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平成24年度
食料・農業・農村の動向
概要版の概要
2013/07/01 勉強会
目次
• 第1章 東日本大震災からの復興
– 震災による被害状況と復興への取組などの解説
• 第2章 食料の安定供給の確保に向けた取組
– 国内外の食糧動向などの解説
• 第3章 農業の持続的発展に向けた取組
– 労働力や生産基盤の変化、新技術などの解説
• 第4章 地域資源を活かした農村の振興・活性化
– 農村の現状や鳥獣被害、地域資源の活用などの解説
第1章 東日本大震災からの復興
地震・津波による被害と
復旧・復興に向けた取組
• 東日本大震災による農林水産関連被害
– 2兆4千億円(うち農業関係9千億円)
– 被災農地2万1千haをH26年度までに営農再開可
能とする「農業・農村の復興マスタープラン」
→ H24春に8千ha(4割)の農地で営農再開可能
概ね目標達成
→農業経営体(1万経営体が津波被害)は
H25年3月現在で5割が経営再開
※ 数字は適当に丸めてあります。
国による復旧事業
• 津波被災地域の5地区
(右図青枠)
地震被害6地区
(右図緑枠)
は国の直轄事業として
復旧を実施。
• 地震被害6地区は2012
年度までに災害復旧
工事を完了
※ 本編p.9
「食と農のフロンティアゾーン」構想
• 「仙台市震災復興計
画」において、仙台市
東部を「食と農のフロ
ンティアゾーン」として
復興することを定める。
• 農地集約・高度利用、
法人化などの経営見
直し、競争力のある作
物への転換…etc.
※本編pp.18-19
先進的技術の大規模実証研究
• 被災地を新たな食料生産地域として早期に
復興させるため、先端技術の実証研究と普
及・実用化を促進。
※本編p.21
鉄コーティング種子湛水直播
ITを用いた圃場管理いちご局所加温
いちご・トマトの密植移動栽培システム
耐塩性の強いアスパラ生産
ぶどうの根域制限
風力・太陽光など未利用エネル
ギー活用による非常時電力供給
システム
第2章
食料の安定供給の確保に
向けた取組
世界の食糧需給動向
• 米国の高温・乾燥によりとうもろこしと大豆の
価格が最高価格を更新する高騰。
世界の食糧需給動向
• 穀物価格の高騰を受
け、飼料穀物の調達先
が南米(ブラジル、ア
ルゼンチン、ウクライ
ナ)へ急速にシフト
• 輸送リスクへの対応と
してとうもろこし、こう
りゃんの備蓄量を35万
tから60万tへ引き上げ
TPPによる影響
• 日本は平成25年3月15日に
参加を決断
• 米(1兆円)、豚肉(5千億円)、
牛肉(4千億円)、牛乳・乳製
品(3千億円)などの生産が
大きく減少する試算
(野菜は元々関税も低いので影響が少ない…?)
食料自給率の動向
• 供給熱量ベース自給
率は前年同様の39%
• 生産額ベースの自給
率は前年から4ポイン
ト低下の66%
– 震災による牛肉・野菜
の価格低下が影響
食料消費をめぐる動き
• 賃金の減少で消費
水準も低下、特に食
料で大
• 家計消費支出の減
少率>食料費の減
少率なのでエンゲル
係数は微増
食料消費構造の変化
• 家族類型の中では単身
世帯の割合が増加傾向
• 65歳以上の高齢者が居
る世帯の割合も増加傾
向
食品産業の動向
• 食品産業の生産額は食
料品価格の下落などに
よって減少傾向
• 中食産業は世帯構造の
変化や食の外部化を反
映して増加傾向
• 今後成長の見込まれる
アジア等へ進出する企
業が増加傾向
食の安全と消費者の信頼の確保に
向けた取組
• 食品の安全性向上に向けた取組
– 有害化学物質含有実態調査データ集の作成・配布
– 鶏肉の生産農場への食中毒菌侵入・蔓延を防ぐ対
策をまとめたハンドブックを公表
• 動植物防疫の取組
• 消費者の信頼確保に向けた取組
– JAS法や米トレサビ法に基づく立ち入り検査
– 食品表示関連3法(食品衛生法、JAS法、健康増進
法)の表示規定統合等を内容とする食品表示法案を
国会へ提出
第3章
農業の持続的な発展に向けた取組
農業構造の変化
• 利用権(賃借権等)の設定
を中心として、農地の流動
化は着実に進展。
• H24年の販売農家1戸当たり
平均経営耕地面積は
– 全国2.07ha 北海道22.34ha
都府県1.49ha
• 20ha以上の経営体が耕作
する面積は30%を超え、大
規模経営体への農地集積
が進んでいる
本編p.141
集落営農における
任意組織と法人組織
• H25は集落営農(任意組
織)はやや減少の見込み
• 法人化への過渡期にあり、
新設と法人化による減少
の両方がある
• 法人組織は経営・財源・
雇用などで自由度が高く、
移行を促すことが重要
女性農業者の役割
• 女性農業者の7割が経営方針策定に関与
• 5割は経営者であると認識
• 女性役員・管理職のある経営体は売上高増加率が大
きい
• 女性の基幹的農業従事者がいる経営体は販売金額
が大きい
農業従事者の年齢構成
• 65歳以上が60%
40代以下は10%
• 稲作では74%が高齢
で平均年齢は70歳
• 酪農、養豚では高齢
化率は26%(平均55
歳)、31%(平均57歳)と
低い
新規就農者の推移
• H23年は5万8千人が新規
就農
• 39歳以下は1万3千~1万5
千人で推移しているが、5
年以内3割が離農しており
定着は1万人程度
• 39歳以下では新規雇用就
農者が順調に増加しており、
このうち8割が非農家出身
耕作放棄地の推移
• 高齢者のリタイア等で急増
• 土地持ち非農家所有が半数
人・農地プラン
• 地域の人と農地の問題解決のため、H24年
度より「人・農地プラン」の作成が進められて
いる
– 集落・地域の農業者の徹底的な話し合いにより、
今後の中心となる経営体への農地の集積方法、
地域農業の在り方等を明確にする
• H25.3現在でプランを作成しようとする市町村
のうち84%で作成
農業生産基盤の整備・保全
• 基幹的水利施設の2割が
耐用年数を超過
• 30a程度以上に区画整備
が済んでいる水田は6割
(大規模1割)
• 整備済み水田のうち1/3は
排水不良
主要農畜産物の生産等の動向
米、小麦・大豆、野菜・果樹、さとうきび・てんさい
茶・花き、畜産物、飼料作物等
米
• H24年度作況指数は102
• 農業粗収益は7千円/10a(6%)
増加し、農業所得は6千円
/10a(30%)増加
• 米粉生産量はH23に4万tま
で増加したものの需要が鈍
化しH24は3万5千t
小麦・大豆
• H24年度作付面積は20万9千ha
• 北海道のシェアは6割(11万9千ha)
• 北海道の品種は「ホクシン」から「きたほなみ」へ
移行
• パン・中華麺用品種の作付面積は
2万6千ha(12%)
• 大豆の作付けが減り新規需要米の作付けが増
える県がある中、三重などでは地域一帯となっ
て水田の団地的利用を進めており作付け面積
増加
野菜・果樹
• 露地野菜:加工・業務需要に対応した省コス
ト・省力化を図るため新型農業機械の開発・
普及を推進
• 果樹:消費者ニーズに対応し、優良品目・品
種への転換が進む
さとうきび・てんさい
• さとうきび:H23年度は台風・干ばつ・病虫害
により不作。機械化が進み、機械収穫による
収穫面積は鹿児島で9割、沖縄で5割。
• てんさい:省力化のため直播栽培の導入が
進む。H23年度で12%の導入。
茶・花き
• 茶:H16年度からH23年度にかけて農業粗収
益は17万円/10a(40%)、農業所得は14万円
/10a(79%)の減少。茶の価格低下等による。
消費拡大に向けたブランドかや新たな用途の
開拓が課題。
• 花き:消費拡大のため、鮮度保持対策や花き
を教育にとりいれる「花育(はないく)」を実施
畜産物
• 牛乳・乳製品の消費は堅調に推移するもの
の、生乳生産量が減少傾向。牛肉、豚肉、鶏
肉、鶏卵の消費は堅調で生産も横ばい。
• 酪農では農家戸数の減少による生産基盤弱
体化が懸念。
• 畜産では飼料費が費用に占める割合が高く
(3~6割)、飼料価格変動の影響を受けやす
い。国産飼料の生産・利用拡大や畜種ごとの
経営安定対策を推進。
飼料作物等
• 作付面積は93万haまで増加したものの、気候要
因による反収減や原発事故に伴う廃棄などで生
産量は340万TDNtに減少
• 穀物価格高騰を踏まえ、飼料生産組織(コントラ
クター)の育成やTMRセンターの整備を支援。コ
ントラクター数は605組織、TMRセンター数は109
カ所
– コントラクター:飼料生産受託組織
– TMRセンター:粗飼料や濃厚飼料をバランス良く混合
し、農家へ供給する施設
農業の高付加価値化等の取組
• H23年度の農業生産関
連事業の総販売金額
1兆6千億円のうち、
1兆2千億円が農協等
による直売や加工
• 1億円以上を売り上げ
る直売所は17%
農林水産物・食品の輸出動向
• 平成19年までは順調に
増加
• 平成21年は急激な円高
やリーマンショックを契
機とする世界的経済不
況から減少
• H22は持ち直したものの
H23は震災の影響で減
• H24は微増
研究・技術開発の推進(1)
• 食糧の安定供給に向けた研究開発
– 水稲新品種:
低コストで醸造適正をもつ「たちはるか」
米菓への加工適性に優れる「亀の蔵」
米粉麺やライスパスタへの加工適性に優れる「北瑞穂」
– 小麦新品種:菓子にも利用できる「ちくごまる」
• 食品の安全確保に向けた研究開発
– カドミウムをほとんど吸収しないコシヒカリの開発
• 地球温暖化問題に対する研究開発
– 稲で高温により乳白粒が発生するメカニズムの解明
本編pp.258-260
研究・技術開発の推進(2)
• 新需要・新産業の創出に向けた研究開発
– うんしゅうみかんに多く含まれるβ-クリプトキサンチンを大
量に取り出す技術の開発と機能性飲料の販売
– 免疫不全ブタの開発
• ゲノム技術の活用による農業生物の改良技術の開発
– トマトの全ゲノム解読
– ブタゲノムの塩基配列の90%以上の解読
• 研究・技術開発の成果の普及・実用化にむけた取組
– 全国の産官学の機関が保有する最新技術を紹介する「ア
グリビジネス創出フェア」
• 研究・技術開発の成果の農業生産現場への普及
– 農業革新支援専門員の配置
本編pp.258-260
環境保全を重視した農業生産の推進
• エコファーマー認定件数は
5千件増加して21万6千件
• 有機JAS認定圃場は増加
第4章
地域資源を活かした
農村の振興・活性化
農村の現状
平成12(2000)年) 平成22(2010)年
山間農業地域 451 384
中間農業地域 1177 1086
平地農業地域 1306 1260
都市的地域 9759 10077
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
人口(万人)
農業地域類型別の人口の推移
-14.9%
--7.7%
-3.5%
+3.3%
農業地域類型別就業者数の割合
7.1
8.4
9
10.1
15.4
19.9
18.2
16.6
44.5
35.5
38.4
38.7
31.6
22.9
21.6
19.9
1.4
13.2
12.8
14.7
0% 20% 40% 60% 80% 100%
都市的地域
平地農業地域
中間農業地域
山間農業地域
農林漁業 建設業 製造業 サービス業 その他
平成12年から平成22年の間における
農業地域類型別の就業者数の増減率
-3
-8
-13
-20
-23 -25 -27 -27-27
-30
-35
-42
-21
-18
-21
-29
3
8
2
-6
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
20
都市的地域 平地農業地域 中間農業地域 山間農業地域
増減率(%)
総数 農林漁業 建設業 製造業 サービス業等
農業地域類型別
耕作放棄地面積率の推移
8.4
12.4
14.6
15.8
7.5
10.7
12.9
14.1
3.3
4.6
5.4
6
6.9
10.3
12.7
13.7
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
平成7年 平成12年 平成17年 平成22年
耕作放棄地面積率(%)
都市的地域
平地農業地域
中間農業地域
山間農業地域
鳥獣被害の現状と対策
• H23年度は鳥獣被害
額が減少に転じたも
のの、シカによる被害
は依然として増加
• 約1,200の市町村が
被害防止計画を作成
• 被害対策実施隊の設
置は500程度
地域資源・環境の保全と
コミュニティの強化
• 「農地・水保全管理支
払交付金」により、2万
組織、143万haで共同
活動・向上活動を実施
• 「中山間地域等直接支
払制度」により、農地
の法面管理や景観作
物の作付けなどを実施
グリーンツーリズム施設への宿泊者数と
農家民宿を行っている経営体数の推移
• 農家民宿を行っている経営体数は2千軒
• 農家民宿等への宿泊者数は900万人
• いずれも増加傾向
都市農業の保全と振興
• 市民農園開設数は平
成13年から平成23年
までの10年で1.5倍の
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