by 隠岐広域連合立隠岐病院 産婦人科　総合診療科　診療部長 加藤一朗 ---- 妊産婦からよくある相談 つわりがひどいんです 妊娠初期に出血が少しありましたが大丈夫ですか？ 妊娠中は薬を飲んでもいいですか？ 健診で胸のレントゲンを撮った後で妊娠とわかりました お腹が大きくなって腰が痛いです 妊娠中または授乳中にインフルエンザワクチンしていい？ 乳腺炎の時は母乳はやめた方がいいですか？ 妊娠糖尿病でしたが、産後も注意が必要ですか？ ---- ＜NEURAL GP Networkとは＞ 島根県初・総合診療医育成プロジェクト 地域医療現場と大学を結ぶTeal型組織構造 診療医療の育成は現場においてのみ可能である。 しかし、現場だけでは日本全体の総合診療を成長させるには不十分。 だから、わたしたちは今、 島根県からITを駆使して総合医療のニューラルネットワーク構築を目指します。 NEURAL GP Network WEBサイト: https://shimanegp.com/

1. v
妊産婦から
よくある相談への対応
隠岐広域連合立隠岐病院
産婦人科 総合診療科
診療部長
加藤 一朗

2. 妊産婦からよくある相談
• つわりがひどいんです
• 妊娠初期に出血が少しありましたが大丈夫ですか？
• 妊娠中は薬飲んでもいいですか？
• 健診で胸のレントゲン撮った後に妊娠と分かりました
• お腹が大きくなって腰が痛いです
• 妊娠中または授乳中にインフルエンザワクチンしていい？
• 乳腺炎のときは母乳はやめた方がいいですか？
• 妊娠糖尿病でしたが、産後も注意が必要ですか？

3. 妊娠中は薬飲んでもいいですか？
• 胎児への影響は妊娠時期により異なるためまず妊娠週数確認
• 妊娠3週末までは先天異常は起こらない
• 妊娠4週から7週末までの器官形成期は、先天異常を起こしう
る医薬品が少数ながらある（詳細は日本産科婦人科学会HP掲
載の「産婦人科診療ガイドライン産科編2020」参照）
• 妊娠8週から12週末まで少奇形を起こしうる医薬品が、妊娠
13週から出生までは胎児毒性を起こす可能性のある医薬品が
ごく少数ある（NSAIDｓなど詳細は上記ガイドライン参照）
• 胎児への悪影響だけを心配して医薬品を単純に中止・減量し
た場合、母児を逆に危険にさらす可能性もあるため要注意

4. 健診で胸のレントゲン撮った後に妊娠と分かりました
• 胎児に対する放射線の影響は、被爆時期と被爆量に依存
• 胸部単純レントゲンの胎児被爆量は0.01mGy以下
• 受精後10日では奇形を残すことはない
• 受精後11日～妊娠10週の器官形成期に、50mGy未満の被爆
を受けても奇形発生率が上昇させない（骨盤部CT検査の平均
胎児被爆量は25mGy、最大胎児被爆量は79mGy）
• 妊娠9～26週では中枢神経障害を起こす可能性があるが、
100mGy未満では影響しない

5. お腹が大きくなって腰が痛いです
• 腰痛は、子宮が増大により腰椎が過前彎することで生じるだ
けなく、妊娠時に分泌するホルモンによる骨盤輪の靭帯が弛
緩することでも起こる
• 日常生活の工夫として、片足を台の上に乗せたり、洗濯物を
低い位置に干すなどし、腰椎前彎を抑制する
• NSAIDsを成分として含む湿布は、妊娠後期において胎児の動
脈管収縮など影響があるため用いず、痛みについてはアセト
アミノフェン内服で対応する

6. 妊娠中または授乳中にインフルエンザワクチンしていい？
• 妊婦はインフルエンザに罹患すると重篤な合併症を起こし
やすい
• 妊婦へのインフルエンザワクチン接種はインフルエンザの
重症化予防に最も有効であり、母体および胎児への危険性
は妊娠全期間を通じてきわめて低い
• 妊婦や褥婦にインフルエンザワクチンを接種
することにより、生後6か月までの児のイン
フルエンザ罹患率を減少させる
• コロナワクチンも同様に妊婦は時期を問わず
接種することが勧められている

7. 乳腺炎のときは母乳はやめた方がいいですか？
• うっ滞性乳腺炎に感染が加わると化膿性乳腺炎となり、症状
（発熱、乳房の発赤腫脹・硬結など）は重症化する
• 治療は、安静、局所の冷却、鎮痛剤（アセトアミノフェ
ン）・抗生剤（ペニシリン系または第一セフェム系）投与
• 乳腺炎に対して葛根湯が慣例的に処方されてきたが、エビデ
ンスに乏しいとの報告があり要注意
• 乳腺炎を起こしている乳房からの授乳も可能

8. 妊娠糖尿病でしたが、産後も注意が必要ですか？
• 妊娠糖尿病の女性は将来、糖尿病発生率が高い（通常の7.43倍
との報告もあり）
• 妊娠による糖代謝への影響がなくなる分娩後６～12週の
75gOGTTが有用
• 分娩後初回のOGTTで正常型と判断された場合でも、糖尿病発
生リスクを軽減させるための食事・運動療法などの指導が必要