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41 力奪四郡(趙雲・張飛・関羽、四郡を攻略す)




四郡の一つ長沙を巡って戦う関羽(正面)と老将・黄忠(手前)
第 41 集 力奪四郡(趙雲・張飛・関羽、四郡を攻略す)2009.7.07 更新
      ―「3 時間で~」第 44 話参照

チャプター①   呉の使者として劉備に会いに荊州にきた魯粛、孔明に案内されて城に入る~
チャプター②   武陵を落とした張飛と、戦功を喜びあいながら歩く劉備と孔明~
チャプター③   長沙城。太守・韓玄のもとへ兵が来て「関羽が城外5里に迫りました」と告げる~
チャプター④   長沙の老将・黄忠、再度、関羽との決闘に挑む~
チャプター⑤   劉備・孔明を先頭に、新たに黄忠・魏延を仲間に加えた劉備軍が行く~
         ~解説「零陵・桂陽・武陵・長沙の湖南四郡を制圧し...孔明の領土拡大計画は着
          実に実現していった」。


この第 41 集は、劉備の3武将による桂陽・武陵・長沙3郡(“四郡”の最初の1郡・零陵郡は戦わ
ずに降参してきた)の攻略戦争を描いている。中でも興味深いのは桂陽を落とした趙雲のエピソー
ド(チャプター①)と長沙での関羽と老将・黄忠との戦い(チャプター④)の場面だ。


①趙雲の武力に恐れをなした桂陽太守・趙範は、結局降伏。無血開城して趙雲を迎え入れる。そし
 てたまたま趙雲と同姓でしかも出身地も同じであった為、二人は義兄弟の契りを結ぶ。と、ここ
 までは良かったのだが、その後、趙範は兄になった趙雲に自分の兄嫁(未亡人)を紹介し、妻とし
 て娶ってくれるよう頼む。ところが趙雲の方は「義弟の兄嫁は自分にとってもやはり兄嫁。兄嫁
 と結婚することは倫理に反する」と言って、けんもほろろに断わってしまう。


 演義の本でこの場面を読んだときは、「趙範が美貌の兄嫁をえさに趙雲を抱きこみ、降伏と見せ
 かけて劉備に対して謀反を画策。趙雲はそれを見抜いて拒絶した」ように思われた。でも、この
 ドラマでは、逆に「趙範が好意で趙雲と兄嫁の仲を取り持とうとした」ように描かれ、ハンサム
 だけれど、ひたすらお堅い趙雲像が浮き彫りになっていて面白かった。




                            兄嫁のお酌を受け、カチカチになってい
                            る趙雲
④劉備の武将の中で先輩格の関羽、後輩の張飛・趙雲に負けてはいられない。そこで最後に残る長
沙の老練武将・黄忠の首をとるべく、長沙郡に向う。対する黄忠、六十を過ぎたとは言え、なか
なかのツワモノ。正攻法では破れない。そこで関羽は「拖刀之計」を用いようとした。これは「刀
を引きずって敗走すると見せ、敵が近づくのを待って急に振り返り敵を制する」計略。


         「拖刀之計」を仕掛ける関羽(右)とそれを追う黄忠(左)




結局、関羽がこれを使う前に黄忠の馬が倒れ、勝負がついてしまうが、この「拖刀之計」、よく
考えれば一種の騙し討ちではないか。義に厚い関羽でも敵に向えばこれ位のことはやるのだ。日
本人の目からみれば卑怯な手かもしれないが、弱肉強食の中国ではこれ位、朝飯前なのかも。

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