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農薬学 第4回

第2章 3 頭のよい展着剤の利用法
    4 欠点を補い長所を伸ばす利用法




           平成23年11月30日
           髙木 俊輔
展着剤とは?
• 葉面上のワックスと馴染み、散布液の表面張
  力を下げて、薬液が丸まらずに作物表面に
  広げるもの


 1   非イオン界面活性剤(湿展性◎)
 2   陰イオン界面活性剤(分散性◎)
 3   陽イオン界面活性剤(付着性・殺菌作用◎)
 4   パラフィン系展着剤(固着性◎)
3は、機能性展着剤と呼ばれ、濡らす力と染み込
ませる力に優れる!
展着剤の注意点
1 乳剤には禁物
   乳剤同士の混用や、界面活性剤を含む展着剤の加
 用は薬害、効果の低下を引き起こす危険がある。
2 フロアブル剤にはほどほどに
   展着剤を加えても薬害はでないが、もともと分
 散・湿展性がよいため必要ない
3 水和剤では濡れの悪い作物に
   水和剤を濡れの悪い作物に散布する場合は、付着
 性や湿展性を高める展着剤が必要!!
濡れにくい           濡れやすい
                界面活性剤系
                展着剤は丌要




                    接触角

イネや      ブドウや   ミカンや
キャベツなど   ナスなど   キュウリなど
著者のお勧め展着剤
 1 パラフィン系展着剤(アビオンC、アビオンE)



         水・虫   展着剤
保護殺菌剤



                     蒸散抑制効果もある
                     アビオンC
2 アプローチBI(浸透性に優れる)
アプローチBI




     葉
           菌糸


表面張力を弱め、菌糸への浸透力アップ!
さらに虫の表面にあるワックス層の効果も弱める
3 ニーズ

  エステル型
非イオン界面活性剤
            +   陽イオン界面活性剤

   浸透力○           殺菌力○


・殺菌剤に混ぜると殺菌力が補強される
・保護殺菌剤に混ぜると耐雨性が補強される
                しかし薬害が・・・
他には・・・

• サーファクタントWK(浸透力・殺草力がアップ)
• アワケシ(薬剤を混ぜる時に発生する泡を抑
  える)
• アロンA(ドリフト防止、水分蒸発防止)
展着剤の溶かす順番


水 →   展着剤 →   (乳剤) → 水和剤



水道水以外を用いる際は、ケミクロンGで消毒
する
4   欠点を補い長所を伸ばす混用法
 病気や害虫は同時発生が一般的



 複数の薬剤を含む混合剤は効率的

           しかし・・・

 ・高い
 ・ムダ使いになりやすい

よく考えて、単剤を組み合わせて使うことが重要!
農薬混用の目的

1 同時防除


  殺虫剤     +    殺菌剤




  選択的          選択的
  殺虫剤     +    殺虫剤

                     など
2 効力の補完
対象病害虫に対する効果を高める組み合わせ



  予防剤     +   治療剤




   残効長い
  遅効性薬剤   +   残効短い
              速効性薬剤

                      など
3 耐性菌・抵抗性害虫の出現防止
耐性・抵抗性ができにくい薬剤を組み合わせ
ることで、耐性・抵抗性をもった病害虫の発生
を遅らせる


   卓効剤
               耐性・抵抗性が
(効き目の優れた   +   できにくい薬剤
   薬剤)
4 相乗効果
組み合わせることで効果が相乗的に高まる
→ 使用する量も減少
            毒性もアップ
            することも!
                 例:マラソン+有機リン系剤
特に注目する組み合わせ
                 有機リン系剤
 合成ピレスロイド
    剤
                カーバメート剤
5 薬害の軽減



          ストレプトマイシン   ストマイボルドー

 銅剤




          炭酸マグネシウム    Zボルドー
☆トクする混用のやり方
●何でも混ぜればよい訳ではない!!
<ダメな組み合わせ>
  アルカリ性の薬   +   有機リン系剤   無
                         効
    銅剤      +   有機硫黄剤
                         薬
  石灰ボルドー液   +   有機硫黄剤
                         害
●最近増えているフロアブル剤について
 フロアブル剤は溶けやすいので
 混用に用いやすい
☆原体・原体グループを知っていると、自分で
 うまく混用することが可能

 <例>
 原体グループ        原体名        商品名
             フェンバレレート   スミサイジン乳剤

合成ピレスロイド系剤   シベルメトリン    アグロスリン


             ペルメトリン     アディオン
粉剤を混用剤として利用すると?

粉剤+粉剤=かさばる、タルク(=滑石・ろう石
      とも。増量剤として使われる)の飛散増

粉剤+水和剤=農薬取締法違反!!
       水と混ぜることを前提としている


<粉剤+水和剤のメリット>
・安い
・粉剤同士の混合より軽い
かこみ

農薬は薄いほうが良い?濃いほうが良い?


殺菌剤:最低濃度でたっぷり
殺虫剤:最高濃度で少量

他には・・・
展着剤:パラフィン系の場合、最低濃度
混合剤:各々最低濃度           など

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