DEIM2019発表資料(藤堂晶輝)
- 5. 31.90%
41.70%
30.50%
25.30%
15.80%
18.00%
16.00%
9.20%
5.80%
5.90%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
未成年
成人
英語に対する苦手意識があるか(2017年)
[未成年N=5,000、成人N=5,000 単一回答]
とてもある
ややある
どちらでもない
日本人の多くが苦手意識を持っている
インターネット上で
最も多く利用されている言語
英語を取り上げることについて
5
GMOインターネット株式会社(2017)「『英語に関する意識調査』を未成年・成人計10,000名に調査」
(https://www.gmo.jp/news/article/5792/)
Miniwatts Marketing Group(2017)「Top 10 Languages」(https://www.internetworldstats.com/stats7.htm)
- 13. 被験者について
被験者
– 人数:89名
– タスク回答および閲覧行動データ: 356 件
– 提案手法の割り当て
(A) 他のユーザの閲覧態度の提示:20 名
(B) 拡大 :22名
(C) 黒塗り :22 名
提案手法なし :25 名
被験者の英語能力
「英語に苦手意識があるか」への回答で分類
ES 群 :苦手意識を持たない被験者群(72人)
EW 群:苦手意識を持つ被験者群(17人)
13
Editor's Notes
- ・情報の食わず嫌いを抑制する情報提示方法について,研究発表をはじめます.
*問題自体を丁寧に伝えること.問題自体におもしろさがある.
*英語に苦手意識をもつ現状を伝える 特に学生は共感しやすいと考えられる.
*読めるのに読まないということについて説明
*能力的な問題ではないことを説明
*提案手法について丁寧に説明する
*グラフについての説明 結果を説明する際にも,どの箇所からその結果を抽出しているのか示す必要がある
*アンケート調査についても内容を説明
*具体例を説明する 共感を得られるような説明 これは問題であるという説明も必ず
*
- ・日常生活の中で,情報検索を行う場面を考えていただきたいのですが,
そのなかで苦手だと感じるものに出会うことはないでしょうか.
・具体的には,英語や専門用語,数式などが考えられますが,
・もし苦手意識を持っていたら,それらを避けようとして,
・苦手な箇所を読み飛ばす,またウェブページ自体の閲覧をやめてしまうというような行動をとることが考えられます.
・これは~ということで,
システムを利用している人間の問題であり,
情報入手の機会を失うことにも繋がるため,問題であると考えました.
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リンクを開こうとした際に,閲覧しようと思った先のページが英語表記であったり,
読もうとした文章が英語であったりという場面に遭遇することも少なくない.
また,日本語文書であっても,内容の充実化のために英語の文章を引用すること
システムは,ユーザの要求に対して,有用な情報を提示しているとします
・ユーザの要求に対して,システムは有用な情報を提示しているのですが,ユーザは「読まない」という行動をとっていて,
「読む」という選択肢を捨てることは,情報を取捨選択することとは異なると思います. ← これは問題なのではないかと考えた.
・本研究では,英語に対する情報の食わず嫌いを扱っています.
・情報の食わず嫌いを起こすと,情報の食わず嫌いを起こした対象の箇所を読み飛ばしたり,ウェブページ自体の閲覧をやめてしまったりします.
- ・この問題を,本研究では「情報の食わず嫌い」として扱い,~と定義します.
・ここで注意していただきたいのは,情報の食わず嫌いをして避けている情報は,読もうと思って読めば,実際には読み取ることができる文章であるという点です.
・文章の難易度や,個人の能力の問題ではありません.
・目の前に,必要としているはずの情報があるにも関わらず,好き嫌いをして読まないという状況を問題だと考えています.
(・ここで食わず嫌いという言葉で表現することには意味がありまして,
実際には読める英語に関して,はじめから「苦手だ」「読みたくない」と決め込んで読まないというユーザの態度を表わしています.)
(「食べたことがないにも関わらず、その食べ物を初めから嫌って食べないこと」)
(・読めないために,読まない ではなく,
読めるけど,読まない という状況を問題としています.)
- ・突然ですが,
・あなたが,英語に苦手意識を持つ学生だとして,
授業の中で,名言を調べてくるという課題が出たとします.
・インターネットで検索したところ,こちらのページを見つけ,
このページの中で名言といえるような箇所は,この英語の部分だ,というところまで辿り着きました.
・この英語は,大学生であれば,意味を理解することはできるかと思いますが,
英語で書かれているという理由だけで,この文章を無視してしまいました.
・このように,実際には読めるはずなのに,読まないという選択をすることで,情報の食わず嫌いが起こります.
- ・英語に関しては,多くの日本人が苦手意識を持つというデータもあるのですが,
英語に苦手意識を感じている方はいませんでしょうか?
・わたし自身も,英語が含まれていても,知らず知らずのうちに日本語の説明ばかりを読み,英語の箇所を避けるように読んでしまっていると気付くことがあるのですが,
・わたしと同じ,学部生の方の中には,このように英語に苦手意識を持っている方もいるのではないかと思います.
・また,英語はインターネット上で目にする機会も多く,
日常的に食わず嫌いをしている可能性が高いと考えられることから,
対象を英語に絞ることにしました.
- ・また,今回「情報提示の工夫によって,情報の食わず嫌いが抑制される」という仮説を立てました.
・提案する手法は~の3種類です.
・提案手法の導入によって期待される行動の変化としては,
食わず嫌いをしていた箇所を読むようになることで,
読み飛ばしが減少すること,ページ閲覧の中断が減少することが挙げられます.
・その結果として~.
・次に,それぞれの提案手法について説明します.
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・そうすることで,1つのウェブページを読み進めるようになります
・(時間をかけて読んだり,何度も読み返すようになることが挙げられます.)
・(他にも,食わず嫌いをしていた箇所を読むようになり,さらにその周囲の記述も読むようになり,より理解が深まることが期待されます.)
・提案する手法は3つあります.
・それぞれの提案手法について説明していきます.
- ・~という狙いがあります.
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・(英語箇所に対する他のユーザの閲覧態度を知ることで,読む必要のある有用な情報であると意識し,
英語を読むようになるという行動変化を予測しています.)
・(ページに出現してから数秒経過すると徐々に透明度が上がり,最終的に表示が消えるよう設定する)
- ・縦スクロールの操作を行うことを想定していまして,
・画面上で,英語のテキストが見える範囲を出入りする際に,英語テキストの文字が拡大され,
視覚的に訴えるという仕組みです.
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・ウェブページを閲覧するときに,縦にスクロールしてページを読むかと思いますが,その際に~.
・一目で英語の存在には気付けるかと思いますが,英語を読み飛ばしてページを先へ進めようとスクロールしたときに,
食わず嫌いの対象が画面で見える範囲外へ向かうにしたがって,強く視覚に訴えるという仕組みです.
画面上に現れるときと,画面上から消えるときに
- ・後述するユーザ実験では,英語箇所の背景を黒,文字を灰色に設定して,黒塗りの下に文字が隠されていることに気付きやすいような設定にしました.
・このままではもちろん文字を読むことができないのですが,
マウスカーソルを黒塗り部分に合わせると,黒塗りが一時的に解除されて文字が見えるようになっています.
・文章が隠されていると逆に興味を惹かれるという仮説をもとに,この手法を提案しました.
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・黒塗りの箇所は,元は文章があったと簡単に気付くことができると思いますが,
文章が隠されていると逆に興味を惹かれるという仮説から,英語を読むという行動につながると予想しました.
- ・次にユーザ実験について説明します.
・実験では~取り組んでもらいます.
・被験者には,1人にひとつ情報提示手法をランダムに割り当て,
英語を含んだウェブページを,閲覧してもらいます.
・提案手法について,情報の食わず嫌いの抑制と,情報の閲覧促進に効果があるか明らかにすることが目的です.
- ・こちらが,実験の流れです.
・合わせて4つのタスクに取り組んでもらいますが,
・被験者には,日常で調べごとをするような自然な態度で取り組むよう依頼し,
・提案手法についての説明は行わず,制限時間を設けずに実験を行いました.
- ・提案手法について評価するために,行動測定とアンケート調査を実施しました.
・タスク中は,被験者の行動ログを記録し,
・アンケート調査では,提案手法に対する主観的な評価や,ユーザビリティに関する評価を依頼しました.
- ・被験者については,クラウドソーシングサービスで募集した約90名からデータを収集しました.
・また,~という質問に対する回答から,~と分類しました.
(・被験者に割り当てた提案手法はこのとおりです.)
(・ウェブ検索・閲覧行動を行うことなくタスクを完了していた被験者のデータについては,分析の対象外としています(被験者92 名のうち3 名))
- ・こちらが,1 ページあたりの平均ページ滞在時間の結果です.(青色の線がES 群,オレンジ色の線がEW 群)
・タスクごとに4つのグラフで表しました.
・それぞれのグラフにはES群とEW群の結果が表わされており,
・X軸方向に左から,(A)閲覧態度の表示,(B)拡大,(C)黒塗り,提案手法無しの通常の表示での結果がプロットされています.
・また,それぞれの標準誤差が表わされています.
・提案手法なしでタスクに取り組んだ被験者を基準に,比較しますと~.
*(標本平均の)標準誤差:推定量の推定精度を表す指標.小さい値であるほどばらつきが小さく精度の高い推定量であると評価できる.
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・タスク1,2,3 については,黒塗り手法を用いた被験者のみが,提案手法なしの被験者よりも長く滞在している傾向がありました.
・その他の提案手法でのページ滞在時間は,提案手法なしの場合とほぼ同じでした.
・タスク4 については,拡大手法を用いた被験者と黒塗り手法を用いた被験者のページ滞在時間が
提案手法なしの被験者よりも長い傾向がありました.
・得られたデータから,黒塗り手法にはページ滞在時間を増加させる効果があるということが分かりました.
- ・次に,平均ウェブページ閲覧回数の結果です.
・ES群については,(A)の閲覧態度の提示の手法で回数が増加しています.
・EW群については,(C)の黒塗りの手法で回数が増加しています.
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・特に情報の食わず嫌いを起こしやすいと考えられるEW群についてですが,
・黒塗り手法を用いた被験者の平均ページ閲覧回数は,提案手法なしの被験者よりもかなり多くなっていることが分かりました.
・その他の提案手法の被験者につきましては,提案手法なしの被験者と比べると多少多い場合もありますが,大きな差はありませんでした.
- ・次に,アンケート調査の結果です.
・ブラウザについては,「利用しにくい」,「読みにくい」との回答が多く,
英語が含まれるウェブページを閲覧してもらったために,見づらく利用しにくいとの意見が多く見られました.
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実験設計の上で意図的に作り出した英語の箇所については,「英語が混ざっていて読みにくい」
「英語で記されているものもあったので,分からない部分もあった」
「重要な部分が英文で表されている所があり,答えを見つけることが難しかった」などの回答を得た
- ・こちらは,提案手法に関するアンケート調査の結果の抜粋です.
・それぞれの手法について「気になった」「読みづらい」との評価が見られました.
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実験設計の上で意図的に作り出した英語の箇所については,「英語が混ざっていて読みにくい」
「英語で記されているものもあったので,分からない部分もあった」
「重要な部分が英文で表されている所があり,答えを見つけることが難しかった」などの回答を得た
- ・次に,それぞれの提示手法についての考察です.
・(A)特に~ということが分かりました.
「他のユーザが注目」という表示を見て,他のページにも同様の表示があるか探していることも考えられますが,
ページの読みづらさを感じた被験者が,より読みやすいページを探している可能性もあります.
・(B)では,特徴的な行動の変化は見られませんでした.
・これは,比較的通常の表示に近い手法だったためだと考えています.
・(C)~.
・~あったと考えることが出来ます.
・一方で,黒塗りを解除したのかどうかは今回の実験結果からは明らかにできていないので,
実際に英語を目にしていない可能性も考えられます.
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・他の手法と比べて,閲覧中の表示の変化が小さく,これが結果に影響していることが考えられます.
- ・本研究の改善点としましてはこのような点が挙げられます.
・特に重要なものとして,情報の食わず嫌いの抑制の効果を,より確実に観測できるように実験設計の再検討が必要だと考えています.
・具体的には,特定の箇所を読むことでしか問題に解答できないような問題を設計することなどが考えられます.
・また,被験者の人数を増やし,情報の食わず嫌いを起こす傾向にある被験者の割合を増やしたいと考えています.
・最後に,実験室実験を行い,被験者の反応や行動について測定・観察する必要もあると考えています.
*特定の箇所を読むことでしか問題に解答できないような,問題をつくる
*食わず嫌いが起きる箇所について調べる必要(別の問題)
*検定を行い,提案手法の効果について調べる必要がある.
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・今回実施した実験のように,ウェブ検索課題を出題する際には,
正しい回答を出すために必要となる情報が英語で記述されていて,
その箇所に何かしらの手法が適応されているという実験を設計する必要があります.
・被験者が正解に辿り着けた際には,そのときに導入されていた手法で情報の食わず嫌いを抑制可能だと言えるようになると考えています.
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今回の実験では明確な正解を設定したタスク作りがなされていないため,
被験者がタスクの終着点を捉えにくくなっているうえに,情報の食わず嫌いの抑制という点についての評価が行いにくいという問題があった.
被験者が正解に辿り着けた際には,そのときに導入されていた手法で情報の食わず嫌いを抑制可能だと言える可能性が高くなる.
ブラウザの利用しにくさなどのユーザビリティ面の評価が改善されると考えられる
- ・本研究では.~.
・ユーザ実験では閲覧時間や閲覧回数が変化しており,閲覧行動に変化を与えることができました.
・情報の食わず嫌いを抑制できるという明確な結果は得られませんでしたが,
・今回提案したような手法が,情報の食わず嫌いを抑制に繋がる可能性があるということが分かりましたので,
さらに実験や提示手法の改善をすることで,仮説の実証に繋がると考えています.
・発表は以上です.ありがとうございました.
*情報の食わず嫌いをする箇所の特定についても課題が残る(別問題)
→閲覧時のユーザの視線を観測したり,新たに食わず嫌いの実態を捉えるための実験を行う必要がある