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- 2. MBA 論文の制作過程のまとめ
ATSUSHI SAKAKI
2011/07/31
論文制作の目標と作業指針
論文制作には多くの労力をかける。それならば、できるだけ満足を得られるほうがよい。
そのためには、テーマ探しや調査の対象や内容の選択を追求することになる。しかし、修
士論文には、学術論文としての必要条件がある。その要件を論文に反映していくには多く
の時間がかかる。従って、迷走する場面もあるだろうと想像した。そこで、研究計画書を
作成する段階において、迷ったときに振り替えるための3つの目標を設けた。
1. 締切までに提出する(機会・経済的損失の観点)
2. 関心あるテーマを選択する(自己満足の観点、熱意の観点)
3. 実業に直接役に立つ結果を得る(仕事への貢献の観点)
一方で、入学の目的は MBA 取得である。従って、時間的制約も踏まえた工数を計画して
おかなければならない。さらに、外部要因として、仕事の状況にも適応しなければならな
い。論文制作の作業には、知識の習得、調査そして執筆がある。 8 割が完成している状態
を、テーマ、調査、分析、議論、結論までの骨子ができていることとした。この 8 割を早
い段階で完了させることを目指した。以上を踏まえて、自分の満足と MBA 習得と言う第
一目的という二兎を得るために、進捗管理および調査対象の選択の指針を作った。
1. 早く始める(満足度優先)
2. 押し迫ってきたら、作業を省略もしくは修正する(期限優先)
3. 時間的・能力的・経済的に取り組み可能な調査対象を選択する(調査の障害最小化)
論文制作を開始したのは、2010 年の 4 月。提出期限は 2011 年 4 月 9 日(震災の影響で当初
の 3 月 26 日から延長になった)であり、 12 ヶ月を費やした。同期の中でもっとも時間を
浪費した学生のひとりであろう。逆に、調査・分析・考察・執筆といった実際の作業は、
テーマや指導教官が決まってから 4 ヶ月で行った。これは短い方であろう。
結果として、学術的貢献としては、モデルの一般化可能性を高めるという小さな新規性に
とどまった。一方で、提出するために足りる論文を期限前に完成させ、また、実務的に価
値ある示唆が得られた。目標は達成できたわけである。
参考資料「論文制作から提出までのアクション・スケジュール・仕事の状況」参照
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- 3. MBA 論文の制作過程のまとめ
ATSUSHI SAKAKI
2011/07/31
工程管理
論文制作への取り組みにあたり、「修士論文の過程であれこれと迷う」という予想をして
いた。そのため、まず、そもそも社会科学とは何か、その研究とはなにか、という根底を
理解しておこうというのが最初に考えたことであった。迷ったときに基本的な意義を理解
しておくことで、自分なりに道筋を見つけられるからである(もちろん、手法などは規制
者や経験者に問い合わせた方が早いものもある)。 2010 年の 4 月から始め、 6 月には社会
科学における研究論文の意義について大枠を理解することができた。
ウェブ資料「社会科学のリサーチの意義」参照
http://www.slideshare.net/atsu23/ss-4349998 (論文制作通じ、全体構成を把握するために利
用)
論文制作の進行において懸念していたのは、年明け 2 月から仕事の都合で論文制作の時間
が縮小することであった。そのため、手間がかかりそうな調査・分析をできるだけ早く終
わらせておきたかった。しかし、具体的な作業を始められる状態になったのは、テーマが
決まった 2011 年 1 月 5 日である。この時点で、締切が 3 月 26 日であったことや、仕事の状
態を踏まえて、すぐに WBS(Work Breakdown Structure)を作成して、1 週間ごとにやるべ
きタスクを割り出しておいた。
参考資料「論文提出までの WBS」参照
WBS を実際に稼働させた期間は、研究領域の理解の段階からネットリサーチの結果を分析
する工程が終わる 2 月 20 日ころまでであった。特に、分析では確率統計の手法を用いるた
め、研究領域とは別に知識の習得の時間を確保する必要があったためである(後述するが
結局、分析には先行研究で行われた流れを踏襲し、必要な知識のみ学習した。そのため知
識習得に費やしたのは 2 日間のみである)。WBS は、遅れを確認するという観点で使えば
有意義になる(具体的な作業に取り掛かる段階で作成するほうが、現実的な計画書にな
る)。
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- 4. MBA 論文の制作過程のまとめ
ATSUSHI SAKAKI
2011/07/31
リサーチメソドロジー
テーマ探し
最終的な研究テーマは、小売サービスにおける経験価値の分類とその影響である。その研
究テーマにたどり着くまで、一貫して関心持ち続けたのは、「価値がどこで生まれるのか
と「生まれた価値が小売サービスにどのように影響しているのか」である。革新性と影響
力という観点で、論文計画書の作成時には、サービスイノベーションと社会ネットワーク
を学術領域として、それを小売サービスに当てはめることを考えていた。しかし、両領域
にあたって課題があった。そのひとつは調査対象の適正性であった。自社を調査対象とす
ることを決めていたのだが、規模や特徴など踏まえると事例として適切な切り口が見つか
らなかった。
しかし、テーマは決まらずに 11 月に入り、いよいよ時間が押し迫ってきていた。そこで、
締切を遵守するという目標を貫くために、選ぶつもりはないと考えていた消費者行動論か
ら論点を探すことにした。それまで消費者行動論を選択しなかったのは、「消費者がなぜ
特定の商品を買うのか」という購買観点の研究に関心が持てなかったからである。自分の
関心を捨ててでも消費者行動論を学術領域として選択したのは、同領域の論点であれば 消
費者を観察対象にするため、ネットリサーチを使い短期間に調査が可能だからである。
研究テーマとメソドロジーの決定
1 月に決定した研究テーマは、当初とほぼ同一のタイトルとなった(最終的には改変)。
そして、その研究テーマの基礎となった先行研究は、尺度開発の論文である。筆者にとっ
て、その論文は以下の意義があった。
1. もともとの関心に当てはまる。
2. 勤務先の業態(小売サービス)に適用できる
3. 尺度を開発した研究なので、その尺度をそのまま使える
4. 米国において著名な学術誌にて発表された論文である
5. 2001 年発表であり、比較的あたらしい論文である
6. その後、類似の研究が少ない
残り 3 ヶ月で理解・調査・分析・執筆しなければならない状況で、運よく見つかった論文
であった。課題は、修士論文としてどのようなオリジナリティをつくるかということであ
った。この点について、指導教官と相談し、時間的制約の観点で、調査対象を変えて検証
するという追試をメソドロジーとした。最終的には、追試をしつつ、小売サービス対する
価値の影響について、仮説検証型で論じることになった。
「運よく見つかった」ときまでの過程
消費者行動論のテキスト本の最後の章に、最近の学説について、数ページほどの解
説があった。しかし、少数派の説であろうと思い読み飛ばした。その後、論文を調
べ進むと、消費者行動の傾向を説いている論文のひとつに、同じキーワードが出て
きた(どのようなキーワードで探したら見つかったのかは記憶がない)。そこで、
4/12
- 5. MBA 論文の制作過程のまとめ
ATSUSHI SAKAKI
2011/07/31
再度、前述のテキスト本に戻り読みなおした。その説が歴史的にも思想的にも関心
の方向性も興味ある内容だった。そこで、原著論文を調べていった。その説そのも
のは研究テーマにはならなかった。しかし、その説の原著論文を調べている中で、
最終的にキーとなる論文が見つかったのである。
追試を行うメリットは、調査方法や分析手順ができあがっているところにある。尺度とな
る構成概念のワーディングもそのまま使えるため、調査内容の作成の時間がかからない。
手順も出来上がっているため、その過程をなぞることになる(その結果、妥当性が得られ
ない場合には手順に修正が入る)。従って、モデルをつくりあげることに比較して、取り
組むための準備が比較的少ない。デメリットは、新しい論点が出るわけではないので、分
析結果に厚みがない可能性がある。学術的貢献に乏しい内容になりかねない(追試がすべ
てそうなのではない。研究内容によっては追試が重要になるケースは多い)。従って、問
題意識と関連させるなど、考察の中で特徴を作り出し、研究に特徴を作らなければならな
い。
分析方法
追試であるため、分析は先行研究になぞって行った。知識習得の労力を最小限にするため
分析に関して学習したのは、分析ツールの該当箇所の操作方法と先行研究にて行われてい
る信頼性と妥当性の手法である。分析については、信頼性、収束的妥当性、弁別的妥当性
および法則的妥当性の検証に関する指標のみ理解に努めた。そのために費やした時間は 2
日間のみである。調査結果の執筆を含めると 7 日間の作業であった。
学外の協力者
分析手法と評価の仕方の理解や先行文献の収集など、学外の研究者にご支援いただ
いた。Twitter、論文記載のメールアドレスや大学のウェブサイトなど公開された情
報をもとに、2010 年 12 月後半に大学教授など複数の国内研究者に問い合わせた。
そのうちのおひとりからご連絡をいただいた。日本語文献が少なく、知識習得に時
間がかかる状況の中、分析手法の理解含め、短期完成につながった要因のひとつで
ある。
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- 6. MBA 論文の制作過程のまとめ
ATSUSHI SAKAKI
2011/07/31
執筆
執筆は、テーマが決まった 1 月 5 日から即開始した。まずは、当校の規定および論文の一
般的な章立てなど、アウトラインを Word にて作成、可能な限り書けるところを埋めてお
いた。この時点では、研究テーマ、問題意識、調査概略(対象、尺度、方法)、課題、引
用文献を考えられる範囲で文章化しておいた。
取り組みの順番はあらかじめ決めておいた。問題意識と研究目的は最初に書きおろした。
次に、他のアウトラインと独立していることを踏まえて、調査・分析に特化して取り組ん
だ。調査・分析の執筆を完成させたあと、考察と先行研究レビューを執筆した。その中で 、
全体の流れを統制するために、問題意識と研究目的にも修正を加えていった。 この全体統
制には多くの時間を使った。アウトラインに対する執筆の順序を整理すると以下の通りで
ある。
問題意識
研究の目的
調査の方法
調査結果 先行研究レビュー 引用文献
考察
先行研究レビューと
研究目的、問題意識
の修正
引用文献・資料の確認
結論・アブストラクト
松井豊 (2010), 『心理学論文の書き方』河出書房新社 ,p.22 を改変
図:アウトラインに対する執筆の順序
このほか、取り組むにあたっての疑問点・課題などを打ち込んだレジュメを Word により
作成した。短時間のゼミにおいて、専門外のテーマについて、指導教官やゼミ仲間と共有
するためのツールという位置づけである。
その他
校正
引用文献の表示やフォント、アウトラインの構成など、体裁の見直しは、結果として、 1
ヶ月かかった。それなりに時間がかかる。ガイドラインはあるのだが、指示してもらいた
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- 7. MBA 論文の制作過程のまとめ
ATSUSHI SAKAKI
2011/07/31
い項目が網羅されているわけではなく、誤解をして適用してしまったことは少なくなかっ
た。また、説明されていないこともあった。そこで、ゼミ仲間、指導教官以外の先生、学
校関係者にチェックお願いし、自分の思い込みによる間違いを修正していった。
議論の相手
論文制作の活動そのものではないが、影響していたのは、同じ関心をもった同期生との議
論であった。同じ関心であっても、研究領域がまったく同じではないため、先行研究、引
用文献、発想など、たくさんの材料をもらうことができた。また、進捗のメルクマールと
しても比較して捉える相手となった。
先行文献
11 月にイノベーションから消費者行動論へと学術領域を変更し、また、 1 月に研究テーマ
を決定する間も、サービスマネジメント、ストア・ロイヤルティ、マーチャンダイジング
など、キーワードを変えて調査をした。この過程で多数の先行文献を収集した。これらは
筆者の基本的な関心(価値)に関係しているため、参照する観点を探し、無駄にせず引用
することを心がけた。結果として、サービス・マネジメントとストア・ロイヤルティの文
献から、複数の引用をすることになり、引用文献に厚みができた。
以上
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- 8. MBA 論文の制作過程のまとめ
ATSUSHI SAKAKI
2011/07/31
参考資料:論文制作から提出までのアクション・スケジュール・仕事の状況
月 アクション スケジュール 仕事の状況
4月 社会科学、リサーチデザインの理解の開始 4/10 後期講義第 1 ユ
ニット開始(受講な
し)
5月 テーマの検討開始.サービスイノベーションに関する論文のリサ
ーチ実施
6月 6/2「社会科学のリサーチの意義」リリース 6/6 研究計画書の提
出
6/6 研究計画書の提出 1 回目(6/20 に戻し)、講義対応 6/12 後期講義第2ユ
ニット開始
7月 7/12 研究計画書の提出 2 回目(7/14 に戻し)、講義対応
8月 講義対応 8/7 後期講義第3ユ
ニット開始
9月 講義対応
10 月 10/?研究計画書の提出 3 回目(10/27 に戻し) 10/9 修士論文の執筆
の開始
11 月 11/2 消費者行動論の先生から同先生のゼミへの参加をご推奨い プロジェクト開始
ただいた(後日、指導教官).
11/6 ゼミ参加(この時点では指導教官はまだ未決定)。
学術領域をイノベーションから消費者行動論にシフト(調査対象
が企業から消費者に代わる)。11 月中旬にかけて、消費者行動
論における論点を把握(総論本3冊解読)。マーチャンダイジン
グ、ロイヤルティに関する論文のリサーチ実施(新しい論点を見
つけられず却下)
12 月 12 月中旬に条件に見合った先行論文を発見。年末から翌年月初
にかけて、論文のリサーチ。同キーワードの学習。 12/20 から
12/29 にかけて、国内研究者に問い合わせ。
1月 1/5 核となるテーマ決定…同時に調査対象、調査内容、分析手法
が決まった。
1/7 論文制作 WBS 作成(調査・分析が完了するまで管理に利用)
1/8 引用文献一覧作成(Google ドキュメント)
2月 2/7-2/8 ネットリサーチ実施 プロジェクト本格化
2/13-2/14AMOS の操作方法と結果の読み方を学習 ( 平 日 は 23 時 ~ 01
2/20 から分析結果、考察、結論の執筆 時の帰宅)
3月 先行研究、問題意識の執筆. 3/26 当初の修士論文 3/11 震災
の提出期限(震災の
3/8 指導教官からの指摘により、リサーチクエスチョン型から仮
ため 4/9 まで延長)
説検証型に修正.
3/12 指導教官から提出 OK のご指摘いただいた.
3/26 に問題意識を書き換え.残りの期間は体裁の校正
8/12
- 9. MBA 論文の制作過程のまとめ
ATSUSHI SAKAKI
2011/07/31
4月 4/3 製本 1 回目(誤植見つけやり直し) 4/9 修士論文の提出 プロジェクト本番
期限
4/5 印刷 2 回目
4/7 提出
9/12
- 10. MBA 論文の制作過程のまとめ
ATSUSHI SAKAKI
2011/07/31
参考資料:論文提出までの WBS
実際は Excel で作成。塗りつぶし部分は作業日であり、途切れたところまでに完了させることを示す。ゼミのある土曜日を区切りとした。
タスク 1/8 1/15 1/22 1/29 2/5 2/12 2/19 2/26 3/5 3/12 3/19 3/26
調査票のたたき台
調査票の修正
調査票の完成
調査設計のたたき台
調査設計の修正
調査設計の完成
調査の依頼
調査結果の納品
分析手法の選定
分析手法の決定
■「メソドロジー」たたき台
■「メソドロジー」修正
■「メソドロジー」完成
AMOS による分析
AMOS による分析結果の考察・図式化
■「調査結果と考察」の調査結果たたき台
■「調査結果と考察」の調査結果修正
■「調査結果と考察」の調査結果完成
先行研究のタイトル書き出し
先行研究の論文印刷
先行研究の読解
先行研究の系譜の図式化
■「先行研究レビュー」たたき台
■「先行研究レビュー」修正
■「先行研究レビュー」完成
10/12
- 11. MBA 論文の制作過程のまとめ
ATSUSHI SAKAKI
2011/07/31
タスク 1/8 1/15 1/22 1/29 2/5 2/12 2/19 2/26 3/5 3/12 3/19 3/26
■「引用文献」の追加
リサーチクエスチョンのたたき台
リサーチクエスチョンの修正
リサーチクエスチョンの決定
■「研究の目的」たたき台
■「研究の目的」修正
■「研究の目的」完成
■「調査結果と考察」の考察たたき台
■「調査結果と考察」の考察修正
■「調査結果と考察」の考察完成
■「研究の目的」と「先行研究レビュー」の再修正
■「研究の目的」と「先行研究レビュー」の完成
■「引用文献」の確認・修正・完成
■「はじめに」たたき台
■「はじめに」修正
■「はじめに」完成
■「結論」たたき台
■「結論」修正
■「結論」完成
■「アブストラクト」たたき台
■「アブストラクト」修正
■「アブストラクト」完成
製本依頼
製本完了
論文提出
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- 12. MBA 論文の制作過程のまとめ
ATSUSHI SAKAKI
2011/07/31
参考資料:知識習得のために参考にした文献
分析ツール
小塩真司(2005)『SPSS と AMOS による心理・調査データ解析:因子分析・共分散構造
分析まで』、東京図書
田部井 明美( 2001 )『 SPSS 完全活用法―共分散構造分析 (Amos) によるアンケート処理
SPSS 完全活用法―共分散構造分析(Amos)によるアンケート処理』赤坂書店
分析方法
浦上 昌則、脇田 貴文( 2008)『心理学・社会科学研究のための 調査系論文の読み方』
東京図書
Hair, J. F., Black, W., Babin, B., Anderson, R. E. and Tatham, R. L. ( 2006 ) Multivariate data
analysis(6th ed.).Upper Saddle River, NJ: Prentice Hall.
Naresh K. Malhotra (2004), Marketing Research, An Applied Orientation, 4th edition, Prentice
Hall(日本マーケティング・リサーチ協会( 2006)、『マーケティング・リサーチの理論
と実践~理論編~』、同友館)
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