「第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム」（DEIM2019）にて発表した資料です。

1. 飲食店レビュー情報の
集合知分析と意思決定支援
村西克仁 山本祐輔
静岡大学 情報学部
muranishi@design.inf.shizuoka.ac.jp 2019年3月5
日
1
DEIM2019 F3-1

2. 背景
ウェブ上には様々なレビューサイトがある
レビューサイトのレビュー評価平均点は
ユーザに大きな影響を与えている1 2
2
1. Reviews, Reputation, and Revenue: The Case of Yelp .com, Michael Luca, Harvard Business School NOM
Unit Working Paper No.12-016, 16 September 2011
2. Navigating by the Stars: Investigating the Actual and Perceived Validity of Online User Ratings, Bart de Langhe,
Philip M. Fernbach, Donald R. Lichtenstein, Journal of Consumer Research, Volume 42, Issue 6, Pages 817-833,
10 September 2015

3. 問題点
レビュー評価平均点という情報の
妥当性について考慮されないまま，
情報を過信して品質評価に関する
判断が安易に行われる
3

4. 提案内容
レビュー評価平均点を「集合知」と捉え，
２つのレビューサイト ・
の点数について，その妥当性を分析
飲食店の品質評価に関して，
レビュー評価平均点を利用した慎重な
意思決定を促進する情報提示手法を検討
4
[提案1]
[提案2]

5. 集合知について
集合知(Collective Intelligence)
 集団の意見・知恵
 例：Wikipedia, OSS,レビューサイト
集合知が正しく機能する条件 ※
 多様性(参加者が独自の立場・意見を持つ)
 独立性(他の参加者の影響を受けない)
 分散性(直接得られる知識から判断する)
 集約性(意見・知識を集約するシステムがある)
5
※『「みんなの意見」は案外正しい 』
ジェームズ・スロウィッキー, 角川文庫, 2009

6. 集合知とレビュー評価平均点
6
集合知妥当性がある
集合知妥当性がない
集合知の
４条件を
満たして
いる
いない
レビュー評価平均点は集合知である

7. レビュー評価平均点の分析(1/2)
集合知が正しく機能する条件の１つである
多様性について
食べログ・Rettyはユーザ層・利用シーン
などに違いがみられる※
ユーザ層が偏り，多様性を失っている場合
レビュー評価平均点に差が現れる？
7
※食べログ, https://tabelog.com/
Retty株式会社, https://corp.retty.me/
App Ape, https://ja.appa.pe/

8. レビュー評価平均点の分析(2/2)
飲食店カテゴリー 食べログ平均(分
散)
Retty平均(分散) 相関係数
和食(n=1011) 3.628 (0.174) 2.680 (0.136) 0.358
カフェ(n=522) 3.484 (0.096) 2.547 (0.108) 0.228
スイーツ(n=468) 3.513 (0.079) 2.649 (0.100) -0.022
居酒屋・バー(n=424) 3.595 (0.152) 2.662 (0.104) 0.100
洋食(n=325) 3.532 (0.162) 2.592 (0.116) 0.332
ラーメン(n=230) 3.380 (0.045) 2.541 (0.068) 0.162
そば・うどん(n=214) 3.435 (0.129) 2.614 (0.117) 0.162
デリカ(n=186) 3.436 (0.078) 2.631 (0.133) 0.055
中華料理(n=132) 3.462 (0.116) 2.667 (0.091) 0.174
イタリアン(n=112) 3.606 (0.141) 2.651 (0.087) 0.409
定食・食堂(n=107) 3.380 (0.103) 2.549 (0.139) 0.139
焼肉(n=106) 3.544 (0.122) 2.667 (0.092) 0.370
全て(n=3837) 3.532(0.134) 2.629(0.115) 0.252 8
対象：京都市の飲食店3837件 食べログ：1.0～5.0点 Retty ：1～4点

9. レビュー評価平均点についての考察
・ の
レビュー評価平均点の相関が弱い
２サイト間ではユーザの考え方が異なり，
評価傾向に差がある
１つのサイトのレビュー評価平均点では
多様性を満たしていない場合がある
9

10. レビュー評価平均点の分析を受けて
１サイトのみのレビュー評価平均点は
正しい集合知として機能していない
場合がある
そのような情報を利用して
飲食店検索→品質評価 を行うユーザに
慎重な意思決定を促す情報提示手法を検討
10

11. 情報提示手法の提案(1/2)
２サイトのレビュー評価平均点を併記する
インタフェース
11

12. 12

13. 情報提示手法の提案(2/2)
期待される効果
異なるレビューサイトにおける
レビュー評価平均点の差異を認識できる
情報精査への意識喚起
ユーザの慎重な意思決定が促進される
13

14. ユーザ実験(1/3)
ユーザが飲食店検索において
検索結果を与えられてからの行動
について分析
使用インタフェース
1. 食べログ・Rettyのレビュー評価平均点が
表示されるUI
2. 食べログのレビュー評価平均点が
表示されるUI
14

15. ユーザ実験(2/3)
タスク実行手順
1. 被験者にタスクの流れ・タスク内容例の
説明する
2. 被験者にタスク条件に合う飲食店が20件
載ったページを提示
3. 被験者に自分が行きたいと思った飲食店を
１件報告してもらう
15

16. ユーザ実験(3/3)
タスク
1.会社の忘年会を行うための居酒屋探し
2.友人と食事をするためのイタリアン探し
3.１人で行くラーメン店探し
測定項目
– タスク所要時間
– ページ滞在時間
– 閲覧ページ
16

17. 実験結果（タスク所要時間）
タスク１・タスク２では２つの点数が
表示された被験者の所要時間が短かった
タスク３では２つの点数が表示された
被験者の所要時間がわずかに長かった 17

18. 実験結果（レビューページ閲覧時間）
すべてのタスクで２つの点数が表示された
被験者の閲覧時間が短かった
18
合計閲覧時間 1ページあたりの平均閲覧時間

19. 実験結果（検索結果表示ページ閲覧時間）
検索結果表示ページ閲覧時間については
タスクにより異なる傾向がみられた
大きな差はみられなかった
19

20. 実験結果（レビューページ訪問件数）
タスク１・タスク３では２つの点数が
表示された被験者の訪問件数が少なかった
タスク２では２つの点数が
表示された被験者の訪問件数が多かった 20

21. 考察(1/2)
２つのレビュー評価平均点が表示
されるUIを利用した被験者のタスク
所要時間，レビューページ閲覧時間
が短い傾向にあった
レビュー評価平均点という情報が重視
され，情報探索行動が効率化されたと
考えられる
21

22. 考察(2/2)
レビューページ訪問件数にはタスクにより
異なる傾向がみられた
タスクによっては，被験者はより多くの飲
食店の品質を比較しようとしていた
２サイトのレビュー評価平均点を提示する
ことは飲食店の取捨選択行動を効率化し，
比較行動を促す効果もあると予想される
22

23. まとめ
飲食店レビュー情報の
集合知分析と意思決定支援
 １サイトのみのレビュー評価平均点は
多様性を失った集合知である
 ２サイトの点数を提示することで
ユーザの慎重な意思決定を促すUIを提案
 今後の課題
実験結果について，ユーザの意思決定に
影響を及ぼした要因の分析
23