100円ショップの
ガジェットを分解してみる
2021/01/29
@tomorrow56
Masawo Yamazaki
分解のススメ 第12回 Part3
自己紹介
Facebook: Masawo Yamazaki
Twitter: @tomorrow56
1000円+電子工作
Thousand+DIY
月刊 I/Oで「100円ショップのガジェット分解」を連載中
https://www.kohgakusha.co.jp/io/
書籍情報
単行本
月刊I/O連載の単行本 Part3が出ました
http://www.kohgakusha.co.jp/books/detail/978-4-7775-2182-1
https://amzn.to/32DuGla
Amazon
工学社直販
Part3で分解したモノ
100均ガジェット分解のススメ
•なぜ100均ガジェット分解なのか
• Part3の内容をいくつか紹介
• 電子メモパッド
• 12桁ソーラー電卓
• 完全ワイヤレスイヤホン(TWS)
• 自分流の分解の手順
• お気に入り機材
「個人でも手の届く機材」を使って分解して調べてみる
なぜ100均ガジェット分解なのか
•入手しやすい(近所で手に入る)
•分解への抵抗感が少ない
•玉石混交
ガジェット充実 100円にこだわり
マニアックな商品多め
磁気研究所との
コラボ増加
入手しやすい
分解への抵抗感が少ない
300円
300円
300円 300円
500円
500円
600円
「玉石混交」
USB2.0なのに12Mbpsまで 両耳なのにモノラル再生 1次-2次の絶縁がNG
(電極に触ると危険)
なかなか出会えないものも多数
Part3の内容をいくつか紹介
電子メモパッド
販売価格: 500円
● コレステリック液晶採用
● 繰り返し書いて消せる
Boogie Boardという名前で売られているものと同じ原理
https://www.kingjim.co.jp/sp/boogieboard/
本体を分解
● 「液晶シート」からは2個の電極が出ていて、 テープで制御基板の「液晶シート電極用ランド」 に貼り付け
られている。
● 液晶シート電極の横には「削除ボタン用電極」があり、押すと制御基板のパターンがショートされ、液晶
シートの両面に電圧がかかり画面消去される。
プリント基板
● 基板はガラスエポキシ(FR-4)の両面基板
● 部品は全て面実装部品で片面に実装
● コントローラはワンチップの専用IC、周辺に
電源昇圧用コイルと整流ダイオードがある。
● 基板の裏面には部品はなく、液晶シート電
極用ランドと削除ボタン用のパターンが配置
されている。
コレステリック液晶
● 使用されている液晶シートは「コレステリック
液晶(cholesteric liquid crystal display, 以下
ChLCD)」
● 通常状態では安定した2つの状態が存在
○ 特定波長の光を反射する「Planar state」
○ 弱い散乱で光を反射しない「Focal conic
state」
● ペンで加圧した部分は「Planar state」に変化
し光を反射するので黄緑色に見える
● 電圧を印可すると液晶の配向が揃う
「Homeotropic state」となり、背面の黒を透
過する状態=描画が削除できる
● 電力が必要なのは描画削除だけなので、ボタ
ン電池で超低消費電力動作が可能
コントローラIC
● 中国の「合肥宽芯电子技术有限公司
(BROADSEMI)」の液晶メモパッド専用ICである
「KX360A」、データシートは「道客巴巴(doc88)」
で発見
http://www.doc88.com/p-1082901621286.html
● 合肥宽芯电子技术有限公司(BROADSEMI)」は
中国語・英語の両方で検索したが公式のホーム
ページは発見できず
● 液晶シート制御はワンチップの専用IC(U1)、L1・D1・C3で「昇圧チョッパ回路」を構成し、液晶消去に必要な電圧
を生成して7番ピン(HV)に入力
● 液晶シートは「コレステリック液晶(ChLCD)」でU1の4-5番ピン(X1-X2)の間に接続。
● 削除ボタン(K1)が押されて2番ピン(KEY)がHレベルになると液晶シートの電極間に電圧が印加されて液晶シー
トの内容が消去される
● ロックスイッチ(SW1)をLock側にすると、ボタン電池が切り離されて電圧がかからなくなる。
回路図
回路動作確認
● 消去動作が開始するとK360Aの
HV端子に印加された電圧を使っ
てChLCD電極間に消去電圧
(±15V)がトグル状に印加される
これにより液晶の配向が揃う
「Homeotropic state」となり、背
面の黒を透過する状態=描画が
削除される
分解した感想
● 分解してみると専用ICを使って最小の部品点数で実
現されていることが分かった。
● 動作原理もシンプルで、使用目的を絞ってよく 考えら
れた仕組みの商品という印象
分解した感想
● 分解してみると専用ICを使って最小の部品点数で実
現されていることが分かった。
● 動作原理もシンプルで、使用目的を絞ってよく 考えら
れた仕組みの商品という印象
最後の感想が毎回一番時間がかかっています...
ソーラー電卓
販売価格: 100円
● 12桁表示
● ソーラー電池専用
● アルミフレーム??
これ↑を再び見る機会があって「電卓がマイコ
ンの原点だな」と思い出したのが発端
本体を分解
● 内部はメイン基板と表示用のLCDパネル及び電
源用のソーラーパネルで構成
● ソーラーパネルはリード線で直接メイン基板に
半田付け
● メイン基板にはキー検出用の印刷パターン、シ
リコーン樹脂のキーの裏には導電塗装
● キーを押すとメイン基板上のパターンがショート
され、どのキーが押されたかがわかる仕組み(個
別部品のスイッチ不要)
● キーと電極の位置はキー側のケース上のボス
に基板の穴をはめることで決まる
プリント基板
● メイン基板は紙フェノールの片面基板
● 部品は樹脂モールドされたプロセッサとそ
の周辺部品(セラミックコンデンサ、LED)の
みと少ない
● メイン基板とLCDパネルは電極付フィルム
で接続、フィルムの電極の接続は半田付け
ではなく接着
● 基板裏面にはキー入力検出用の電極が基
板パターンではなく導電塗料で印刷
● 基板の表面と裏面の接続部には穴があい
ていて、導電塗料が表面に回り込むことに
より電気的に接続
● これにより基板自体がローコストの紙フェ
ノール片面基板でよくなる
プロセッサ
● 樹脂モールドされたチップは素性がわからない
ので基本は削ってチップを見てみる
● 樹脂モールド自体(エポキシが多い)はあまり硬く
ないのでヤスリで削りやすい
● 電卓のシリコンチップ(ダイ)は基板パターンに対
して10度ほど傾いて実装
(ボンディングワイヤの接続距離の最適化?)
プロセッサ
● シリコンチップを顕微鏡で拡大して観察
この写真は2500円くらいのUSB接続顕微鏡で撮
影
● 規則的なパターンが並んでいる部分はメモリであ
ることが多い
● チップの周辺の四角い銀色の部分はボンディン
グワイヤ接続用のパッド
● チップサイズは1.8mmx1.8mmと大きめ
● ワイヤ接続だとパッドの数でチップサイズが決
まっている(律速する)ことが多い
● プロセッサ(U1)の電源にはソーラーパネルの出力を
直接接続、電源を安定化させる回路が内蔵されてい
ると推測
● 基板に[+]と[-]のランドがあり、電池を接続して動作さ
せることができるように配慮されている
● LCDパネルはプロセッサと40ピンで直接接続
● キーは合計23個、10本の信号線(K1〜K10)がお互
いに接続される組み合わせ(マトリックス)で検出
回路図
分解した感想
● キースイッチが導電塗料での印刷になっていたり、基板が電池
接続もできるようにして他製品とも共用化できるようにして、コス
トダウンをしている
● 導電塗料によるキースイッチは、耐久性という面では問題があ
るが、壊れたら買い替えればいい、という割切りがはっきりして
いる
完全ワイヤレスイヤホン
販売価格: 1000円
● Bluetooth v5.0
● 連続再生: 4時間
● 充電ケースと併用で10時間動作
イヤホンを分解
● イヤホンのケースはツメで固定なので、隙間に精密ドライバ等を差し込んで外せる
● 内部はメインボード1枚、LiPoバッテリー、スピーカー、充電電極及び磁石で構成
● 各リード線はメイン基板に直接ハンダ付け
プリント基板
● メインボードはガラスエポキシ(FR-4)の 4
層基板
● 表面:メインプロセッサ・水晶発振子
● 裏面:スイッチ・マイク・ 積層チップアンテ
ナ・LED(2個)
● 未実装のU4には、タッチコントローラが
実装可能
メインプロセッサ
● 深圳市中科蓝讯科技股份有限公司
(BLUETRUM, http://www.bluetrum.com/)製の
Bluetoothイヤホン用SoC「AB5376T」
● パッケージはQFN20Pin(少ない)
● 主な仕様
○ 32bit RISC-V + DSP拡張(52MHz)
○ Bluetooth v5.0準拠
○ Programmable GPIO
○ DC-DCコンバータ内蔵
○ LiPo充電制御
○ フラッシュメモリ:無し
● フラッシュメモリ搭載品あり(AB5376A)
● メインプロセッサは充電制御内蔵で充
電電源(5V) とLiPoバッテリーが直接接
続
● 周辺部品は電源フィルタ用コンデンサ
とインダクタ(L5)及び水晶発振子
(26MHz)のみ
● 必要な電源は全てプロセッサ内部で生
成
● 未実装のパターン(U4)にはタッチコント
ロールIC(JL223B)が実装可能
回路図
充電ケースを分解
● 充電ケース内部はメインボード、LiPo バッテリー 及び磁石で構成
● LiPo バッテリ ーはメインボードに直接ハンダ付けされ両面テープで固定
プリント基板
● ガラスエポキシ(FR-4)の両面基板
● 表面には充電制御 IC・インダクタ・充電用コンタクトピンが実装
● 裏面にはマイクロ USB コネク タ・LED(R/B)が実装
充電制御IC
● 富满微电子集团股份有限公司 (SUPERCHIP,
http://www.superchip.cn/)製 の Mobile Power
Management IC「FM9688」
● LiPoの充電モードはトリクル/定電流/定電圧の3
段階
● チャージソフトスタート(直接定電流充電に入る
時、充電電流を設定 値まで徐々に上げるよう制
御)でLiPoへのダメージを保護
● USB電源(5V)からのLiPo充電制御
● LiPoの電圧(3.7V)を5.1Vに昇圧し、+/-
端子経由でイヤホンへ充電
● ケースの充電時はD2(RED)、イヤホン
への充電時は D1(BLUE)の LED が点
灯
回路図
分解した感想
● 中科蓝讯(BLUETRU)は、RISC-V Internationalの
「Strategic Member」(https://riscv.org/members/)
● RISC-V採用でローコストの実例
● TWSイヤホンとして必要最低限の機能に絞って、1
チップで製品を実現
● 基板の未実装パターンにICを追加することでタッチ対
応可能という共通デザインでコストダウン
自分流の分解の手順
● 外装を開封する
● 回路図を作成する
● 部品の素性を調べる
● キレイに写真を撮る
● 顕微鏡でチップを見る
● 分解標本をつくる
外装を開封する
スピーカーネットの下
底面のクッションの下
ビスを外す 嵌め込みをこじ開ける あきらめて切断する
ACコンセント直結のものはほぼ接着
回路図を作成する
基板パターンを追うのに実装部品を取り外す
回路図を作成する
個人的には回路図だけで独立したKiCadを使用愛用
ある意味宗教論争になる
部品の素性を調べる
•マーキングで検索
•AliExpressやAlibabaで検索
•中国の検索サイトでデータシート検索
•機能の似た部品を探す
•機能の似た製品を探す
マーキングでGoogle検索
2TY->PNP Tr S8550
A2SHB->N-ch MOSFET SI2302
N4007->Power Diode 1N4007
AliExpressやAlibabaで商品検索
CdSセル GL5528
IR-Reciever VS838
RGB LED SMD5050
白色LED SMD2835 Audio Amp 8002シリーズ
NSIWAY製
Zhengxin製
中国の検索サイトでデータシート検索
JL223B TOUCH PAD DETECTOR
百度一下 DOC88(道客巴巴)
機能の似た部品を探す
USBチャージャーエミュレータ
深圳市芯卓微科技有限公司「UC2635」
機能・ピン配置一致
LEDドライバIC 上海晶丰明源半导体股份有限公司「BP5131S」
機能一致・ピン配置が左右逆
機能の似た製品を探す
ダイソー_BTイヤホン
マーキングでは型番不明
https://fccid.io/ (FCC申請情報サイト)をよく探します
メインプロセッサ AC6939B
機能・ピン配置一致
きれいに写真を撮る
簡易撮影ボックス
GIMP - GNU Image Manipulation Program
Amazonで1000円くらい

分解標本をつくる
顕微鏡でチップを見る
•樹脂モールドを削る
•USB顕微鏡で写真を撮る
•チップを特定してみる
樹脂モールドを削る
ベアチップ実装の樹脂モールドをヤスリと砥石とカッターで削る
作業のコツ
1. チップが見えるまでは、基板と水平にヤスリと砥石で削る
• 表面を濡らしながら作業すると見やすい
2. チップの端が見えたら「カッター刃の背中」でモールドを削ぐ
• チップ表面を傷つけないように力を入れずに少しづつ作業を
USB顕微鏡で写真をとる
ボンディングワイヤの跡
シリコンチップ
デジタル温湿度計
USBテンキー ソーラー電卓
マウスのセンサーは削らなくてよいのでオススメ
ダイソーの小型ヤスリを愛用

Part2のUSBマウスの例
チップを特定する
USBドングル(送信) マウス本体(受信)
データシートの”Bonding diagram for DICE”と重ねて確認
TeLink Semiconductor (Shanghai) Co., Ltd.「TLSR8510 & TLSR8513」
Part1のワイヤレスマウスの例
お気に入り機材の紹介
超音波カッター
今回も個人で買える機材で分解しています
• ケースが接着されている場合
の成形品を切断する
• 超音波で発生した熱でプラス
チックを溶断、バターのように
切れる
• 刃物は切れ味が良い方が怪
我が少ない
エコーテック
ホビー用超音波小型カッターZO-30プラ
Amazonで25,000円
ホットエアガン
今回も個人で買える機材で分解しています
• 基板上のピン数が多いICや面実
装部品を外すときに使用
• ハンダゴテに比べて基板を傷めず
素早くきれいに部品を外せる
• プリント基板への面実装部品のリ
フローにも使える
858D SMDホットエアーガン
Amazonで10,000円
部品マルチテスター
今回も個人で買える機材で分解しています
• 基板上の部品の値を測定するのに
使用
• 部品種類の自動判別機能が優秀
パッケージだけでは判断できない
FET等の部品を特定するのに役に
立つ
• 本体のIR受光部でリモコンコードを
解析し波形を表示する機能
マルチファンクションテスター TC-1
ShigezoneAkibaの通販で2,750円
https://www.shigezone.com/
ポータブルオシロ
今回も個人で買える機材で分解しています
• 電子回路の動作確認に使用
• 液晶画面一体でタッチパネル操
作、バッテリー内蔵
• プローブ付属
• 測定精度を必要としない動作確
認のような用途では十分使える
FNIRSI
1013D 2CH 100MHz帯域オシロスコープ
Amazonで20,000円
USB充電プロトコルチェッカ
今回も個人で買える機材で分解しています
• USB充電器やモバイルバッテリーが
サポートする各種USB急速充電プロ
トコル(USB BC, USB PD, Quick
Charge, Apple Charger等)のチェッ
ク
• USB PDケーブル情報(e-Marker)の
情報の読み出し
• PCに接続してUSB PD通信のログ解
析
ChargerLAB
POWER-Z KT00
Amazonで7,500円
最後に
noteのマガジンもやっていますので、フォローもよろしくお願いします
https://note.com/tomorrow56/m/ma0073059b5ac https://note.com/tomorrow56/m/mb8ab521c1a56
20220129 100均分解のススメ Part3

20220129 100均分解のススメ Part3