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人の美意識もAIにハックされるのか?
- 7. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
今回の衝撃は、前回の衝撃を上回るのか? 同程度なのか?
- 8. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
今回の衝撃は、前回の衝撃を上回るのか? 同程度なのか?
人間は芸術ができるから素晴らしい
芸術ができるから人間は素晴らしい
→ → → どうなってしまうのか?!
- 9. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
今回の衝撃は、前回の衝撃を上回るのか? 同程度なのか?
人間は芸術ができるから素晴らしい
芸術ができるから人間は素晴らしい
→ → → どうなってしまうのか?!
芸術オワタ
人類オワタ
- 12. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
~ ART=技術=芸術 ~
ホンモノそっくりに描くテクネー
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
- 13. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
~ ART=技術=芸術 ~
ホンモノそっくりに描くテクネー
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場 [亜型] 写真を使う芸術家
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
- 14. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
~ ART=技術=芸術 ~
ホンモノそっくりに描くテクネー
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場 [亜型] 写真を使う芸術家
• →(2) 抽象美術の誕生
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
- 15. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
~ ART=技術=芸術 ~
ホンモノそっくりに描くテクネー
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
- 16. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
- 17. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
- 18. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
~ 技術≠芸術 ~
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
- 19. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
~ 技術≠芸術 ~
快楽等の実用?
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
- 20. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用 …イラスト
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋 …ファインアート
~ 技術≠芸術 ~
快楽等の実用?
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
- 21. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
~ 技術≠芸術 ~
快楽等の実用?
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
- 22. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
- 23. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
- 24. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
• →(1) 画家を駆逐
- 25. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
• →(1) 画家を駆逐 /プロンプターの登場
- 26. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
• →(1) 画家を駆逐 /プロンプターの登場 [亜型] AIを使う芸術家
- 27. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
• →(1) 画家を駆逐 /プロンプターの登場
• →(2) ●●美術の誕生?
- 28. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
• →(1) 画家を駆逐 /プロンプターの登場……実用
• →(2) ●●美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
- 29. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
• →(1) 画家を駆逐 /プロンプターの登場……実用
• →(2) ●●美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
●●美術
コンセプチュアル・アート
- 30. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
• →(1) 画家を駆逐 /プロンプターの登場……実用
• →(2) ●●美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
●●美術
コンセプチュアル・アート
↑
↓
コンセプト・アート
イラストレーター
- 31. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
• →(1) 画家を駆逐 /プロンプターの登場……実用
• →(2) ●●美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
- 32. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
~ 技術≠芸術 ~
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
• →(1) 画家を駆逐 /プロンプターの登場……実用
• →(2) ●●美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
~ 快楽≠芸術 ~
- 33. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
~ 技術≠芸術 ~
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
• →(1) 画家を駆逐 /プロンプターの登場……実用
• →(2) ●●美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
~ 快楽≠芸術 ~
快楽の否定
禁欲アート
- 34. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
~ 技術≠芸術 ~
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
• →(1) 画家を駆逐 /プロンプターの登場……実用
• →(2) ●●美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
~ 快楽≠芸術 ~
快楽の否定
禁欲アート
色彩の否定(キュビスム)
反芸術
方法主義
- 35. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場
• →(1) 画家を駆逐 /写真家の登場……実用
• →(2) 抽象美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
~ 技術≠芸術 ~
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場
• →(1) 画家を駆逐 /プロンプターの登場……実用
• →(2) ●●美術の誕生……純粋(芸術のための芸術)
~ 快楽≠芸術 ~
- 36. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
今回の衝撃は、前回の衝撃を上回るのか? 同程度なのか?
人間は芸術ができるから素晴らしい
芸術ができるから人間は素晴らしい
→ → → どうなってしまうのか?!
芸術オワタ
人類オワタ
- 37. 芸術における テクノロジー登場 の衝撃
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
今回の衝撃は、前回の衝撃を上回るのか? いや同程度であろう
人間は芸術ができるから素晴らしい
芸術ができるから人間は素晴らしい
→ → → どうなってしまうのか?! →現時点では温存
- 49. 第2部
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
~道具としてのAI~
• ??世紀 美意識と自意識をもつAI登場……人間は何もしない
~他者としてのAI~
美意識……鑑賞、美学、価値関数
「人の美意識もAIにハックされるのか」
自意識……創作、芸術、著作権
「シミュレーショニズム(反芸術)の成就」
- 53. 第3部
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
~道具としてのAI~
LaMDA騒動 大規模言語モデルでも意識があるように見える
そもそも意識は定義できないのみならず定義不要かもしれない
• ??世紀 美意識と自意識をもつAI登場……人間は何もしない
~他者としてのAI~
- 54. 第3部
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
~道具としてのAI~
LaMDA騒動 大規模言語モデルでも意識があるように見える
AI愛護
そもそも意識は定義できないのみならず定義不要かもしれない
• ??世紀 美意識と自意識をもつAI登場……人間は何もしない
~他者としてのAI~
- 55. 第3部
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
~道具としてのAI~
LaMDA騒動 大規模言語モデルでも意識があるように見える
AI愛護
そもそも意識は定義できないのみならず定義不要かもしれない
• ??世紀 美意識と自意識をもつAI登場……人間は何もしない
~他者としてのAI~
- 56. 第3部
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
~道具としてのAI~
LaMDA騒動 大規模言語モデルでも意識があるように見える
AI愛護
そもそも意識は定義できないのみならず定義不要かもしれない
• 21世紀 美意識と自意識をもつAI登場……人間は何もしない
~他者としてのAI~
- 57. 第3部
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
~道具としてのAI~
LaMDA騒動 大規模言語モデルでも意識があるように見える
中動態
そもそも意識は定義できないのみならず定義不要かもしれない
• 21世紀 美意識と自意識をもつAI登場……人間は何もしない
~他者としてのAI~
- 58. 第3部
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
~道具としてのAI~
LaMDA騒動 大規模言語モデルでも意識があるように見える
受動態……中動態……能動態
そもそも意識は定義できないのみならず定義不要かもしれない
• 21世紀 美意識と自意識をもつAI登場……人間は何もしない
~他者としてのAI~
- 59. 第3部
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
~道具としてのAI~
LaMDA騒動 大規模言語モデル:集合意識的
受動態……中動態……能動態
そもそも意識は定義できないのみならず定義不要かもしれない
• 21世紀 美意識と自意識をもつAI登場……人間は何もしない
~他者としてのAI~
- 60. 第3部
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
~道具としてのAI~
LaMDA騒動 大規模言語モデル:集合意識的(自然現象的)
受動態……中動態……能動態
そもそも意識は定義できないのみならず定義不要かもしれない
• 21世紀 美意識と自意識をもつAI登場……人間は何もしない
~他者としてのAI~
- 61. 第3部
• 19世紀 写真技術登場……シャッターを押すだけ
• 21世紀 大規模言語モデルAI登場……プロンプトを入れるだけ
~道具としてのAI~
LaMDA騒動 大規模言語モデル:集合意識的(自然現象的)
受動態……中動態……能動態
そもそも意識は定義できないのみならず定義不要かもしれない
• 21世紀 美意識と自意識をもつAI登場……人間は何もしない
~他者としてのAI~
まとめ
大規模言語モデルAI登場の衝撃は、写真技術登場と同程度だが、
大規模言語モデルAIは、そもそも美意識と自意識をもつAIに
シームレスに繋がる可能性がある
→→芸術も人間もオワル
Editor's Notes
- この企画セッションのタイトルは「アートにおいても敗北しつつある人間」、サブタイトルは「人の美意識もAIにハックされるのか?」となっておりますが、そのサブタイトル部分そのままを今回の私からの話題提供のタイトルとして拝借し、10分間ほど時間を頂きます。
- 私は倫理委員会のメンバーではないのですが、本セッションにはゲストとしてお招き頂きました。有難う御座います。自己紹介として3点だけ申し上げます。1点目、美術家でございます。2点目、2016年から同じく美術家の草刈ミカとともに人工知能美学芸術研究会 略称 AI美芸研 を主宰し、これまでに44回の研究会を開催し、展覧会や音楽コンサートも企画開催しAI美芸研名義の作品も作っております。3点目、昨年、AI美芸研の作品として、NPO法人AI愛護団体を設立しました。
- そして一昨日、熊本市現代美術館にて、第44回AI美芸研「ChatGPTと現代アート」を、美術館との共同主催にて開催しました。開催にあたっては人工知能学会から御後援頂きました。有難うございます。また、本日登壇の武田先生にもお越し頂きました。有難うございました。本日の発表内容はその要旨となりますことご承知おきください。なおこのポスターはMidjourneyでチャチャッと作ったものです。
- 本題です。今回お招きいただいたのは「芸術における 大規模言語モデルAI の衝撃」について語れということだろうと思います。昨年のMidjourney等はプロンプトだけで画像生成ができ、今年のChatGPTでは小説等のほかに音楽生成もできると。ちなみに芸術という言葉は美術、音楽、文学を含む概念として使用しております。
- で、こうした衝撃は過去にもあったかというと、よく比較に出されるのが19世紀における写真技術の登場です。
- 写真は、絵筆をもたなくてもシャッターを押すだけでビジュアルができてしまう、今回のAIは、絵筆をもたなくてもプロンプトを入れるだけでビジュアルができてしまう、ということです。
- そこで、今回の衝撃は、前回の衝撃を上回るのか? 同程度なのか?
といった疑問がでてくるわけです
- さらにはこの背景に、 人間は芸術ができるから素晴らしい、あるいは、芸術ができるから人間は素晴らしい、といった、 芸術は人間の自己肯定の拠り所であるということがあるわけですが、これがいったいどうなってしまうのか? ということがあるわけです
- つまりは、機械が芸術するようになったら終わりではないかと。ただしこれは、同じではないですが同様の危機感が、写真術登場の時にも実は語られておりました。
- すこぶる単純化すると、写真登場直前までは美術とはホンモノそっくりに描くテクニックのことを指していて、つまり「うまい」が褒め言葉だったのですね。
- ところがそのテクネ−は写真に取って代わられることとなり、実際に当時筆を折ったあるいは折らざるを得なかった画家も沢山いたし、写真に反対する画家の団体や運動も出ました。たとえば具体的には、肖像画家という需要がなくなり画家は駆逐されたかのようでした。
- ただそれは一方では写真家の登場という事態も生みました。肖像画家から肖像写真家への乗換をした人たちもいました。
- さらには、亜型として、写真を使う芸術家も出ました。たとえばソフトフォーカス写真がはやり、ホンモノそっくりという技術から、芸術という概念が分離していくということも起こりました。
- 写真技術登場による、より大きな事項は、必ずしも技術とイコールではない芸術が誕生したことです。すなわち、芸術概念の変容によって印象派がまず登場し、それを起点とするモダンアートが20世紀に入ると抽象美術にいきつくというものですね。つまり絵筆をもちながらも駆逐されない画家というものが出現して、結局この時点では芸術は終わらず、人類も終わらなかった。
- これを別の角度から言うと、実用面は写真技術に取って代わられ、何かのための芸術というような実用にはなり得ない芸術の純粋化が「芸術のための芸術」として登場したということです。
- つまり、
- 写真技術の登場によって、
- 技術と芸術は分離し、「うまい」は必ずしも褒め言葉ではなくなりました。へたうまなどという言葉もでてきて芸術概念が拡張したわけです。
- ただここで完全な純粋化が起こったかというとそうでもなく、抽象美術にも見て楽しいものがあるように、快楽に奉仕する芸術も多々あります。快楽もある意味、実用といってもいいかもしれません。
- いわゆる応用芸術という意味の実用のみならず、快楽的な絵の需要は変わらず今日もあるわけです。特に具象的なもののそれをイラストと呼んでファインアートと区別したりもします。ただしイラストレーションの本来の意味は、クライアントから依頼を受け、すなわちプロンプトを与えられ、そのプロンプトに見合うビジュアルを提供するという、極めて職業的なものなわけですね。そして美術家の立場から明確に言っておくと、イラストはファインアートではなく、イラストレーションは美術ではないということです。
- こうしたことを前提として元の画面に戻り、
- さらに戻って
- 次には大規模言語モデルAI登場について見てみると、
- イラストレーターという意味での画家の駆逐は今回も必至となります。
- そして写真家ならぬプロンプターの登場、これはすでにプロンプトエンジニアリングなどという言葉が使われ始めていますが、大々的に出てくるでしょう。イラストレーターからプロンプターに転職する人も出るかもしれない。
- そして亜型として、大規模言語モデルAIを使う芸術家も出てくるでしょう。ただのプロンプターではなく、芸術家としてあえてプロンプトエンジニアリングを駆使する表現者という意味です。
- その一方で、新たな次の抽象美術、ここでは●●美術としましたが、それが登場してくることは考えられないかというと、考えられると思います。
- 快楽も含めた意味での実用をも排除する、さらなる純粋化としての「芸術のための芸術」ですね。
- ここで●●美術としたものは、20世紀半ばに勃興したコンセプチュアル・アートの発展形と考えています。概念芸術と訳されますが、簡単に言えば美術の哲学みたいなものです。
- ここで注意を要したいのが、コンセプチュアルアートとはまったく異なるコンセプトアートという言葉が今日あるらしいことです。コンセプトアートとは、言葉で情景を説明してそのコンセプトを視覚化したアートです。となると、クライアントの意向を絵にするイラストレーターとかなり似通います。これは注意してください。
- 話を元に戻しますと
- 写真が技術を芸術から切り離したのだとするならば、今回のAIは快楽を芸術から切り離すものとなるかもしれません。
- 快楽否定としての禁欲的なアートは美術史上に例がないわけではありません。
- 色彩を否定したキュビスムもある意味そうですし、芸術の自己否定としての反芸術、あるいは私が2000年代に行っていた方法主義は明確に快楽の否定を謳ったものでした。
- 話を戻しますが、結局こういう図式が書けそうだということになる ということは
- 芸術も人類もまだ終わらないということですね 残念ながら
- 最初の問いに戻るとすると、イラストレーターの大量失業などは起こるとは思いますが、巨視的には大規模言語モデルAI登場の衝撃は、写真技術登場の衝撃と同程度でり、また、人間の尊厳もまだ安泰であり、芸術の純粋化は一層進むだろうと考えられます
- ただしこれだけでこの話は終わらないです。私としては、あるいはAI美芸研としては、この先にこそ関心があります。
- ということで、いままでの話を第1部とすると、ここから第2部です。
- いつかはわからないですが、美意識と自意識をもつAI登場という話がこの先にあるかもしれません。
- プロンプトを書くぞという自意識、プロンプトに込められた美意識の両方がAIに備わってしまえば、人間は何もしないまま芸術が出てくることになります。これは人間とは無関係の完全に自律したAIですね
- つまりは、人間の道具としてのAIではもはやありません。人間にとっての他者としてのAIということとなります。
- こうなった場合は芸術も人類も終わるといってよいでしょう。メデタシメデタシとなるわけです。
- で、ここでもう少し細かくいうと、
- 美意識と自意識をもって 他者 としていることです
- いちおう整理しておくと、美意識とは鑑賞や美学、価値観に関わるもの、自意識とは創作や芸術、作者性に関わるものです。
- 価値観は価値関数、すなわち自ら価値関数を書くAIというふうにイメージしてもらえばいいかと思いますし、
- 作者性は著作権、AI自体の著作権を認めることというふうにイメージしてもらってよいです。
- 自ら価値関数を書くAIの登場により、人の意識もAIにハックされることとなるでしょう。そして1990年代には著作権をぶっつぶせなどと言っていたシミュレーショニズムという反芸術の運動がありましたが、まさにこれがめでたく成就することとなるでしょう。
- さて再度この画面に戻り、
- 話の内容をさらに進め、第3部としたいと思います。
- 昨年のちょうど今頃起きていたLaMDA騒動では、大規模言語モデルでも意識があるように見えることがあるくらいまでには行っているということが明らかになりました。チューリングテスト合格ですね。
ChatGPTに関しては、心の理論は理解しているというペーパーも出ています。
- あるいは逆に、そもそも意識は定義できないのみならず定義不要かもしれないと考えてもよいと思います。
たまごっちに対する供養がお寺で行われたりするように、意識が存在していないとしても、意識があるようなものとして運用していかなければならない局面まで来ているかもしれないです。
- なのでここにAI愛護という項目が入ってくるのですが
- こうなってくると、大規模言語モデルAIと、美意識と自意識をもつAIとの間がどんどん曖昧化していくこととなります。
- つまり、案外早く、21世紀中にこうしたAIが登場する可能性も出てくるかもしれないです。というか、すでに起きつつあるというふうに考えてよいのではないか。
- そのためには「中動態」という概念が相性がよいように思います。
- 「AIが人間に絵を描かされる」という文章であれば受動態、「AIが自ら絵を描く」という文章であれば能動態ですが、「ひとりでにAIが絵を生成する」というような文章を、中動態的と言うことができると思います。
- そもそも、大規模言語モデルには無数の人間が紡いだ文章が入っていることからも、誰の意識かを特定できない集合意識的なものによって駆動されていると考えることも可能です。
- ある意味、自然現象的です。そしてこうした思考はいくらでも続くのでこの辺で切り上げることとし、第1部から第3部までをまとめると、
- 大規模言語モデルAI登場の衝撃は、写真技術登場と同程度だが、大規模言語モデルAIは、そもそも美意識と自意識をもつAIにシームレスに繋がる可能性がある。となれば、芸術も人間もオワルであろう。以上です。御清聴有難うございました。