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5.2	
  光による反応	

絵とき植物生理学入門p.172-­‐	
  
    担当:伊藤
葉緑体	
•  実際に光合成が起こる場所	
  
•  CO2を炭水化物まで変化させるために必要な
   酵素が一通り入っている	
  
•  1/3は脂質、2/3はタンパク質	
  
•  細胞中の個数は植物種、組織、齡により異な
   り、数個から数百個まで様々
葉緑体の構造	

                                    グラナ	
  

             ストロマ	
  

                                     チラコイド	
  



                                        デンプン粒	
  




h.p://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%91%89%E7%B7%91%E4%BD%93
植物の色素	
•  植物の葉は赤と青色を吸収する=色素によ
   り太陽のエネルギーを獲得している	
  
•  クロロフィルa、クロロフィルb、β-­‐カロチン、キ
   サントフィル‥etc	
  
•  クロロフィルa(の一部)は光合成の反応中心、
   他の色素はエネルギーをクロロフィルaに伝え
   るための補助色素
アンテナ色素	
•  太陽光を受けた色素は励起と蛍光の連鎖に
   より反応中心(クロロフィルa)までエネルギー
   を伝達する	
  




        h.p://www.hibari.jp/weblog55/2011/08/_20_1.html
反応中心でのクロロフィルaの働き	
•  励起したクロロフィルaは電子を放出する	
  
•  電子は水の酸化で補われる	
  
•  結果として、電子1つ、プロトン2つ、酸素分子
   1/2個が生ずる
光化学反応	
•  光合成の全過程は…	
  
 –  6CO2+12H2O	
  →	
  
    C6H12O6	
  +	
  6H2O	
  +	
  6O2	
  
•  光合成の反応は2つ
   に大別できる	
  
 –  光による反応…	
  
    NADPHとATPの合成	
  
 –  光によらない反応…	
  
    炭酸固定	

                  h.p://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%89%E5%90%88%E6%88%90
光による反応	
  -­‐	
  NADPHとATPの生成 -­‐	
  	
•  葉緑体のグラナ部分で行われる	
  
1.  光のエネルギーで水を分解し電子を得る	
  
2.  電子のエネルギーでチラコイド内にプロトンを輸
    送、電子は別の光受容体に吸収される	
  
 1.  電子を得た光受容体は再度光を受けエネルギーを
     放出、NADPHを合成	
  
 2.  チラコイド内に輸送されたプロトンが濃度勾配に
     従ってストロマに出るときのエネルギーでATPを合成	
  
•  水の分解時に酸素が発生する	
  
光によらない反応 ─	
  炭酸固定 ─	
  	
  	
•  NADPHとATPのエネルギーでCO2をC6H12O6に
   同化するまでの反応	
  
•  反応速度は温度、CO2濃度に律速され、光は
   必要ない	
  
•  炭酸固定はカルビン・ベンソン回路と呼ばれ
   る回路反応である
カルビン・ベンソン回路
カルビン・ベンソン回路	
•  CO2はリブロース二リン酸(RuBP、炭素数5)に取り込ま
   れて炭素数6の化合物になった後、直ちに分解されて
   2つのホスホグリセリン酸(PGA、炭素数3)になる	
  
  RuBP	
  +	
  CO2	
  →	
  (C6)	
  →	
  2PGA	
  
•  反応を触媒するのがリブロース二リン酸カルボキシ
   ラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCO)	
  
•  RuBisCOは強光下で酸素の多い時はRuBPにO2を付け
   て1分子のPGAと3-­‐ホスホグリコール酸1分子を作るが、
   ホスホグリコール酸は光合成を阻害するのでエネル
   ギーを消費して分解する(光呼吸)	
  
カルビン・ベンソン回路	
•  PGAはNADPHとATPにより還元されてグリセル
   アルデヒド-­‐3−リン酸となる	
  
•  グリセルアルデヒド-­‐3-­‐リン酸を起点とする反
   応が様々あるが、一部はブドウ糖、果糖など
   の六炭糖に、残りはRuBPに戻る
C4植物	
•  カルビン・ベンソン回路の前段階に別の回路を
   持ち、効率的に炭素を取り込む	
  
•  この回路では二酸化炭素はホスホエノールピル
   ビン酸(PEP)にまず取り込まれ、最終的にリンゴ
   酸(炭素数4)が合成される	
  
•  リンゴ酸の炭素数にちなみこの回路(C4ジカルボ
   ン酸回路)を持つ植物をC4植物と呼ぶ	
  
•  PEPカルボキシラーゼはRuBisCOよりもCO2との親
   和性が高く、炭素取り込み効率が極めて高い
C4植物の特徴	
•  維管束鞘が葉緑体を持つ	
  
•  葉と維管束鞘の葉緑体は働きが異なる	
  
 –  葉:光化学過程とC4回路による炭酸固定	
  
 –  維管束鞘:カルビン回路による糖・デンプンの合
    成	
  
•  CO2を濃縮できるので、低CO2濃度でも光合成
   効率が落ちにくい	
  →	
  C3植物に比べて光飽和
   点が高く、強光を有効に活用できる
C4植物の特徴	
•  生育適温が高い	
  
•  水の利用効率が高い	
  
•  C4植物を含む科の全ての植物がC4植物であ
   るとは限らない	
  
•  栽培植物の多くはC3植物だが、C4植物の栽培
   植物としてはトウモロコシ、サトウキビなどが
   ある
CAM植物	
•  夜間に炭素を取り込み、昼に合成する植物	
  
•  ベンケイソウ科(Crassulaceae)に多いことから、
   ベンケイソウ型酸代謝(Crassulacean	
  Acid	
  
   Metabolism)植物、略してCAM植物	
  
•  サボテン、ユリ、ランなどに多い	
  
•  昼は気孔を閉じている	
  
  –  洋ランのCO2施用は夜間に行う	
  
•  炭酸固定の仕組みはC4植物と同様	
  
環境要因と光合成量	
•  光合成は光強度、温度、CO2濃度などに影響
   される	




 h.p://www.iwasaki.co.jp/product/applied_opcs_field/plant_raising_system/
 plant-­‐factory01_4.html
光の強さと光合成速度	
•  光を強くするほど光合成速度は早くなる	
  
•  一定の光強度で速度増加は頭打ちとなる(光
   飽和点)	
  
•  逆に暗くしていくと完全な暗黒となる前に光合
   成速度がゼロとなる	
  →	
  呼吸量と光合成速度
   が釣り合うため(補償点)
CO2濃度と光合成速度	
•  大気中のCO2濃度は植物にとっては不足であ
   る(地球の誕生以来CO2濃度は低下し続けて
   いる!)	
  
•  CO2を増やすほど光合成速度を高められる	
  
 –  施設栽培、中でも土壌呼吸が期待できない水耕
    栽培などではCO2の施用が高い効果をもたらす	
  
温度と光合成速度	
•  光合成は酵素反応であるため、温度が高い
   ほど速度が上がる	
  
•  ただし光や二酸化炭素など他の要因が律速
   でない場合に限る
光合成の律速要因	
 •  光合成は最も不足している要因に支配される	
  
 •  光強度、CO2濃度、温度、水分…	
  
 •  CO2取り込みの点からは湿度も気孔開度を通
    じて光合成速度に影響する	
  
 •  高CO2条件ではRuBP再生速度のようなものも
    律速条件となる*	


*矢守航「〜光合成系制御機構の環境応答〜	
  光合成速度の決定要因の解明に向けて」
h.p://www.agri.tohoku.ac.jp/syokuei/yamori.html
陽葉と陰葉の光合成	
•  陽葉:光補償点が高く、光飽和点も高い	
  
•  陰葉:光補償点が低く、光飽和点も低い	
  
•  陽生植物と陰生植物の間にも同様の関係が
   ある

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