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東大科学哲学ゼミ第4回
科学史における生命観の移ろい

  医学史・思想史・生命倫理
• 生き物に「魂」はあるのか
      – 人間には?
      – 動物には?
      – 植物には?
      – 細菌には?
      – ウイルスには?
      – タンパク質には?



2012/11/6      東大科学哲学ゼミ   2
機械論対生気論

   生命観をめぐって


2012/11/6    東大科学哲学ゼミ   3
日本語の生命観としての『息』
• いき 【息】
      – ①息。呼吸。
      – ②命。
            • 出典万葉集 三五三九
            • 「人妻児ころをいきにわがする」
            • [訳] 人妻であるあの子を命のように私は思うことだ
• いき-の-を 【息の緒】
      – ①命。
      – ②息。呼吸。
            • 参考「を(緒)」は長く続くという意味。多くは「いきのをに」の形で用いられ、
              「命がけで」「命の綱として」と訳される。
• いき-た・ゆ 【息絶ゆ】
      – ①息が切れる。息が続かなくなる。
      – ②死ぬ。
            • 出典源氏物語 夕顔
            • 「いきはとくたえ果てにけり」
            • [訳] すでに死んでしまったのであった。
                                          – (学研全訳古語辞典)


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古代の生命観としての「息」
• 心に留めてください
• 土くれとして私を造り
• 土に戻されるのだということを
                                         – 『ヨブ記』10・9

• その霊と息吹をご自分に集められるなら
• 生きとし生けるものは直ちに息絶え
• 人間も塵に返るだろう。
                                     – 『ヨブ記』   34・14-15
            • ヨブ記の成立はB.C.5世紀中ごろ、イスラエルがアケメネス朝ペルシア支配にあっ
              たころ

• 主なる神は土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に
  命の息吹を吹き入れられた。人はこうして生きるものとなった。
                                          – 『創世記』2・7



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The Scientific Revolution
            個別科学における科学革命
            旧思想の体系     中間段階        科学革命の遂行
力      学    アリストテレス    インペトゥス理論    ガリレオ
                                          ニュートン
天文学         プトレマイオス    コペルニクス      ケプラー
生理学         ガレノス       ヴェサリウス      ハーヴィ
化      学    錬金術        ボイル         ラヴォワジェ
プトレマイオス天文学
アリストテレス天動説に基礎を置き数学的テクニック・観測が精緻化したもの

ガレノス生理学
アリストテレス霊魂論に基礎を置く

錬金術
アリストテレス元素転換理論に基礎を置く

2012/11/6              東大科学哲学ゼミ              6
B.C.384-B.C.322
            アリストテレスの物質観
• 種が花となるように
• 可能態、潜勢態(デュナミス)から現実
  態(エネルゲイア)へ
• 形相と質料




2012/11/6         東大科学哲学ゼミ       7
B.C.384-B.C.322
             アリストテレスの生命観
• 可能態、潜勢態(デュナミス)と し て の 質 料 を,現
  実態(エネルゲイア)へともたらすものが,形相(エ
  イドス)としての「魂(ψυχ´η, anima)」である。
• 形相としての霊魂(プシュケー)が潜勢態であり質料
  的な身体(ソーマ)に宿ることで生き物が成立(現実
  態へ)
• 『霊魂論』(『アリストテレス全集』第六巻)
      – 霊魂の三区分
            • 栄養霊魂:すべての生き物に存在。栄養・生長・生殖の原理。
            • 動物霊魂:動物と人間に存在。運動や感覚の原理。
            • 理性:人間固有(人間は理性的動物)。思考や判断の原理。
• 植物・動物・人間などの違いに応じて,魂はその生命
  活動を具現化する形相にほかならない

2012/11/6             東大科学哲学ゼミ               8
B.C.384-B.C.322
             アリストテレスと息
• 「呼吸について」
• (『アリストテレス全集』第六巻)
      – 精気(プネウマ)に言及
            ⇒生命現象を実現する原理は霊魂であり、霊魂は心臓内で
            熱を帯び、そのままでは消滅ないしは遊離してしまうため
            呼吸が必要。
            この呼吸を実現する原理が精気。
            (呼吸で霊魂を冷やす。心臓はいわば冷蔵庫)




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古代ローマの生命観
• ガレノス(AD129~)
      – 中心原理は霊魂および自然でなく、精気(プネウ
        マ)
• 『自然の能力』
      – 生命精気:肺から吸収され、左心室を起点に動脈血
        とともに体内各部に配分され諸器官の活動を実現
      – 動物精気:脳のレテ・ミラブレ(ふるい)で生命精
        気から精製され、神経管を通して身体各部に送られ、
        感覚と運動を実現
      – 自然精気(あるいは血液):消化吸収された食物
        (乳糜)に起源。乳糜を材料として肝臓で血液とと
        もに精製され静脈をとおり身体の各部に送られて、
        栄養・生長を実現。

2012/11/6       東大科学哲学ゼミ         10
ギリシャ・ローマの生命観の根本思想
• 人間と他の生物を分ける
• 目に見える現象の後ろの根本原因を探っ
  ている
• 日常感覚と学問の近さ
            石は石の住処へ行きたがるから転がり落ちる
            ⇔学問と日常感覚の遠さ:V=gt,s=1/2gt^2...




2012/11/6             東大科学哲学ゼミ          11
中世に行く前に、古代
            の「病気」観と医学の
             歴史も見ておくよ!




2012/11/6                東大科学哲学ゼミ   12
Ancient Greece
             古代ギリシャの病気観
• Patho
      – Pathology
      – sympathy(共感),pathetic(悲惨な),passion(受難)
        などの同語源語
• pathema(病気),ギリシャ語
            • もともとは苦しみを受け取ること
            • 一個の生身の全体的な人間が受け取る「苦しみ」
              が病気
            • ⇔物質系の部分的破綻と見なす現代の「病気」
             – 機械論的把握?


2012/11/6                東大科学哲学ゼミ                13
Medical Anthropology
       医療人類学の提出する「病気」
• 病気sickness=疾患disease+病illness
      – 疾患disease…生物学的なもの
      – 病illness…主観的な経験




2012/11/6          東大科学哲学ゼミ         14
アスクレピオス
• ギリシャ神話、アポロンと人間の娘の間
  に生まれる
• 死者をよみがえらせるほどの名医
      – ゼウスに殺され蛇遣い座の星になった
• 祀られた神殿で、病人が回復される
      – 病院、診療所のはしり




2012/11/6      東大科学哲学ゼミ     15
B.C.460-B.C.370
            ヒポクラテス
• 「近代医学の父」
      – 哲学的傾向(四元素説)の排除
      – 医学を経験科学化
      – 「ヒポクラテスの誓い」
• 体液の全体のバランス
      – 血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁
      – 病気はたんなる現象
      – 身体を切って中を見る意義は少

2012/11/6       東大科学哲学ゼミ       16
B.C.460-B.C.370
            ヒポクラテスの誓い
 医神アポロン、アスクレピオス、ヒギエイア、パ
ナケイアおよびすべての男神と女神に誓う、私の能
力と判断にしたがってこの誓いと約束を守ることを。
 この術を私に教えた人をわが親のごとく敬い、わ
が財を分かって、その必要あるとき助ける。
 その子孫を私自身の兄弟のごとくみて、彼らが学
ぶことを欲すれば報酬なしにこの術を教える。
 そして書きものや講義その他あらゆる方法で私の
持つ医術の知識をわが息子、わが師の息子、また医
の規則にもとずき約束と誓いで結ばれている弟子ど
もに分かち与え、それ以外の誰にも与えない。

2012/11/6        東大科学哲学ゼミ       17
B.C.460-B.C.370
            ヒポクラテスの誓い
1)私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、
悪くて有害と知る方法を決してとらない。
2)頼まれても死に導くような薬を与えない。それを覚らせる
こともしない。同様に婦人を流産に導く道具を与えない。
3)純粋と神聖をもってわが生涯を貫き、わが術を行う。
4)結石を切りだすことは神かけてしない。それを業とするも
のに委せる。
5)いかなる患家を訪れるときもそれはただ病者を利益するた
めであり、あらゆる勝手な戯れや堕落の行いを避ける。 女と男、
自由人と奴隷のちがいを考慮しない。
6)医に関すると否とにかかわらず他人の生活について秘密を
守る。
7)この誓いを守りつづける限り、私は、いつも医術の 実施を
楽しみつつ生きてすべての人から尊敬されるであろう。 もしこ
の誓いを破るならばその反対の運命をたまわりたい。

2012/11/6        東大科学哲学ゼミ       18
129-200
             ガレノス
• 解剖を基盤に
      – 人体より獣屍を主
      – 現代から見れば誤りが多い
• ストア派の精気論、ヒポクラテス以来の
  四体液論との組み合わせ
• 17cころまで、この体系が権威



2012/11/6      東大科学哲学ゼミ   19
4C~15c,15c~16c Middle Age and Renaissance
              中世からルネサンス
• 正規の医師の仕事
      – ギリシアのヒポクラテスやローマのガレノスの本を
        読んでよく勉強し、解剖しそれを確認し学生に伝え
        る。
      – 治療にあたるのは刃物をもつ下賤な職業たる床屋。
        血や死体はけがらわしいものであった。
• 中世キリスト教世界
      – 魔術的世界観の解体と、神―人間―自然の階層構造。
      – 自然を支配するという発想⇒ベーコン
• ルネサンス技芸家の活躍
      – ⇒ヴェサリウス『人体構造論』(1555)


2012/11/6               東大科学哲学ゼミ                    20
1452-1519
            レオナルド・ダ・ヴィンチ
• 中世の解剖…ガレノス体系の確認
      – 知識人たる医師
      – 職人としての理髪医
• ルネサンス期の技芸家
      – 人体の美の至高性
      – 一つの物体としての人体観察、解剖図へ
      – 医師ヴェサリウスへの影響


2012/11/6       東大科学哲学ゼミ     21
1514-1564
      ヴェサリウス
• 『人体構造論』
      – “De humani corpolis
        fabrica”
      – ガレノス体系を否
        定しようとはしな
        い




2012/11/6                東大科学哲学ゼミ   22
Mechanism and Scientific Revolution
            科学革命の時代と機械論
①生き物をその時々の最高の機械になぞら
え
(当時は時計、現代ならコンピューター)
②生命現象を自然現象一般と同様のものと
見なしたうえで
③物理・化学法則に還元して説明し
④探求方法として実験を重視する


2012/11/6                東大科学哲学ゼミ                 23
The Scientific Revolution
            デカルトの機械論的世界像



                      1637,『方法序説』
                                    《Discours de la méthode pour bien conduire
                                    sa raison, et chercher la vérité dans les
•機械論                                sciences》「理性を正しく導き、もろもろ
                                    の知識の中に真理を探究するための方法序
                                    説」
René Descartes                      ・デカルト座標系の確立(解析幾何学)
(1596-1650)                         ・精神を物体から分離(『省察録』の主題)
                                    ・オラトワール修道会との交流(神の意志
                                    の絶対自由…世界の擬人的な目的論解釈の
                                    拒否)
                                    ・物体を形、大きさ、運動(第一性質)の
                                    みで取り扱う(色、匂いなどの第二性質、
                                    目的意識、生命原理の追放)

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Mechanism and Scientific Revolution
                    機械論の展開

                                      ハーヴィ
                                      1578-1657
                                      血液循環説

                   デカルト

                   1596-1650          ラ・メトリー
                                      1712-1786
                                      『人間機械論』




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1578-1657
                   ハーヴィ
• 血液循環説…ガレノス体系の克服
      – ガレノス血液理論
            • 静脈も動脈も血液を身体各部に運び滲み出させる
            • 肺から、プネウマを含む空気が全身に送られる
            • 右心と左心を繋ぐ心中隔の穴
      – ハーヴィーの血液循環
            • 閉鎖血管系
            • 心臓の運動を機械に例える
            • 神秘的な力をもった心臓⇒単なるポンプへ

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Mechanism and Scientific Revolution
    J・de・ラ・メトリの人間機械論
• 『人間機械論』1747
            • 霊魂の内容は感覚器官と臓物に依存する
            • 人間の卓越性は人間の備える体制に依存する
            • 「霊魂などと云うものは、我々がその観念さえ持
              ち合わせていない、無駄な言葉に過ぎない」
             – 霊魂の身体化、自然化




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Mechanism and Scientific Revolution
    J・de・ラ・メトリの人間機械論
• 『霊魂論』1745
      – 純粋に受動的で不活性な物質観(デカルト)
        の否定
            • 受動的延長+能動的/自発的駆動力
            • 駆動力の顕在化には何らかの形をとる必要
             – 機械は非能動的、動物は能動的⇒動物は純粋な機械でな
               い
            • 動物は感覚能力がある(比較解剖学より)
             – 動物霊魂の存在

• 『人間機械論』1747
2012/11/6                東大科学哲学ゼミ                 28
ラ・メトリ以後
• 革命と国民国家の形成
• 早過ぎた埋葬(18c中ごろ)
      – 死の厳格な基準を生理学に求める
• <狂気>を監獄へ
• フランス革命後、国家の医学の組織化
      – 健康な人間(正常性)についての規範
            • 個人と社会の関係を精神と肉体の両面で指導
      – 教育・研究・施療の三位一体

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2012/11/6   東大科学哲学ゼミ   30
Mechanism and Scientific Revolution
                  生気論vs機械論
• 機械論mechanismと生気論vitalismの対立
• 生気論:①生命現象を自然現象とは異な
  るものとみなし、②特殊原理を導入し、
  ③観察を重視
• (生気論ということば自体は18c末に登場)




2012/11/6                東大科学哲学ゼミ                 31
Mechanism and Scientific Revolution
                  生気論vs機械論
             生気論                       機械論

• アスクレピオス                      • ハーヴィ

• ヒポクラテス                       • デカルト

• アリストテレス                      • ラ・メトリ

• ガレノス

• ヴェサリウス

2012/11/6                東大科学哲学ゼミ                 32
Today : Mechanism’s Triumph
                現代の生命観
• 現代の科学的生命観(機械論的生命観)
  (擬人主義の徹底的な排除)
• ①遺伝子還元論(究極例としてのドーキ
  ンス『利己的な遺伝子』)
• ②脳還元主義
• ③人間=コンピューター論
• ④臓器移植に象徴される機械論的人間把
  握
2012/11/6            東大科学哲学ゼミ             33
Today : Mechanism’s Triumph
                    反省的視点
1)現代の科学的生命観で生命が解明されている
のか
            ③⇒認識や活動の主体はコンピューターか人間か
            ①⇒遺伝されるのは遺伝子か塩基か。主体は遺伝子か塩
基か
            ②④⇒たとえば悲しみとその癒し。長期脳死者
2)忘却されかけている人生論的・道徳論的生命
観
            ⇒科学的生命観の発展とともに「いのち」の感覚から乖離
3)そもそも「機械論vs生気論」という対立図式
は明確なのか

2012/11/6               東大科学哲学ゼミ             34
従来の対立軸から

   機械論VS生気論…?


2012/11/6     東大科学哲学ゼミ   35
1.対立軸の総括として…

            機械論                 生気論

• 機器モデル                 • 生体モデル

• 物理的な力                 • 生命力

• 作用因の重視                • 目的因の許容

• 還元=分析主義               • ホーリズム

• 唯物論                   • 唯心論

2012/11/6         東大科学哲学ゼミ            36
2.19C後~20C前
• 唯心論的一元説『生命の哲学者』
   ベルクソン「la dureé pure」純粋持続

• ユクスキュル「Umwelt」環世界

• ドリーシュ「ネオヴァイタリズム」



2012/11/6       東大科学哲学ゼミ      37
3.大戦後
• 認識論
      – サイバネティクス(ウィーナーら)
      – メルロポンティ『知覚の現象学』
            →ゲシュタルトのありか

• アロステリック効果(モノーら)

• チョムスキー「生成文法」
      ⇒心のモジュール性(フォーダー)

2012/11/6           東大科学哲学ゼミ   38
4.1970~
• システム論
      – (ベルタランフィ)


• オートポイエーシス
      – (マトゥラーナ&ヴァレラ)


• プリゴジン「散逸構造」

2012/11/6      東大科学哲学ゼミ   39
5.生命観-生命体-生命倫理

 「生命体」についての科学


            教育による「生物的人間」の理解




              生命観(遺伝子・脳還元論)

2012/11/6            東大科学哲学ゼミ   40
6.なぜ機械論VS生気論に?

• 対立構造自体は文化構築的(現代生命科
  学の研究はより柔軟な見解)

• 場面ごとに異なるアクセント
→脳死は機械論的に論じられる
「どうして?」
移植=パーツの切り取り(機械論)⇔生気
論
2012/11/6        東大科学哲学ゼミ    41
2012/11/6   東大科学哲学ゼミ   42
7.フーコー自己のテクネー
• まとめ中




2012/11/6        東大科学哲学ゼミ   43

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  • 2. • 生き物に「魂」はあるのか – 人間には? – 動物には? – 植物には? – 細菌には? – ウイルスには? – タンパク質には? 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 2
  • 3. 機械論対生気論 生命観をめぐって 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 3
  • 4. 日本語の生命観としての『息』 • いき 【息】 – ①息。呼吸。 – ②命。 • 出典万葉集 三五三九 • 「人妻児ころをいきにわがする」 • [訳] 人妻であるあの子を命のように私は思うことだ • いき-の-を 【息の緒】 – ①命。 – ②息。呼吸。 • 参考「を(緒)」は長く続くという意味。多くは「いきのをに」の形で用いられ、 「命がけで」「命の綱として」と訳される。 • いき-た・ゆ 【息絶ゆ】 – ①息が切れる。息が続かなくなる。 – ②死ぬ。 • 出典源氏物語 夕顔 • 「いきはとくたえ果てにけり」 • [訳] すでに死んでしまったのであった。 – (学研全訳古語辞典) 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 4
  • 5. 古代の生命観としての「息」 • 心に留めてください • 土くれとして私を造り • 土に戻されるのだということを – 『ヨブ記』10・9 • その霊と息吹をご自分に集められるなら • 生きとし生けるものは直ちに息絶え • 人間も塵に返るだろう。 – 『ヨブ記』 34・14-15 • ヨブ記の成立はB.C.5世紀中ごろ、イスラエルがアケメネス朝ペルシア支配にあっ たころ • 主なる神は土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に 命の息吹を吹き入れられた。人はこうして生きるものとなった。 – 『創世記』2・7 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 5
  • 6. The Scientific Revolution 個別科学における科学革命 旧思想の体系 中間段階 科学革命の遂行 力 学 アリストテレス インペトゥス理論 ガリレオ ニュートン 天文学 プトレマイオス コペルニクス ケプラー 生理学 ガレノス ヴェサリウス ハーヴィ 化 学 錬金術 ボイル ラヴォワジェ プトレマイオス天文学 アリストテレス天動説に基礎を置き数学的テクニック・観測が精緻化したもの ガレノス生理学 アリストテレス霊魂論に基礎を置く 錬金術 アリストテレス元素転換理論に基礎を置く 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 6
  • 7. B.C.384-B.C.322 アリストテレスの物質観 • 種が花となるように • 可能態、潜勢態(デュナミス)から現実 態(エネルゲイア)へ • 形相と質料 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 7
  • 8. B.C.384-B.C.322 アリストテレスの生命観 • 可能態、潜勢態(デュナミス)と し て の 質 料 を,現 実態(エネルゲイア)へともたらすものが,形相(エ イドス)としての「魂(ψυχ´η, anima)」である。 • 形相としての霊魂(プシュケー)が潜勢態であり質料 的な身体(ソーマ)に宿ることで生き物が成立(現実 態へ) • 『霊魂論』(『アリストテレス全集』第六巻) – 霊魂の三区分 • 栄養霊魂:すべての生き物に存在。栄養・生長・生殖の原理。 • 動物霊魂:動物と人間に存在。運動や感覚の原理。 • 理性:人間固有(人間は理性的動物)。思考や判断の原理。 • 植物・動物・人間などの違いに応じて,魂はその生命 活動を具現化する形相にほかならない 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 8
  • 9. B.C.384-B.C.322 アリストテレスと息 • 「呼吸について」 • (『アリストテレス全集』第六巻) – 精気(プネウマ)に言及 ⇒生命現象を実現する原理は霊魂であり、霊魂は心臓内で 熱を帯び、そのままでは消滅ないしは遊離してしまうため 呼吸が必要。 この呼吸を実現する原理が精気。 (呼吸で霊魂を冷やす。心臓はいわば冷蔵庫) 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 9
  • 10. 古代ローマの生命観 • ガレノス(AD129~) – 中心原理は霊魂および自然でなく、精気(プネウ マ) • 『自然の能力』 – 生命精気:肺から吸収され、左心室を起点に動脈血 とともに体内各部に配分され諸器官の活動を実現 – 動物精気:脳のレテ・ミラブレ(ふるい)で生命精 気から精製され、神経管を通して身体各部に送られ、 感覚と運動を実現 – 自然精気(あるいは血液):消化吸収された食物 (乳糜)に起源。乳糜を材料として肝臓で血液とと もに精製され静脈をとおり身体の各部に送られて、 栄養・生長を実現。 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 10
  • 11. ギリシャ・ローマの生命観の根本思想 • 人間と他の生物を分ける • 目に見える現象の後ろの根本原因を探っ ている • 日常感覚と学問の近さ 石は石の住処へ行きたがるから転がり落ちる ⇔学問と日常感覚の遠さ:V=gt,s=1/2gt^2... 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 11
  • 12. 中世に行く前に、古代 の「病気」観と医学の 歴史も見ておくよ! 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 12
  • 13. Ancient Greece 古代ギリシャの病気観 • Patho – Pathology – sympathy(共感),pathetic(悲惨な),passion(受難) などの同語源語 • pathema(病気),ギリシャ語 • もともとは苦しみを受け取ること • 一個の生身の全体的な人間が受け取る「苦しみ」 が病気 • ⇔物質系の部分的破綻と見なす現代の「病気」 – 機械論的把握? 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 13
  • 14. Medical Anthropology 医療人類学の提出する「病気」 • 病気sickness=疾患disease+病illness – 疾患disease…生物学的なもの – 病illness…主観的な経験 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 14
  • 15. アスクレピオス • ギリシャ神話、アポロンと人間の娘の間 に生まれる • 死者をよみがえらせるほどの名医 – ゼウスに殺され蛇遣い座の星になった • 祀られた神殿で、病人が回復される – 病院、診療所のはしり 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 15
  • 16. B.C.460-B.C.370 ヒポクラテス • 「近代医学の父」 – 哲学的傾向(四元素説)の排除 – 医学を経験科学化 – 「ヒポクラテスの誓い」 • 体液の全体のバランス – 血液・粘液・黄胆汁・黒胆汁 – 病気はたんなる現象 – 身体を切って中を見る意義は少 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 16
  • 17. B.C.460-B.C.370 ヒポクラテスの誓い 医神アポロン、アスクレピオス、ヒギエイア、パ ナケイアおよびすべての男神と女神に誓う、私の能 力と判断にしたがってこの誓いと約束を守ることを。 この術を私に教えた人をわが親のごとく敬い、わ が財を分かって、その必要あるとき助ける。 その子孫を私自身の兄弟のごとくみて、彼らが学 ぶことを欲すれば報酬なしにこの術を教える。 そして書きものや講義その他あらゆる方法で私の 持つ医術の知識をわが息子、わが師の息子、また医 の規則にもとずき約束と誓いで結ばれている弟子ど もに分かち与え、それ以外の誰にも与えない。 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 17
  • 18. B.C.460-B.C.370 ヒポクラテスの誓い 1)私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、 悪くて有害と知る方法を決してとらない。 2)頼まれても死に導くような薬を与えない。それを覚らせる こともしない。同様に婦人を流産に導く道具を与えない。 3)純粋と神聖をもってわが生涯を貫き、わが術を行う。 4)結石を切りだすことは神かけてしない。それを業とするも のに委せる。 5)いかなる患家を訪れるときもそれはただ病者を利益するた めであり、あらゆる勝手な戯れや堕落の行いを避ける。 女と男、 自由人と奴隷のちがいを考慮しない。 6)医に関すると否とにかかわらず他人の生活について秘密を 守る。 7)この誓いを守りつづける限り、私は、いつも医術の 実施を 楽しみつつ生きてすべての人から尊敬されるであろう。 もしこ の誓いを破るならばその反対の運命をたまわりたい。 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 18
  • 19. 129-200 ガレノス • 解剖を基盤に – 人体より獣屍を主 – 現代から見れば誤りが多い • ストア派の精気論、ヒポクラテス以来の 四体液論との組み合わせ • 17cころまで、この体系が権威 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 19
  • 20. 4C~15c,15c~16c Middle Age and Renaissance 中世からルネサンス • 正規の医師の仕事 – ギリシアのヒポクラテスやローマのガレノスの本を 読んでよく勉強し、解剖しそれを確認し学生に伝え る。 – 治療にあたるのは刃物をもつ下賤な職業たる床屋。 血や死体はけがらわしいものであった。 • 中世キリスト教世界 – 魔術的世界観の解体と、神―人間―自然の階層構造。 – 自然を支配するという発想⇒ベーコン • ルネサンス技芸家の活躍 – ⇒ヴェサリウス『人体構造論』(1555) 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 20
  • 21. 1452-1519 レオナルド・ダ・ヴィンチ • 中世の解剖…ガレノス体系の確認 – 知識人たる医師 – 職人としての理髪医 • ルネサンス期の技芸家 – 人体の美の至高性 – 一つの物体としての人体観察、解剖図へ – 医師ヴェサリウスへの影響 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 21
  • 22. 1514-1564 ヴェサリウス • 『人体構造論』 – “De humani corpolis fabrica” – ガレノス体系を否 定しようとはしな い 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 22
  • 23. Mechanism and Scientific Revolution 科学革命の時代と機械論 ①生き物をその時々の最高の機械になぞら え (当時は時計、現代ならコンピューター) ②生命現象を自然現象一般と同様のものと 見なしたうえで ③物理・化学法則に還元して説明し ④探求方法として実験を重視する 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 23
  • 24. The Scientific Revolution デカルトの機械論的世界像 1637,『方法序説』 《Discours de la méthode pour bien conduire sa raison, et chercher la vérité dans les •機械論 sciences》「理性を正しく導き、もろもろ の知識の中に真理を探究するための方法序 説」 René Descartes ・デカルト座標系の確立(解析幾何学) (1596-1650) ・精神を物体から分離(『省察録』の主題) ・オラトワール修道会との交流(神の意志 の絶対自由…世界の擬人的な目的論解釈の 拒否) ・物体を形、大きさ、運動(第一性質)の みで取り扱う(色、匂いなどの第二性質、 目的意識、生命原理の追放) 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 24
  • 25. Mechanism and Scientific Revolution 機械論の展開 ハーヴィ 1578-1657 血液循環説 デカルト 1596-1650 ラ・メトリー 1712-1786 『人間機械論』 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 25
  • 26. 1578-1657 ハーヴィ • 血液循環説…ガレノス体系の克服 – ガレノス血液理論 • 静脈も動脈も血液を身体各部に運び滲み出させる • 肺から、プネウマを含む空気が全身に送られる • 右心と左心を繋ぐ心中隔の穴 – ハーヴィーの血液循環 • 閉鎖血管系 • 心臓の運動を機械に例える • 神秘的な力をもった心臓⇒単なるポンプへ 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 26
  • 27. Mechanism and Scientific Revolution J・de・ラ・メトリの人間機械論 • 『人間機械論』1747 • 霊魂の内容は感覚器官と臓物に依存する • 人間の卓越性は人間の備える体制に依存する • 「霊魂などと云うものは、我々がその観念さえ持 ち合わせていない、無駄な言葉に過ぎない」 – 霊魂の身体化、自然化 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 27
  • 28. Mechanism and Scientific Revolution J・de・ラ・メトリの人間機械論 • 『霊魂論』1745 – 純粋に受動的で不活性な物質観(デカルト) の否定 • 受動的延長+能動的/自発的駆動力 • 駆動力の顕在化には何らかの形をとる必要 – 機械は非能動的、動物は能動的⇒動物は純粋な機械でな い • 動物は感覚能力がある(比較解剖学より) – 動物霊魂の存在 • 『人間機械論』1747 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 28
  • 29. ラ・メトリ以後 • 革命と国民国家の形成 • 早過ぎた埋葬(18c中ごろ) – 死の厳格な基準を生理学に求める • <狂気>を監獄へ • フランス革命後、国家の医学の組織化 – 健康な人間(正常性)についての規範 • 個人と社会の関係を精神と肉体の両面で指導 – 教育・研究・施療の三位一体 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 29
  • 30. 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 30
  • 31. Mechanism and Scientific Revolution 生気論vs機械論 • 機械論mechanismと生気論vitalismの対立 • 生気論:①生命現象を自然現象とは異な るものとみなし、②特殊原理を導入し、 ③観察を重視 • (生気論ということば自体は18c末に登場) 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 31
  • 32. Mechanism and Scientific Revolution 生気論vs機械論 生気論 機械論 • アスクレピオス • ハーヴィ • ヒポクラテス • デカルト • アリストテレス • ラ・メトリ • ガレノス • ヴェサリウス 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 32
  • 33. Today : Mechanism’s Triumph 現代の生命観 • 現代の科学的生命観(機械論的生命観) (擬人主義の徹底的な排除) • ①遺伝子還元論(究極例としてのドーキ ンス『利己的な遺伝子』) • ②脳還元主義 • ③人間=コンピューター論 • ④臓器移植に象徴される機械論的人間把 握 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 33
  • 34. Today : Mechanism’s Triumph 反省的視点 1)現代の科学的生命観で生命が解明されている のか ③⇒認識や活動の主体はコンピューターか人間か ①⇒遺伝されるのは遺伝子か塩基か。主体は遺伝子か塩 基か ②④⇒たとえば悲しみとその癒し。長期脳死者 2)忘却されかけている人生論的・道徳論的生命 観 ⇒科学的生命観の発展とともに「いのち」の感覚から乖離 3)そもそも「機械論vs生気論」という対立図式 は明確なのか 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 34
  • 35. 従来の対立軸から 機械論VS生気論…? 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 35
  • 36. 1.対立軸の総括として… 機械論 生気論 • 機器モデル • 生体モデル • 物理的な力 • 生命力 • 作用因の重視 • 目的因の許容 • 還元=分析主義 • ホーリズム • 唯物論 • 唯心論 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 36
  • 37. 2.19C後~20C前 • 唯心論的一元説『生命の哲学者』 ベルクソン「la dureé pure」純粋持続 • ユクスキュル「Umwelt」環世界 • ドリーシュ「ネオヴァイタリズム」 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 37
  • 38. 3.大戦後 • 認識論 – サイバネティクス(ウィーナーら) – メルロポンティ『知覚の現象学』 →ゲシュタルトのありか • アロステリック効果(モノーら) • チョムスキー「生成文法」 ⇒心のモジュール性(フォーダー) 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 38
  • 39. 4.1970~ • システム論 – (ベルタランフィ) • オートポイエーシス – (マトゥラーナ&ヴァレラ) • プリゴジン「散逸構造」 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 39
  • 40. 5.生命観-生命体-生命倫理 「生命体」についての科学 教育による「生物的人間」の理解 生命観(遺伝子・脳還元論) 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 40
  • 41. 6.なぜ機械論VS生気論に? • 対立構造自体は文化構築的(現代生命科 学の研究はより柔軟な見解) • 場面ごとに異なるアクセント →脳死は機械論的に論じられる 「どうして?」 移植=パーツの切り取り(機械論)⇔生気 論 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 41
  • 42. 2012/11/6 東大科学哲学ゼミ 42