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2009/05/22
権力をどう読み解くか権力をどう読み解くか権力をどう読み解くか権力をどう読み解くか
藤田智久
0.はじめに―――大学はなぜ権力をもっているのだろう
・取り決め上(紙の上では)は教員・職員・学生は対等。
・実際はどうか。なぜ限られた交渉だけなのか。死文化に近い条項。
1.参考資料
日本国憲法
第 23 条 学問の自由は、これを保障する。
教育基本法
第七条 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く
社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
国立大学法人法
第三十条 文部科学大臣は、六年間において国立大学法人等が達成すべき業務運営に関する目標を中期目標として定め、これを当
該国立大学法人等に示すとともに、公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
第三十一条 国立大学法人等は、前条第一項の規定により中期目標を示されたときは、当該中期目標に基づき、文部科学省令で定めると
ころにより、当該中期目標を達成するための計画を中期計画として作成し、文部科学大臣の認可を受けなければならない。これを変更しよう
とするときも、同様とする。
東大確認書
十の3 大学当局は、大学における研究が資本の利益に奉仕するという意味では産学協同を否定するものであることを確認する。
(理のみ不署名)
2.論点
・利害対立は存在するか?存在するとしたらどのような?
・なぜ政府の機関が統制できるのか?なぜ直接参加ではないのか?
3.国家=実体説――中国の教養課程で使われる教科書『马克思主义基本原理概论』(2007 年、高等教育出版社)より
「資本主義国家の機能は資本主義制度と資本家階級の利益に奉仕することを根本的な内容とするのであり、資本家階級が政治的支
配を行う道具である…資本主義国家の対内的機能は、主には政治的支配の機能であり、すなわち資本家階級が支配階級として、手
中に掌握した政府機構と軍隊、警察、法廷、監獄(拘置所を含む概念――引用者)などの国家機構を運用し、被支配階級に対して
抑圧と統制を行い、支配階級が定めるところの秩序の要求のうちに社会生活を保たせる」(p.148)
4.エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』(土屋保男訳 1999 年、新日本出版社)より
「たえず加速度化する富の増殖の新しい諸形態に、普遍的な社会的承認の刻印を押しもする一つの制度、はじまりつつある諸階級
への社会の分裂を永久化するだけでなく、有産階級が無産階級を搾取する権利と、無産階級にたいする有産階級の支配とを永久化
しもする一つの制度」(p.145)
「社会から生まれでながら社会の上に立ち、社会にとってますます疎遠なものになっていくこの権力が、国家なのである」(p.229)
「自分自身を武装力として組織する住民とはもはや直接には一致しない、一個の公的権力
、、、、
の樹立である」(p.229 傍点原文)
「支配階級のためになることは、社会全体のためにもなるはずだ、と言う。――支配階級は自分を社会全体と同一視するのだ。し
たがって文明時代が進めば進むほど、文明時代は、ますますもって、自分が必然的につくりだした弊害を愛の外套でつつみ、それ
を美化したり否認したりしなければならなくなる」(p.238)

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