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若手研究者のキャリア問題
ピンチをチャンスに
 榎木英介
ポスドクは10人に一人は40歳以上
(16394人(2006年度))

                                                29歳
                                        0.50%   以下
                                                30~
                                                34歳
      25.50%   44.30%   18.70%                  35~
                                                39歳
                                                40歳
                           10.40%               以上
                                                不明
 0%             50%              100%


           大学・公的研究機関等におけるポストドクター等の雇用状況調査
           – 2006年度調査 - 科学技術政策研究所
ポスドクの多くはバイオ系




    大学・公的研究機関等におけるポストドクター等の雇用状況調査
    – 2006年度調査 - 科学技術政策研究所
ポスドクはワーキングプア?!




    ポストドクター等の研究活動及び生活実態に関する分析
     科学技術政策研究所
大学院生は増えた…




     文部科学省 知識基盤社会を牽引する人材の育成と活躍の促進に向けて
大学教員になれない




     文部科学省 知識基盤社会を牽引する人材の育成と活躍の促進に向けて
ポスドクから教員に採用されるのは
…
 60000

 50000

 40000

 30000

 20000

 10000

      0
          理学      工学       農学     保健学
ポスドク数     4853    4601     1618    2334
採用者        593    1302      231    5388
教員数       14541   26697    6317   49211


                          科学技術政策研究所の資料より作成
しかし企業への就職は…




   文部科学省民間企業の研究活動に関する調査報告(平成17年度)
ポスドクに対する先入観

 「でもしか」タイプが多い
  アカデミアでやっていけないから
 説明能力の欠如(専門外の人に対して)

 柔軟性や適応性に難がある

 忍耐力が欠如している

 視野が狭い

 専門分野に固執

         澤昭裕 科学技術時代の教育 ミネルヴァ書房
厳しい社会の目

   研究者だけ厚遇されるのはなぜか。
    就職先が見つからない女子学生の
    ため税金が投入されたという話は聞
    いたことがありません。博士号を取
    るほど優秀であれば、自分の進路
    は自分で切り開いてほしいものです。
    日経ビジネス 2005年11月14日号
切り捨てられる?

ポスドクへのフェロー

シップ等は、その対象を
博士号取得後5 年間程
度までに限定すべきで
ある。
    大学・大学院の研究システム改革~研究に関する国際競争力を高めるために~
    総合科学技術会議(第71回)
総合科学技術会議第5回基本政策専門調査会
成長戦略(12月29日)
文科省のキャリアパス事業に対する意見


 課題設定能力の無いポスドクが他の民
  間企業に採用されても使えないのでは
  ないか。採用した企業の方が丌幸。能力
  のあるポスドクは自分で道を切り開く。
 自分で問題解決能力のない人間に対す

  る支援策を、血税を使ってやる意味なし。
  即刻中止。自己責任原則でいくべき。

          自民党「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」
行政刷新会議「事業仕分け」



ポスドクの生活保


護のようなシステム
はやめるべき。本人
にとっても丌幸。
若手研究者のキャリア対策の実情

   若手の生の声が伝わっていない
     成功した研究者という「フィルター」を通して

     研究ではない職業=敗者

     先入観(使えない)

     自己責任          失業対策的施
                      策

     プライド
     ずたずた           研究に固執
                    40歳でもポスドク…
国力低下   失望感

 最悪の悪循環
研究力低下   理科離れ
   確かに厳しい

でも、日本の社会にとって、


これは大きく変わるチャン
スかもしれない
ブダペスト宣言(1999)
科学は人類全体に奉仕すべきもの

1.   知識のための科学:進歩のための知
     識
2.   平和のための科学
3.   開発のための科学
4.   社会における科学と社会のための科
     学
社会のための科学とは?

 科学研究の遂行と、それによって生じる
  知識の利用は、人類の福祉を目的とし、
  人間の尊厳と権利、世界的な環境を尊
  重するものでなければならない
 科学への平等なアクセスは、社会的・倫

  理的要請ばかりでなく、科学者共同体
  の力を最大限に発揮させ、人類の必要
  に応じた科学の発展のためにも必要で
  ある。
新しい公共
   私が目指したいのは、人と人が支え合い、役に立
    ち合う「新しい公共」の概念です。「新しい公共」と
    は、人を支えるという役割を、「官」と言われる人
    たちだ けが担うのではなく、教育や子育て、街づ
    くり、防犯や防災、医療や福祉などに地域でかか
    わっておら れる方々一人ひとりにも参加していた
    だき、それを社会全体として応援しようという新し
    い価値観です。
          第173回国会における所信表明演説
“Cutting Edge” な研究 →現在の政策の焦点

科学・技術人財の活躍の場

   生活、地域      「新しい公共」       科学者は軽視
    に密着         を担う


         中間的な科学・技術
    社会とのコミュ             新しい職業領域
    ニケーション              雇用を生み出す
                        NPO、ベンチャー


春日匠氏原案
         事実としてほぼ確立した科学       →理科(科学)教育
科学技術の意思形成に参画するNPO

   NPO法人は,地域社会と密接にした活動
    や,個々の国民の要望に対応してきめの
    細かい対応も可能であるなど,新たな科
    学技術活動の担い手として期待されて
    い る。我が国の科学技術の方向性や社
    会的活動を評価し,又は,国民参加型の
    議論を活性化する等の役割を果たして
    いくことが考えられる。
            平成16年科学技術白書
政策と研究現場の交流を担う
科学技術関連NPO                                       科学・技術と社会の交流を担う
                                                 科学・技術人財の活躍の場

          アメリカ            欧州           日本       25000
科学コミュ     National     各国科学ア         日本学術会議                 NPO法人の数
ニティ      Academies      カデミー                    20000

分野横断       AAAS        Euroscience
                                     ない
                                                15000
的自発的                      British
         (全米科学
研究者                      Science                10000
         振興協会)
NPO(市民                 Association
も参加可)                                            5000
市民との      2月開催            あり            11月
                                     サイエンスアゴラ      0
交流(年
次大会)                                 (JST主催)

中小規模     憂慮する科           CaSE        日本科学者                            活
のNPO     学者同盟           Observa        会議                             動
                                                                      分
          National      他多数          サイエンス                            野
          postdoc                     カフェ
         association                  少ない
          他多数                                           内閣府調べ 2009年12月31日現在
   「研究という基本的権利を、いまほとんどの人は
    職業研究者に託している もしのこの権利を個々
    人が自ら行使しようとしたらどうなるか 科学のあ
    り方、大学のあり方に根本的変化が生じてくるに
    違いない」
   「この種の個人の研究活動が組織化されれば、既
    存の権威を監視しチェックする知的なNGO(非政
    府組織)として重要な社会的機能を担うことにな
    るだろう」


                         米本昌平氏
「面白がりながらも切実にこつ


こつと研究活動を続ける知的
な市民が、自ら問題を発掘し、
研究調査し、解決策を模索し
ていく形こそは成熟した民主
主義社会における政治参加
の理想形だと思う」
活躍のスイッチを押せば…

情報   • 最新論文が自由に読める
     • 機関リポジトリ、オープンアクセス




場所   • 研究できる場
     • 貸し研究室など




人財
     • 大学と社会を行き来
     • 年齢、性別等によらない評価
     • 専従規定見直し等規制撤廃
私たちもはじめています
 若手理系人のためのキャリアチェンジプロ
  ジェクト
 サイエンススクール

 サイエンスブリッジ
               NPO法人サイエンス・コミュニケーション



 政策ウォッチ
 アドボカシー活動
             サイエンス・サポート・アソシエーション(SSA)
相撲界
ちゃんこ料理の技術

引退後 ちゃんこ料理屋開く
• 地域の有力な若手発掘
• 相撲情報、文化の核
科学コミュニティ
行政




                                 企業
     ポスドク、院生


                 子どもたち       科学OB


企業
                         地域、市民
         地域、市民
動こう!
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