Successfully reported this slideshow.
We use your LinkedIn profile and activity data to personalize ads and to show you more relevant ads. You can change your ad preferences anytime.

細胞農業の社会受容:GMOからの教訓

236 views

Published on

J. Mohorcich、J. Reeseによる論文からの抄訳
GM食品の先例分析と細胞農業の今後の社会受容の可能性について

Published in: Science
  • Be the first to comment

  • Be the first to like this

細胞農業の社会受容:GMOからの教訓

  1. 1. 細胞農業の社会受容:GMOからの教訓
 2019.11版 一般公開用
  2. 2. https://doi.org/10.1016/j.a ppet.2019.104408 Jacy Reese論文(2019) 「細胞培養肉: GMOへの受 容と抵抗からの教訓」 消費者意識、反テクノロジー運動、事 業者の行動の3つの観点から、GMOと 細胞農業を比較した。
  3. 3. アブストラクト This article discusses the choices and strategies that can hasten or delay the adoption of novel food technologies. We start by examining how genetically-modified food became an object of controversy in the United States and Europe. Then, we present lessons suggested by the history of GMOs for cell-cultured meat adoption. The history of GMOs suggests at least eleven concrete lessons for cultured meat adoption that remain under-discussed in the literature. This paper’s findings diverge in several ways from received wisdom on cultured meat adoption. We argue, among other things, that genetic engineering firms understood their work to be humanitarian and environmentally-friendly and so were unprepared for popular backlash, that technology adoption is more readily affected by consumer activism when buyers in a supply chain exert more pressure on sellers than the reverse, and that focusing on the positive aspects of a technology is more successful for encouraging its adoption than responding to negative perceptions. 本論文では、食品分野での新技術の普及を促進もしくは阻害する選 択や戦略について議論する。米欧でのGM食品の問題化の経緯を分 析し、その示唆を細胞培養肉の事例に投影する。本分析からは、培 養肉の普及にあたり複数方面で有用になりそうな、11の新たな示唆 が認められた。 総論として、GM食品企業は技術の環境メリットや公共性を理解しつ つ、消費者からの反発を想定していなかったこと、技術の普及は消 費者運動のサプライチェーンへの圧力に強く依存すること、批判への 対応よりも、技術のプラス面を強調することが、普及にあたっては重 要であることが認められた。 GM食品の歴史 細胞農業製品の今後相違点の分析  ⇒11の示唆 1972~、特に1995~ 2010~、特に2020~
  4. 4. 最初のGMは、1972にPaul BergがSV40ウイルスにλファージのDNAを入れたことから。 1973, Herbert BoyerとStanley Cohenが、カエルの薬剤耐性 DNAをE Coli.に挿入した。 Paul BergもSV40ウイルスをE Coli.に感染させようとしたが、人にも感染する危険性から実験を 中止した。1975年には組み換えDNA研究のガイドライン制定をした。 1976, 最初のGMベンチャーGenentech社創業。 5年後GM E Coli.によるinsulin生産へFDA認可、Humulin™発売。 農業応用研究は70年代より始まり、1982にkanamycin耐性のGMタバコが開発され、1992に中国 で栽培される。(ただし、後の 1995-1997に消費者受容リスクから栽培停止になる。) 1994にCalgene社より最初のGM食品であるFlavr Savrトマトが発売され、当時の反 GMO運動に もかかわらず一定の需要を獲得する。パッケージに質問窓口の電話番号を記載するなどの努力 をしたが、食品流通のノウハウ不足で梱包に失敗するなど、事業的には失敗、 1997にMonsanto 社に買収された。 GMOの歴史(1) 1972 技術の誕生 1975 リスク対応 1976 商品化 1982 GM作物誕生 1994 GM食品発売
  5. 5. 1995の消費者意識調査では、 73%がGM食品に肯定的、初期の反 GMO運動は表舞台よりは一 部の食品事業者に向けられ、特に直接摂取する食品がターゲットにされた。 GM食品の爆発的な普及が予想され、資金流入・消費者受容・比較的緩い法制度から耕作面積 は1996-1999で1.7Mha⇒39.9Mhaに。その一方で、反GMO運動により健康リスクが取り沙汰さ れるようになった。 反GMO運動が一般化し、反 GMO世論は1999に仏46%⇒65%、希51%⇒81%、英31%⇒51%、 米23%⇒27%となった。 2016現在、90年代に予想されたほど GM食品は普及しておらず、栽培も一部の国に限られてい る。全GMO耕作面積のうち、USA 39%, BRA 27%, ARG 13%, CAN 6%, IND 6%となっている。 消費者反発のリスクから、コーンオイル等の原料は OKも、GM小麦などの主食、コメ、ポテト、メロ ン、トマト等の見える形で直接摂取する食品については、 GM作物が開発されるも耕作はされてい ない。 GMOの歴史(2) 1995 肯定的世論 1997 技術の普及 2016~ GM食品の限 定的普及の 現状 1999 反GMOの 一般化
  6. 6. GMOの経緯と細胞農業の経緯の相違点 細胞農業GM技術 始まり方 70年代ベンチャー Calgene社、Zeneca社など 10年代ベンチャー Memphis Meats社、Mosameat社など 打ち出す イメージ バラ色未来 バラ色未来 商品化の要点 知的財産 知的財産 受容への争点 「不自然さ」 「不自然さ」 認識や受容状況 の変化要因 技術的進歩や変遷よりも 「言い方」や争点化の対象 技術的進歩や変遷よりも 「言い方」や争点化の対象 秘密主義の有無 大企業的な秘密主義 なし(今は) 既存事業者から の反発 積極的に利用 強く反発
  7. 7. 詳細項目ごとの相違点 細胞農業GM技術 反対勢力 の所在 環境活動家や消費者団体などの左派 ※一部の既存事業者は抵抗 既存畜産事業者 初期の経緯 大学発ベンチャーが多く、 1982には100社 が創業も、後に大企業数社が各社を買収 し、GM技術の開発をリード。 歴史は繰り返す? 大学発ベンチャーにとって大企業の資金力は ほぼ唯一の生存戦略という状況は不変 知財を巡る 経緯 歴史は繰り返す? 技術的に優れたベンチャーでも、大きく成長す る前に買収される可能性が高い IP目的の買収の後に独占秘匿や攻撃的 IP 取得など、当初の想定と違う IP運用で消費 者団体が反発する事例が多数、 ”No Patents on Life”がスローガン化した。 当初の論調 5-10年での普及や環境問題の解決など、非 常に肯定的な論調が多かった。 水消費-96%など肯定的論調も、畜産の裾野 の広さから予想外の影響への危惧あり
  8. 8. 「フレーミング」と「秘密主義」からの示唆 「不自然さ」を巡る議論で、メディアでのフレーミング (呼称が導く争点)は、事象の軽重判断 や、その後の法整備方針に影響する最重要ポイントと言える。 GM食品ではフレーミングの 変化速度と影響度を過小評価して後手に回り、大企業独占も合わさって争点が「可能性」 から「リスク」になった。この変化では非専門家が許容度よりもリスクや不確定さを争点化す る傾向があり、その場合の「倫理的」な争点は科学的事実よりも影響力で上回る現実があ る。 フレーミング 秘密主義 と傲慢さ 細胞農業でも繰り返される可能性? ※フレーミングは名称によっても決まる。”Frankenfood”の造語でGM食品の争点は「生命 に手を出す技術による災禍」となった。医療用MRIの事例では、元の呼称である核磁子共 鳴(NMR)の「核(Nuclear)」を避けることで受容された。 初期のベンチャー同士の IP主導権争や上市競争が秘密主義的で短期利益を重視する攻 撃的な業界姿勢を生み、それを引き継いだ Monsanto社は、社会コミュニケーション活動な しでGM作物をEUに進出させて反発を生んだ。研究者も自らを「世界の食糧危機を救う ヒーロー」と考えていた分、批判の矢面に立った時の反発が強かった。 ※同社は1996にRoundUp大豆の許可を得ていたが、狂牛病騒動などでEUの消費者は米国より政府認証 機関に対する信用が低く、この事実は考慮されなかった。 細胞農業でも繰り返される可能性?
  9. 9. 結言:「11の示唆」 ・GMのパイオニアはCalgene社やZeneca社などの初期ベンチャーであり、Monsanto社のような大 企業ではない。 ・2019年現在の細胞農業ベンチャーはCalgene社やZeneca社に相当し、買収などによる大企業の 影響力の拡大により、今後反発があるかもしれない。 ・反GMO運動は、当初は特定企業相手の小規模な運動だった。 ・GMO規制の遅れが「炎上」を拡大させた。 ・専門家は当初「バラ色未来」を描いていたが、そうした形での実用化はされなかった。 ・GMユートピアは来なかったが、GMディストピアも来なかった。 ・「不自然さ」だけで炎上するわけではなく、大企業独占などの他の要素と組み合わせって炎上す る。 ・誰が優位に立つかはサプライチェーン構造による。GMOでは消費者の動きに小売店は従うほか なかった。 ・生命の知財化には極めてネガティブなイメージができており、炎上リスクをはらむ。 ・「フレーミング(言い方、争点)」は科学的、経済的事実を上回り、非専門家が決める。 ・明るい面を推すほうが非難や疑念への返答よりも有効である。

×