マネジメント・ソリューション
と
IT ソリューションの融合


Abstract
クラウドという IT 環境においては、アプリケーションシステムの導入に対する大
きな障壁は存在しない(SaaS/PaaS)
。つまり、システムを早く導入することその
ものに価値はなく、それがスタンダードである。
このような IT 環境だからこそ、 関係者はシステム技術優位性ではなくユーザー
IT
の業務環境にもっと正しく注意を払うことが期待されていることに気づく必要が
ある。
IT 導入効果を正しく導くために、
マネジメント・アプローチによる IT 導入の取り
組み方をナレッジワーカーを対象(例;営業)に実施したマネジメント・コンサ
ルティング・プロジェクト(テーマ;生産性向上)に沿って研究する。

執筆;坂本

裕司

株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティ
Human Performance & Productivity Technology, Inc.

1
本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
目次
第 1 章;はじめに(IT 導入の現状) .............................................................................................3
第 2 章;要件定義の開始時期 ..........................................................................................................3
第 3 章;見える化の落とし穴 ..........................................................................................................4
第 4 章;業績を向上させる方法 ......................................................................................................5

第 1 節;順序が大切 ................................................................................................... 5
第 2 節;Human Performance Technology ............................................................... 6
第 3 節;正しい BPR .................................................................................................. 6
第 4 節;生産性を向上させるユニークなアプローチ ................................................. 8
第1項

P1 面;デザインアプローチによる業績向上の推進 .................................. 8

第2項

P2 面;MBM による業績向上の監査 ...................................................... 11

第3項

U 面;HQM による就業環境の監査 ....................................................... 12

第 5 節;生産性向上を加速させる IT の活用方法 .................................................... 14
第 1 項;IT は道具である ..................................................................................... 14
第 2 項;営業プロセスにおける IT 活用方法 ........................................................ 14
第 3 項;費用対効果で判断する ............................................................................ 16
第 4 項;MBM、HQM で営業日報作成時間を削除する ...................................... 16
第 5 項;日々の行動と年次評価を連動させる ...................................................... 16
第 6 項;生産性の向上に終わりはない ................................................................. 17
最終章;競争優位性=ソフトウェア×ハードウェア ................................................................ 18
引用文献 ............................................................................................................................................ 19
執筆者紹介 ........................................................................................................................................ 20

2
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第 1 章;はじめに(IT 導入の現状)
IT 導入での失敗の記事や話が昨今特に多く、損害賠償にまで発展するケースも少なくな
い。記事にならないまでも、システムは無事に稼働したが予想していた効果が出てないケ
ースも多いのではないだろうか。その原因は何であろうか。よく聞く話が、
「要件定義がま
ずかった」という理由であるが、では、なぜ要件定義に失敗したのか。その理由を振り返
り、要件定義に失敗しない方法を考え、さらに、業績向上に貢献するマネジメント・テク
ノロジーを紹介する。そして、その業績向上を加速させる IT の活用方法を紹介する。

第 2 章;要件定義の開始時期
経営資源である「ヒト・モノ・カネ」は、活用する順序が大切である。はじめに「ヒト」
を活かし、
「モノ・カネ」と続くべきである。
「ヒト」が介在しない現場であれば、
「モノ・
カネ」中心に活用方法を考えても良いかもしれないが、営業活動など人なしでは成立しな
い業務は、
「ヒト」の活用をはじめに考えるべきである。
IT 導入で
計画される
要件定義に
おいて、
業務
プロセスを
デザインす
ると、
どうし
ても導入が
決まってい
る IT を最大
限活用しよ
うと、IT と
いう「モノ」
中心のデザ
インになっ
図 1;マネジメント=行動

てしまう。仮
に、 度外視
IT
3

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で業務プロセスをデザインした結果、導入が決まっている IT がほとんど活用されないので
は、せっかく予算化した IT 導入プロジェクト自体が無駄に終わってしまう。
よって、IT 中心のデザインでは、一番重要な経営資源である「ヒト」に負担をかける業
務プロセスになり、成果を産み出す「ヒト→モノ→カネ」の好循環が維持できない状況が
発生し、IT 導入の効果が期待を下回る結果になるのである。
これを改善するには、 ではなくヒトを活かす業務を中心にデザインし、
IT
その次にモノ・
カネの有効な活用方法を検討すべきである。いわゆる、Business Process Re-engineering
(BPR)1や要件定義というものは、本来、IT 導入を計画する前に行っておくべきである。

第 3 章;見える化の落とし穴
「見える化」が流行り、それを実現するため、Business Intelligence(BI)を導入した
企業も多いのではないだろうか。結果は、期待通りになっているだろうか。期待通りでは
なかった企業は、図 1 の成果や事実が見えることで一段落していないだろうか。業績を向
上させる根源として、ヒトの行動が変わる必要があるが、成果や事実を見えるようにする
ことによって、行動が変わるだろうと期待を膨らませていなかったであろうか。
上述のように経営資源の考え方の正しい順序は、
「ヒト→モノ→カネ」である。しかし、
「見える化」で期待通りの結果になっていないケースは、
「カネ→モノ→ヒト」の順序にな
っている。この構造的な問題を解決しない限り、最終的に業績(対象;カネ=財務指標)
を向上させるという期待は達成できないのである。つまり、成果と事実を「見える化」す
ることは、動かし難いもの(=静的データ)を見ているだけであって、管理統制すること
はできない。行動(=生産性指標)という、変えられるもの(=動的データ)を管理統制
することで、静的データの期待値を高められるのである。この動的データをモニタリング
していくことを「測る化」と呼ぶ(参照;図 1)
。

本資料で使用する BPR には、ビジネス・プロセスだけでなくその先にある業務プロセス
も含めた上で使用している。
1

4
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第 4 章;業績を向上させる方法
これまで IT 導入がうまくいかない原因を述べてきたが、ここからは対策を考えていく。
結論としては、要件定義を含めた BPR の取り組み方を変えることと、動的データである生
産性指標に効果を与える IT 活用を検討することである。
★1

★2

収益性向上可能性調査

(ビジョン、バリュー、ミッション、
ゴール、戦略)

★4

デザイン

改善/実施

経営資源余力創出

経営資源有効活用

(design approach)

(make effort & work smart)

■BPR
□Ⅰ;Process面

(対象部門における)

収益性向上可能性調査

★3

原因分析

□Ⅱ;Performance面

期待される収益性
★Ⅰ;売上
1.
2.

1.

プロフィットプール
その他

2.

★Ⅱ;コスト
ギャップ

1.
2.

3.

総機会利益額?
その他

4.
5.

★Ⅲ;資産
1.
2.
3.

1.

TPM(思考業務)プロセスデ
ザイン
OPM(処理業務)プロセスデ
ザイン
管理業務(Others)における、
外部損失コストの低減
上記3業務における、基本機
能比率の向上
基本機能比率向上ためのシ
ステム活用

従業員の優良資産としての
活動バラツキ度合い?
固定資産の稼働状況
その他

現在の収益性

2.
3.
4.

Monitoring Based
Managementによる、Total
Performance Indexの向上
トレーニングの実施
コンピタンス・マネジメント
システムサポート

□Ⅲ;Utilization面
1.
2.

Human Quality Monitoring
による、TPM価値の向上
システムサポート

生産性向上ステージ

調査内容
1. 資料調査(BS・PL)
2. 観測調査
3. インタビュー調査
4. アンケート調査

★5
測定/評価

1.
2.
3.
4.
5.

生産性向上(=P1面×P2面×U面)
機会利益額の創出
実益への貢献
余剰資源の活用(人材活用委員会発足)
収益性向上の貢献

収益性向上貢献ステージ
図 2;収益性向上のイノベーションモデル(米国 ISPI が提唱している HPT model を参考
に坂本が作成)
第 1 節;順序が大切
物事には正しい順序がある。上述の経営資源の活用順序同様に、企業の様々な問題解決
にも、まずは何を問題にすべきか、というギャップの整理(★1)があり、次にギャップの
原因分析(★2)
、原因を解決するためのイノベーションのデザイン(★3)
、そして、改善・
実施(★4)し、最後に、測定・評価(★5)がある(参照;図 2)
。これを繰り返し行うこ
とで、企業は成長していくのである。しかし、IT 導入プロジェクトでは、デザインを構築
(★3)しただけで終わっているケースがある。本来であれば、IT 導入で創出された機会利
益を有効活用(★4)し、その状態を定量的に評価(★5)し、次につなげることが重要で
あるができていない。以降では、この正しい順序を踏まえた上で、マネジメントの根幹で
ある「生産性向上ステージ(デザイン“★3”から改善・実施“★4”)
」について、説明してい
く。
5
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第 2 節;Human Performance Technology
Human Performance Technology とは、欧米で用いられているナレッジワーカーを対象
エイチピィティ

「社会的責任を
にしたマネジメント・テクノロジーであり、通称 H P T と言う。HPT は、
感じながら
日々付加価値
を生み出すだ
けでなく、コ
ストを意識し
ているハイ・
パフォーマー
のテクニック
を組織内で横
展開できるテ
クノロジー
(技術) と定
」
義されている
[坂本

裕司,

2007,

図 3;生産性向上の分解式

ペ ー

アイエスピィアイ

ジ: 24]。ここでは、HPT を提唱する I S P I (International Society for Performance
Improvement;US)の日本支部プレジデントを務めていた筆者が、日本市場で展開するた
プ ロ セ ス

パ フ ォ ー マ ン ス

めにオリジナルに開発した生産性向上アプローチとして、
「process 面×performance 面×
ユーティライゼーション

(参照;図 3)の 3 つに分解し各測定技術と共に解説する。
utilization面」

第 3 節;正しい BPR
図 2 のデザイン領域にも記載されているが、生産性向上アプローチをスムーズに進めて
行くためにも、そして、創造されたギャップを確実に埋めていくためにも、まずは原因分
析結果に基づいて BPR を実施することが望ましい。
BPR とは「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマン
ス基準を劇的にカイゼンするために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的に
それをデザインし直すこと」と定義されている [M. ハマー&J. チャンピー, 2002, ページ:
60]。この文面からも BPR は「初めからやり直すこと」であり、既存のものを修正したり
基本的な構造には手を付けずに斬新的な変化を起こすという意味ではないことが理解でき
る。また、パッチワークのような修正、もしくは、既存のシステムを応急手当するという
ことでもない。
必然的に、BPR では企業業績にとってインパクトの大きい効果がもたらされる。本論文
ではこのインパクトを「生産性が向上している状態」と定義し、その意図は実効性のある
6
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経済効果とする。そこでインパクトの意味を深堀してみたい。現状 200 人の組織に BPR を
実施することによって結果的に 100 人の組織まで生産性が向上したとしよう。果たしてこ
の BPR は成功したと言えるだろうか。200 人の内 100 人分の業務生産性向上の可能性が潜
んでいる中で BPR を実施し、結果的に 100 人の余剰人員を創出できたならば達成率は
100%である。一方で 150 人分の業務生産性向上可能性が潜んでいる中で BPR を実施し、
結果的に 100 人の余剰人員しか創出できなかったならば達成率は 66%である。つまり、後
者を成功とは言えない。
このように BPR が劇的なインパクトをもたらすのは、
BPR が
「実施・改革」
される前に、
「見積もり・計画」に基づいて、間違いなくインパクトの大きい対象に対して BPR を実施
するからである。BPR もシステム同様、何かの目的を達成させる道具の一つであり、使い
方次第で効果は異なる。
上記の内容を踏まえた上で、マネジメント・コンサルタントの立場から IT 関係者による
BPR 活動を振り返る。
気になる点として BPR 実施の効果とはそもそも何だったのか、
そし
て、
BPR とは BPR だけで劇的なインパクトがもたらされるにも関わらずそのインパクトが
定量的に回収されないまま IT 導入のステップに入っていないだろうか、という 2 点が挙げ
られる2。
IT 関係者によくある事象として、
「既存のプロセスをベースに情報技術を見てしまってい
る」ことがある。マネジメント・コンサルタントの視点からコメントすると、今現在行っ
ていることを、IT を使って「強化したり・簡素化したり・改善するにはどうしたらいいだ
ろうか」
、と IT を前提に考えた時点で失敗すると指摘しておきたい。期待される成果を定
義し、その成果に到達するためのプロセスをデザインした中で、更なる成果の効果性、も
しくは、効率性が向上する IT の活用方法はないかと強制発想するからこそ、
ユーザーは IT
を活かそうと主体的に行動する。つまり、IT を業務で活かすイメージが出来ているから導
入が成功するのである。IT が導入されると行動が変わるわけではないことを付記しておき
たい。
ベストプラクティスは、どんな時代も社内に存在するものである。

2

論理的に問題の定義を解説する。現状のあるがままの姿に対して、あるべき姿との乖離は
できるだけカネを掛けずに対応する問題(■①)であり、■①で確実に効果を回収してい
るからこそ、ありたい姿とあるべき姿の乖離を抑えるための問題(■②)にカネを投資し
ても効果が大きいと考える。尚、■①は競争劣位を抑えているのであって、競争優位を創
造するのは■②に該当する。
7
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第 4 節;生産性を向上させるユニークなアプローチ
生産性を
向上させる
には大きく
3 つの手法
がある。
分子
が一定で分
母が低減さ
れている状
態(効率性

図 4;生産性向上のスパイラル

向上) 分母
、

が一定で分子が向上されている状態(効果性向上)
、最後に、分母の低減と分子の向上が同
時に進められている状態で、これを生産性向上と呼ぶ。
筆者は業績を向上させるサイクルとして、
「効率性 効果性 生産性」
(参照;図 4)が望
ましいと考えている3。
第1項

P1 面;デザインアプローチによる業績向上の推進
P1 面 と

PDC;非付加価値業務の低減でなく、基本機能比率増大
付加価値業務

非付加価値業務
成果に直結する
業務をサポートす
る業務

成果に直結する業務

無効時間

面を表して
無
時
業
間
務

いる。業務
が存在する
からそこに

就業時間
業務時間

人材が必要

基本機能時間

基本機能

プ ロ セ ス

は、process

になると考
補助機能

無効時間

無業務
時間

えるならば、
業務のやり

現状からの発想

現状からの発想

カイゼン

方を変えな
い限り工数
削減には繋

○
プ ロ セ ス

簡素化

成果からの発想

革新(デザイン)

がらず、結
果、人員低

デ ザ イ ン

コ ン セ プ ト

図 5;process design concept

減にも繋が

3

効率性、効果性、生産性の先に収益性向上が期待でき、更にその先に社会性の向上に繋が
ると考える。
8
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らない4。つまり、BPR は人員数が減るところに効果があると考えられる。これを効率性向
上と呼ぶ。しかし、実際の現場では、作業員であるブルーカラー(以下、BC)や管理・間
接人員であるホワイトカラー(以下、WC)に対しては、人件費削減策として直接的な人員
低減が効果的と期待できるものの、知識労働者であるナレッジワーカー(以下、KW)を人
員低減するというのは実際的ではない。同じ BPR の実施においても、
「BC や WC」のよう
な実益効果に対して「KW に属する人材」に対する効果は実益とは言い難いのが実際であ
る。しかし、いずれの人材を対象にするにしても、BPR は人材が保有する時間(=人件費)
という経営資源を有効に再活用するための対策として使用できることに間違いはない。
プ ロ セ ス

デ ザ イ ン

コ ン セ プ ト

この時間という経営資源を有効に使うアプローチとしてprocess design conceptを紹介
する(参照;図 5)
。一般的な改革では、
「×××の会議は本当に必要か」「この稟議書は本当
、
に必要か」
、
「×××成果物に対する、
○○○手順って本当に必要か」
、
「×××提出物作成に対する、
○○○手順って本当に必要か」
、など現状業務における無効時間や無業務時間の是々非々から
議論が始まることが多い。この取組方に改善効果がないとは言わないがインパクトが大き
いかというとそうでない場合が多い。
そもそも
業務には成
果に直結す
るプロセス
(これを基
本機能とい
う ; basic
function)
と、
基本機能を
補助するプ
ロセス(こ
れを補助機
能という;
auxiliary

図 6;動的データの有効性

function)
で
構成されている。成果に対して付加価値業務である基本機能、及び、補助機能が何かをゼ
ロベースでデザインすると、敢えて対策を施さなくても必然的に無効時間や無業務時間が
E;eliminate(削除;改善 4 原則の一つ)され、インパクトのある改善効果が期待できる。
更にデザインした補助機能の改善にまでアイデアを出し続けることで、効果のインパクト
が大きくなると考えられる。言い換えると、無くて困る業務(対象;基本機能)の議論か
4

ヒトはモノやカネではないので、削減ではなく低減という表現を用いる。つまり、ヒトは
活かすべき環境で適切に活かすことが期待されているのである。
9
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ら始めているから効果が大きいのであって、あれば助かる業務(対象;非付加価値業務)
の議論から始めると効果は小さい。

従業員は、時間という経営資源を会社に貸与する代

わりに給料を得ている。だからこそ、会社にも就業時間管理が求められるのである。例え
ば、年収 600 万の人材における基本機能に該当する金額が 268 万であった場合(参照;図
6)
、この人材が保有している補助機能は 332 万となる。この経営資源の余力を機会利益と
言う。もし読者が経営者ならば、332 万円分の経営資源を、現在の基本機能比率を高めるた
めに更に投入させるか、別の業務の基本機能に投入させたいと考えるだろう。すると、こ
の人材の自社に対する貢献度も大きくなり、業務に対してワクワク感が高揚することは容
易に想像できるだろう。人件費総額という静的データだけではこのようにその人材が貢献
している正しい価値にまでは踏み込めないので、人材の価値に関して誤った判断をしてし
まう場合がある。そこをカバーしてくれるのが P1 面による機会利益に関する動的データ管
理である。
プ ロ セ ス

デ ザ イ ン

コ ン セ プ ト

そして、このワクワク感こそが、process design conceptによる二次的な効果として挙げ
られる。それは、モチベーションの向上である。筆者のコンサルティング経験において、
基本機能比率が高い組織の人材は活き活きしている傾向が強く、一方で、補助機能比率が
高い組織の人材はイライラしている傾向が強い。この傾向はハーズバーグの二要因理論 に
基づいており、基本機能とは成果に直結しているからこそ、むしろ携わることそのものが
楽しいのであって、ある意味時間を忘れてでも一心不乱に取り組んでしまうものであり、
一方、補助機能は成果に直結していないからこそ、意義を見出せず、人間として秩序を失
うことにも繋がっている。但し、業務に携わることが楽しいからと言って長時間労働を容
認することではないことは、改めて付記しておきたい。
以上から、現状へのアプローチではなく、成果に基づいて基本機能をデザインするアプ
ローチは、コスト的にも精神的にも大きな改革インパクトがもたらされることがわかる。
最後に、
「コア業務・ノンコア業務」という業務分類についてもマネジメント・コンサル
タントとして触れておきたい。 業界や BPO 業界では使われる頻度の多い業務分類である。
IT
よく「ノンコア業務はコア業務ではないのでアウトソースしましょう」という提案をクラ
イアントは受けることがあるようだが、果たしてこの見解は正しいのだろうか。筆者は、
コア業務にもノンコア業務にも基本機能と補助機能が混在していると考えている。従って
「ノンコア業務の補助機能はアウトソースする前に BPR によって業務量を削減した上で、
ノンコア業務の基本機能だけをアウトソースしましょう」と提案するべきと考える。この
方がクライアントにとって、アウトソーシングのランニングコストが低く抑えられるだけ
でなく、受注するベンダー側にとっても成果に直結しない補助機能をゼロではないが出来
るだけ初期段階で削減できている。それにより、受注側に運用上発生するかもしれないク
レーム処理などの外部損失コストを抑えられる可能性は大きい。つまり、基本機能比率を
高めている状態というのは、発注側にとっても受注側にとってコスト的にもメリットが非
常に大きいのである。
10
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ここまで述べたように、P1 面での生産性向上アプローチは、現状を簡素化・カイゼンす
るために初期投資ありきで対策を講じるのではなく、期待される成果の定義から基本機能
業務をデザインするために知恵を使うことで大きな効果を導くことができる。収益性向上
を考慮するならば、投資ありきではなく、まずは人間の知恵による効果を期待すべきであ
る。
第2項

P2 面;MBM による業績向上の監査

P1 面では、あるべき進め方を定義することによって実効性のある経済効果を追求してき
パ フ ォ ー マ ン ス

たが、P2 面(performance面)では、その進め方に沿って努力することによる生産性向上
を追求する。ここでは、対象を KW である営業人材に絞って解説する。
ティピィエム

トータル

プロダクティビィティ

オペレーショなる

プロダクティビィティ

KW には 3 つの業務が存在していると考える。1 つ目は T P M (total productivity
モ ニ タ リ ン グ

monitoring )業務で思考業務に該当する。2 つ目は OPM(operational productivity
モ ニ タ リ ン グ

ア ザ ー ズ

業務で処理業務に該当する。
最後にOthers業務で TPM と OPM 以外の業務を
monitoring)
指し管理業務に該当する。これら 3 つの業務において、TPM と OPM はセルフマネジメン
トが可能であるが、Others は会議や打ち合わせ、クレーム処理などの第 3 者が関わる業務
であるので、
セルフマネ
ジメントが
難しいと考
える(参照;
図 7)
。よっ
て、
努力した
結果が確実
に管理でき
る 対 象 は
TPM

と

OPM であり、
この 2 つの
生産性指標

図 7;全体鳥瞰図

を生産性指
ティピィアイ

トータル

パ フ ォ ー マ ン ス

インデックス

数( T P I ;total performance index )に変換させてモニタリングするのが P2 面の生産
性向上活動である。
エムビーエム

モ ニ タ リ ン グ

ベースド

マ

ネ

ジ

メ

ン

ト

P2 面の測定技術としてMBM (monitoring based management)を紹介する。P1 面で
創られた経営資源の余力を活かせているかどうかの答えは、TPM の基本機能に投資できて
いるか、もしくは、新たな TPM に携われているかどうかである。なぜならば、TPM こそ
が競争優位を創造し、OPM や Others は競争劣位を解消する業務と位置付けられるからで
11
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150%

90%
80%

88%

87%

85%
81%

80%
76%

70%

69%

90%

ある。言い
換えると、
OPM

135%

91%

OPM生産性指標

145%
140%

100%

Others の

137%

69%

65%
62%

60%
53%

50%

52%

125%

43%

40%

120%

TPM生産性指標

30%

115%

20%

110%

TPI生産性指数
106%

10%

105%

102%

0%

100%

100%

基準

1

2

3

4

5

6

業務に注力

130%
OPM

49%

47%

46%

60%

59%

58%
55%
127%

7

図 8;TPI=TPM*OPM

8

9

10

や

TPM
TPI

することは、
現状維持さ
せているこ
とであって、
ゼロがプラ
スになる革
新要因は
TPM の 思

考業務に潜んでいるのである。尚、TPM の具体的な事例は「第五節第二項;営業プロセス
における IT 活用方法」で後述する。
実際的に Others の時間管理は第 3 者が関わる業務であるため、
統制のバラつき幅が確実
に安定することはない。バラつきが不安定な業務の管理を徹底するより、セルフマネジメ
ントが可能で、バラつき幅が抑えられる TPM と OPM を管理する方が、効果の確実性は高
い(参照;図 8)
。
TPM も OPM も生産性指標であるので、分子に成果物、分母に時間を置いて測定を進め
る。同じ会社の営業部門において、処理業務であるからこそ OPM の業務内容には違いは見
られないが、思考業務であるからこそ TPM は営業支社によって異なることはある。この場
プロダクティビィティ

バイ

オブジェクティブ

合、TPM と OPM をProductivity By Objective(PBO) 技術を使用し生産性指数(TPI)
へ変換することで、
支社ごとに異なる業務の生産性向上の比較も可能になる。
TPI 指数が向
上するということは、一般的に TPM の成果レベルが向上しているか(期待される成果レベ
ルの向上)
、OPM への投入時間が低減されているか(機会利益の創出)であり、この 2 つ
に対して管理職と担当者が協力して真摯に努力することで安定的に向上する。特に、一人
ひとりにおける TPM レベル向上に対する努力の先に、
イノベーションが潜んでいると考え
る。
第3項
P1

U 面;HQM による就業環境の監査

面によるあるべき姿の定義と実行、及び、P2 面による努力の向上によって生産性は飛

躍的に向上する。しかし、重要なことは就業時間内で最大限の成果を出すことであり、長
時間労働で計画以上の成果を期待することは、生産性の高い組織とは言えない。そこで、U
ユーティライゼーション

面(utilization面)では、競争優位につながる TPM と就業時間との関係をモニタリング
する。
12
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U 面の測
定技術とし
て
エイチ・キュー・エム

H Q M

(

ヒューマン

human

クオリティ

quality
モ ニ タ リ ン グ

monitoring)
を紹介する。
P2 面で積極
的に取り組
んだ非定形
図 9;HQM

業務である
TPM の生産

性向上を目指すことによって、不幸にも超過労働に繋がっているようでは正しい生産性向
上とは言えない。
一方で一生懸命業務に従事しているものの、
TPM を除いた OPM や Others
だけでは KW として期待に応えているとは言い難い。
そこで、
「TPM への投入時間」と「就業時間から TPM を差し引いた時間」
」のバランス
を監査する

MBM

(参照;図 9)
。
測 定の際 にま
ず は代表 値を
決 める必 要が
あ り、社 内で
ハ イ・パ フォ

HQM

ー マーと 呼ば
れ る人材 グル
ー プの最 頻値
を 代表値 に設
定 するこ とが
望 ましい 。例
え ば、こ のグ
ル ープの 最頻
値 と し て

図 10;バラツキを抑えレベルを向上

「TPM への投
入時間」 「就
と

業時間から TPM を差し引いた時間」
の最頻値の割合が
「2:6
(=一日就業時間;8 時間) 」
13
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であった場合、このバランスから導かれる TPM の価値(72=2×62)を 100 とし、同様に
実績を測定した結果の実績値と比較しバラつきをモニタリングする。
図 9 の例では、代表値に対して実績値が上にバラついている。これは代表値そのものの
レベルを向上させることが可能であると推測できる。具体的には、この組織における TPM
の管理レベルでは現状の投入時間的に十分対応できる就業環境であり、管理レベルをもっ
と向上させて知的に挑戦する業務を用意することが求められる。
そもそも、競争優位につながる TPM という思考業務の成果が導かれていない要因は、2
つある。1 つは、理由はどうであれ計画的に正しく TPM に時間を投入できていない場合で
ある。もう 1 つが本人に能力がない場合である。前者をモニタリングするために HQM を
使用し、後者モニタリングするために P2 面で MBM を使用する。
P1 面における効率性向上において確実に実効性のある経済効果を回収し、P2 面における
効果性向上において P1 面で回収された経営資源を競争優位に繋がる業務(対象;TPM)に
対して有効に活用する。そして、U 面における生産性向上で TPM に対して投入している経
営資源の有効度を決められた就業条件内で最大に活かすことに知恵を出す。そうすること
によって、管理の不確実性が高い KW 各自の U 面に関するバラつきを出来るだけ抑え(モ
ード C からモード B) 2 面に関するレベルを高める管理(モード B からモード A)が可
、P
能になる(参照;図 10)
。この管理サイクルを管理者と担当者で共有することが、図 1 にあ
るように「行動の測る化」を徹底することにつながる。
第 5 節;生産性向上を加速させる IT の活用方法
これまで BPR の進め方と生産性向上のアプローチについて述べてきた。上述のように業
務プロセスの定義と監査ができている状態になって、初めて有効的な IT の活用方法を検討
すべきである。
第 1 項;IT は道具である
IT は道具である。ゆえに意図をもって使い切ることが必要である。IT の活用範囲は、上
あし

述の TPM の基本機能以外で活用すべきである(参照;図 12)「人間は考える葦である」
。
とパスカルが言っているように、
人間は知恵を創出することが期待されており、
必然的に、
TPM の基本機能を IT が代替することは、人間の存在意義を消してしまう。本来、人間で
ある以上 TPM という思考業務が不要になることはない。よって KW が保有している限ら
れた時間を TPM の基本機能へ最適投入5し、レベルの高いアウトプットを行うことができ
るかを念頭に置き、TPM の基本機能以外のところで IT を活用すべきなのである。ここを
明確にして IT を導入することと、なんとなく IT を導入すれば業績が良くなりそうという
イメージで IT を導入するのでは、効果の違いは歴然である。
第 2 項;営業プロセスにおける IT 活用方法
5

最大投入ではない。
14

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例えば、
KW である営業における TPM の代表的な業務として提案資料作成という業務が
No
1

工程(プロセス)

基本/補助

市場の情報を集める

Eliminate ⇒ マーケティング部門へ

2

顧客に関する情報(戦略・財務)を集める

3

競合他社の情報(戦略・財務)を集める

時間/人

人数

補助

4

1

補助

4

1

補助

Simplify ⇒ IT化へ

4

1

4

類似する事例を集める

補助

4

2

5

自社の製品を検証する

補助

5

2

6

自社の担当製品情報を集める

補助

4

1

7

自社の担当製品以外の情報を集める

補助

4

1

8

提案のアジェンダを熟考・確定する

補助

5

2

9

提案のアジェンダに沿った各コンテンツ・ソリューションを作成する

基本

24

あるが、
仮に、
「クライア
ントの収益
性(“売上-

3

Combine ⇒ ビジネス企画へ

10

定量的効果のバラツキ(楽観値・非観値・最頻値)を検証する

補助

8

2

11

資料テンプレートを用意する

補助

5

全体の整合性を調整する

補助

5

2

本)
を向上さ

1

12

コ ス ト ”÷ 資
せるアイデ
アの立案」
と

図 11;プロセス面における ECRS の展開

いう成果定
義に基づいて、そのプロセスを図 11 のように現状プロセスを振り返った場合、IT が活用で
きるのは、基本機能ではなく、補助機能であることが理解できるであろう。まずは、この
プロセスを業務改善の四原則である E・C・R・S
(E;eliminate“削除”、
C;combine“結合”、
R;re-arrange“入替”、S;simplify“簡素化”)などを使い、他部署に渡した方がより生産性
が向上するのであれば、それらを切り出し、残った補助機能に対して IT 活用を検討する。
図 12 では、プロセス No.2 から No.4 がその対象となる。例えば、No.2 の「顧客に関する
情報(戦略・財務)を集める」ことに IT を活用するのであれば、この提案資料作成業務の成
果定義を参考にして、No.2 の活用場面をより具体的に定義し、その上で、情報の格納方法
や取り出し
P2;performance面

U;utilization面

方法を検討
デザインアプローチ

する。
そうす

IT活用検討範囲

TPM

セ
ル
フ
マ
統
ネ
制
ジ
可
メ
ン
ト
可

80%
(24%)

20%
(6%)

効果性向上

ることで、
単

Doing the right things.

30%

に、
顧客の住

OPM

50%
(13%)

50%
(13%)

所、
事業内容、

25%
セ
ル
フ
マ
統
ネ
制
ジ
難
メ
ン
ト
難

効率性向上

IR 情 報 や

Doing things right.

Others
60%
(27%)

45%

URL を顧客

40%
(18%)

現状アプローチ

基本機能

ハーズバーグの二要因理論
1.
2.
3.
4.
5.
6.

達成
認められること
仕事それ自体
責任
前進
成長

満足要因の向上

64%

36%

補助機能

不満足要因の解消

情報として
管理するだ
けではなく、

デザインアプローチ

顧客の投資
P1;process面

図 12;IT 活用範囲

現状アプローチ

予算額やこ
れまでの商

談記録、キーマンの特徴などの提案に役立ちそうな情報を格納しようという発想が出てく
るはずである。
また、これらのプロセスは、業務記述書などに定義され、提案段階で各営業担当者が確
認するのだが、印刷されたものやパソコンに電子化されたものを毎回見るのも時間がかか
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る。その時間を短縮するために IT を活用すれば、商談を登録する際に、必要なプロセスが
画面上に表示され、かつ、関連部署や担当者、連絡先のリンクまでが自動的に生成するこ
とができるだろう。
第 3 項;費用対効果で判断する
しかし、便利さだけで IT 化してはいけない。必ず、費用対効果で判断すべきである。先
程の図 11 を例にすると、No.2 から No.4 の必要時間は、 時間×1 人)+(4 時間×1 人)
(4
+(4 時間×2 人)で 16 時間となる。これが IT 化することで 1 時間に短縮できる場合、1
時間当たりの単価を 5,000 円で計算すると 15 時間×5,000 円=75,000 円になる。
月に 10 回
提案活動を行う場合、750,000 円になり、この金額と IT の導入費用やライセンス料を比較
し、費用対効果が期待できる場合に IT を導入すべきである。そして、IT 化によって浮いた
時間を基本機能に割り当てることでより生産性が向上するのである。基本機能に時間を再
割り当てすることを忘れると、人は自然と楽な方に流れ、浮いた時間を浪費してしまい生
産性は向上しないのである。こういう状態を「時間が蒸発している」と言い、例え IT を導
入して業務プロセス改革に貢献していたとしても、マネジメント上、生産性が向上してい
るとは表現しない。
第 4 項;MBM、HQM で営業日報作成時間を削除する
営業担当者の 1 日の就業時間で改善余地のあるものとして、営業日報の作成時間を挙げ
る企業も少なくないのではないだろうか。日中忙しく業務を行い、1 日の終わりに今日行っ
たことを振り返り営業日報としてまとめる。分刻みで行動している人であるほど書くべき
ことが増え、この作業にかかる時間は多くなる。その改善策として、MBM と HQM、さら
に IT を活用することをお勧めする。例えば、商談管理に顧客との打合せや提案書作成作業
など最低でも 1 週間分の計画と予定を予め登録しておく。そして、日次で行動結果も登録
する。それを予実としてレポートする機能があれば、営業日報を改めて書かずとも管理者
への報告資料は作れる。さらに、時間という経営資源配分状況まで踏まえて定量的に報告
できるのである。また、携帯端末からの入力がより効果的であれば、その検討も進め、定
性的な情報やメモも残したいのであれば、SNS なども利用し、いつでも引き出せる状態に
しておく。
このように、営業での IT の活用方法は、商談の進捗や営業成績と言った結果管理だけで
なく、営業担当者を支援する機能が充実しているべきである。そうすることで、現場で IT
が活用され、より精度の高い情報をもとにした結果指標や財務指標を経営者や管理者が見
ることができ、正しい経営判断ができるのである。

第 5 項;日々の行動と年次評価を連動させる
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MBM や
HQM を利
用すること
で日々の行
動が定量的
にモニタリ
ングされて
いる状態を
作り出せた
なら、
次は、
これを年次
評価にも活
用していき
たい。年次
図 13;CRM と HCM の連携

評価時にお
いて、評価

期間になってはじめて被評価者の実績を思い浮かべ、感覚的なものを数値に置きかえ評価
結果としていないだろうか。その結果が被評価者にとって納得できるものであれば良いが、
そうでない場面も多くみられる。日々の MBM や HQM が年初に比べてどのくらい向上し
たのかによって評価が行われていれば、納得感が得られると考える。最近は、人事情報と
してコンピテンシーが取り上げられているが、まだまだ定性的な指標が多く、納得感や公
平性が薄い。
そこに MBM や HQM を利用するのである。人事情報に IT を活用すれば、蓄積された
MBM や HQM の推移をグラフで視覚的に表現でき、
自分の今の状況がしっかりと把握でき
る。それによって、上司も公平に評価できるし、評価された社員にも納得感が得られる。
またこの情報は、評価だけでなく組織作りにも活用できる。例えば、営業の提案チームを
作る際、
「今回は製造業のコスト削減に関する提案のレベルが 3 以上の人材を 2 名欲しい」
といった場合に、人事情報システムを検索することで瞬時に見つけることができる。この
ように営業支援システムと人事情報システムを連動させることこそが、IT を使い切ってい
る状態といえるだろう。

第 6 項;生産性の向上に終わりはない
但し、これで業務プロセスの定義や IT 活用は終わりではない。TPM(思考業務)のレベ
ルを向上させ、それに伴って業務プロセスの見直しを行い、効率性の向上、効果性の向上、
生産性の向上、そして新たな効率性の向上、効果性の向上というようにスパイラルさせて
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成長させていくことが期待される。このような変化に伴い、IT の活用目的や範囲も再構築
されるべきである。改めて注意を払っておきたいことは、IT の利便性を高めることが目的
ではなく、業務の更なる効率性、効果性、そして、生産性を向上させることを目的に IT を
どう活かしていくのかを、定量的なデータに基づいて再構築していくことが目的である。
その為にも日々のモニタリングデータが必要になってくる。
しかし、これらのデータ収集を日々手作業で行うと、改めて収集作業、及び、情報の整
理・整頓作業が発生する。対象が少人数で収集が短期間であれば、モニタリングデータの
収集・整理・整頓作業へ時間を投入することはそれほど問題にはならないが、対象人数が
増え収集が長期間になれば、モニタリングデータの収集・整理・整頓作業自体にも IT を活
用すべきである。モニタリングされたデータを活かして生産性指標向上につなげることを
成果物とするならば、担当者には入力させるだけの基本機能に集中させ、管理者はその情
報から生産性指標向上に繋がる知恵を出すだけの基本機能に集中させるために、モニタリ
ング活動そのものにも IT の仕組みを導入することは、効果性向上に期待できるものと考え
られる。

最終章;競争優位性=ソフトウェア×ハードウェア
ハードウェアは IT などの種々ツールのことで、それらはどこの企業でもカネさえあれば
導入できるものである。
しかし、
これだけで他社に対して競争優位になれるとは言えない。
そこでソフトウェア(人材)による生産性向上が期待される。
「生産性には企業の努力がす
べて映し出される一方、企業のコントロール外の要因は排除されるのだ。生産性こそ、経
営陣にとって何よりの腕の見せ所なのである」 [P. F. ドラッカー, 2008, ページ: 288-289]
とドラッカーが指摘するように、ソフトウェアの生産性向上は、通常外部に発表されるも
のではないからこそ、他社との競合関係を有利にすることに役立つ活動である。
「ソフトウェア×ハードウェア」は、この論文のテーマの「マネジメント・ソリューショ
ン×IT ソリューション」に言い換えられる。カネを掛けずに知恵を使ってマネジメント・ソ
リューションを実施した上で、カネを掛けてでも IT ソリューションに投資すれば、クライ
アントにとって業績向上という成果が期待以上にもたらされる可能性が高まることに、ワ
クワクしていただきたい。全ての物事には、必ず正しい順序が存在するのであるから。
最後に、読者賢者からの御叱正を乞う所存である。

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引用文献
M. ハマー&J. チャンピー. (2002). リエンジニアリング革命. 日本経済新聞社.
P. F. ドラッカー. (2008). マネジメント
坂本

務め、責任、実践Ⅰ. 日経 BP.

裕司. (2007). ホワイトカラーの生産性を飛躍的に高めるマネジメント. 産業能率大

学出版部.

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執筆者紹介

坂本

裕司(さかもと

ゆうじ)

yuji.sakamoto@hppt.jp
hppt.jp

1973 年奈良市生まれ。01 年英国ノッティンガム大学経営大学院修士課程修了(MBA;経営学修士)
。統計士。96 年
鐘紡株式会社(現クラシエ HD 株式会社)
、独立系コンサルティングファーム;コンサルタント、外資系コンサルティン
グファーム;Director
(NY・US) 独立系コンサルティングファーム;取締役
、
(Tokyo・Jpn) ISPI
、
(international society
for performance improvement;米国本部=ナレッジワーカー・ホワイトカラー生産性向上研究団体)日本支部プレジ
デントを経て、12 年株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティ;代表取締役。生産性を「効果性 × 効率性」と分解し、知識
労働者であるナレッジワーカーを対象にした“効果性”向上マネジメント技術;Per HPT(Human Performance
Technology)及び管理・間接部門のホワイトカラーを対象にした“効率性”向上マネジメント技術;Pro HPT(Human
Productivity Technology)を開発し、ナレッジワーカー・ホワイトカラーの生産性向上に関するマネジメント・コンサ
ルティング活動並びにマネジメント担当者の育成活動を、
国内・欧米・アジアを中心に展開。
各測定技術
(BF/AF, MBM,
HQM, BPR-I など)を駆使したマネジメント・コンサルティングは、実効性のある経済効果が期待できることからクラ
イアントの評価も高い。
専門は経営工学・経営科学・統計学。
領域は、
Human Performance & Productivity Technology.
ナレッジワーカー・ホワイトカラー生産性向上研究団体である ISPI 米国本部と提携を促進させ、アジア地域・日本国
内で最初となる日本支部を設立しプレジデントに就任(03-11)
。在任中に、ISPI Global Annual Conference にてアジ
ア初となる 4 年連続プレゼンテーション・セッションのリードプレゼンター(03-06)
、更に日本人初となる ISPI グロ
ーバル・セッションのパネリスト(04)を務める。
「マネジメント・アプローチ × IT アプローチ」
もコーポレートテーマとし、
Global IT vendor、
Domestic SIer、
Global
IT consulting firm 等と研究会活動を推進させ、個人の生産性向上を企業の収益性向上に貢献させる新しいコンセプト
を数多く発信している。IT 業界による「見える化」から測定技術を応用した「測る化」の徹底を科学的にサポートして
いる。現在弊社が取り組んでいる IT アプローチとの組み合わせ代表例として、
「測定技術 × “ERP, SCM, CRM・SFA,
HCM, Talent Management”」
、など、他多数。
その他、独立行政法人中小企業基盤整備機構、株式会社マーケティング研究協会、四国生産性本部、一般社団法人日
本能率協会、テンプル大学、Oracle Applications Users Group(OAUG)などの講師も務める。

主要著書・訳書・寄稿
『考える営業』
(09)『戦略的営業利益向上マネジメント』
、
(08)『ホワイトカラーの生産性を飛躍的に高めるマネジ
、
メント;HPT の実践マニュアル』
(07)
、以上産業能率大学出版部。
『メンタリングの奇跡』
(03)『MBA のリスクマネ
。
ジメント』
(02)
、以上 PHP 研究所。
『週刊東洋経済(東洋経済新報社)、
』『人材教育(JMAM)、
』『人事マネジメント(ビ
ジネスパブリッシング)、
』『ビズテリア経営企画(ビズテリア)、
』『病院経営(産労総合研究所)、
』『ALN World(US)、
』
など、他多数。

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マネジメント・ソリューションとITソリューションの融合

  • 1.
    マネジメント・ソリューション と IT ソリューションの融合  Abstract クラウドという IT環境においては、アプリケーションシステムの導入に対する大 きな障壁は存在しない(SaaS/PaaS) 。つまり、システムを早く導入することその ものに価値はなく、それがスタンダードである。 このような IT 環境だからこそ、 関係者はシステム技術優位性ではなくユーザー IT の業務環境にもっと正しく注意を払うことが期待されていることに気づく必要が ある。 IT 導入効果を正しく導くために、 マネジメント・アプローチによる IT 導入の取り 組み方をナレッジワーカーを対象(例;営業)に実施したマネジメント・コンサ ルティング・プロジェクト(テーマ;生産性向上)に沿って研究する。 執筆;坂本 裕司 株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティ Human Performance & Productivity Technology, Inc. 1 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  • 2.
    目次 第 1 章;はじめに(IT導入の現状) .............................................................................................3 第 2 章;要件定義の開始時期 ..........................................................................................................3 第 3 章;見える化の落とし穴 ..........................................................................................................4 第 4 章;業績を向上させる方法 ......................................................................................................5 第 1 節;順序が大切 ................................................................................................... 5 第 2 節;Human Performance Technology ............................................................... 6 第 3 節;正しい BPR .................................................................................................. 6 第 4 節;生産性を向上させるユニークなアプローチ ................................................. 8 第1項 P1 面;デザインアプローチによる業績向上の推進 .................................. 8 第2項 P2 面;MBM による業績向上の監査 ...................................................... 11 第3項 U 面;HQM による就業環境の監査 ....................................................... 12 第 5 節;生産性向上を加速させる IT の活用方法 .................................................... 14 第 1 項;IT は道具である ..................................................................................... 14 第 2 項;営業プロセスにおける IT 活用方法 ........................................................ 14 第 3 項;費用対効果で判断する ............................................................................ 16 第 4 項;MBM、HQM で営業日報作成時間を削除する ...................................... 16 第 5 項;日々の行動と年次評価を連動させる ...................................................... 16 第 6 項;生産性の向上に終わりはない ................................................................. 17 最終章;競争優位性=ソフトウェア×ハードウェア ................................................................ 18 引用文献 ............................................................................................................................................ 19 執筆者紹介 ........................................................................................................................................ 20 2 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  • 3.
    第 1 章;はじめに(IT導入の現状) IT 導入での失敗の記事や話が昨今特に多く、損害賠償にまで発展するケースも少なくな い。記事にならないまでも、システムは無事に稼働したが予想していた効果が出てないケ ースも多いのではないだろうか。その原因は何であろうか。よく聞く話が、 「要件定義がま ずかった」という理由であるが、では、なぜ要件定義に失敗したのか。その理由を振り返 り、要件定義に失敗しない方法を考え、さらに、業績向上に貢献するマネジメント・テク ノロジーを紹介する。そして、その業績向上を加速させる IT の活用方法を紹介する。 第 2 章;要件定義の開始時期 経営資源である「ヒト・モノ・カネ」は、活用する順序が大切である。はじめに「ヒト」 を活かし、 「モノ・カネ」と続くべきである。 「ヒト」が介在しない現場であれば、 「モノ・ カネ」中心に活用方法を考えても良いかもしれないが、営業活動など人なしでは成立しな い業務は、 「ヒト」の活用をはじめに考えるべきである。 IT 導入で 計画される 要件定義に おいて、 業務 プロセスを デザインす ると、 どうし ても導入が 決まってい る IT を最大 限活用しよ うと、IT と いう「モノ」 中心のデザ インになっ 図 1;マネジメント=行動 てしまう。仮 に、 度外視 IT 3 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
  • 4.
    で業務プロセスをデザインした結果、導入が決まっている IT がほとんど活用されないので は、せっかく予算化したIT 導入プロジェクト自体が無駄に終わってしまう。 よって、IT 中心のデザインでは、一番重要な経営資源である「ヒト」に負担をかける業 務プロセスになり、成果を産み出す「ヒト→モノ→カネ」の好循環が維持できない状況が 発生し、IT 導入の効果が期待を下回る結果になるのである。 これを改善するには、 ではなくヒトを活かす業務を中心にデザインし、 IT その次にモノ・ カネの有効な活用方法を検討すべきである。いわゆる、Business Process Re-engineering (BPR)1や要件定義というものは、本来、IT 導入を計画する前に行っておくべきである。 第 3 章;見える化の落とし穴 「見える化」が流行り、それを実現するため、Business Intelligence(BI)を導入した 企業も多いのではないだろうか。結果は、期待通りになっているだろうか。期待通りでは なかった企業は、図 1 の成果や事実が見えることで一段落していないだろうか。業績を向 上させる根源として、ヒトの行動が変わる必要があるが、成果や事実を見えるようにする ことによって、行動が変わるだろうと期待を膨らませていなかったであろうか。 上述のように経営資源の考え方の正しい順序は、 「ヒト→モノ→カネ」である。しかし、 「見える化」で期待通りの結果になっていないケースは、 「カネ→モノ→ヒト」の順序にな っている。この構造的な問題を解決しない限り、最終的に業績(対象;カネ=財務指標) を向上させるという期待は達成できないのである。つまり、成果と事実を「見える化」す ることは、動かし難いもの(=静的データ)を見ているだけであって、管理統制すること はできない。行動(=生産性指標)という、変えられるもの(=動的データ)を管理統制 することで、静的データの期待値を高められるのである。この動的データをモニタリング していくことを「測る化」と呼ぶ(参照;図 1) 。 本資料で使用する BPR には、ビジネス・プロセスだけでなくその先にある業務プロセス も含めた上で使用している。 1 4 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    第 4 章;業績を向上させる方法 これまでIT 導入がうまくいかない原因を述べてきたが、ここからは対策を考えていく。 結論としては、要件定義を含めた BPR の取り組み方を変えることと、動的データである生 産性指標に効果を与える IT 活用を検討することである。 ★1 ★2 収益性向上可能性調査 (ビジョン、バリュー、ミッション、 ゴール、戦略) ★4 デザイン 改善/実施 経営資源余力創出 経営資源有効活用 (design approach) (make effort & work smart) ■BPR □Ⅰ;Process面 (対象部門における) 収益性向上可能性調査 ★3 原因分析 □Ⅱ;Performance面 期待される収益性 ★Ⅰ;売上 1. 2. 1. プロフィットプール その他 2. ★Ⅱ;コスト ギャップ 1. 2. 3. 総機会利益額? その他 4. 5. ★Ⅲ;資産 1. 2. 3. 1. TPM(思考業務)プロセスデ ザイン OPM(処理業務)プロセスデ ザイン 管理業務(Others)における、 外部損失コストの低減 上記3業務における、基本機 能比率の向上 基本機能比率向上ためのシ ステム活用 従業員の優良資産としての 活動バラツキ度合い? 固定資産の稼働状況 その他 現在の収益性 2. 3. 4. Monitoring Based Managementによる、Total Performance Indexの向上 トレーニングの実施 コンピタンス・マネジメント システムサポート □Ⅲ;Utilization面 1. 2. Human Quality Monitoring による、TPM価値の向上 システムサポート 生産性向上ステージ 調査内容 1. 資料調査(BS・PL) 2. 観測調査 3. インタビュー調査 4. アンケート調査 ★5 測定/評価 1. 2. 3. 4. 5. 生産性向上(=P1面×P2面×U面) 機会利益額の創出 実益への貢献 余剰資源の活用(人材活用委員会発足) 収益性向上の貢献 収益性向上貢献ステージ 図 2;収益性向上のイノベーションモデル(米国 ISPI が提唱している HPT model を参考 に坂本が作成) 第 1 節;順序が大切 物事には正しい順序がある。上述の経営資源の活用順序同様に、企業の様々な問題解決 にも、まずは何を問題にすべきか、というギャップの整理(★1)があり、次にギャップの 原因分析(★2) 、原因を解決するためのイノベーションのデザイン(★3) 、そして、改善・ 実施(★4)し、最後に、測定・評価(★5)がある(参照;図 2) 。これを繰り返し行うこ とで、企業は成長していくのである。しかし、IT 導入プロジェクトでは、デザインを構築 (★3)しただけで終わっているケースがある。本来であれば、IT 導入で創出された機会利 益を有効活用(★4)し、その状態を定量的に評価(★5)し、次につなげることが重要で あるができていない。以降では、この正しい順序を踏まえた上で、マネジメントの根幹で ある「生産性向上ステージ(デザイン“★3”から改善・実施“★4”) 」について、説明してい く。 5 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    第 2 節;HumanPerformance Technology Human Performance Technology とは、欧米で用いられているナレッジワーカーを対象 エイチピィティ 「社会的責任を にしたマネジメント・テクノロジーであり、通称 H P T と言う。HPT は、 感じながら 日々付加価値 を生み出すだ けでなく、コ ストを意識し ているハイ・ パフォーマー のテクニック を組織内で横 展開できるテ クノロジー (技術) と定 」 義されている [坂本 裕司, 2007, 図 3;生産性向上の分解式 ペ ー アイエスピィアイ ジ: 24]。ここでは、HPT を提唱する I S P I (International Society for Performance Improvement;US)の日本支部プレジデントを務めていた筆者が、日本市場で展開するた プ ロ セ ス パ フ ォ ー マ ン ス めにオリジナルに開発した生産性向上アプローチとして、 「process 面×performance 面× ユーティライゼーション (参照;図 3)の 3 つに分解し各測定技術と共に解説する。 utilization面」 第 3 節;正しい BPR 図 2 のデザイン領域にも記載されているが、生産性向上アプローチをスムーズに進めて 行くためにも、そして、創造されたギャップを確実に埋めていくためにも、まずは原因分 析結果に基づいて BPR を実施することが望ましい。 BPR とは「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマン ス基準を劇的にカイゼンするために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的に それをデザインし直すこと」と定義されている [M. ハマー&J. チャンピー, 2002, ページ: 60]。この文面からも BPR は「初めからやり直すこと」であり、既存のものを修正したり 基本的な構造には手を付けずに斬新的な変化を起こすという意味ではないことが理解でき る。また、パッチワークのような修正、もしくは、既存のシステムを応急手当するという ことでもない。 必然的に、BPR では企業業績にとってインパクトの大きい効果がもたらされる。本論文 ではこのインパクトを「生産性が向上している状態」と定義し、その意図は実効性のある 6 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    経済効果とする。そこでインパクトの意味を深堀してみたい。現状 200 人の組織にBPR を 実施することによって結果的に 100 人の組織まで生産性が向上したとしよう。果たしてこ の BPR は成功したと言えるだろうか。200 人の内 100 人分の業務生産性向上の可能性が潜 んでいる中で BPR を実施し、結果的に 100 人の余剰人員を創出できたならば達成率は 100%である。一方で 150 人分の業務生産性向上可能性が潜んでいる中で BPR を実施し、 結果的に 100 人の余剰人員しか創出できなかったならば達成率は 66%である。つまり、後 者を成功とは言えない。 このように BPR が劇的なインパクトをもたらすのは、 BPR が 「実施・改革」 される前に、 「見積もり・計画」に基づいて、間違いなくインパクトの大きい対象に対して BPR を実施 するからである。BPR もシステム同様、何かの目的を達成させる道具の一つであり、使い 方次第で効果は異なる。 上記の内容を踏まえた上で、マネジメント・コンサルタントの立場から IT 関係者による BPR 活動を振り返る。 気になる点として BPR 実施の効果とはそもそも何だったのか、 そし て、 BPR とは BPR だけで劇的なインパクトがもたらされるにも関わらずそのインパクトが 定量的に回収されないまま IT 導入のステップに入っていないだろうか、という 2 点が挙げ られる2。 IT 関係者によくある事象として、 「既存のプロセスをベースに情報技術を見てしまってい る」ことがある。マネジメント・コンサルタントの視点からコメントすると、今現在行っ ていることを、IT を使って「強化したり・簡素化したり・改善するにはどうしたらいいだ ろうか」 、と IT を前提に考えた時点で失敗すると指摘しておきたい。期待される成果を定 義し、その成果に到達するためのプロセスをデザインした中で、更なる成果の効果性、も しくは、効率性が向上する IT の活用方法はないかと強制発想するからこそ、 ユーザーは IT を活かそうと主体的に行動する。つまり、IT を業務で活かすイメージが出来ているから導 入が成功するのである。IT が導入されると行動が変わるわけではないことを付記しておき たい。 ベストプラクティスは、どんな時代も社内に存在するものである。 2 論理的に問題の定義を解説する。現状のあるがままの姿に対して、あるべき姿との乖離は できるだけカネを掛けずに対応する問題(■①)であり、■①で確実に効果を回収してい るからこそ、ありたい姿とあるべき姿の乖離を抑えるための問題(■②)にカネを投資し ても効果が大きいと考える。尚、■①は競争劣位を抑えているのであって、競争優位を創 造するのは■②に該当する。 7 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    第 4 節;生産性を向上させるユニークなアプローチ 生産性を 向上させる には大きく 3つの手法 がある。 分子 が一定で分 母が低減さ れている状 態(効率性 図 4;生産性向上のスパイラル 向上) 分母 、 が一定で分子が向上されている状態(効果性向上) 、最後に、分母の低減と分子の向上が同 時に進められている状態で、これを生産性向上と呼ぶ。 筆者は業績を向上させるサイクルとして、 「効率性 効果性 生産性」 (参照;図 4)が望 ましいと考えている3。 第1項 P1 面;デザインアプローチによる業績向上の推進 P1 面 と PDC;非付加価値業務の低減でなく、基本機能比率増大 付加価値業務 非付加価値業務 成果に直結する 業務をサポートす る業務 成果に直結する業務 無効時間 面を表して 無 時 業 間 務 いる。業務 が存在する からそこに 就業時間 業務時間 人材が必要 基本機能時間 基本機能 プ ロ セ ス は、process になると考 補助機能 無効時間 無業務 時間 えるならば、 業務のやり 現状からの発想 現状からの発想 カイゼン 方を変えな い限り工数 削減には繋 ○ プ ロ セ ス 簡素化 成果からの発想 革新(デザイン) がらず、結 果、人員低 デ ザ イ ン コ ン セ プ ト 図 5;process design concept 減にも繋が 3 効率性、効果性、生産性の先に収益性向上が期待でき、更にその先に社会性の向上に繋が ると考える。 8 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    らない4。つまり、BPR は人員数が減るところに効果があると考えられる。これを効率性向 上と呼ぶ。しかし、実際の現場では、作業員であるブルーカラー(以下、BC)や管理・間 接人員であるホワイトカラー(以下、WC)に対しては、人件費削減策として直接的な人員 低減が効果的と期待できるものの、知識労働者であるナレッジワーカー(以下、KW)を人 員低減するというのは実際的ではない。同じ BPRの実施においても、 「BC や WC」のよう な実益効果に対して「KW に属する人材」に対する効果は実益とは言い難いのが実際であ る。しかし、いずれの人材を対象にするにしても、BPR は人材が保有する時間(=人件費) という経営資源を有効に再活用するための対策として使用できることに間違いはない。 プ ロ セ ス デ ザ イ ン コ ン セ プ ト この時間という経営資源を有効に使うアプローチとしてprocess design conceptを紹介 する(参照;図 5) 。一般的な改革では、 「×××の会議は本当に必要か」「この稟議書は本当 、 に必要か」 、 「×××成果物に対する、 ○○○手順って本当に必要か」 、 「×××提出物作成に対する、 ○○○手順って本当に必要か」 、など現状業務における無効時間や無業務時間の是々非々から 議論が始まることが多い。この取組方に改善効果がないとは言わないがインパクトが大き いかというとそうでない場合が多い。 そもそも 業務には成 果に直結す るプロセス (これを基 本機能とい う ; basic function) と、 基本機能を 補助するプ ロセス(こ れを補助機 能という; auxiliary 図 6;動的データの有効性 function) で 構成されている。成果に対して付加価値業務である基本機能、及び、補助機能が何かをゼ ロベースでデザインすると、敢えて対策を施さなくても必然的に無効時間や無業務時間が E;eliminate(削除;改善 4 原則の一つ)され、インパクトのある改善効果が期待できる。 更にデザインした補助機能の改善にまでアイデアを出し続けることで、効果のインパクト が大きくなると考えられる。言い換えると、無くて困る業務(対象;基本機能)の議論か 4 ヒトはモノやカネではないので、削減ではなく低減という表現を用いる。つまり、ヒトは 活かすべき環境で適切に活かすことが期待されているのである。 9 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    ら始めているから効果が大きいのであって、あれば助かる業務(対象;非付加価値業務) の議論から始めると効果は小さい。 従業員は、時間という経営資源を会社に貸与する代 わりに給料を得ている。だからこそ、会社にも就業時間管理が求められるのである。例え ば、年収 600 万の人材における基本機能に該当する金額が268 万であった場合(参照;図 6) 、この人材が保有している補助機能は 332 万となる。この経営資源の余力を機会利益と 言う。もし読者が経営者ならば、332 万円分の経営資源を、現在の基本機能比率を高めるた めに更に投入させるか、別の業務の基本機能に投入させたいと考えるだろう。すると、こ の人材の自社に対する貢献度も大きくなり、業務に対してワクワク感が高揚することは容 易に想像できるだろう。人件費総額という静的データだけではこのようにその人材が貢献 している正しい価値にまでは踏み込めないので、人材の価値に関して誤った判断をしてし まう場合がある。そこをカバーしてくれるのが P1 面による機会利益に関する動的データ管 理である。 プ ロ セ ス デ ザ イ ン コ ン セ プ ト そして、このワクワク感こそが、process design conceptによる二次的な効果として挙げ られる。それは、モチベーションの向上である。筆者のコンサルティング経験において、 基本機能比率が高い組織の人材は活き活きしている傾向が強く、一方で、補助機能比率が 高い組織の人材はイライラしている傾向が強い。この傾向はハーズバーグの二要因理論 に 基づいており、基本機能とは成果に直結しているからこそ、むしろ携わることそのものが 楽しいのであって、ある意味時間を忘れてでも一心不乱に取り組んでしまうものであり、 一方、補助機能は成果に直結していないからこそ、意義を見出せず、人間として秩序を失 うことにも繋がっている。但し、業務に携わることが楽しいからと言って長時間労働を容 認することではないことは、改めて付記しておきたい。 以上から、現状へのアプローチではなく、成果に基づいて基本機能をデザインするアプ ローチは、コスト的にも精神的にも大きな改革インパクトがもたらされることがわかる。 最後に、 「コア業務・ノンコア業務」という業務分類についてもマネジメント・コンサル タントとして触れておきたい。 業界や BPO 業界では使われる頻度の多い業務分類である。 IT よく「ノンコア業務はコア業務ではないのでアウトソースしましょう」という提案をクラ イアントは受けることがあるようだが、果たしてこの見解は正しいのだろうか。筆者は、 コア業務にもノンコア業務にも基本機能と補助機能が混在していると考えている。従って 「ノンコア業務の補助機能はアウトソースする前に BPR によって業務量を削減した上で、 ノンコア業務の基本機能だけをアウトソースしましょう」と提案するべきと考える。この 方がクライアントにとって、アウトソーシングのランニングコストが低く抑えられるだけ でなく、受注するベンダー側にとっても成果に直結しない補助機能をゼロではないが出来 るだけ初期段階で削減できている。それにより、受注側に運用上発生するかもしれないク レーム処理などの外部損失コストを抑えられる可能性は大きい。つまり、基本機能比率を 高めている状態というのは、発注側にとっても受注側にとってコスト的にもメリットが非 常に大きいのである。 10 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    ここまで述べたように、P1 面での生産性向上アプローチは、現状を簡素化・カイゼンす るために初期投資ありきで対策を講じるのではなく、期待される成果の定義から基本機能 業務をデザインするために知恵を使うことで大きな効果を導くことができる。収益性向上 を考慮するならば、投資ありきではなく、まずは人間の知恵による効果を期待すべきであ る。 第2項 P2 面;MBMによる業績向上の監査 P1 面では、あるべき進め方を定義することによって実効性のある経済効果を追求してき パ フ ォ ー マ ン ス たが、P2 面(performance面)では、その進め方に沿って努力することによる生産性向上 を追求する。ここでは、対象を KW である営業人材に絞って解説する。 ティピィエム トータル プロダクティビィティ オペレーショなる プロダクティビィティ KW には 3 つの業務が存在していると考える。1 つ目は T P M (total productivity モ ニ タ リ ン グ monitoring )業務で思考業務に該当する。2 つ目は OPM(operational productivity モ ニ タ リ ン グ ア ザ ー ズ 業務で処理業務に該当する。 最後にOthers業務で TPM と OPM 以外の業務を monitoring) 指し管理業務に該当する。これら 3 つの業務において、TPM と OPM はセルフマネジメン トが可能であるが、Others は会議や打ち合わせ、クレーム処理などの第 3 者が関わる業務 であるので、 セルフマネ ジメントが 難しいと考 える(参照; 図 7) 。よっ て、 努力した 結果が確実 に管理でき る 対 象 は TPM と OPM であり、 この 2 つの 生産性指標 図 7;全体鳥瞰図 を生産性指 ティピィアイ トータル パ フ ォ ー マ ン ス インデックス 数( T P I ;total performance index )に変換させてモニタリングするのが P2 面の生産 性向上活動である。 エムビーエム モ ニ タ リ ン グ ベースド マ ネ ジ メ ン ト P2 面の測定技術としてMBM (monitoring based management)を紹介する。P1 面で 創られた経営資源の余力を活かせているかどうかの答えは、TPM の基本機能に投資できて いるか、もしくは、新たな TPM に携われているかどうかである。なぜならば、TPM こそ が競争優位を創造し、OPM や Others は競争劣位を解消する業務と位置付けられるからで 11 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    150% 90% 80% 88% 87% 85% 81% 80% 76% 70% 69% 90% ある。言い 換えると、 OPM 135% 91% OPM生産性指標 145% 140% 100% Others の 137% 69% 65% 62% 60% 53% 50% 52% 125% 43% 40% 120% TPM生産性指標 30% 115% 20% 110% TPI生産性指数 106% 10% 105% 102% 0% 100% 100% 基準 1 2 3 4 5 6 業務に注力 130% OPM 49% 47% 46% 60% 59% 58% 55% 127% 7 図 8;TPI=TPM*OPM 8 9 10 や TPM TPI することは、 現状維持さ せているこ とであって、 ゼロがプラ スになる革 新要因は TPMの 思 考業務に潜んでいるのである。尚、TPM の具体的な事例は「第五節第二項;営業プロセス における IT 活用方法」で後述する。 実際的に Others の時間管理は第 3 者が関わる業務であるため、 統制のバラつき幅が確実 に安定することはない。バラつきが不安定な業務の管理を徹底するより、セルフマネジメ ントが可能で、バラつき幅が抑えられる TPM と OPM を管理する方が、効果の確実性は高 い(参照;図 8) 。 TPM も OPM も生産性指標であるので、分子に成果物、分母に時間を置いて測定を進め る。同じ会社の営業部門において、処理業務であるからこそ OPM の業務内容には違いは見 られないが、思考業務であるからこそ TPM は営業支社によって異なることはある。この場 プロダクティビィティ バイ オブジェクティブ 合、TPM と OPM をProductivity By Objective(PBO) 技術を使用し生産性指数(TPI) へ変換することで、 支社ごとに異なる業務の生産性向上の比較も可能になる。 TPI 指数が向 上するということは、一般的に TPM の成果レベルが向上しているか(期待される成果レベ ルの向上) 、OPM への投入時間が低減されているか(機会利益の創出)であり、この 2 つ に対して管理職と担当者が協力して真摯に努力することで安定的に向上する。特に、一人 ひとりにおける TPM レベル向上に対する努力の先に、 イノベーションが潜んでいると考え る。 第3項 P1 U 面;HQM による就業環境の監査 面によるあるべき姿の定義と実行、及び、P2 面による努力の向上によって生産性は飛 躍的に向上する。しかし、重要なことは就業時間内で最大限の成果を出すことであり、長 時間労働で計画以上の成果を期待することは、生産性の高い組織とは言えない。そこで、U ユーティライゼーション 面(utilization面)では、競争優位につながる TPM と就業時間との関係をモニタリング する。 12 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    U 面の測 定技術とし て エイチ・キュー・エム H QM ( ヒューマン human クオリティ quality モ ニ タ リ ン グ monitoring) を紹介する。 P2 面で積極 的に取り組 んだ非定形 図 9;HQM 業務である TPM の生産 性向上を目指すことによって、不幸にも超過労働に繋がっているようでは正しい生産性向 上とは言えない。 一方で一生懸命業務に従事しているものの、 TPM を除いた OPM や Others だけでは KW として期待に応えているとは言い難い。 そこで、 「TPM への投入時間」と「就業時間から TPM を差し引いた時間」 」のバランス を監査する MBM (参照;図 9) 。 測 定の際 にま ず は代表 値を 決 める必 要が あ り、社 内で ハ イ・パ フォ HQM ー マーと 呼ば れ る人材 グル ー プの最 頻値 を 代表値 に設 定 するこ とが 望 ましい 。例 え ば、こ のグ ル ープの 最頻 値 と し て 図 10;バラツキを抑えレベルを向上 「TPM への投 入時間」 「就 と 業時間から TPM を差し引いた時間」 の最頻値の割合が 「2:6 (=一日就業時間;8 時間) 」 13 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    であった場合、このバランスから導かれる TPM の価値(72=2×62)を100 とし、同様に 実績を測定した結果の実績値と比較しバラつきをモニタリングする。 図 9 の例では、代表値に対して実績値が上にバラついている。これは代表値そのものの レベルを向上させることが可能であると推測できる。具体的には、この組織における TPM の管理レベルでは現状の投入時間的に十分対応できる就業環境であり、管理レベルをもっ と向上させて知的に挑戦する業務を用意することが求められる。 そもそも、競争優位につながる TPM という思考業務の成果が導かれていない要因は、2 つある。1 つは、理由はどうであれ計画的に正しく TPM に時間を投入できていない場合で ある。もう 1 つが本人に能力がない場合である。前者をモニタリングするために HQM を 使用し、後者モニタリングするために P2 面で MBM を使用する。 P1 面における効率性向上において確実に実効性のある経済効果を回収し、P2 面における 効果性向上において P1 面で回収された経営資源を競争優位に繋がる業務(対象;TPM)に 対して有効に活用する。そして、U 面における生産性向上で TPM に対して投入している経 営資源の有効度を決められた就業条件内で最大に活かすことに知恵を出す。そうすること によって、管理の不確実性が高い KW 各自の U 面に関するバラつきを出来るだけ抑え(モ ード C からモード B) 2 面に関するレベルを高める管理(モード B からモード A)が可 、P 能になる(参照;図 10) 。この管理サイクルを管理者と担当者で共有することが、図 1 にあ るように「行動の測る化」を徹底することにつながる。 第 5 節;生産性向上を加速させる IT の活用方法 これまで BPR の進め方と生産性向上のアプローチについて述べてきた。上述のように業 務プロセスの定義と監査ができている状態になって、初めて有効的な IT の活用方法を検討 すべきである。 第 1 項;IT は道具である IT は道具である。ゆえに意図をもって使い切ることが必要である。IT の活用範囲は、上 あし 述の TPM の基本機能以外で活用すべきである(参照;図 12)「人間は考える葦である」 。 とパスカルが言っているように、 人間は知恵を創出することが期待されており、 必然的に、 TPM の基本機能を IT が代替することは、人間の存在意義を消してしまう。本来、人間で ある以上 TPM という思考業務が不要になることはない。よって KW が保有している限ら れた時間を TPM の基本機能へ最適投入5し、レベルの高いアウトプットを行うことができ るかを念頭に置き、TPM の基本機能以外のところで IT を活用すべきなのである。ここを 明確にして IT を導入することと、なんとなく IT を導入すれば業績が良くなりそうという イメージで IT を導入するのでは、効果の違いは歴然である。 第 2 項;営業プロセスにおける IT 活用方法 5 最大投入ではない。 14 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    例えば、 KW である営業における TPMの代表的な業務として提案資料作成という業務が No 1 工程(プロセス) 基本/補助 市場の情報を集める Eliminate ⇒ マーケティング部門へ 2 顧客に関する情報(戦略・財務)を集める 3 競合他社の情報(戦略・財務)を集める 時間/人 人数 補助 4 1 補助 4 1 補助 Simplify ⇒ IT化へ 4 1 4 類似する事例を集める 補助 4 2 5 自社の製品を検証する 補助 5 2 6 自社の担当製品情報を集める 補助 4 1 7 自社の担当製品以外の情報を集める 補助 4 1 8 提案のアジェンダを熟考・確定する 補助 5 2 9 提案のアジェンダに沿った各コンテンツ・ソリューションを作成する 基本 24 あるが、 仮に、 「クライア ントの収益 性(“売上- 3 Combine ⇒ ビジネス企画へ 10 定量的効果のバラツキ(楽観値・非観値・最頻値)を検証する 補助 8 2 11 資料テンプレートを用意する 補助 5 全体の整合性を調整する 補助 5 2 本) を向上さ 1 12 コ ス ト ”÷ 資 せるアイデ アの立案」 と 図 11;プロセス面における ECRS の展開 いう成果定 義に基づいて、そのプロセスを図 11 のように現状プロセスを振り返った場合、IT が活用で きるのは、基本機能ではなく、補助機能であることが理解できるであろう。まずは、この プロセスを業務改善の四原則である E・C・R・S (E;eliminate“削除”、 C;combine“結合”、 R;re-arrange“入替”、S;simplify“簡素化”)などを使い、他部署に渡した方がより生産性 が向上するのであれば、それらを切り出し、残った補助機能に対して IT 活用を検討する。 図 12 では、プロセス No.2 から No.4 がその対象となる。例えば、No.2 の「顧客に関する 情報(戦略・財務)を集める」ことに IT を活用するのであれば、この提案資料作成業務の成 果定義を参考にして、No.2 の活用場面をより具体的に定義し、その上で、情報の格納方法 や取り出し P2;performance面 U;utilization面 方法を検討 デザインアプローチ する。 そうす IT活用検討範囲 TPM セ ル フ マ 統 ネ 制 ジ 可 メ ン ト 可 80% (24%) 20% (6%) 効果性向上 ることで、 単 Doing the right things. 30% に、 顧客の住 OPM 50% (13%) 50% (13%) 所、 事業内容、 25% セ ル フ マ 統 ネ 制 ジ 難 メ ン ト 難 効率性向上 IR 情 報 や Doing things right. Others 60% (27%) 45% URL を顧客 40% (18%) 現状アプローチ 基本機能 ハーズバーグの二要因理論 1. 2. 3. 4. 5. 6. 達成 認められること 仕事それ自体 責任 前進 成長 満足要因の向上 64% 36% 補助機能 不満足要因の解消 情報として 管理するだ けではなく、 デザインアプローチ 顧客の投資 P1;process面 図 12;IT 活用範囲 現状アプローチ 予算額やこ れまでの商 談記録、キーマンの特徴などの提案に役立ちそうな情報を格納しようという発想が出てく るはずである。 また、これらのプロセスは、業務記述書などに定義され、提案段階で各営業担当者が確 認するのだが、印刷されたものやパソコンに電子化されたものを毎回見るのも時間がかか 15 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    る。その時間を短縮するために IT を活用すれば、商談を登録する際に、必要なプロセスが 画面上に表示され、かつ、関連部署や担当者、連絡先のリンクまでが自動的に生成するこ とができるだろう。 第3 項;費用対効果で判断する しかし、便利さだけで IT 化してはいけない。必ず、費用対効果で判断すべきである。先 程の図 11 を例にすると、No.2 から No.4 の必要時間は、 時間×1 人)+(4 時間×1 人) (4 +(4 時間×2 人)で 16 時間となる。これが IT 化することで 1 時間に短縮できる場合、1 時間当たりの単価を 5,000 円で計算すると 15 時間×5,000 円=75,000 円になる。 月に 10 回 提案活動を行う場合、750,000 円になり、この金額と IT の導入費用やライセンス料を比較 し、費用対効果が期待できる場合に IT を導入すべきである。そして、IT 化によって浮いた 時間を基本機能に割り当てることでより生産性が向上するのである。基本機能に時間を再 割り当てすることを忘れると、人は自然と楽な方に流れ、浮いた時間を浪費してしまい生 産性は向上しないのである。こういう状態を「時間が蒸発している」と言い、例え IT を導 入して業務プロセス改革に貢献していたとしても、マネジメント上、生産性が向上してい るとは表現しない。 第 4 項;MBM、HQM で営業日報作成時間を削除する 営業担当者の 1 日の就業時間で改善余地のあるものとして、営業日報の作成時間を挙げ る企業も少なくないのではないだろうか。日中忙しく業務を行い、1 日の終わりに今日行っ たことを振り返り営業日報としてまとめる。分刻みで行動している人であるほど書くべき ことが増え、この作業にかかる時間は多くなる。その改善策として、MBM と HQM、さら に IT を活用することをお勧めする。例えば、商談管理に顧客との打合せや提案書作成作業 など最低でも 1 週間分の計画と予定を予め登録しておく。そして、日次で行動結果も登録 する。それを予実としてレポートする機能があれば、営業日報を改めて書かずとも管理者 への報告資料は作れる。さらに、時間という経営資源配分状況まで踏まえて定量的に報告 できるのである。また、携帯端末からの入力がより効果的であれば、その検討も進め、定 性的な情報やメモも残したいのであれば、SNS なども利用し、いつでも引き出せる状態に しておく。 このように、営業での IT の活用方法は、商談の進捗や営業成績と言った結果管理だけで なく、営業担当者を支援する機能が充実しているべきである。そうすることで、現場で IT が活用され、より精度の高い情報をもとにした結果指標や財務指標を経営者や管理者が見 ることができ、正しい経営判断ができるのである。 第 5 項;日々の行動と年次評価を連動させる 16 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    MBM や HQM を利 用すること で日々の行 動が定量的 にモニタリ ングされて いる状態を 作り出せた なら、 次は、 これを年次 評価にも活 用していき たい。年次 図13;CRM と HCM の連携 評価時にお いて、評価 期間になってはじめて被評価者の実績を思い浮かべ、感覚的なものを数値に置きかえ評価 結果としていないだろうか。その結果が被評価者にとって納得できるものであれば良いが、 そうでない場面も多くみられる。日々の MBM や HQM が年初に比べてどのくらい向上し たのかによって評価が行われていれば、納得感が得られると考える。最近は、人事情報と してコンピテンシーが取り上げられているが、まだまだ定性的な指標が多く、納得感や公 平性が薄い。 そこに MBM や HQM を利用するのである。人事情報に IT を活用すれば、蓄積された MBM や HQM の推移をグラフで視覚的に表現でき、 自分の今の状況がしっかりと把握でき る。それによって、上司も公平に評価できるし、評価された社員にも納得感が得られる。 またこの情報は、評価だけでなく組織作りにも活用できる。例えば、営業の提案チームを 作る際、 「今回は製造業のコスト削減に関する提案のレベルが 3 以上の人材を 2 名欲しい」 といった場合に、人事情報システムを検索することで瞬時に見つけることができる。この ように営業支援システムと人事情報システムを連動させることこそが、IT を使い切ってい る状態といえるだろう。 第 6 項;生産性の向上に終わりはない 但し、これで業務プロセスの定義や IT 活用は終わりではない。TPM(思考業務)のレベ ルを向上させ、それに伴って業務プロセスの見直しを行い、効率性の向上、効果性の向上、 生産性の向上、そして新たな効率性の向上、効果性の向上というようにスパイラルさせて 17 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    成長させていくことが期待される。このような変化に伴い、IT の活用目的や範囲も再構築 されるべきである。改めて注意を払っておきたいことは、IT の利便性を高めることが目的 ではなく、業務の更なる効率性、効果性、そして、生産性を向上させることを目的にIT を どう活かしていくのかを、定量的なデータに基づいて再構築していくことが目的である。 その為にも日々のモニタリングデータが必要になってくる。 しかし、これらのデータ収集を日々手作業で行うと、改めて収集作業、及び、情報の整 理・整頓作業が発生する。対象が少人数で収集が短期間であれば、モニタリングデータの 収集・整理・整頓作業へ時間を投入することはそれほど問題にはならないが、対象人数が 増え収集が長期間になれば、モニタリングデータの収集・整理・整頓作業自体にも IT を活 用すべきである。モニタリングされたデータを活かして生産性指標向上につなげることを 成果物とするならば、担当者には入力させるだけの基本機能に集中させ、管理者はその情 報から生産性指標向上に繋がる知恵を出すだけの基本機能に集中させるために、モニタリ ング活動そのものにも IT の仕組みを導入することは、効果性向上に期待できるものと考え られる。 最終章;競争優位性=ソフトウェア×ハードウェア ハードウェアは IT などの種々ツールのことで、それらはどこの企業でもカネさえあれば 導入できるものである。 しかし、 これだけで他社に対して競争優位になれるとは言えない。 そこでソフトウェア(人材)による生産性向上が期待される。 「生産性には企業の努力がす べて映し出される一方、企業のコントロール外の要因は排除されるのだ。生産性こそ、経 営陣にとって何よりの腕の見せ所なのである」 [P. F. ドラッカー, 2008, ページ: 288-289] とドラッカーが指摘するように、ソフトウェアの生産性向上は、通常外部に発表されるも のではないからこそ、他社との競合関係を有利にすることに役立つ活動である。 「ソフトウェア×ハードウェア」は、この論文のテーマの「マネジメント・ソリューショ ン×IT ソリューション」に言い換えられる。カネを掛けずに知恵を使ってマネジメント・ソ リューションを実施した上で、カネを掛けてでも IT ソリューションに投資すれば、クライ アントにとって業績向上という成果が期待以上にもたらされる可能性が高まることに、ワ クワクしていただきたい。全ての物事には、必ず正しい順序が存在するのであるから。 最後に、読者賢者からの御叱正を乞う所存である。 18 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    引用文献 M. ハマー&J. チャンピー.(2002). リエンジニアリング革命. 日本経済新聞社. P. F. ドラッカー. (2008). マネジメント 坂本 務め、責任、実践Ⅰ. 日経 BP. 裕司. (2007). ホワイトカラーの生産性を飛躍的に高めるマネジメント. 産業能率大 学出版部. 19 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
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    執筆者紹介 坂本 裕司(さかもと ゆうじ) yuji.sakamoto@hppt.jp hppt.jp 1973 年奈良市生まれ。01 年英国ノッティンガム大学経営大学院修士課程修了(MBA;経営学修士) 。統計士。96年 鐘紡株式会社(現クラシエ HD 株式会社) 、独立系コンサルティングファーム;コンサルタント、外資系コンサルティン グファーム;Director (NY・US) 独立系コンサルティングファーム;取締役 、 (Tokyo・Jpn) ISPI 、 (international society for performance improvement;米国本部=ナレッジワーカー・ホワイトカラー生産性向上研究団体)日本支部プレジ デントを経て、12 年株式会社エイチ・ピィ・ピィ・ティ;代表取締役。生産性を「効果性 × 効率性」と分解し、知識 労働者であるナレッジワーカーを対象にした“効果性”向上マネジメント技術;Per HPT(Human Performance Technology)及び管理・間接部門のホワイトカラーを対象にした“効率性”向上マネジメント技術;Pro HPT(Human Productivity Technology)を開発し、ナレッジワーカー・ホワイトカラーの生産性向上に関するマネジメント・コンサ ルティング活動並びにマネジメント担当者の育成活動を、 国内・欧米・アジアを中心に展開。 各測定技術 (BF/AF, MBM, HQM, BPR-I など)を駆使したマネジメント・コンサルティングは、実効性のある経済効果が期待できることからクラ イアントの評価も高い。 専門は経営工学・経営科学・統計学。 領域は、 Human Performance & Productivity Technology. ナレッジワーカー・ホワイトカラー生産性向上研究団体である ISPI 米国本部と提携を促進させ、アジア地域・日本国 内で最初となる日本支部を設立しプレジデントに就任(03-11) 。在任中に、ISPI Global Annual Conference にてアジ ア初となる 4 年連続プレゼンテーション・セッションのリードプレゼンター(03-06) 、更に日本人初となる ISPI グロ ーバル・セッションのパネリスト(04)を務める。 「マネジメント・アプローチ × IT アプローチ」 もコーポレートテーマとし、 Global IT vendor、 Domestic SIer、 Global IT consulting firm 等と研究会活動を推進させ、個人の生産性向上を企業の収益性向上に貢献させる新しいコンセプト を数多く発信している。IT 業界による「見える化」から測定技術を応用した「測る化」の徹底を科学的にサポートして いる。現在弊社が取り組んでいる IT アプローチとの組み合わせ代表例として、 「測定技術 × “ERP, SCM, CRM・SFA, HCM, Talent Management”」 、など、他多数。 その他、独立行政法人中小企業基盤整備機構、株式会社マーケティング研究協会、四国生産性本部、一般社団法人日 本能率協会、テンプル大学、Oracle Applications Users Group(OAUG)などの講師も務める。 主要著書・訳書・寄稿 『考える営業』 (09)『戦略的営業利益向上マネジメント』 、 (08)『ホワイトカラーの生産性を飛躍的に高めるマネジ 、 メント;HPT の実践マニュアル』 (07) 、以上産業能率大学出版部。 『メンタリングの奇跡』 (03)『MBA のリスクマネ 。 ジメント』 (02) 、以上 PHP 研究所。 『週刊東洋経済(東洋経済新報社)、 』『人材教育(JMAM)、 』『人事マネジメント(ビ ジネスパブリッシング)、 』『ビズテリア経営企画(ビズテリア)、 』『病院経営(産労総合研究所)、 』『ALN World(US)、 』 など、他多数。 20 本稿に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 ©Yuji SAKAMOTO, Human Performance & Productivity Technology, Inc., 2013. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.