.7点
「作品に満足」-0.1点
役割変更なし
「楽しかった」「学んだ」低下
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会 15
1回目
(N=9)
2回目
役割変更なし
(N=8)
2回目
役割変更あり
(N=4)
楽しかった 4.7 4.3 5.0
学んだ 4.6 4.3 5.0
作品に満足 3.0 2.9 2.8
評価
複数回参加者の成長の実感
「グローバルマス2015コンテスト」
- 同様の役割変更の促し
複数回参加者の意識調査のために行った事後質問紙
調査
-「2回目参加者」「3回目参加者」群で
「どのような点に成長を実感したか」を質問
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
16
評価
グローバルマス2015 複数回参加者の成長実感(平
均)
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
17
2回目
(N=9)
3回目
(N=3)
合計
(N=12)
クオリティ 4.0 4.0 4.0
順位 3.5 3.0 3.4
スキル 3.4 3.0 3.3
リーダー 3.8 3.0 3.7
チームワーク 3.4 3.3 3.4
プレゼン 3.2 3.0 3.2
スケジュール 3.3 4.0 3.4
人に教える 3.5 4.0 3.6
先生・社会人
との係り 3.4 4.0 3.5
評価
グローバルマス2015 複数回参加者の成長実感(平
均)
成長実感大「クオリティ」4.0点,「リーダーシップ」3.7点,「人に教える」3.6点,「先生・社会人と
の係り」3.5点
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
18
2回目
(N=9)
3回目
(N=3)
合計
(N=12)
クオリティ 4.0 4.0 4.0
順位 3.5 3.0 3.4
スキル 3.4 3.0 3.3
リーダー 3.8 3.0 3.7
チームワーク 3.4 3.3 3.4
プレゼン 3.2 3.0 3.2
スケジュール 3.3 4.0 3.4
人に教える 3.5 4.0 3.6
先生・社会人
との係り 3.4 4.0 3.5
評価
グローバルマス2015 複数回参加者の成長実感(平
均)
2回目「リーダーシップ」3.8点,「順位」3.5点
3回目「スケジュール」4点,「教える」4点,「先生・社会人との係り」4点
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
19
2回目
(N=9)
3回目
(N=3)
合計
(N=12)
クオリティ 4.0 4.0 4.0
順位 3.5 3.0 3.4
スキル 3.4 3.0 3.3
リーダー 3.8 3.0 3.7
チームワーク 3.4 3.3 3.4
プレゼン 3.2 3.0 3.2
スケジュール 3.3 4.0 3.4
人に教える 3.5 4.0 3.6
先生・社会人
との係り 3.4 4.0 3.5
考察
「難易度が比較的低い」
同テーマのチーム制作における再動機づけの工夫
- 「より高い順位」外部評価目標のアップ
- 「少人数での制作」「役割の変更」「後輩への指
導者的位置づけ」役割変更
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
20
まとめ
「Global Mathプロジェクト」
自主参加かつ難易度が低い
〇低学年生が活躍
△動機づけ低下による、レベルの停滞
再動機づけ
「実績に応じた新たな目標設定」「チーム内の役割
の変更」
⇒参加者の成長実感
今後「動機づけ」「再動機づけ」の更なる工夫
日本デジタルゲーム学会2016年夏季研究発表大会
21
同テーマのチーム制作における
再動機づけの工夫に関する事例
(予稿集p112~p115)
東京工科大学メディア学部
岸本 好弘 三上 浩司
日本デジタルゲーム学会2016年 夏季返球発表大会 22
質疑応答

Di gra夏ppt 160807終了

Editor's Notes

  • #3 2.1 東京工科大学メディア学部のゲーム教育 東京工科大学メディア学部は,2004年度より本格的なゲーム教育に取り組み始めた.ゲーム開発に必要な専門技術の習得とチーム制作の経験を積ませるカリキュラムに加え,ゲームに関連するテーマの卒業研究を必須としている.1年生は基礎技術の習得,2~3年生は実践的なゲーム制作に重点を置いて,学外発表を目標に取り組むよう指導している.
  • #4 ゲーム制作教育においては,専門技術の習得とチーム制作経験の両方が必要である. 東京工科大学では, 2013年度より3年連続でベネッセホールディングス主催の「Global Mathコンテスト」[1]に作品を応募している[2][3][4][5][6].応募作品の制作にあたっては春休み期間の自主参加を基本とし,学年に制限を設けず参加希望者を募り,チーム制作を行っている.
  • #5 2.2 Global Mathプロジェクト 2013,2014,2015 「Global Math」は,株式会社ベネッセホールディングス(以下「ベネッセ」)がインターネット上に提供している数学ゲーム専用プラットフォームである.各国のクリエイターが制作した多彩なゲームを無料でプレイできるほか,自分が作ったゲームを公開することもできる.Global Mathは数学的思考を促すことを目的としており,単純計算や方程式の暗記などではなく「きまりを見つける」「解く順番を考える」といったゲームを扱うことを方針としている[2]. 本学は,2012年度のプロトタイプ用サンプルゲーム制作プロジェクトに唯一の大学として参加した.翌年2013年度以降は広く新作ゲームを募集するコンテストへの応募という形での参加を続けている[3].
  • #6 どんぐりシュータ― 2016年 今年の春 最優秀賞を受賞 「きまりを見つける」「解く順番を考える」など数学的思考を促す
  • #7 これ以前は,3年生夏の「東京ゲームショウ」出展が学生にとって最初の学外発表の場であった.アマチュアでも容易にゲーム制作・発表が可能となった現状に鑑み,より早い時期に学外の専門家やプレイヤーの評価に接する機会を設ける必要性を感じ,本取組を実施した.その結果,コンテストにおいて1年生が予想を上回る成果を挙げ,専門スキルは未熟な低学年生であっても,適切な条件を備えた場を提供すれば成果を挙げられることがわかった[7].
  • #8 これ以前は,3年生夏の「東京ゲームショウ」出展が学生にとって最初の学外発表の場であった.アマチュアでも容易にゲーム制作・発表が可能となった現状に鑑み,より早い時期に学外の専門家やプレイヤーの評価に接する機会を設ける必要性を感じ,本取組を実施した.その結果,コンテストにおいて1年生が予想を上回る成果を挙げ,専門スキルは未熟な低学年生であっても,適切な条件を備えた場を提供すれば成果を挙げられることがわかった[7].
  • #9 その一方で,連続して「Global Mathコンテスト」に取り組む学生の成果物のレベルについて,筆者らが期待するような「伸び」が認められないことを懸念した.
  • #10 研究内容 同じテーマのチーム制作では回を重ねる毎に技能の習熟,成果物のレベルアップが期待される.しかし,難易度のさほど高くない制作においては,次第に動機づけが弱まり,そのためにレベルの停滞が生じるものと考えられる. そこで筆者らは,同じ「Global Mathコンテスト」を目標とするチーム制作において,参加満足度を保ちながら高い制作レベルを実現するための「再動機づけ」の工夫を行ってきた.その成果を事後質問紙調査,およびコンテスト結果等の外部評価をもとに考察する.
  • #11 3.1 プロジェクト制作の過程 前述したとおり,本プロジェクトは春休み期間中に自主参加を原則に行っている.これまでの3回は,各年25~28名程度の1年生~4年生が参加している. まず,1月下旬に企画案のプレゼンテーションを行い,5~10チームを編成する.次に,企画発表会(2月上旬),中間発表会(2月下旬)とマイルストーンを設定して進捗管理を行いながら制作を進める.発表会ではチーム相互の意見交換の他,教員らからの助言を得て,ブラッシュアップを行う.デバッグを行った後,3月上旬に応募を完了する.その後,例年3月下旬に結果発表が行われる.
  • #12 3.2 参加人数と参加チーム数 表1に,各年度の参加人数・参加チーム数・入賞チーム数をまとめた.参加人数が微増なのに比べ,参加チーム数が大幅に増えている.これは連続参加する学生の技量の向上により,少人数チームもしくは1人での制作が増えているためである.技量の向上は,入賞チーム数の増加からも確認できる.
  • #13 3.3 再動機づけの工夫 参加満足度を保ちながら高い制作レベルを実現するために筆者らが行ってきた「動機づけ」「再動機づけ」の工夫について紹介する. ・作業部屋の用意  初年度はデバック期間だけ共通の部屋で作業をし,それまでの作業場所はチーム毎に異なっていた.しかし2年目以降は,制作の最初から本プロジェクト用の作業部屋を用意した.このことにより後輩が先輩に質問しやすい雰囲気となった.また先輩が後輩の躓きに気づきやすく,早めにアドバイスしやすくなり,コミュニケーションが活発化した.さらに,他のメンバーの進捗状況が目に見えることでライバル心をあおることもできた.
  • #14 ・チーム編成を優先 初年度はプレゼンテーションを経て選抜された企画に対してメンバーを割り当てる形をとった.しかし2年目以降は,より「能動的参加」意識を高めることを目的として,先にチーム編成を行いその中で企画を考えることも許可した.加えて「1年生だけのチーム」を許可することを明言した. ・プログラムアドバイザー 低学年だけのチームで,とりわけ懸念されるのがプログラミングの技能不足である.この点に関しては初年度より,技量の高い上級生のプログラマーをプロジェクト全体のプログラムアドバイザーに任命し,経験の少ない参加者をサポートする体制をとった.このことにより初参加の敷居が下がったと考えられる. ・新たな目標設定とチーム内の役割の変更 2回目以上の参加者,最初からスキルの高い参加者に対しては,「実績に応じた新たな目標設定」や「チーム内の役割の変更」を促すような働きかけを行った. 具体的には「最初から優勝を狙っての制作」「一人チームでの制作」「企画からプログラマーなど,チーム内でまだやったことがない役割への変更」「後輩の指導に当たるプログラムアドバイザーへの任命」などである.
  • #15 4.1 実績に応じた新たな目標設定の結果 2回目の参加となった「グローバルマス2014コンテスト」では,前回参加者には「前回より少ないメンバーでの制作」「異なった職種での制作」などを促した.表2はプロジェクト終了後の質問紙調査結果を,「1回目参加者」「2回目参加者役割変更なし」「2回目参加者役割変更あり」の3郡に分け集計したものである.回答を「そう思う」5点,「ややそう思う」4点,「どちらでもない」3点,「あまりそう思わない」2点,「思わない」1点として数値化した.
  • #16 表2 GM2014 参加者意識(平均) その結果,「2回目役割変更あり」のほうが「2回目役割変更なし」を大きく上回ったのは,「楽しかった」+0.7点,「学んだ」+0.7点であった.「作品に満足」-0.1点と下がっているにもかかわらず参加満足度が上がっているのである.1回目から2回目に移行するときに,「役割変更なし」だと「楽しかった」「学んだ」の数値が低下するが,「役割変更あり」だと数値が上昇することが分かった.
  • #17 4.2 複数回参加者の成長の実感 3回目の参加となった「グローバルマス2015コンテスト」でも,同様の役割変更を促した.表3は複数回参加者の意識調査のために行った事後質問紙調査の結果である.「2回目参加者」「3回目参加者」に分け,繰返し参加することにより「どのような点に成長を実感したか」を尋ねた.2回目参加者は2,3年次生,3回目参加者は3年次生である
  • #18 表3  GM2015 複数回参加者の成長実感(平均)
  • #19 複数回参加者が成長を実感した度合いが高いのが,「クオリティ」4.0点,「リーダーシップ」3.7点,「人に教える」3.6点,「先生・社会人との係り」3.5点であった.
  • #20 2回目と3回目を比較し各々数値の高い項目を見ると,2回目では「リーダーシップ」3.8点,「順位」3.5点.3回目では「スケジュール」4点,「教える」4点,「先生・社会人との係り」4点となる.この結果から3回目のほうがより広い視野での満足を感じていることが窺える.
  • #21 5.考察 3回のプロジェクトを通して「同テーマのチーム制作における再動機づけの工夫」について考察する. 5.1 役割変更  取り組みやすいテーマで,求められるスキルがさほど高くない,「難易度が比較的低い」プロジェクトでは,「より高い順位」といった外部評価目標のアップの他,「少人数での制作」「役割の変更」「後輩への指導者的位置づけ」など前回とは違う役割での参加を促すことによる「再動機づけ」の工夫が有効であることが4.2の結果によりわかった.
  • #22  6.まとめ 自主参加のプロジェクトであっても難易度がさほど高くない場合,次第に動機づけが弱まり,レベルの停滞が生じることは避けられない.筆者らは,再動機づけとして「実績に応じた新たな目標設定」や「チーム内の役割の変更」といった働きかけを行い,こうした工夫が参加者の成長実感につながることを確かめた. 今後は,参加満足度を維持しながら成果物のレベルアップにもつながる「動機づけ」「再動機づけ」を工夫し,より多くの学外発表の場に学生らを挑戦させて行きたい.