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International Politics I - Lecture 1
- 5. 国際政治学の論点 １ 5 １） 主体問題 問い） 国際政治の主要な主体（動かしている、影響を与えている）のは国家だ けか？国家以外の主体も含まれるか？ Ａ） 国家だけが国際政治の主体 Ｂ） 国家主体と非国家主体（国際機関、企業、市民etc.）が国際政治の主体
- 6. 国際政治学の論点 １ 6 ２）選好問題 問い） 国際社会の主体は何を目指しているのか？ （＝国益 National Interests） Ａ） 相対利得（relative gain）利益は互いに対立している 👉誰が最も得をしているか？ Ｂ） 絶対利得（absolute gain）利益は互いに対立していない 👉全員が利益を得ているか？
- 7. 国際政治学の論点 １ 7 ３）構造問題 問い） 国際社会ってどんなところ？ Ａ） 国際社会と国内社会は「異質な空間」＝国際システム論 Ｂ） 国際社会は国内社会の延長＝国際社会論／国内類推 →国際社会は「遅れた」国内社会 – 国際社会＝international community or international society – テンニエス（Ferdinand Tönnies 1855-1936） • Gemeinschaft (community) • Gesellschaft (Society) 共同社会、共同体 機能体組織、利益社会
- 8. 国際政治学の論点 １ 8 ４）対象問題 問い） 「政治現象」とは？ イシューで捉える Ａ） 高度の政治（high politics）：外交と安全保障だけが政治現象 Ｂ） 低度の政治（low politics）：外交•安全保障以外も政治現象
- 9. 国際政治学の論点 １ 9 ４）対象問題 問い） 「政治現象」とは？ 分析レベルで捉える Ａ） 国際レベル（システムレベル） Ｂ） 国家レベル Ｃ） 個人レベル
- 10. 国際政治学の論点 １ 10 ５）秩序問題 問い） 「政治的な諸関係」ってどういう関係？ Ａ） 国際政治はアナーキー（無政府秩序） Ｂ） アナーキーだけど一定の秩序はある 「政治的なもの（the political）」とはなにか？ （cf. 選好問題） →政治を「リソースの再配分」と定義した場合に • 利益の調和がある（政治とは合意形成） • 利益は対立している（政治とは対立•競争である）
- 11. 国際政治学の論点 １ 11 方法論問題 問い） どうやってそれがわかるか？ 国力とは何か？ Ａ） 物質的潜在能力（material capabilities）：軍事力、経済力など Ｂ） 観念要因（ideational factors）：理念、規範、ルールなど
- 12. 国際政治学の論点 １ 12 方法論問題 問い）権力（Power）とは何か？ Ａ） 実体説：権力には実体（暴力、財力、技能、知識）が伴う 👉権力とは「個人が所有できるもの」と捉える Ｂ） 関係説：権力とは影響力（関係性）である 👉権力とは関係性である（個々の関係によって異なった影響力を持つ） • R.ダール「Ｂがふつうならしないであろう何事かをＡがＢにさせた場合 に、ＡはＢに対して権力を持つ」
- 13. 国際政治学の論点 １ 13 方法論問題 問い） データとは？ Ａ） 量的なデータ：数値に置き換えられるもの Ｂ） 質的なデータ：数値に置き換えられないもの
- 14. 国際政治学の論点 １ 14 方法論問題 問い）どんな方法でデータを分析するか Ａ） 実証主義（客観性）→経験的に検証可能な根拠 Ｂ） ポスト実証主義（または解釈学派）（間主観性）→解釈の相互作用
- 15. 国際政治学の主要理論 – リアリズム•••世界秩序を国益と権力の観点から説明。国益を守るために国家が権力 闘争を繰り返す。対外政策を重視する「古典的リアリズム」と国際システムを重視する 「ネオリアリズム」。 – （ネオ）リベラリズム•••世界秩序を利益と制度によって説明。国際制度や国際レジーム の存在によって国家間協調が可能であるという立場。戦間期理想主義に端を発し、相 互依存論や国際レジーム論等の学派に分かれる（→ネオリベラリズム）。 – （ネオ）マルクス主義•••世界秩序を主に経済要因•経済構造から分析。従属理論は先 進国と途上国の依存•従属関係に着目。世界システム論は先進国と途上国の格差を 生み出しているグローバル資本主義が世界秩序そのものを規定していると主張。 – 構成主義•••世界秩序を理念と規範から説明する。特定の集団の中で知識や規範が どのように付帯•定着•変容しているのかに着目する。 15 ２
- 16. 国際政治学の主要理論 16 ２ 主体 選好 構造 対象 秩序 方法 リアリズム 国家 相対利得 国際システム ☞高度の政治 国際レベル 国家レベル アナーキー 物質的潜在能力 実証主義 リベラリズム 国家 非国家主体 絶対利得 国際社会 高度の政治 ☞低度の政治 国際レベル 国家レベル ポリアーキー 物質的潜在能力 実証主義 マルクス主義 国家 多国籍企業 支配と搾取 世界システム 高度の政治 ☞低度の政治 国際レベル 国家レベル 世界システム 物質的潜在能力 観念要因（限定的） 実証主義（限定的） 構成主義 国家 非国家主体 N/A 規範形成 国際社会 高度の政治 ☞低度の政治 国際レベル 国家レベル ポリアーキー 観念要因 ポスト実証主義
- 17. • 世界で最初の国際政治学部 → 1919年にウェールズ大学 （University of Wales, Aberystwyth）で開設 • 第一次世界大戦の衝撃 →古典外交／ヨーロッパ公法の崩壊 →戦争違法化思想の影響（当初は、平和主義的•理想主義的色 彩が極めて濃厚） • 国際政治学自体は20世紀に成立 →その萌芽は以前から「外交論」や「政治哲学」として存在 →「過去は長いが、歴史は短い」（心理学）と同様の学問的系譜 • 「法による平和」（リベラリズム）と「外交による平和」（リアリズム） ３ 国際政治学の来歴 17 Alfred Zimmern E. H. Carr
- 18. 国際レベル 外交 同盟 国際規範 国際法 国際制度 国際経済 国家レベル 国益 国防 政治体制 行政 法 経済 社会 ナショナリズム 個人レベル 人格 性格 個性 認識 行動 選択 国際社会科学としての 国際関係論 （International Relations） 国際政治学•国際法学 国際経済学•国際社会学 国際政治学 （国家間関係） 国家＋非国家 ３ 国際政治学の来歴 18
- 19. 国際政治学の来歴 ３ 19 国際政治の「ものの見方」の変化 国家間関係論（Inter-state Politics） • 狭義の国際政治学：高度の政治（High Politics）•国家中心主義 国際関係論（International Relations） • 戦間期の国際社会科学 • 低度の政治（Low Politics）•非国家主体への着目 トランスナショナル関係論（Transnational Relations） • グローバル化による国家•国境の相対化 • 国家の退場（S. ストレンジ） • グローバル化における積極論•懐疑論•変容論（D. ヘルド）
- 20. 国際政治学の来歴 ３ 20 国際政治の「ものの見方」の変化（続き） 問題枠組みの多様性 ⚫ 主体の多様性：国家、国際機関、企業、市民 ⚫ 選好の多様性：相対利得と絶対利得 ⚫ 構造の多様性：国際システム論と国際社会論 ⚫ 対象の多様性：安全保障•外交（高度の政治）/経済•人権•環境•社会政策など（低度 の政治） ⚫ 秩序の多様性：アナーキー、政治的なもの ⚫ 方法論の多様性：定量的分析／定性的分析、理論研究／事例研究、歴史研究•地域 研究からの影響、隣接諸分野からの影響
- 21. 国際政治学の特徴 21 ４ ２ • 政治学の中では最も領域が広い • データがカバーできる範囲が小さい →観察可能な範囲（データでカバーできる範囲）は狭い • 状況の中から選択 →理論を通じて国家／集団／個人の行動を体系化•構造化 →理論的思考が重要 • 巨大な輸入学問である 1920年代以降：法学や歴史学の影響→政策科学への志向 1960年代以降：行動科学の影響 （経済学、心理学、シュミレーションモデル） 1990年代以降：社会学の影響→国際政治学の脱「国家」化 命題 データ 理論 方法 データ 事例
- 23. まとめ 1．国際政治学の論点 主体 選好 構造 対象 秩序 方法論 ２．国際政治学の主要理論 リアリズム、リベラリズム、構成主義、マルクス主義 ３．国際政治学の来歴 •制度的な国際政治学の成立→戦間期の平和主義•平和運動 •国際社会科学の失敗と挫折→「法による平和」と「外交による平和」 ４．国際政治学の特徴 •理論を通じた体系化 •他分野からの輸入•加工 •データ分析は弱い 24