3 D 映像のための自動色補正
               Auto Color Correction for Stereoscopic 3D Video

                         松永 力       趙 延軍       和田 雅徳
                Chikara Matsunaga, Yanjun Zhao and Masanori Wada
                          株式会社 朋栄 佐倉研究開発センター
                          FOR-A Co., Ltd. Sakura R&D Center
                            E-mail: matsunaga@for-a.co.jp




         (a)                         (b)                           (c)

    図1   (a) 3 D リグ.(b) シミュレーションに用いた3 D 画像例.(c) 左右画像の画素値(G)の確率密度関数.



               Abstract                    とともに,反射と透過による色・明るさの違いを揃え
                                           る色補正処理が必要になる.
  3 D 映像における左右の映像を幾何学的・光学的に                  色補正処理には,既知の色レベルからなるカラーチ
一致させることは,実写とコンピュータグラフィックス                  ャート(色票)を用いる方法があるが [11],必ずカラー
(Computer Graphics, CG)の合成における実カメラと        チャートを撮影することは運用上困難な場合も考えら
仮想カメラの間の幾何学的・光学的な一致と同様に必                   れる.そこで,任意の撮影画像からの自己校正手法を
須である.見やすく,かつ安全な3 D 映像を制作する                 考える.これには,画像中のコーナー等の特徴点を抽
ためにも欠かせない.                                 出し,左右の画像において特徴点を対応付ける方法が
  本研究は,そのような3 D 映像における左右の映像                考えられるが,処理コストが掛かる.
の色・明るさのずれを,カラーチャート(色票)のよう                    本研究では,左右画像の画素値のヒストグラムから
な特別な参照板を用いずに,映像のみから自動的に計                   核関数により確率密度関数を計算し,その差を最小に
算して色補正を行うものである.                            する色補正パラメータを推定する.推定には,左右映像
                                           間の視差によるオクルージョンや,レベル飽和による
                                           ガマット誤差 [12] の影響を考慮して,ロバスト M 推定
1 はじめに
                                           [6] を用いる.さらに,レベル制約を課すことによりカ
                                           ラーバランスを保った色補正や,時間方向に滑らかさ
  人間は左右の目に映る像の見え方の違いである両眼
                                           の制約を課すことにより時系列推定の安定化も試みる.
視差により奥行きや立体感を感じている.これを利用
                                              画像のヒストグラムは濃淡画像処理をはじめとして,
した3 D 映像 [13] が映画をはじめとして,近年大きな
                                           類似画像の検索ための特徴量として用いられた [20].医
盛り上がりを見せている.
                                           用画像では,ヒストグラムから計算される相互情報量
  3 D 映像の撮影には,3 D リグと呼ばれる左右2
                                           (Mutual Information, MI)を最大にするように,複数
台のカメラを水平・垂直に設置する器具を用いる(図
                                           のモダリティによる異種画像間の位置合わせに用いら
1(a)).これは,人間の目と同じ間隔による撮影を可能
                                           れた [9, 22].Comaniciu ら [4] は,移動物体の追跡処理
とするものであり,ハーフミラーにより反射・透過する
                                           のために画素値の色ヒストグラムから核関数を用いて
映像を撮影することになる.反射映像を左右反転する
                                           類似度を計算する平均値シフト法を用いた.松永 [10]
は,視程障害映像のコントラスト補正処理のために画                                            σ はブロック領域中の画素値の標本標準偏差である.式
素値のヒストグラムから核関数を用いて確率密度関数                                            (1)をヒストグラム h(Ij ) を用いて次のように書き直す
を計算し,コントラスト補正のためのパラメータをカ                                            [10].
ルバック‐ライブラー情報量を最小化するように最適                                                                    N
                                                                                      1                       I − Ij
に推定した.                                                                      p(I) =                h(Ij )K                       .       (4)
                                                                                     nW                         W
    色補正処理としては,松永ら [11] は,再撮モニタや                                                             j=1

複数台のカメラ間の色を合わせるために,先頭フレー                                            ここで,N はヒストグラムの階級数である.注意すべ
ムに撮影した基準となるカラーチャート(色票)を自                                            きは,式(1)は,ブロック領域中のすべての標本画素
動認識して,観測誤差を考慮して色補正パラメータを                                            値 {Ij | j = 1, . . . , n} をそのまま用いているが,式(4)
最適に推定するとともに,ガマット誤差 [12] が含まれ                                        では,ヒストグラムの階級における画素値(階級値)
ている映像に対しても,レベル制約付き最適推定とモ                                            {Ij | j = 1, . . . , N } を用いることである.
デル選択を組み合わせることによって妥当な色補正結                                              式(4)はヒストグラムと核関数のたたみ込みと見な
果を得るための方法を示した.Reinhard ら [16] は,画                                   すことができる.核関数がガウス関数の場合,人工神
像間の見た目の色を揃えるために,画像を LMS 色空間                                         経回路網のひとつである放射基底関数(Radial Basis
に変換して,それらの平均値,分散値を揃える処理を                                            Function, RBF)ネットワーク [15] としても知られて
行った.                                                                いる.
    複数台のカメラにより撮影された多視点映像の動画
像圧縮符号化は,H.264/MPEG-4 AVC の追加規格と                                     3    色補正モデル
して標準化がなされ [7, 21],Blu-ray Disc                         TM
                                                            に記録し
                                                                     色補正モデルとしては,RGB 3次元色空間において,
た3 D 映像の再生・表示を実現するための規格として
                                                                    RGB 毎に独立に次のような1次元アフィン補正を行う
も採用された [3].多視点映像において複数台のカメラ
                                                                    ものとする.
の色補正を行う研究がある [14, 23].
    本論文の構成は,2 章で画素値のヒストグラムから核                                        I = βI + γ,      I ∈ {R, G, B}, I ∈ {R , G , B }.                  (5)
関数により確率密度関数を計算する方法を説明し,3 章
で色補正に用いる色補正モデルとそれによる確率密度                                            そのような色補正を行った場合の確率密度関数は式(4)

関数の変換について説明する.4 章で色補正パラメータ                                          より,次のようになる.

のロバスト推定方法について,5 章でレベル制約付きパ                                                           1
                                                                                           N
                                                                                                             I − Ij
                                                                          p(I ) =                h(Ij )K
ラメータ推定によるカラーバランスを保った色補正に                                                            nW                         W
                                                                                           j=1
ついて,6 章で時系列推定を安定化するための時間方向                                                                 N
                                                                                     1                       I − (βIj + γ)
の滑らかさの制約付きパラメータ推定について,それ                                                       =                 h(Ij )K                            .   (6)
                                                                                    nW                            W
ぞれ説明する.7 章で,それらの推定方法を確認するた                                                                 j=1

めの画像シミュレーションを行い,8 章でまとめる.                                           ヒストグラム h(Ij ) ≡ h(Ij ) であるから,色補正を行っ
                                                                    た画像の確率密度関数は,補正前の原画像のヒストグ
2    核関数による確率密度関数の計算                                                ラムのみから計算することができる.

    画像中のブロック領域における画素値に関する1次
                                                                    4    色補正パラメータのロバスト推定
元のヒストグラムから核関数を用いて次のように確率
密度関数を計算する [19].                                                         3 D 映像における左右画像 I (L) , I (R) の確率密度関
                  1
                          n
                                      I − Ij                        数を p(I (L) ), p(I (R) ) と表す.左画像 I (L) を基準画像と
        p(I) =                 K                   .          (1)
                 nW                     W                           して,右画像 I (R) を色補正すると仮定する(勿論逆で
                      j=1
                                                                    も構わない).色補正パラメータを推定するために,左
ここで,Ij はブロック領域中の画素値であり,n はブ
                                                                    右画像の画面中央領域における各々の画素値に関する
ロック領域中の総画素数である.K( · ) は核関数であり,
                                                                    ヒストグラムから計算される確率密度関数の差が最小
例えば,次のようなガウス関数を用いる.
                                                                    になる色補正パラメータを計算する.よく用いられる
                 1      x2
         K(x) = √ exp −                        .              (2)   のは次のような最小二乗法である.
                 2π     2
                                                                                     N
W は核関数表現におけるバンド幅であり,ガウス関数
                                                                                                                        2
                                                                                                 (L)          (R)
                                                                              J=           p(Ii        ) − p(Ii     )       .           (7)
を用いる場合には,次のように最適に決定される [19].                                                         i=1

                      4
                              1/5                                   左右画像のヒストグラムの計算を行う領域には,視差
           W =                      σn−1/5 .                  (3)
                      3                                             によるオクルージョンのために,一方には含まれてい
ない画素が発生する.そのような画素の影響を避ける
ためには,例えば,左右画像間の動き推定・補正処理
を行うことが考えられるが,動き推定・補正処理には
コストが掛かる.そのような画素が画像全体に占める
領域は,局所的なものであるだろうから,ロバスト M
推定 [6, 2, 18] により対応が可能と考える.ロバスト M
推定はレベル飽和によりクリップされた画素によるガ
マット誤差 [12] への対応も期待される.
 3次元 RGB 色空間における RGB 毎の1次元アフィ
ン変換(5)による色補正を用いると,ロバスト M 推
定により,次の目的関数を最小化する色補正パラメー                                                       図2      ロバスト推定関数と二乗関数.
タを推定する.

                                                                             色補正パラメータのレベル制約付き推定
          N
  J =         ρ(ri ),                                                   5
        i=1

  ri = p(Ii
              (L)
                    )                                                       色データは,例えば,RGB 3次元色空間のようにベ
                    N                    (R)        (R)                 クトルデータであり,RGB 毎に独立に色補正を行った
           1                           Ii      − (βIj     + γ)
                                                                        場合には,白は厳密に白レベルに,黒は厳密に黒レベ
                            (R)
      −                  h(Ij     )K                             .(8)
          nW                                      W
                j=1                                                     ルに補正されるとは限らない.すなわち,RGB 毎に独
ここで,ρ( · ) は二乗よりは増加が遅く,0 において最                                          立な推定では,カラーバランスを厳密に保つことがで
小値を取る対称で正の推定関数であり,例えば,次の                                                きない.
ようなものがある [2].                                                               そこで,厳密にカラーバランスを保つように色補正
                                     x2                                 パラメータを推定するために,白は白レベルにする等,
                        ρ(x) =
                                  σ M + x2
                                           .                      (9)   特定の色レベルが必ず特定の色レベルになるような色
σM は次のように推定される [17, 18].                                                レベルに関する制約条件を課す [11].例えば,RGB 3
                                                                        次元色空間における RGB 毎の1次元アフィン変換補正
              σM = 1.4826 mediani |ri |.
              ˆ                                                  (10)   モデルにおいて,そのようなレベル制約を課した場合
σM = 1 としたときの,ロバスト推定関数(9)を二乗                                            の目的関数 K は次のように書ける.
関数とともに図 2 に示す.                                                                        N
                                                                                                (L)          (R)
  色補正パラメータのロバスト M 推定の計算はガウス・                                                   K =         ρ p(Ii     ) − p(Ii     )
                                                                                     i=1
ニュートン法により行う [10, 18].目的関数 J (8)を
                                                                                           (L)    (R)
                                                                                       +λ Ia − (βIa + γ) .             (13)
未知パラメータ β, γ に関して微分すると,勾配は微分
の連鎖則から計算できる.核関数により確率密度関数                                                ここで,λ はラグランジュ未定乗数である.右画像の特
を計算するためのバンド幅 W (3)は,ブロック領域の                                             定の色レベル Ia     ∈ {Ra , Ga , Ba } が,左画像の
                                                                                     (R)       (R)     (R)   (R)

画素値の標準偏差によるから,反復毎に計算する.                                                 特定の色レベル Ia ∈ {Ra , Ga , Ba } になるよう
                                                                                     (L)    (L)  (L)  (L)

  パラメータの初期値には,オフセット項 γ はヒスト                                             に,RGB 毎に目的関数 K を最小化する未知パラメー
グラムの重心(平均)   ,あるいはメジアン値を揃えるよ                                            タ β, γ, λ を計算すればよい.
うに計算する.ゲイン項 β はヒストグラムの標準偏差,                                              白レベルを揃えるためには,左画像における輝度値
あるいはメジアン値から計算される次のようなメジア                                                最大になる画素を探索して,その画素位置を中心とす
ン絶対偏差(Median Absolute Deviation,MAD)[17]                                る適当なブロック領域に対応する右画像の領域におい
による(標準偏差の)比として計算する.                                                     て輝度値が最大になる画素を探索して,それらの色レ
                                                                        ベルを対応させる.黒レベルを揃えるためには,左画
   MAD = mediani (|h(Ii ) − medianj (h(Ij ))|), (11)
                                                                        像における輝度値最小になる画素を探索して,その画
          σ = 1.4826 MAD.
          ˆ                                                      (12)
                                                                        素位置を中心とする適当なブロック領域に対応する右
いずれもヒストグラムから簡単に計算することが可能                                                画像の領域において輝度値が最小になる画素を探索し
である.最適化のための反復処理もすべてヒストグラ                                                て,それらの色レベルを対応させる.その他,画像中
ムから核関数を用いて計算される確率密度関数による                                                の特定の色レベルを手動により指定することもできる
計算処理のため,画像に戻って画素毎の色補正処理と                                                だろう.RGB 信号から輝度色差信号 YCbCr への変換
ヒストグラムの計算を繰り返す必要がない.したがっ                                                は [10] の付録参照.レベル制約を課した場合にも,同
て,処理コストが劇的に低減可能である.                                                     様にガウス・ニュートン法により最適な色補正パラメー
タを推定することが可能である.初期値には,レベル
制約を課さない場合の推定結果を用いる.

6 時系列推定の安定化

 3 D 映像における自動色補正処理は,ヒストグラム
上での色補正パラメータ推定のため,処理コストが劇
的に減少することが期待できる.しかし,フレーム毎
の独立した推定結果による色補正は時間変動による妨
害が生じるかもしれない.推定したパラメータに対す                                                   (a)
る平滑化処理等の何らかの時系列処理が必要になるが,
RGB 毎に独立に補正パラメータに対して平滑化処理を
行うと,レベル制約を課すことによって保持したカラー
バランスが崩れてしまうかもしれない.そこで,補正
パラメータの時系列平滑化とレベル制約を同時に満た
すために,次のような目的関数の最小化を行う.
                  N
                             (L)          (R)
           L=           ρ p(Ii     ) − p(Ii     )
                  i=1
                        (L)    (R)
                    +λ Ia − (βIa + γ)
                                                                           (b)
                            ˆ
                    +µ (β − β)2 + (γ − γ )2 .
                                       ˆ            (14)

ここで,Ia , Ia              はそれぞれ左右画像において対応
            (L)    (R)

するレベル制約であり,λ はラグランジュ未定乗数で
ある.β, γ は前フレームにおける推定パラメータであ
   ˆ ˆ
る.つまり,レベル制約に加えて時間方向に滑らかさの
制約を課した正則化により色補正パラメータを推定す
るものである.µ は正則化パラメータである.Horn &
Schunck[5] はオプティカルフローの推定において,空
間的な滑らかさの制約による正則化を用いた.明示的
な平滑化処理を行わずとも,パラメータ推定自体に平
                                                                           (c)
滑化作用が内在している.
                                                            図3  (a) 色補正パラメータ推定のための同一画像か
7 画像シミュレーション                                                らの擬似3 D 画像例(サイドバイサイド表示) (b) 左
                                                                                   .
                                                            右画像の画素値(R)の確率密度関数.(c) シフト量に
                                                            対する推定した色補正パラメータによる二乗誤差画像
同一画像による擬似3 D 画像シミュレーション                                     のピーク SN 比.
 3 D 画像1 の左画像の一部分を切り出して,擬似的
な3 D 画像の左右画像とする.左画像は画像の中央領
域から切り出したものとして,右画像は,そのような左                                  1 の正規乱数誤差を加える.画素値の量子化数は 8 ビッ
画像に対して e 画素だけ水平方向にシフトさせて切り出                                ト 256 階調である.真の色補正パラメータは色変換パ
したものとする.シフト量(視差量に相当する)は,左                                  ラメータになる.色変換パラメータを固定して,シフ
画像に対して右にシフトする場合を正の方向とする.切                                  ト量を変えたときの色補正パラメータを推定する.こ
り出し画像の水平サイズ H に対する比 d = e/H × 100                          れを様々な画像を用いて行う.
(%)で表す [1].                                                  色補正のモデルとしては,式(5)の RGB 毎に独立な
 そのようにして1枚の画像から生成した擬似的な3                                   1次元アフィン変換モデルを用いる.擬似的な3 D 画
D 画像において,左画像を RGB 毎に独立に適当な色変                               像のサイズは 1280 × 720 である.シフト量は d = ±5%
換する.色変換を受けた左画像を基準画像として,右画                                  の範囲で 0.1% 刻みとする.量子化誤差,観測誤差を防
像を左画像に揃える色補正パラメータを推定する.この                                  ぐために平滑化した左右画像の 80% 中央領域における
とき,右画像には RGB 毎に独立に期待値 0,標準偏差                               画素を用いて色補正パラメータを推定する.推定した
  1   http://vision.middlebury.edu/stereo/                 色補正パラメータにより(誤差を含む)右画像を色補
(a)                         (b)                (c)

 図4  (a) レベル制約付き推定のための擬似3 D 画像例(サイドバイサイド表示)と白レベル領域(赤枠) (b) 白レ
                                                      .
 ベル領域における画素値の2次元色差空間表示(レベル制約付き推定の場合) (c) レベル制約なしの推定の場合.
                                        .



正したものと真の色補正パラメータにより(誤差を含               図 1(b) はシミュレーションに用いた実際の3 D 画像
まない)右画像を色補正したものとの二乗誤差画像の              をサイドバイサイド表示したものである.RGB 毎に既
ピーク SN 比(PSNR)を計算して評価する.              知の1次元アフィン変換により色変換した左画像を基
 図 3(a) はシミュレーションに用いた擬似的な3 D 画        準画像として,右画像を揃えるように色補正処理を行
像例をサイドバイサイド表示したものである(シフト              う.基準となる左画像の確率密度関数に,レベル飽和
量は d = 2.9% で 37 画素).左右画像の画素値(R)の     によりクリップされた画素によるガマット誤差 [12] が
ヒストグラムから核関数により計算した確率密度関数              存在する場合でも,ロバスト M 推定により右画像の確
は図 3(b) のようになる.シフト量の絶対値が増すと,          率密度関数はマッチングしている(図 1(c)).推定した
ピーク SN 比がやや低下しているが,3 D 映像におけ          色補正パラメータにより色補正した右画像と真の色変
る快適な視聴範囲 [1] とされている d = ±2.9% の範囲     換パラメータにより色変換した右画像との二乗誤差画
では,ほぼ十分な結果が得られている.グラフ中のひ              像のピーク SN 比は 64.8[dB] であった.
とつの線分が1枚の画像における結果に相当している.
                                      3 D 映像における時系列推定シミュレーション
 図 4(a) の擬似3 D 画像例は,左画像の輝度を変換し
                                       実際の3 D 映像2 における左映像を適当な色変換を
たものである.そのような左画像を基準として,右画像
                                      行い,右映像を左映像に揃える色補正パラメータを推
の明るさを揃える.このとき,左右画像中の最大輝度
                                      定する.図 5(b) は,3 D 映像のフレーム番号に対する
値を探索して対応付けて,最大輝度値の画素の色レベ
                                      色補正パラメータの推定結果である.時間方向の正則
ルをレベル制約として課すことにより,カラーバラン
                                      化を行った場合(赤線)と,正則化を行わずにフレー
スを保った色補正を試みる.推定した色補正パラメー
                                      ム毎に独立に推定した場合(緑線)の両方の結果を重
タによる色補正画像中の白レベル領域(赤枠)の画素
                                      ねて表示する.時間方向の滑らかさの制約を課した正
値を色差信号に変換して,2次元色差空間にプロット
                                      則化による安定化の効果が見られる.
する.レベル制約を課さない RGB 毎の独立な色補正パ
ラメータ推定による結果では,2次元色差空間上のプ              8 まとめ
ロットに偏りが見られるが,レベル制約付き色補正パ
ラメータ推定による結果では,偏りがなくカラーバラ               3 D 映像における左右映像の色・明るさを揃えるた
ンスが保たれていることがわかる.                      めに,画素値のヒストグラムから核関数により確率密

実際の3 D 画像シミュレーション                     度関数を計算し,その差を最小にする色補正パラメー

 1枚の画像から生成した擬似的な3 D 画像ではなく,           タをロバストに推定して色補正を行った.左右画像中

2台のカメラで撮影された実際の3 D 画像2 を用いる.          の最大輝度値を探索して対応付けて,その色レベルを

左画像を適当な色変換する.そのような色変換を受け              レベル制約として課すことにより,カラーバランスを

た左画像を基準画像として,右画像を左画像に揃える              保った色補正を行った.さらに,時間方向に滑らかさ

色補正パラメータを推定する.真の色補正パラメータ              の制約を課すことにより時系列推定の安定化を行った.

は色変換パラメータになる.左右画像中の最大輝度値               今後の課題としては,映像信号で標準的に用いられ

を探索して対応付けて,最大輝度値の画素の色レベル              る輝度色差色空間における色補正モデルによる色補正

をレベル制約として課す.                          も検討することである.色補正モデルとしては,簡易
                                      な1次元アフィン変換モデルを用いたが,その他のモ
 2(独)情報通信研究機構「超高精細ステレオ3 D 映像コンテン
ツ」より.http://3d-contents.nict.go.jp/   デルとして,高次数,多次元のモデルも検討したい.
(a)                                                    (b)

    図5     (a) 3 D 映像中の1フレームのサイドバイサイド表示.(b) 3 D 映像の色補正パラメータ(R)の推定結果.


参考文献                                                       [12] J´n Moroviˇ, Color Gamut Mapping, John Wiley
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3D映像のための自動色補正論文

  • 1.
    3 D 映像のための自動色補正 Auto Color Correction for Stereoscopic 3D Video 松永 力 趙 延軍 和田 雅徳 Chikara Matsunaga, Yanjun Zhao and Masanori Wada 株式会社 朋栄 佐倉研究開発センター FOR-A Co., Ltd. Sakura R&D Center E-mail: matsunaga@for-a.co.jp (a) (b) (c) 図1 (a) 3 D リグ.(b) シミュレーションに用いた3 D 画像例.(c) 左右画像の画素値(G)の確率密度関数. Abstract とともに,反射と透過による色・明るさの違いを揃え る色補正処理が必要になる. 3 D 映像における左右の映像を幾何学的・光学的に 色補正処理には,既知の色レベルからなるカラーチ 一致させることは,実写とコンピュータグラフィックス ャート(色票)を用いる方法があるが [11],必ずカラー (Computer Graphics, CG)の合成における実カメラと チャートを撮影することは運用上困難な場合も考えら 仮想カメラの間の幾何学的・光学的な一致と同様に必 れる.そこで,任意の撮影画像からの自己校正手法を 須である.見やすく,かつ安全な3 D 映像を制作する 考える.これには,画像中のコーナー等の特徴点を抽 ためにも欠かせない. 出し,左右の画像において特徴点を対応付ける方法が 本研究は,そのような3 D 映像における左右の映像 考えられるが,処理コストが掛かる. の色・明るさのずれを,カラーチャート(色票)のよう 本研究では,左右画像の画素値のヒストグラムから な特別な参照板を用いずに,映像のみから自動的に計 核関数により確率密度関数を計算し,その差を最小に 算して色補正を行うものである. する色補正パラメータを推定する.推定には,左右映像 間の視差によるオクルージョンや,レベル飽和による ガマット誤差 [12] の影響を考慮して,ロバスト M 推定 1 はじめに [6] を用いる.さらに,レベル制約を課すことによりカ ラーバランスを保った色補正や,時間方向に滑らかさ 人間は左右の目に映る像の見え方の違いである両眼 の制約を課すことにより時系列推定の安定化も試みる. 視差により奥行きや立体感を感じている.これを利用 画像のヒストグラムは濃淡画像処理をはじめとして, した3 D 映像 [13] が映画をはじめとして,近年大きな 類似画像の検索ための特徴量として用いられた [20].医 盛り上がりを見せている. 用画像では,ヒストグラムから計算される相互情報量 3 D 映像の撮影には,3 D リグと呼ばれる左右2 (Mutual Information, MI)を最大にするように,複数 台のカメラを水平・垂直に設置する器具を用いる(図 のモダリティによる異種画像間の位置合わせに用いら 1(a)).これは,人間の目と同じ間隔による撮影を可能 れた [9, 22].Comaniciu ら [4] は,移動物体の追跡処理 とするものであり,ハーフミラーにより反射・透過する のために画素値の色ヒストグラムから核関数を用いて 映像を撮影することになる.反射映像を左右反転する 類似度を計算する平均値シフト法を用いた.松永 [10]
  • 2.
    は,視程障害映像のコントラスト補正処理のために画 σ はブロック領域中の画素値の標本標準偏差である.式 素値のヒストグラムから核関数を用いて確率密度関数 (1)をヒストグラム h(Ij ) を用いて次のように書き直す を計算し,コントラスト補正のためのパラメータをカ [10]. ルバック‐ライブラー情報量を最小化するように最適 N 1 I − Ij に推定した. p(I) = h(Ij )K . (4) nW W 色補正処理としては,松永ら [11] は,再撮モニタや j=1 複数台のカメラ間の色を合わせるために,先頭フレー ここで,N はヒストグラムの階級数である.注意すべ ムに撮影した基準となるカラーチャート(色票)を自 きは,式(1)は,ブロック領域中のすべての標本画素 動認識して,観測誤差を考慮して色補正パラメータを 値 {Ij | j = 1, . . . , n} をそのまま用いているが,式(4) 最適に推定するとともに,ガマット誤差 [12] が含まれ では,ヒストグラムの階級における画素値(階級値) ている映像に対しても,レベル制約付き最適推定とモ {Ij | j = 1, . . . , N } を用いることである. デル選択を組み合わせることによって妥当な色補正結 式(4)はヒストグラムと核関数のたたみ込みと見な 果を得るための方法を示した.Reinhard ら [16] は,画 すことができる.核関数がガウス関数の場合,人工神 像間の見た目の色を揃えるために,画像を LMS 色空間 経回路網のひとつである放射基底関数(Radial Basis に変換して,それらの平均値,分散値を揃える処理を Function, RBF)ネットワーク [15] としても知られて 行った. いる. 複数台のカメラにより撮影された多視点映像の動画 像圧縮符号化は,H.264/MPEG-4 AVC の追加規格と 3 色補正モデル して標準化がなされ [7, 21],Blu-ray Disc TM に記録し 色補正モデルとしては,RGB 3次元色空間において, た3 D 映像の再生・表示を実現するための規格として RGB 毎に独立に次のような1次元アフィン補正を行う も採用された [3].多視点映像において複数台のカメラ ものとする. の色補正を行う研究がある [14, 23]. 本論文の構成は,2 章で画素値のヒストグラムから核 I = βI + γ, I ∈ {R, G, B}, I ∈ {R , G , B }. (5) 関数により確率密度関数を計算する方法を説明し,3 章 で色補正に用いる色補正モデルとそれによる確率密度 そのような色補正を行った場合の確率密度関数は式(4) 関数の変換について説明する.4 章で色補正パラメータ より,次のようになる. のロバスト推定方法について,5 章でレベル制約付きパ 1 N I − Ij p(I ) = h(Ij )K ラメータ推定によるカラーバランスを保った色補正に nW W j=1 ついて,6 章で時系列推定を安定化するための時間方向 N 1 I − (βIj + γ) の滑らかさの制約付きパラメータ推定について,それ = h(Ij )K . (6) nW W ぞれ説明する.7 章で,それらの推定方法を確認するた j=1 めの画像シミュレーションを行い,8 章でまとめる. ヒストグラム h(Ij ) ≡ h(Ij ) であるから,色補正を行っ た画像の確率密度関数は,補正前の原画像のヒストグ 2 核関数による確率密度関数の計算 ラムのみから計算することができる. 画像中のブロック領域における画素値に関する1次 4 色補正パラメータのロバスト推定 元のヒストグラムから核関数を用いて次のように確率 密度関数を計算する [19]. 3 D 映像における左右画像 I (L) , I (R) の確率密度関 1 n I − Ij 数を p(I (L) ), p(I (R) ) と表す.左画像 I (L) を基準画像と p(I) = K . (1) nW W して,右画像 I (R) を色補正すると仮定する(勿論逆で j=1 も構わない).色補正パラメータを推定するために,左 ここで,Ij はブロック領域中の画素値であり,n はブ 右画像の画面中央領域における各々の画素値に関する ロック領域中の総画素数である.K( · ) は核関数であり, ヒストグラムから計算される確率密度関数の差が最小 例えば,次のようなガウス関数を用いる. になる色補正パラメータを計算する.よく用いられる 1 x2 K(x) = √ exp − . (2) のは次のような最小二乗法である. 2π 2 N W は核関数表現におけるバンド幅であり,ガウス関数 2 (L) (R) J= p(Ii ) − p(Ii ) . (7) を用いる場合には,次のように最適に決定される [19]. i=1 4 1/5 左右画像のヒストグラムの計算を行う領域には,視差 W = σn−1/5 . (3) 3 によるオクルージョンのために,一方には含まれてい
  • 3.
    ない画素が発生する.そのような画素の影響を避ける ためには,例えば,左右画像間の動き推定・補正処理 を行うことが考えられるが,動き推定・補正処理には コストが掛かる.そのような画素が画像全体に占める 領域は,局所的なものであるだろうから,ロバスト M 推定 [6,2, 18] により対応が可能と考える.ロバスト M 推定はレベル飽和によりクリップされた画素によるガ マット誤差 [12] への対応も期待される. 3次元 RGB 色空間における RGB 毎の1次元アフィ ン変換(5)による色補正を用いると,ロバスト M 推 定により,次の目的関数を最小化する色補正パラメー 図2 ロバスト推定関数と二乗関数. タを推定する. 色補正パラメータのレベル制約付き推定 N J = ρ(ri ), 5 i=1 ri = p(Ii (L) ) 色データは,例えば,RGB 3次元色空間のようにベ N (R) (R) クトルデータであり,RGB 毎に独立に色補正を行った 1 Ii − (βIj + γ) 場合には,白は厳密に白レベルに,黒は厳密に黒レベ (R) − h(Ij )K .(8) nW W j=1 ルに補正されるとは限らない.すなわち,RGB 毎に独 ここで,ρ( · ) は二乗よりは増加が遅く,0 において最 立な推定では,カラーバランスを厳密に保つことがで 小値を取る対称で正の推定関数であり,例えば,次の きない. ようなものがある [2]. そこで,厳密にカラーバランスを保つように色補正 x2 パラメータを推定するために,白は白レベルにする等, ρ(x) = σ M + x2 . (9) 特定の色レベルが必ず特定の色レベルになるような色 σM は次のように推定される [17, 18]. レベルに関する制約条件を課す [11].例えば,RGB 3 次元色空間における RGB 毎の1次元アフィン変換補正 σM = 1.4826 mediani |ri |. ˆ (10) モデルにおいて,そのようなレベル制約を課した場合 σM = 1 としたときの,ロバスト推定関数(9)を二乗 の目的関数 K は次のように書ける. 関数とともに図 2 に示す. N (L) (R) 色補正パラメータのロバスト M 推定の計算はガウス・ K = ρ p(Ii ) − p(Ii ) i=1 ニュートン法により行う [10, 18].目的関数 J (8)を (L) (R) +λ Ia − (βIa + γ) . (13) 未知パラメータ β, γ に関して微分すると,勾配は微分 の連鎖則から計算できる.核関数により確率密度関数 ここで,λ はラグランジュ未定乗数である.右画像の特 を計算するためのバンド幅 W (3)は,ブロック領域の 定の色レベル Ia ∈ {Ra , Ga , Ba } が,左画像の (R) (R) (R) (R) 画素値の標準偏差によるから,反復毎に計算する. 特定の色レベル Ia ∈ {Ra , Ga , Ba } になるよう (L) (L) (L) (L) パラメータの初期値には,オフセット項 γ はヒスト に,RGB 毎に目的関数 K を最小化する未知パラメー グラムの重心(平均) ,あるいはメジアン値を揃えるよ タ β, γ, λ を計算すればよい. うに計算する.ゲイン項 β はヒストグラムの標準偏差, 白レベルを揃えるためには,左画像における輝度値 あるいはメジアン値から計算される次のようなメジア 最大になる画素を探索して,その画素位置を中心とす ン絶対偏差(Median Absolute Deviation,MAD)[17] る適当なブロック領域に対応する右画像の領域におい による(標準偏差の)比として計算する. て輝度値が最大になる画素を探索して,それらの色レ ベルを対応させる.黒レベルを揃えるためには,左画 MAD = mediani (|h(Ii ) − medianj (h(Ij ))|), (11) 像における輝度値最小になる画素を探索して,その画 σ = 1.4826 MAD. ˆ (12) 素位置を中心とする適当なブロック領域に対応する右 いずれもヒストグラムから簡単に計算することが可能 画像の領域において輝度値が最小になる画素を探索し である.最適化のための反復処理もすべてヒストグラ て,それらの色レベルを対応させる.その他,画像中 ムから核関数を用いて計算される確率密度関数による の特定の色レベルを手動により指定することもできる 計算処理のため,画像に戻って画素毎の色補正処理と だろう.RGB 信号から輝度色差信号 YCbCr への変換 ヒストグラムの計算を繰り返す必要がない.したがっ は [10] の付録参照.レベル制約を課した場合にも,同 て,処理コストが劇的に低減可能である. 様にガウス・ニュートン法により最適な色補正パラメー
  • 4.
    タを推定することが可能である.初期値には,レベル 制約を課さない場合の推定結果を用いる. 6 時系列推定の安定化 3D 映像における自動色補正処理は,ヒストグラム 上での色補正パラメータ推定のため,処理コストが劇 的に減少することが期待できる.しかし,フレーム毎 の独立した推定結果による色補正は時間変動による妨 害が生じるかもしれない.推定したパラメータに対す (a) る平滑化処理等の何らかの時系列処理が必要になるが, RGB 毎に独立に補正パラメータに対して平滑化処理を 行うと,レベル制約を課すことによって保持したカラー バランスが崩れてしまうかもしれない.そこで,補正 パラメータの時系列平滑化とレベル制約を同時に満た すために,次のような目的関数の最小化を行う. N (L) (R) L= ρ p(Ii ) − p(Ii ) i=1 (L) (R) +λ Ia − (βIa + γ) (b) ˆ +µ (β − β)2 + (γ − γ )2 . ˆ (14) ここで,Ia , Ia はそれぞれ左右画像において対応 (L) (R) するレベル制約であり,λ はラグランジュ未定乗数で ある.β, γ は前フレームにおける推定パラメータであ ˆ ˆ る.つまり,レベル制約に加えて時間方向に滑らかさの 制約を課した正則化により色補正パラメータを推定す るものである.µ は正則化パラメータである.Horn & Schunck[5] はオプティカルフローの推定において,空 間的な滑らかさの制約による正則化を用いた.明示的 な平滑化処理を行わずとも,パラメータ推定自体に平 (c) 滑化作用が内在している. 図3 (a) 色補正パラメータ推定のための同一画像か 7 画像シミュレーション らの擬似3 D 画像例(サイドバイサイド表示) (b) 左 . 右画像の画素値(R)の確率密度関数.(c) シフト量に 対する推定した色補正パラメータによる二乗誤差画像 同一画像による擬似3 D 画像シミュレーション のピーク SN 比. 3 D 画像1 の左画像の一部分を切り出して,擬似的 な3 D 画像の左右画像とする.左画像は画像の中央領 域から切り出したものとして,右画像は,そのような左 1 の正規乱数誤差を加える.画素値の量子化数は 8 ビッ 画像に対して e 画素だけ水平方向にシフトさせて切り出 ト 256 階調である.真の色補正パラメータは色変換パ したものとする.シフト量(視差量に相当する)は,左 ラメータになる.色変換パラメータを固定して,シフ 画像に対して右にシフトする場合を正の方向とする.切 ト量を変えたときの色補正パラメータを推定する.こ り出し画像の水平サイズ H に対する比 d = e/H × 100 れを様々な画像を用いて行う. (%)で表す [1]. 色補正のモデルとしては,式(5)の RGB 毎に独立な そのようにして1枚の画像から生成した擬似的な3 1次元アフィン変換モデルを用いる.擬似的な3 D 画 D 画像において,左画像を RGB 毎に独立に適当な色変 像のサイズは 1280 × 720 である.シフト量は d = ±5% 換する.色変換を受けた左画像を基準画像として,右画 の範囲で 0.1% 刻みとする.量子化誤差,観測誤差を防 像を左画像に揃える色補正パラメータを推定する.この ぐために平滑化した左右画像の 80% 中央領域における とき,右画像には RGB 毎に独立に期待値 0,標準偏差 画素を用いて色補正パラメータを推定する.推定した 1 http://vision.middlebury.edu/stereo/ 色補正パラメータにより(誤差を含む)右画像を色補
  • 5.
    (a) (b) (c) 図4 (a) レベル制約付き推定のための擬似3 D 画像例(サイドバイサイド表示)と白レベル領域(赤枠) (b) 白レ . ベル領域における画素値の2次元色差空間表示(レベル制約付き推定の場合) (c) レベル制約なしの推定の場合. . 正したものと真の色補正パラメータにより(誤差を含 図 1(b) はシミュレーションに用いた実際の3 D 画像 まない)右画像を色補正したものとの二乗誤差画像の をサイドバイサイド表示したものである.RGB 毎に既 ピーク SN 比(PSNR)を計算して評価する. 知の1次元アフィン変換により色変換した左画像を基 図 3(a) はシミュレーションに用いた擬似的な3 D 画 準画像として,右画像を揃えるように色補正処理を行 像例をサイドバイサイド表示したものである(シフト う.基準となる左画像の確率密度関数に,レベル飽和 量は d = 2.9% で 37 画素).左右画像の画素値(R)の によりクリップされた画素によるガマット誤差 [12] が ヒストグラムから核関数により計算した確率密度関数 存在する場合でも,ロバスト M 推定により右画像の確 は図 3(b) のようになる.シフト量の絶対値が増すと, 率密度関数はマッチングしている(図 1(c)).推定した ピーク SN 比がやや低下しているが,3 D 映像におけ 色補正パラメータにより色補正した右画像と真の色変 る快適な視聴範囲 [1] とされている d = ±2.9% の範囲 換パラメータにより色変換した右画像との二乗誤差画 では,ほぼ十分な結果が得られている.グラフ中のひ 像のピーク SN 比は 64.8[dB] であった. とつの線分が1枚の画像における結果に相当している. 3 D 映像における時系列推定シミュレーション 図 4(a) の擬似3 D 画像例は,左画像の輝度を変換し 実際の3 D 映像2 における左映像を適当な色変換を たものである.そのような左画像を基準として,右画像 行い,右映像を左映像に揃える色補正パラメータを推 の明るさを揃える.このとき,左右画像中の最大輝度 定する.図 5(b) は,3 D 映像のフレーム番号に対する 値を探索して対応付けて,最大輝度値の画素の色レベ 色補正パラメータの推定結果である.時間方向の正則 ルをレベル制約として課すことにより,カラーバラン 化を行った場合(赤線)と,正則化を行わずにフレー スを保った色補正を試みる.推定した色補正パラメー ム毎に独立に推定した場合(緑線)の両方の結果を重 タによる色補正画像中の白レベル領域(赤枠)の画素 ねて表示する.時間方向の滑らかさの制約を課した正 値を色差信号に変換して,2次元色差空間にプロット 則化による安定化の効果が見られる. する.レベル制約を課さない RGB 毎の独立な色補正パ ラメータ推定による結果では,2次元色差空間上のプ 8 まとめ ロットに偏りが見られるが,レベル制約付き色補正パ ラメータ推定による結果では,偏りがなくカラーバラ 3 D 映像における左右映像の色・明るさを揃えるた ンスが保たれていることがわかる. めに,画素値のヒストグラムから核関数により確率密 実際の3 D 画像シミュレーション 度関数を計算し,その差を最小にする色補正パラメー 1枚の画像から生成した擬似的な3 D 画像ではなく, タをロバストに推定して色補正を行った.左右画像中 2台のカメラで撮影された実際の3 D 画像2 を用いる. の最大輝度値を探索して対応付けて,その色レベルを 左画像を適当な色変換する.そのような色変換を受け レベル制約として課すことにより,カラーバランスを た左画像を基準画像として,右画像を左画像に揃える 保った色補正を行った.さらに,時間方向に滑らかさ 色補正パラメータを推定する.真の色補正パラメータ の制約を課すことにより時系列推定の安定化を行った. は色変換パラメータになる.左右画像中の最大輝度値 今後の課題としては,映像信号で標準的に用いられ を探索して対応付けて,最大輝度値の画素の色レベル る輝度色差色空間における色補正モデルによる色補正 をレベル制約として課す. も検討することである.色補正モデルとしては,簡易 な1次元アフィン変換モデルを用いたが,その他のモ 2(独)情報通信研究機構「超高精細ステレオ3 D 映像コンテン ツ」より.http://3d-contents.nict.go.jp/ デルとして,高次数,多次元のモデルも検討したい.
  • 6.
    (a) (b) 図5 (a) 3 D 映像中の1フレームのサイドバイサイド表示.(b) 3 D 映像の色補正パラメータ(R)の推定結果. 参考文献 [12] J´n Moroviˇ, Color Gamut Mapping, John Wiley a c & Sons Ltd., August 2008. [1] 3Dコンソーシアム(3DC)安全ガイドライン部 [13] 尾上 守夫・池内 克史・羽倉 弘之 編, 3次元映像 会,人に優しい3D普及のための3DC安全ガイド ハンドブック, 朝倉書店, 2006. ライン,2010 年 4 月 20 日改訂. [14] メヒルダド・パナヒプル・テヘラニ,石川 彰夫,酒 [2] M. J. Black and P. Anandan, The robust es- 澤 茂之,小池 淳,The optimal color correction of timation of multiple motions: parametric and multicamera systems, 電子情報通信学会技術報告, piecewise-smooth flow fields, Computer Vision and 107-358, IE2007-94 (2007-11), 23–28. Image Understanding, 63-1 (1996), 75–104. [15] T. Poggio and F. Girosi, Networks for approxima- [3] The Blu-ray Disc Association (BDA), Blu-ray Disc tion and learning, Proceedings of the IEEE, 78-9 Association Announces Final 3D Specification, (1990), 1481–1497. “Blu-ray 3DTM ” Expected to Reach Consumers in [16] E. Reinhard, M. Ashikhmin, B. Gooch and P. 2010, December 17, 2009. Shirley, Color transfer between images, IEEE http://www.blu-raydisc.com/en.html Transactions on Computer Graphics and Applica- [4] D. Comaniciu, V. Ramesh and P. Meer, Kernel- tions, 21-5 (2001), 34–41. based object tracking, IEEE Transactions on Pat- [17] P. J. Rousseeuw and A. M. Leroy, Robust Regres- tern Analysis Machine Intelligence, 25-5 (2003), sion and Outlier Detection, J. Wiley & Sons, NY, 564–575. 1987. [5] B. K. P. Horn and B. G. Schunck, Determining [18] H. S. Sawhney and S. Ayer, Compact represen- optical flow, Artificial Intelligence, 17 (1981), 185– tations of videos through dominant and multiple 203. motion estimation, IEEE Transactions on Pattern [6] P. J. Huber, Robust Statistics, Wiley, 1981, 2004. Analysis Machine Intelligence, 18-8 (1996), 814– [7] ISO/IEC JTC1/SC29/WG11, Introduction to 830. multiview video coding, N9580, Antalya, Turkey, [19] B. W. Silverman, Density Estimation for Statis- January 2008. tics and Data Analysis, London, Chapman and [8] 木村 優太,延原 章平,松山 隆司,多視点画像の相 Hall/CRC, 1986. 互色較正,第 12 回画像の認識・理解シンポジウム [20] M. J. Swain and D. H. Ballard, Color index- (MIRU2009) 講演論文集,松江(くにびきメッセ) . ing, International Journal of Computer Vision, 7- [9] F. Maes, A. Collignon, D. Vandermeulen, G. Mar- 1 (1991), 11–32. chal and P. Suetens, Multimodality image registra- [21] A. Vetro, P. Pandit, H. Kimata, A. Smolic and tion by maximization of mutual information, IEEE Y.-K. Wang, Joint draft 8.0 on multiview video Transactions on Medical Imaging, 16-2 (1997), coding, JVT document JVT-AB204, July 2008. 187–198. [22] P. Viola and W. M. Wells III, Alignment by [10] 松永 力,最適コントラスト補正による視程障害画 maximization of mutual information, International 像の明瞭化,第 15 回画像センシングシンポジウム Journal of Computer Vision, 24-2 (1997), 137– (SSII2009) 講演論文集,横浜 (パシフィコ横浜). 154. [11] 松永 力,趙 延軍,和田 雅徳,カラーチャートを [23] K. Yamamoto, T. Yendo, T. Fujii, M. Tani- 用いた複数の再撮モニタとカメラの最適色補正,第 moto and D. Suter, Colour correction for multiple- 16 回画像センシングシンポジウム (SSII2010) 講演 camera system by using correspondences, 対応点を 論文集,横浜 (パシフィコ横浜). 用いた複数カメラの色補正, 映像情報メディア学会 誌,61-2 (2007), 213–222.