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東大科学哲学ゼミ第10回
  ジェンダーと科学
フェミニズム科学論二つの源流
          1.「客観性」の解体と変容
• 論理実証主義、反証主義(ポパー)時代の合
  理性
• ハンソン、クーンにおける「合理性」
      – ハンソン…理論は観察に先立つ(哲学的考察)
      – クーン…共役不可能性(科学史的考察)




2012/12/17     東大科学哲学ゼミ         2
フェミニズム科学論二つの源流
          1.「客観性」の解体と変容
• R.ローティ『哲学と自然の鏡』
      – 「対応としての客観性」
             • 客観的認識=真理=実在との一致
      – 「意見の一致としての客観性」
             • 多くの主観の集合=間主観性
• 《主体間の合意としての科学理論》
      – 女性が科学する主体として加わることで観察が
        変化する余地
• 自然というテクストの解釈学

2012/12/17            東大科学哲学ゼミ   3
フェミニズム科学論二つの源流
           2.フェミニズム(第Ⅰ期)
• 1792『女性の権利の擁護』メアリ・ウィルストンク
  ラフト
      – リベラルフェミニズム(権利・機会の平等を求める)
• 1830,シャルル・フーリエがféminismeという言葉
  をつくる
• 1892,パリ女性会議(議長:マルグリット・デュラ
  ン)がパリ第五区区役所で開かれて以来
  féminismeという言葉が普及
• 第一期フェミニズムは女性が参政権、財産権を
  手に入れる20c初頭までの運動を言う
2012/12/17      東大科学哲学ゼミ           4
フェミニズム科学論二つの源流
            2.フェミニズム(第Ⅱ期)
• 1963『女らしさの神話』ベティ・フリーダン
      – 女らしさの神話に縛られた米国中産階級の主婦らに
        人間としての自己実現を説く
      – 全米女性会議NOWを結成、リベラルフェミニズムの
        中心となり運動は世界的に広がる
• 70~ラディカルフェミニズムの台頭
      –      ケイト・ミレット『性の政治学』
      –      シュミラス・ファイアストーン『性の弁証法』
      –      男女の性的関係の政治性、家父長制批判
      –      第一回全英女性会議:避妊と中絶の権利の議論

2012/12/17           東大科学哲学ゼミ        5
フェミニズム科学論二つの源流
           2.フェミニズム(第Ⅱ期)
• 第一期フェミニズム運動は知識人中心
• 70s第二期フェミニズム運動は大衆に拡大
• 医学での男性中心性、家父長的性格が問わ
  れ、やがて科学知識全般へ拡大




2012/12/17     東大科学哲学ゼミ    6
女性学のなかでの科学論
• 1975『サインズ――文化と社会における女
  性』(米)
      – 78特集「女性・科学・社会」
             • 男女の役割分業や性差が主要テーマ
             • アドリエンヌ・ツィールマンによる、古人類学における
               「男性=狩猟者」仮説への疑義
             • ダナ・ハラウェイの動物社会学・霊長類学
              – 後に『類人猿の視点』1989に結実




2012/12/17              東大科学哲学ゼミ           7
女性学のなかでの科学論
• 78『季刊国際女性学』(英)創刊
      – 81,特集「女性・技術・革新」
             • 編者ジョアン・ロスチャイルド
             • 「科学と技術が伝統的に男性領域と見なされてきたこ
               とがフェミニスト分析において批判的次元を与え、それ
               が寄稿者の基礎的前提をなしている」
• 83『女性vsテクノロジー』J.ロスチャイルド



2012/12/17             東大科学哲学ゼミ        8
80sジェンダー概念の導入
• 生物学的性差(セックス)と社会文化的構築
  物としての性差(ジェンダー)
• 男女の生得的違いとして納得させられてきた
  ことの多くがジェンダーだったのではないか




2012/12/17        東大科学哲学ゼミ   9
カルチュラルスタディーズとの接近

• カルチュラルスタディーズ
      – コミュニケーション論やメディア論への密着
      – 大衆文化のもつ暗黙の政治性について分析
      – 1964,バーミンガム大に現代文化研究センター
        (CCCS)という制度的基盤をGet
      – 英米で発展、世界的潮流として人文系の一分野
        となっている



2012/12/17         東大科学哲学ゼミ       10
科学のカルチュラルスタディーズ
        1.CSと科学技術論の遠さ
• 英国カルチュラルスタディーズ:潜在的な祖先で
  あるはずのフランクフルト学派からは切り離され
  ていた
• 70s~80sはアルチュセールから影響があったが
  科学主義的傾向そのものは問題にされなかった。
• CCCSは文学部に置かれていたため理学部的問
  題関心からは遠かった。CSは日常生活と積極的
  にかかわろうとするもので、科学のようにすでに
  権威の確立した知識群には疎遠…
⇒CSと科学技術論の間には多くの隔たり
2012/12/17   東大科学哲学ゼミ    11
科学のカルチュラルスタディーズ
           2.接近と展開
• 80s,CSにおいてアルチュセールからフーコーの
  「権力と知」へ問題構制の関心が移る
      – (権力的言説の最たるものである科学的言説の背後
        にも暗黙の政治性が潜む可能性)
• 70s以降のエコロジー・反核運動がCSの政治的
  目標設定に影響
• 科学技術の日常生活への影響の顕在化
• CCCS,1986に科学技術問題を専門に扱うサブグ
  ループを立ち上げ、90sにはCSSの独自の主張が
  顕著化

2012/12/17     東大科学哲学ゼミ       12
隠された女性科学者たち

   科学における女性


2012/12/17       東大科学哲学ゼミ   13
「忘却の淵から女性たちを掬いあげよ!」

• 『科学史から消された女性たち』
      – ロンダ・シービンガー,1989
      – この本が出された当時、科学史における過去の女性
        研究者の発掘が盛んになっていた
      – 発掘された科学者たち
             •   マーガレット・キャヴェンディッシュ
             •   エミリ・デュ・シャトレ
             •   マリア・シビラ・メリアン
             •   マリア・ウィンゲルマン
• 2000『女性科学者伝記事典』2000名収録

2012/12/17                 東大科学哲学ゼミ   14
なぜ女性科学者は少数か?
「天才ならば、いかなる逆境にあろうとも世にでな
いはずがない」
「女性の天才が少ないのはそこまでの才能をもつ
女性がいない」
            ↕
「人並み外れた才能も育てられなければ凡庸にな
る」
「女性の天才が少ないのは個人の天分の有無で
なく教育の機会など社会的問題である」
             ノックリンによる、芸術家の天才神話の否定
⇒科学の場合も、大学教育・研究継続の場・学会への所属など
           が問題となる
2012/12/17          東大科学哲学ゼミ        15
妻であり母であること
             ―ノーベル賞受賞女性の場合―
• 1983,ババラ・マクリントック、81歳独身で受賞
      – それ以前はノーベル賞受賞女性6人は例外なく結婚し子供を
        産んでいる
• 80sの受賞女性はみな独身
      – マクリントック(81),レヴィ=モンタルチーニ(77),エリオン(71)
• 1939,核分裂理論で重要な発見をしたリーゼ・マイトナーは
  受賞できず、共同研究者オットー・フランクリンのみ受賞
• ロザリンド・フランクリンとワトスン、クリック
• 「彼女は料理し、掃除し、ノーベル賞をとった」
      – 1977,ロザリン・ヤーロウ,放射性同位体元素標識免疫定量法
        受賞時の新聞見出し



2012/12/17            東大科学哲学ゼミ                 16
大学・学会からの排斥
• 中世僧院では女性も修道院で知識を得られ
  た
• 大学制度下では、女性は参画できず




2012/12/17      東大科学哲学ゼミ   17
女性の匿名性と「見えざる助手」
• 女性たちの科学的成果は夫、父、兄弟、上司
  のものとされてしまう(特に19c)
• 女性の人生が父親や夫の人生を通してしか
  ありえなかった
• 見えざる助手invisible assitants(シービンガー)
      – E.g.ターナーの長女マリアは父のために植物画、
        エッチングを製作。植物の知識に精通し夫フッ
        カーの助手として活躍。

2012/12/17      東大科学哲学ゼミ          18
科学者カップルの研究
• キュリー夫妻のような夫婦そろって成功した
  例だけでなく、「内助の功」として吸収されてし
  まっていた事例を析出
• 職業として科学者が確立されていない19c前
  半まで,よい家柄の妻をもつことは、助手とし
  て役立つだけでなく、経済的支援・出世栄達
  のための人脈などにも役立った


2012/12/17      東大科学哲学ゼミ   19
女性のネットワークと
             高等教育機関設立
• 19c以降、女性科学者の交流が活発に
• 英、メアリー・サマヴィル
• 米、天文学者マリア・ミッチェル
      – 77歳のメアリーに欧州旅行で出会う
      – フェミニストからも崇敬を集める
      – 女性の科学教育と女性の連帯の必要性




2012/12/17      東大科学哲学ゼミ    20
フェミニズムと霊長類

   科学知識とジェンダー


2012/12/17      東大科学哲学ゼミ   21
ソーカルさん、フェミニズム科学論はいかがですか?




2012/12/17   東大科学哲学ゼミ   22
実際、人類学風の疑似科学や優生学に対する

             反・人種差別主義の立場からの批判や、心理学・

             医学と生物学の一部に対するフェミニストの立場か

             らの批判のような、科学への社会・政治的な批判に

                  は、長く実りの多い歴史がある。

              「ソーシャル・テクスト事件からわかること、わからないこと」

                           より




2012/12/17               東大科学哲学ゼミ             23
1.社会構成主義?
たしかに、フェミニズム科学論が社会構成主義の
一つの支流であることはその起源からも否定でき
ない。

しかし、彼女たちが言おうとしたことは、「科学知識
の形成には自然はほとんど、あるいは全く影響し
ない」ではなく...

 「科学知識の形成には女性はほとんど、あるいは
        全く影響しない」

2012/12/17      東大科学哲学ゼミ   24
1.社会構成主義?
•フェミニズムがもともともつ政治的な姿勢を引き継
ぐ

•重要な問い「科学言説の中に何らかの意味でジェ
ンダーバイアスは潜むのか?」

• -だとしたら、客観性は担保されるのか?

•批判から実際的介入へ ex.ハーディングと霊長
類学
2012/12/17      東大科学哲学ゼミ   25
2.自然=女性という伝統
ノーベル賞のメダルの裏は...

物理学賞、化学賞は、"自然の女神"のベールを"科学
   の女神"がそっと外して横顔を覗いているデザイン




2012/12/17       東大科学哲学ゼミ    26
2.自然=女性という伝統
• 自然探究の一つのメタファー
• 「自然は女であり、科学とはその女を知ること
  で彼女を征服し、支配する試みである」云々

• Ex.イーズリーとマーチャントの仕事
• 『魔女狩り対新哲学』
• 『自然の死』

2012/12/17       東大科学哲学ゼミ   27
3.理性からの逸脱としての魔女
• 17C科学革命の裏で行われる魔女裁判...
• -理性によって「魔女」は衰退したのではなくむ
  しろ生み出され、火にかけられた。
• -男性科学者による女性の懐柔・征服、手に
  負えないもの=魔女。
• ベーコンによる実証的手法としての「実験」は
  自然を拷問にかけて秘密を白状させる、つま
  り魔女裁判における審問。

2012/12/17   東大科学哲学ゼミ   28
4.ケラー『ジェンダーと科学』
• ベーコンの両性具有性—神の仕事を理解す
  るという受容的な態度は女性的である。(前
  述の議論への補足)
• 近代科学は「自然=女性」の”女性”から「母
  なる...」というようなセクシュアリティを取り去り、
  自然を機械化し、また女性を家庭内の非性的
  な”美徳”として飼いならすことに成功した。


2012/12/17     東大科学哲学ゼミ    29
5.ジェンダーバイアスの確認
•   「ほ乳類」と家父長制の関係
•   1758『自然の体系』でリンネが提唱
•   -乳房の有無は分類項目の一つにすぎない
•   -17~18Cに全盛を誇っていた乳母制の批判、母
    乳保育の奨励から、”ほ乳”類としての人間を強
    調。

• 『エーミール』の良妻賢母論(1763)
• 母乳保育と「母性」の関係

2012/12/17    東大科学哲学ゼミ         30
6. ツィールマンの考古学批判
• 60~70年代にかけての人類学の問題
• -「どこからヒトでどこから霊長類?」
• ウォッシュバーン「男性=狩人理論」
• -男性が狩りをする、という社会行為がヒトの分
  化を促したという説。
• 批判としての「女性=採集者理論」
• -性による分業という発想にジェンダーバイアスを
  見る。女性が採集という生産的な行為で果たし
  た役割に注目。
• -ナイフ・鏃だけが人間の道具か?

2012/12/17   東大科学哲学ゼミ   31
7.ハラウェイと人類学
• 霊長類の行動や、生態は「客観的」に観察され
  ているだろうか?
• 猿の記述は、そこに人間社会の記述が仮託され
  ているようでは無いか?
• -メスは受動的で友愛を求む。オスは合理的で集団内のヒエ
  ラルキーに敏感である。安全性と引き換えにメスはボス猿に
  身を任せる...etc
• 『霊長類の見方』('99)は霊長類学者から批判の
  的となるが、ハラウェイは共同会議で討論を重
  ねる→霊長類学はジェンダー的観点に敏感に。

2012/12/17       東大科学哲学ゼミ    32
•     議論パートのメモ

•     社会組織(物理学会)とかにかかっているジェンダー
•     脳科学のジェンダー(話の聞けない男、地図の読めない女)
        – 「とりあえず、何十年間か同じですってことにする?」
                 •   生物学的に明確な差異はある、がそれを利用する言説は?
                 •   ⇒それを利用・活用することをサスペンド
                 •   (自然主義的誤謬)
                 •   「数学は男の子のほうを教育すべき」の“合理性”
                 •   母性主義的考えのもとに女性教師を生産(米:WWII後)
• 教育とフェミニズム科学論
                 • 女子校、教師は男女半々くらい
                 • 出戻り卒業生(浦和一女、戻ってくる)
•     脳のつくりが女性は数学に向かない?
        – Evidenceは数学に向いていないことを言うためにひっぱってきてる(仮説形成段階での
          ジェンダー)
•     人種バイアス(教育機会、研究機会へのアクセス)
        – 黒人科学者
•     湯川秀樹―黄色人種バイアス?(日本人を元気づけようノーベル)
•     企業への参画(科学に限らない雇用機会)
    2012/12/17                     東大科学哲学ゼミ             33
ADAプロジェクト…意外に女性が活躍している
科学者をふやそうキャンペーン
    科学論を反映していない
    物理学はハードだよー理屈っぽいんだよー(おんなのこにはむりだよー
    ⇒出来るはずなのに、むりと思ってしまう
    かえるかわいいなー(入り口がソフト
    物理、数学の「イメージの固さ」
    男性グループの理屈っぽいはなしとホモソーシャル
    雇用と福利厚生
    *<男性の保育士を増やそう>
          女性社会が出来ていてうまくいかない
フェミニズム科学論の限界
          「反射性」による首絞め
          生得論批判するときに、対抗的evidenceを使えない(脳科学的知見etc…)
          ハラウェイ、終わったジャンルに対し科学史的研究をした。では、現在進行中の科学についてどう分析できるか
          External approach (科学の外部要因の分析をするやりかた)
科学の方法と同一性
    女性の方法たる「差異」
          現代フェミニズムから見ると本質主義?(想像力、情緒性といった女性に“固有”の特性を見出そうとする)
    いまのパラダイム<近代科学>を女性科学者が壊すこと
    男性的科学者共同体の中で、男性と同化しようとする女性科学者
    「違う数学」
          複素数で感情を表現するロボ、差異をイメージできる(『アイの物語』やまもとひろ)
          性差、民族差



 2012/12/17                   東大科学哲学ゼミ                         34

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  • 2. フェミニズム科学論二つの源流 1.「客観性」の解体と変容 • 論理実証主義、反証主義(ポパー)時代の合 理性 • ハンソン、クーンにおける「合理性」 – ハンソン…理論は観察に先立つ(哲学的考察) – クーン…共役不可能性(科学史的考察) 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 2
  • 3. フェミニズム科学論二つの源流 1.「客観性」の解体と変容 • R.ローティ『哲学と自然の鏡』 – 「対応としての客観性」 • 客観的認識=真理=実在との一致 – 「意見の一致としての客観性」 • 多くの主観の集合=間主観性 • 《主体間の合意としての科学理論》 – 女性が科学する主体として加わることで観察が 変化する余地 • 自然というテクストの解釈学 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 3
  • 4. フェミニズム科学論二つの源流 2.フェミニズム(第Ⅰ期) • 1792『女性の権利の擁護』メアリ・ウィルストンク ラフト – リベラルフェミニズム(権利・機会の平等を求める) • 1830,シャルル・フーリエがféminismeという言葉 をつくる • 1892,パリ女性会議(議長:マルグリット・デュラ ン)がパリ第五区区役所で開かれて以来 féminismeという言葉が普及 • 第一期フェミニズムは女性が参政権、財産権を 手に入れる20c初頭までの運動を言う 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 4
  • 5. フェミニズム科学論二つの源流 2.フェミニズム(第Ⅱ期) • 1963『女らしさの神話』ベティ・フリーダン – 女らしさの神話に縛られた米国中産階級の主婦らに 人間としての自己実現を説く – 全米女性会議NOWを結成、リベラルフェミニズムの 中心となり運動は世界的に広がる • 70~ラディカルフェミニズムの台頭 – ケイト・ミレット『性の政治学』 – シュミラス・ファイアストーン『性の弁証法』 – 男女の性的関係の政治性、家父長制批判 – 第一回全英女性会議:避妊と中絶の権利の議論 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 5
  • 6. フェミニズム科学論二つの源流 2.フェミニズム(第Ⅱ期) • 第一期フェミニズム運動は知識人中心 • 70s第二期フェミニズム運動は大衆に拡大 • 医学での男性中心性、家父長的性格が問わ れ、やがて科学知識全般へ拡大 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 6
  • 7. 女性学のなかでの科学論 • 1975『サインズ――文化と社会における女 性』(米) – 78特集「女性・科学・社会」 • 男女の役割分業や性差が主要テーマ • アドリエンヌ・ツィールマンによる、古人類学における 「男性=狩猟者」仮説への疑義 • ダナ・ハラウェイの動物社会学・霊長類学 – 後に『類人猿の視点』1989に結実 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 7
  • 8. 女性学のなかでの科学論 • 78『季刊国際女性学』(英)創刊 – 81,特集「女性・技術・革新」 • 編者ジョアン・ロスチャイルド • 「科学と技術が伝統的に男性領域と見なされてきたこ とがフェミニスト分析において批判的次元を与え、それ が寄稿者の基礎的前提をなしている」 • 83『女性vsテクノロジー』J.ロスチャイルド 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 8
  • 9. 80sジェンダー概念の導入 • 生物学的性差(セックス)と社会文化的構築 物としての性差(ジェンダー) • 男女の生得的違いとして納得させられてきた ことの多くがジェンダーだったのではないか 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 9
  • 10. カルチュラルスタディーズとの接近 • カルチュラルスタディーズ – コミュニケーション論やメディア論への密着 – 大衆文化のもつ暗黙の政治性について分析 – 1964,バーミンガム大に現代文化研究センター (CCCS)という制度的基盤をGet – 英米で発展、世界的潮流として人文系の一分野 となっている 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 10
  • 11. 科学のカルチュラルスタディーズ 1.CSと科学技術論の遠さ • 英国カルチュラルスタディーズ:潜在的な祖先で あるはずのフランクフルト学派からは切り離され ていた • 70s~80sはアルチュセールから影響があったが 科学主義的傾向そのものは問題にされなかった。 • CCCSは文学部に置かれていたため理学部的問 題関心からは遠かった。CSは日常生活と積極的 にかかわろうとするもので、科学のようにすでに 権威の確立した知識群には疎遠… ⇒CSと科学技術論の間には多くの隔たり 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 11
  • 12. 科学のカルチュラルスタディーズ 2.接近と展開 • 80s,CSにおいてアルチュセールからフーコーの 「権力と知」へ問題構制の関心が移る – (権力的言説の最たるものである科学的言説の背後 にも暗黙の政治性が潜む可能性) • 70s以降のエコロジー・反核運動がCSの政治的 目標設定に影響 • 科学技術の日常生活への影響の顕在化 • CCCS,1986に科学技術問題を専門に扱うサブグ ループを立ち上げ、90sにはCSSの独自の主張が 顕著化 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 12
  • 13. 隠された女性科学者たち 科学における女性 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 13
  • 14. 「忘却の淵から女性たちを掬いあげよ!」 • 『科学史から消された女性たち』 – ロンダ・シービンガー,1989 – この本が出された当時、科学史における過去の女性 研究者の発掘が盛んになっていた – 発掘された科学者たち • マーガレット・キャヴェンディッシュ • エミリ・デュ・シャトレ • マリア・シビラ・メリアン • マリア・ウィンゲルマン • 2000『女性科学者伝記事典』2000名収録 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 14
  • 15. なぜ女性科学者は少数か? 「天才ならば、いかなる逆境にあろうとも世にでな いはずがない」 「女性の天才が少ないのはそこまでの才能をもつ 女性がいない」 ↕ 「人並み外れた才能も育てられなければ凡庸にな る」 「女性の天才が少ないのは個人の天分の有無で なく教育の機会など社会的問題である」 ノックリンによる、芸術家の天才神話の否定 ⇒科学の場合も、大学教育・研究継続の場・学会への所属など が問題となる 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 15
  • 16. 妻であり母であること ―ノーベル賞受賞女性の場合― • 1983,ババラ・マクリントック、81歳独身で受賞 – それ以前はノーベル賞受賞女性6人は例外なく結婚し子供を 産んでいる • 80sの受賞女性はみな独身 – マクリントック(81),レヴィ=モンタルチーニ(77),エリオン(71) • 1939,核分裂理論で重要な発見をしたリーゼ・マイトナーは 受賞できず、共同研究者オットー・フランクリンのみ受賞 • ロザリンド・フランクリンとワトスン、クリック • 「彼女は料理し、掃除し、ノーベル賞をとった」 – 1977,ロザリン・ヤーロウ,放射性同位体元素標識免疫定量法 受賞時の新聞見出し 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 16
  • 17. 大学・学会からの排斥 • 中世僧院では女性も修道院で知識を得られ た • 大学制度下では、女性は参画できず 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 17
  • 18. 女性の匿名性と「見えざる助手」 • 女性たちの科学的成果は夫、父、兄弟、上司 のものとされてしまう(特に19c) • 女性の人生が父親や夫の人生を通してしか ありえなかった • 見えざる助手invisible assitants(シービンガー) – E.g.ターナーの長女マリアは父のために植物画、 エッチングを製作。植物の知識に精通し夫フッ カーの助手として活躍。 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 18
  • 19. 科学者カップルの研究 • キュリー夫妻のような夫婦そろって成功した 例だけでなく、「内助の功」として吸収されてし まっていた事例を析出 • 職業として科学者が確立されていない19c前 半まで,よい家柄の妻をもつことは、助手とし て役立つだけでなく、経済的支援・出世栄達 のための人脈などにも役立った 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 19
  • 20. 女性のネットワークと 高等教育機関設立 • 19c以降、女性科学者の交流が活発に • 英、メアリー・サマヴィル • 米、天文学者マリア・ミッチェル – 77歳のメアリーに欧州旅行で出会う – フェミニストからも崇敬を集める – 女性の科学教育と女性の連帯の必要性 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 20
  • 21. フェミニズムと霊長類 科学知識とジェンダー 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 21
  • 23. 実際、人類学風の疑似科学や優生学に対する 反・人種差別主義の立場からの批判や、心理学・ 医学と生物学の一部に対するフェミニストの立場か らの批判のような、科学への社会・政治的な批判に は、長く実りの多い歴史がある。 「ソーシャル・テクスト事件からわかること、わからないこと」 より 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 23
  • 26. 2.自然=女性という伝統 ノーベル賞のメダルの裏は... 物理学賞、化学賞は、"自然の女神"のベールを"科学 の女神"がそっと外して横顔を覗いているデザイン 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 26
  • 27. 2.自然=女性という伝統 • 自然探究の一つのメタファー • 「自然は女であり、科学とはその女を知ること で彼女を征服し、支配する試みである」云々 • Ex.イーズリーとマーチャントの仕事 • 『魔女狩り対新哲学』 • 『自然の死』 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 27
  • 28. 3.理性からの逸脱としての魔女 • 17C科学革命の裏で行われる魔女裁判... • -理性によって「魔女」は衰退したのではなくむ しろ生み出され、火にかけられた。 • -男性科学者による女性の懐柔・征服、手に 負えないもの=魔女。 • ベーコンによる実証的手法としての「実験」は 自然を拷問にかけて秘密を白状させる、つま り魔女裁判における審問。 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 28
  • 29. 4.ケラー『ジェンダーと科学』 • ベーコンの両性具有性—神の仕事を理解す るという受容的な態度は女性的である。(前 述の議論への補足) • 近代科学は「自然=女性」の”女性”から「母 なる...」というようなセクシュアリティを取り去り、 自然を機械化し、また女性を家庭内の非性的 な”美徳”として飼いならすことに成功した。 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 29
  • 30. 5.ジェンダーバイアスの確認 • 「ほ乳類」と家父長制の関係 • 1758『自然の体系』でリンネが提唱 • -乳房の有無は分類項目の一つにすぎない • -17~18Cに全盛を誇っていた乳母制の批判、母 乳保育の奨励から、”ほ乳”類としての人間を強 調。 • 『エーミール』の良妻賢母論(1763) • 母乳保育と「母性」の関係 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 30
  • 31. 6. ツィールマンの考古学批判 • 60~70年代にかけての人類学の問題 • -「どこからヒトでどこから霊長類?」 • ウォッシュバーン「男性=狩人理論」 • -男性が狩りをする、という社会行為がヒトの分 化を促したという説。 • 批判としての「女性=採集者理論」 • -性による分業という発想にジェンダーバイアスを 見る。女性が採集という生産的な行為で果たし た役割に注目。 • -ナイフ・鏃だけが人間の道具か? 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 31
  • 32. 7.ハラウェイと人類学 • 霊長類の行動や、生態は「客観的」に観察され ているだろうか? • 猿の記述は、そこに人間社会の記述が仮託され ているようでは無いか? • -メスは受動的で友愛を求む。オスは合理的で集団内のヒエ ラルキーに敏感である。安全性と引き換えにメスはボス猿に 身を任せる...etc • 『霊長類の見方』('99)は霊長類学者から批判の 的となるが、ハラウェイは共同会議で討論を重 ねる→霊長類学はジェンダー的観点に敏感に。 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 32
  • 33. 議論パートのメモ • 社会組織(物理学会)とかにかかっているジェンダー • 脳科学のジェンダー(話の聞けない男、地図の読めない女) – 「とりあえず、何十年間か同じですってことにする?」 • 生物学的に明確な差異はある、がそれを利用する言説は? • ⇒それを利用・活用することをサスペンド • (自然主義的誤謬) • 「数学は男の子のほうを教育すべき」の“合理性” • 母性主義的考えのもとに女性教師を生産(米:WWII後) • 教育とフェミニズム科学論 • 女子校、教師は男女半々くらい • 出戻り卒業生(浦和一女、戻ってくる) • 脳のつくりが女性は数学に向かない? – Evidenceは数学に向いていないことを言うためにひっぱってきてる(仮説形成段階での ジェンダー) • 人種バイアス(教育機会、研究機会へのアクセス) – 黒人科学者 • 湯川秀樹―黄色人種バイアス?(日本人を元気づけようノーベル) • 企業への参画(科学に限らない雇用機会) 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 33
  • 34. ADAプロジェクト…意外に女性が活躍している 科学者をふやそうキャンペーン 科学論を反映していない 物理学はハードだよー理屈っぽいんだよー(おんなのこにはむりだよー ⇒出来るはずなのに、むりと思ってしまう かえるかわいいなー(入り口がソフト 物理、数学の「イメージの固さ」 男性グループの理屈っぽいはなしとホモソーシャル 雇用と福利厚生 *<男性の保育士を増やそう> 女性社会が出来ていてうまくいかない フェミニズム科学論の限界 「反射性」による首絞め 生得論批判するときに、対抗的evidenceを使えない(脳科学的知見etc…) ハラウェイ、終わったジャンルに対し科学史的研究をした。では、現在進行中の科学についてどう分析できるか External approach (科学の外部要因の分析をするやりかた) 科学の方法と同一性 女性の方法たる「差異」 現代フェミニズムから見ると本質主義?(想像力、情緒性といった女性に“固有”の特性を見出そうとする) いまのパラダイム<近代科学>を女性科学者が壊すこと 男性的科学者共同体の中で、男性と同化しようとする女性科学者 「違う数学」 複素数で感情を表現するロボ、差異をイメージできる(『アイの物語』やまもとひろ) 性差、民族差 2012/12/17 東大科学哲学ゼミ 34