高音急墜型感音難聴の純音聴力閾値と語音聴取能との関係 3

1. 高音急墜型感音難聴患者
EASの適応基準から抜粋
１）両耳が以下の気導聴力の条件全てを満たす高音急墜型感音難聴患者
125Hz、250Hz、500Hzの純音聴力閾値が65dB以下
2000Hzの純音聴力閾値が80dB以上
4000Hz、8000Hzの純音聴力閾値が85dB以上
ただし上記に示す周波数のうち、１箇所が10dB以内の範囲で外れる場合は対象
とする。
２）補聴器装用下において静寂下での語音弁別能が65dBで60%未満であること
今回の解析対象
両耳が以下の気導聴力の条件全てを満たす高音急墜型感音難聴患者
125Hz、250Hz、500Hzの純音聴力閾値が75dB以下
2000Hzの純音聴力閾値が70dB以上
4000Hz、8000Hzの純音聴力閾値が75dB以上

2. １２８耳
（長崎大学、宮崎大学、神戸市立医療センター中央市民病院、信州大学、近畿大学、東邦大学佐倉、東京大学、虎ノ門病院、目白大学）
純音聴力検査 67-S語表による語音弁別検査
いずれの周波数においても、その周波数における純音聴力閾値と最高語音明瞭度の相関は不明瞭である。
特に1000Hzでは聴力閾値による症例の選択を行っていないが、閾値が50-80dBの患耳では最高語音明瞭度のばらつきが大きい。
純音聴力閾値が50dB程度でも最高語音明瞭度が６０％以下の症例もある。
→低音部の聴力が残存している症例では、純音聴力閾値だけでは日本語語音の聴取能を予測することは困難である。

3. ⑤半母音「わ」→弾音「ら」に間違えやすい
67-S語表による語音弁別検査の異聴の傾向
②サ行の無声摩擦音の正答率低い
①カ行の「く」の正答率高い
④有声破裂音「た」→「か」に間違えや
すい
③通鼻音ナ行マ行とも正答率低い。
子音だけでなく後続母音の間違いも
多い
67-S語表は臨床検査として時間短縮のため使用する語音の種類が少ないが、異聴の傾向は小寺ら
の57-S語表で得られた結果に近い。
「く」「と」「き」の比較的高い正答率からは、子音弁別の情報は高周波帯域だけに含まれているのでは
ないことを示している。
静寂下と雑音負荷時の異聴マトリックスの比較を解析中である。
正解 不正解 空白 正解率 最多の誤答その数 その割合
弾音 り 54 26 7 62%
通鼻音 も 41 39 7 47% ろ 12 14%
に 32 44 11 37% む 7 8%
ね 21 57 9 24% め 12 14%
破擦音 じ 50 34 3 57% ぎ 11 13%
破裂音 た 33 46 8 38% か 32 37%
て 38 38 11 44% と 18 21%
と 55 20 12 63% ほ 5 6%
き 57 21 9 66% く 6 7%
く 69 14 4 79% き 3 3%
ば 53 25 9 61% ら 5 6%
が 51 27 9 59% ら 6 7%
半母音 わ 30 49 8 34% ら 17 20%
よ 51 28 8 59% ろ 11 13%
摩擦音 し 36 43 8 41% ひ 14 16%
す 24 49 14 28% く 12 14%
は 46 35 6 53% か 12 14%
母音 あ 69 11 7 79% た 4 5%
う 56 25 6 64% い 8 9%
お 61 16 10 70% え 6 7%
回答の記載があった８７耳
（長崎大学、宮崎大学、神戸市立医療センター中央市民病院、信州大学、近畿大学、東邦大学佐倉、東京大学、虎ノ門病院、目白大学）

4. １２８耳 ７歳～９０歳（平均５７．６歳） 男性７１耳 女性５７耳
（長崎大学、宮崎大学、神戸市立医療センター中央市民病院、信州大学、近畿大学、東邦大学佐倉、東京大学、虎ノ門病院、目白大学）
純音聴力検査 67-S語表による語音弁別検査