規範と現実の多層性ー丸山眞男における「リアリズム」と「現実主義
- 4. 問題背景
• ☺ しかし、「丸山=平和主義者」という見方は疑わしい →丸山眞男
のリアリストとしての側面
☞国民的自衛権の容認 / 国連の集団的安全保障体制の容認
• 国家の自衛権と国民の自衛権を区別しなければいけない。・・・・国
民が自己防衛するのは憲法は許していますよ。完全に合憲です。ピ
ストルを持とうが何をしようが。国家が国家として国家の軍隊を行使
してはいけないとだけ,現在の憲法は禁止している(丸山眞男「楽し
き会」座談記録)
• 憲法の前文を引用すれば,前文の趣旨に自衛隊を解釈すれば
ジャスティファイできる(同上)
• [国連平和維持活動に関して]それが日本国憲法の精神だ,と言う
んですよ。国内向けには,それがナショナル・インタレストだ,本当の
意味で(同上)
•
4
- 5. 問題背景
現実社会の動向 丸山の活動
1941-45年 太平洋戦争 1940年 東京大学法学部助教授就任
1944-45年 教育召集
【憲法9条の弁証としての集団的安全保
障論】
1946年 横田喜三郎「戦争犯罪と国際法
の革命」
1946年 宮沢俊義「八月革命説」
1946年 「超国家主義の論理と心理」
1946年 「明治国家の思想」
1947年 「日本ファシズムの思想と運動」
1949年 「軍国支配者の精神形態」
1949年 「近代日本思想史における国家
理性の問題」
【講和論争】
1950年 朝鮮戦争勃発
1952年 サンフランシスコ講和条約
1950年「三たび平和について」
1952年「現実主義の陥穽」
1955年 日本国際政治学会設立
1963年 高坂正堯「現実主義の平和論」
1960年 東京大学法学部講義(「政治
学」)~政治的リアリズムと状況認識
5
- 7. 問題背景
(補足①) 講和論争
• 全面講和派=理想主義、片面講和派=リアリズム →この図式は
当てはまらない
• 片面講和派: 憲法九条と日米安保体制(冷戦イデオロギーの正
当化)
• 全面講和派: 非武装中立論と「国連の正義」への懐疑(冷戦イ
デオロギーの拒絶)
• 「正しい戦争」としての朝鮮戦争
(補足②) 丸山における「リアリズム」と「現実主義」 (cf. 1960年東
大講義)
• 政治的リアリズム→政治的現実の多義性に対してのリアルな状
況認識
• 現実主義(=状況追随主義)→「既成事実への屈服」「現状への
屈服」「現実の一次元性」
•
7
- 12. 「近代日本思想史における国家理性の問題」(1949年)
① 権力についての考え方
• 「権力 vs 規範」 または「力 vs 正義」と いう前提には立
たない。
• 「力は正義なり」→道徳的衣装を伴う /「正義は力な
り」→力の行使における大義名分
• ここでの対象は単なる“力”ではなく正当化された力
② ヨーロッパにおける国際社会
• キリスト教的世界の解体→主権国家
• 国家を包括する「国際社会」という自明の前提
• 【日本の場合】国際社会に対して開国する(国を開く)と
同時に近代国家(閉ざされた統一体)を志向する
12
- 28. まとめ
• 丸山眞男におけるリアリズム的側面
– 自衛権や国家理性は寧ろ容認されている
– 国連集団安全保障体制を「日本の国益」から理解
• 丸山における「リアリズム」と「現実主義」
– リアリズムによって現実主義の矮小性を批判
– 「既成事実への屈服」であってはならない
– 「現実的」という言葉が権力を正当化している
• 中江兆民における現実の多側面性の理解
– 規範と現実の多様な側面を捉える事
– 規範と現実の関係
– 明治期と昭和期の言説の関係→継続と断絶
28