臨床に直結して役立つグラム染色
高橋賢史
出雲市民病院 家庭医療科
インフェクションコントロールドクター
アウトライン
• グラム染色の方法,撮影
• 検体評価 Geckler分類
• グラム染色所見と推定される細菌
• アトラス(良好検体,GPC,GPR,GNC,GNR,関節液)
• 推定菌と抗菌薬の選択
• 塗抹は竹串・爪楊枝で可能.
• 純粋培養ではないので白金耳や焼灼は必要ない.
• 喀痰は樹枝状になるだけ薄く引き伸ばし,振って乾燥固定.
• 尿は少量を数滴付ける.
スライドガラスの下から温風で乾燥固定.
グラム染色の方法① 塗抹
グラム染色の方法② 塗抹
• 染色は20秒,脱色は10秒でOK.
• これで臨床的に十分使える.
①染色 ②染色 ③脱色 ④染色
20秒 20秒 10秒 20秒
軽く揺らし
て脱色する
洗浄 洗浄 洗浄 洗浄
洗浄はスライドガ
ラスの裏側から
検鏡
喀痰の検体評価 Geckler分類
群 好中球
(1視野あたりの数)
上皮細胞
(1視野あたりの数)
1 <10 >25 不良検体
(上皮が多い)
2 10~25 >25
3 >25 >25 誤嚥
4 >25 10~25 良好検体
(上皮が少ない)
5 >25 <10
※100倍視野(弱拡大)
要は,白血球が多い・
上皮が少ない検体で見る.
上皮が多いのは唾液.
1・2群は検体取り直し!
Geckler5群の検体
染色・撮影:高橋
染まりの波打ち際
を見る
スマホで撮影可能
• スマートフォンでグラム染色の撮影が可能.
• カメラレンズを,接眼レンズから数mm離して撮影
する事が上手く撮影するコツ.
• 環指,小指で固定すると良い.
• 慣れるまでは何度もチャレンジする事が上達への道.
数mm離して撮影
環指,小指で固定
グラム染色で想定される一般的細菌
(頻度高いものに限定)
グラム陽性
グラム陰性
球菌
集塊 ブドウ球菌
連鎖
肺炎球菌
ペプトストレプトコッカス
溶連菌
桿菌 柵状 コリネバクテリウム
球菌 双球 モラクセラ・カタラーリス
桿菌
大型
大腸菌
クレブシエラ
短稈菌 インフルエンザ桿菌
小型 緑膿菌
グラム染色アトラス グラム陽性球菌
染色・撮影:高橋
• グラム陽性球菌
• やや楕円形の双球菌.
• 莢膜により周囲の非染色部
位がある.
• 白血球貪食像あり.
• 肺炎球菌
グラム染色アトラス グラム陽性桿菌
染色・撮影:高橋
• グラム陽性桿菌
• 柵状に並ぶ
• コリネバクテリウム
(口腔内常在菌)と推定
グラム染色アトラス グラム陰性球菌
染色・撮影:高橋
• グラム陰性球菌
• 双球菌.
• 短軸状に並ぶ.
• 白血球貪食像あり.
• モラクセラ
グラム染色アトラス グラム陰性桿菌
染色・撮影:高橋
• グラム陰性桿菌
• 中型~大型.
• 周囲に莢膜あり.
• クレブシエラ・
ニューモニア
• グラム陰性桿菌
• 小型
• ムコイド形成あり.
• 緑膿菌
• グラム陰性桿菌
• 短稈菌
• 小型
• 貪食像あり
• インフルエンザ桿菌
グラム染色アトラス
関節液のピロリン酸結晶
採取・染色・撮影:高橋
• ガラス片のような多角形の結晶.
• 白血球貪食像あり.
• 細菌なし.
• 膝関節偽痛風
• 関節炎の鑑別に活用.
臨床に直結して役立つグラム染色
喀痰で起因菌を推定し,抗菌薬を決める
アンピシリン
(ABPC)
スルバクタム/アンピシリン
(SBT/ABPC)
セフォタキシム
(CTX)
ピペラシリン
(PIPC)
グラム陽性球菌
双球・連鎖
肺炎球菌
ペプトストレプトコッカス
グラム陰性球菌
双球
グラム陰性桿菌
大型・短桿菌
グラム陰性桿菌
小型
モラクセラ
クレブシエラ
インフルエンザ桿菌
緑膿菌
臨床に直結して役立つグラム染色
複数の菌が関与の場合は最小公倍数で選択
グラム陽性球菌
双球・連鎖
グラム陰性球菌
双球
グラム陰性桿菌
大型・短桿菌
グラム陰性桿菌
小型
肺炎球菌
ペプトストレプトコッカス
モラクセラ
クレブシエラ
インフルエンザ桿菌
緑膿菌
アンピシリン
(ABPC)
スルバクタム/アンピシリン
(SBT/ABPC)
セフォタキシム
(CTX)
タゾバクタム/ピペラシリン
(TAZ/PIPC)
臨床に直結して役立つグラム染色
尿の所見から判断を行う
セフメタゾール
(CMZ)
全身の検索を行う
特に深部膿瘍と,
感染性心内膜炎
グラム陰性桿菌
大腸菌(ESBL産生菌含む)
クレブシエラ(aerogenes以外)
プロテウス
グラム陽性球菌
集塊状
黄色ブドウ球菌の尿路
感染症はあり得ない!
血流感染症を疑う!

臨床に直結して役立つグラム染色【ADVANCED】