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第2回 魅惑の戦略的アンケート研究会@日本BLS協会



集計・分析の基礎
                 2013/02/23(Sat)
                                廣江 貴則
                       早稲田大学理工学術院
                            Twitter: @taka_hiroe
                  Website: http://www.thiroe.net
今日の方向性

• 基本統計量に関する復習


• 一般的な統計の教科書の1章と2章の   間を埋める

• 知識の再構築(なんとなく知っていることは多い)


• 統計的検定の具体的手法は次回以降で扱う


                2
ゴール

• 母集団と標本の違いについて説明できる


• 基本統計量の計算とその解釈ができる


• 結果を説明するのに最適なグラフを選択して描ける


• 表を用いた集計ができる


                3
おねがいとおやくそく

• 今日お話するのはあくまでもひとつの考え方


• このスライドはSlideShareにアップロードします


• 今日の内容は「検定・推定編」への橋渡し


• ここで見聞きしたことは外で話さないでください

 ‣   e.g.「あの人,実は電卓もまともに使えないよ」

                        4
おっといけない

• 自己紹介(新しい人もいるので)


‣   興味のあること,抱えている問題,etc.

• グループワークがあるので,2組に分かれてください


• 作業は各自で,考えるのはみんなで


                5
ちょっと立ち止まる



なぜ調査をした後で集計や分析をするのか

 (調査に使った紙をそのまま回覧すればよいのでは?)




             6
集計や分析をする理由

• 複数のデータを集めて明らかにしたいことがある


• 今後の研究の方向性を定める(予備調査)


• 学会発表/論文執筆


• 調査だけしてしまった/押し付けられた


• 生データは絶対に見せられない
              7
分析の質

• 用途によって,分析の方法や結果の提示方法は異なる


 ‣   小規模な組織内で結果を共有する

 ‣   研究目的

 ‣   誰かを説得する/予算をとってくる

➡ とはいえ,基本的な考え方はどれもだいたい同じ
               8
母集団と標本
全数調査と標本調査


    9
母集団と標本
全数調査                           標本調査
              抽出
       母集団   (Sampling)   標本


                    推測

• 母集団:統計的調査・分析の対象となる集団全体


• 母集団すべてを調査することが困難な場合,標本を抽

出して,そこから確率論的に母集団を推定する

                   10
母集団を明確にする

• それぞれ,母集団と標本はなにか


1.20代の日本人女性のうち,どのくらいが眼鏡をかけて
いるかを知るために20代の日本人女性200人に質問した

2.ある製薬会社では,新開発した物質Xをマウス50匹に
経口投与して,目的とする薬理作用を確認した

             11
母集団を推定可能な調査を

• 本来は調査設計の段階で確認すべきことだが…


• 母集団から無作為に標本をとらないと実態を表せない


• 20歳代女性   and 眼鏡:「渋谷で200人に聞きました」

 ‣   「渋谷」ではデータに偏りがある可能性が高い

 ‣   報告書に「20代女性のP%が眼鏡」とは書けない
                  12
有限母集団と無限母集団

• 有限母集団


• 無限母集団(一般に「母集団」というとこちら)


‣   母集団を構成する要素が無限個

‣   標本数 << 母集団の要素の個数

‣   将来にわたって同様の要素が生成される場合
                13
母集団を全て調べる?

• 一般的に,母集団を全て調べることは困難を伴う


• 20歳代女性全員,マウス全てを調べるのは非現実的


• 標本調査で母集団の推定をするのが合理的


• ただし,標本はある程度の誤差を持つ


• 誤差を考慮しながら推定したり,検定したり…
             14
標本調査の落とし穴

• 母集団を取り違えて推定し,報告書で論理の飛躍


‣   「インターネット上で調査」→ 日本人全体の傾向

‣   「X病院の看護師全員を調査」→ 日本の看護師全体

‣   「名称が同じで中身の違うプログラムYの修了者」

           → プログラムYの修了者全員
               15
患者満足度調査

• なにがいけないのか考えてみる


‣   外来受診者1000人/日の病院(80%は予約患者)

‣   外来受付時刻9:00∼11:00(予約でも受付は通過する)

‣   調査紙(アンケート)で外来受診者の満足度を知る

‣   10:20∼10:30の間に窓口周辺にいる患者に無作為に配布
                  16
なにがいけないのか

• 「患者」を代表できる標本かどうか


• 9:00来院の人/11:00来院の人の意見は聞けるのか


• 標本の集め方の妥当性を再検討する必要がある


• 問題発見の切り口は統計学的な考え方だけではない


               17
意外と多い全数調査

• 全数調査:母集団全てを調べる調査方法のこと


• 対象を全部調べるので,推定(や検定)は原則不要


• コストがかかるので…と思われがちだが,意外に多い


• 身近な具体例をいくつか考えてみよう


             18
全数調査の具体例

• 企業や集団におけるスタッフの満足度


• 研修前後の試験/事後アンケート


• 学力試験(サンプリングしたらひどいことに)


• etc.


             19
報告書の結果が全てではない

• 母集団を取り違えて調査が行われている可能性


• アンケートの調査紙同様,データを集計して,結果を

導きだす過程もある意味invisibleなもの

• 論文や報告書に生データが掲載されることはまずない


• 分析方法は示しても,全て説明があるわけではない

               20
基本統計量の計算と解釈



     21
基本統計量

• 過去に習ったことがあるはず


• 少し考えて,思い出してみる


‣   どんなものがあったか

‣   その計算方法

    -   e.g. データ数(N),最大値(max),最小値(min.),...
                        22
基本統計量の例

• 中心位置を推測するもの         • 広がりを推測するもの


‣   算術平均(相加平均)        ‣   平方和(S)

‣   メディアン(中央値)        ‣   分散(V)

‣   モード(最頻値)          ‣   標準偏差(s)

‣   トリム平均             ‣   範囲(R)
                 23
算術平均(相加平均)

• 一般にいう「平均」のこと


• 全部足して,データ数nで割った値


• 平均は文字の上にバーをつけ,母平均はμで表される

         n
       1
•   x = ∑ xi
       n i=1

               24
メディアン(中央値)

• Meと表記されることもある


• データを大きさの順に並べて,その中央に位置する値


‣   データが奇数個:中央に位置するデータの値

‣   データが偶数個:中央に位置する2つのデータの平均値


               25
モード(最頻値)

• 集められたデータの中で最も多く現れた値


• データ数が少ないとき,あまり意味を持たない


• Likert   Scaleを用いた場合の集計にも使える

• 度数表がある場合は,度数が最大の区間の中心値


                     26
トリム平均
               ・・・ ・・・・     ・
• trim: 刈り取る   ↑min.         max↑

• e.g. n個のデータから最大値と最小値を取り除いた平均


• 計算結果が外れ値に引っ張られない


• 使ってよい場合と,そうでない場合がある


• 外れ値がある場合は必ず原因を検討する
                   27
平方和(S); SUM OF SQUARE

• 平方和そのものを結果として示すことはまずない


• 分散や標準偏差,相関係数の計算に用いる


• (個々のデータ                       − 平均)の2乗をすべて合計した値

• 個々のデータの2乗の合計                                     − (データの合計の2乗÷n)
                        2                 2
      n                     n
                              1#    n &
•   S =∑    (       )
                xi − x = ∑ x − % ∑ xi (
                                2
                                i
                              n $ i=1 '
      i=1                i=1
                                              28
分散(V); VARIANCE


• 平方和を(n-1)で割った値(nで割る考え方もある)


• 分散そのものを結果として示すことは少ない

       S
• V=
     n −1



                   29
標準偏差(S); STANDARD DEVIATION


• 標準偏差はsで,母標準偏差はσで表される


•   分散の正の平方根

• s= V
                        10(x − µ )
• 「偏差値」とは別物    z = 50 +
                           σ
                     30
標準偏差の意味




   31
範囲(R); RANGE

• 最大値       − 最小値

• R = xmax − xmin

• データ数が少ない場合にのみ使用する(n=10程度)


• 標準偏差より情報量が少ない


                         32
計算練習

• データが8個(n=8),以下に示す統計量を求める


16.8 14.7 18.3 15.2 16.4   17.1 15.8 16.0

• ①平均,②メディアン,③トリム平均(最大値/最小値を

除去),④平方和,⑤分散,⑥標準偏差,⑦範囲

• 計算が終わったらグループ内で結果を確認

                    33
平均値至上主義はやめよう


• 算術平均が意味を持つのは限られた分布のみ


• 図を描いて,そこに平均値を書き込んでみる


• 平均のほかに適切な指標がないかを検討してみる


• 4段階・対称型のスケールでAvg.=2.4の持つ意味は?

               34
結果を図で表す



結果を図にすることについての
メリットとデメリットを検討する



       35
図のメリット・デメリット

• メリット                   • デメリット


 ‣   全体像を理解しやすい          ‣   詳細な数が見えにくい

 ‣   変化を説明しやすい           ‣   1つの表で示せる内容
                             でも,グラフでは複数
 ‣   見れば分かる
                             描かなければならない
 ‣   細かい数字を隠せる(!)            場合がある
                    36
どんな図があるか

• 棒グラフ            • 散布図


• 円グラフ            • 階層グラフ


• 折れ線グラフ          • 三角グラフ


• レーダーチャート        • 箱ひげ図


• ヒストグラム          • etc. (調べてみましょう)

             37
棒グラフ

• 棒の高さで直感的に大小比較が可能
                       出所: “Bar chart”, Wikipedia:en




• 原則は左(上)から大きい順に並べるが,時系列など

並び方に意味がある場合はその限りではない

• 大きさに差がありすぎると分かりにくくなる


• 系列数や項目の数が多くなると見づらい

             38
100%積み上げ棒グラフ

• 横向きにすると帯グラフとも


• 項目×要素の割合でクロス集計


• 棒の長さを全て同じ100%にして表現


• 各要素の割合を項目間(時系列も可)で比較


• 項目毎にデータ数が異なる点に注意する
              39
実際に確認してみる




    40
円グラフ

• 単純な比較では分かりやすい


• 多数の項目では面積の比較が困難


• 複数の円グラフ同士の比較も難しい


• 科学論文ではほとんど使用されない


• 棒グラフで代用可能
              41
ちょっと実験

• AからEを面積の大きい順に並べてください


               E"         A"


          D"
                               B"
                    C"

                     42
こたえあわせ

     E"        A"                 E"     A"
                                 19%"   22%"
                               D"
D"                            18%"           B"
                    B"                      20%"
                                      C"
          C"                         21%"




                         43
円グラフと棒グラフ

                         25"


                         20"

     E"        A"
                         15"


D"                       10"
                    B"
          C"              5"


                          0"
                               A"        B"   C"   D"   E"



                                    44
折れ線グラフ

• 散布図(後述)の一種


• データを順番に直線でつなぐ
                    出所:”CUDの具体例,” 福島県生活環境部人権男女共生課



• 時系列変化を追いたい場合に用いる


• 複数の項目の時系列変化は,棒グラフの方が見やすい


• 棒グラフと併せて描かれることも多い(が見づらい)
               45
見づらいものは見づらい
 正直な話,老眼にはきついのです




  出所: IDWR週報グラフ「感染性胃腸炎」, 国立感染症研究所ウェブサイト, 2013/2/22更新データ



                           46
レーダーチャート

• 形状に注目して傾向を把握


• 複数の指標をひとつにまとめる
                       出所:”Rader Chart”, Wikipedia:en



• 外にいくほど値が大きく,良くなるように配置


• 作業時間などで,短い方がよい場合は注意


• すべて同じ単位に   える必要がある
               47
ヒストグラム?

• これはピクトグラム




              48
ヒストグラム

• since1895, by   Karl Pearson        出所: “Histogram”, Wikipedia:en



• 棒グラフとは別物(棒同士がくっついている)


• 横軸にデータ区間,縦軸に頻度(度数)


• データ区間の設定方法にはいまだ議論がある


• 度数分布表の作成              → ヒストグラム
                                 49
度数分布表           区間
                         10.75-14.25
                                       中心値
                                       12.50
                                               度数
                                               2
                         14.25-17.75   16.00   4
                         17.75-21.25   19.50   7
                         21.25-24.75   23.00   14
                         24.75-28.25   26.50   12
                         28.25-31.75   30.00   6
• 区間,中心値,度数からなる表         31.75-35.25   33.50   3
                         35.25-38.75   37.00   2


• 区間は後述の規則(他の方法もあり)によって計算


• 中心値は区間の   (上限値+下限値)÷2 で求める

• 度数はその区間に入るデータの個数


                 50
度数分布表の作成法
    (区間設定法はSQUARE-ROOT CHOICEを利用)


1.データの測定単位m, 最大値Xmax, 最小値Xmin, 範囲Rを計算

2.仮の区間数   (ただしhは整数)
        h≈ n
          R
3.区間の幅   (ただしcはmの整数倍に丸める)
       c≈
          h
                     m
4.一番下の下側境界値を    とする
             X min −
                     2

5.下側境界値にcを加えて区間を決定,Xmaxを含むまで

6.各区間に入るデータの個数をカウント
                  51
ヒストグラムを描く

• 横軸に区間,縦軸に度数を設定


• 度数分布表の通りに描く


• 柱はくっつける(棒グラフのように離さない)


• 平均値を線で書き入れる


• 余白にデータ数,平均値,標準偏差を記載する
                52
ヒストグラムを読む

• 考察のポイント


‣   ばらつきの程度,異常値(外れ値)の有無

‣   中心の位置と分布の形状

➡   異なる母集団が混合していると考えられる場合は,
    それらを分けて(層別)分析する
              53
練習問題
              度数分布表とヒストグラムの作成


• 測定単位0.5,     n=50

11.0   13.5   14.5    15.5   16.5   17.0   18.0   19.0
19.5   20.5   21.0    21.0   21.0   22.0   22.5   22.5
23.0   23.0   23.5    23.5   23.5   23.5   24.0   24.5
24.5   24.5   24.5    25.0   25.0   25.5   26.0   26.0
27.0   27.0   27.5    27.5   28.0   28.0   28.0   28.5
28.5   29.0   30.0    30.5   31.0   32.5   33.0   35.0
36.0   36.5
                              54
計算過程

1.m=0.5, Xmax=36.5 Xmin=11.0 R=36.5-11.0=25.5
2.仮の区間数      h ≈ n = 50 ≈ 7
             R 25.5
3.区間の幅     c≈ =
             h  7
                    ≈ 3.5
                             m         0.5
4.一番下の下側境界値            xmin − = 11.0 −
                             2          2
                                           = 10.75

5.下側境界値に3.5を加えて区間を決定,36.5を含むまで

6.各区間に入るデータの個数をカウント
                              55
こたえあわせ

   区間         中心値     度数   16"
10.75-14.25   12.50   2    14"                                                                            n=50
14.25-17.75   16.00   4
                           12"                                                                         Avg.= 24.56
                           10"                                                                           s=5.60
17.75-21.25   19.50   7     8"
21.25-24.75   23.00   14    6"
                            4"
24.75-28.25   26.50   12
                            2"
28.25-31.75   30.00   6
                            0"
                                   "



                                               "



                                                           "



                                                                       "



                                                                                   "



                                                                                               "



                                                                                                           "



                                                                                                                       "
                                 25



                                             75



                                                         25



                                                                     75



                                                                                 25



                                                                                             75



                                                                                                         25



                                                                                                                     75
31.75-35.25   33.50   3
                                   .



                                               .



                                                           .



                                                                       .



                                                                                   .



                                                                                               .



                                                                                                           .



                                                                                                                       .
                                 14



                                             17



                                                         21



                                                                     24



                                                                                 28



                                                                                             31



                                                                                                         35



                                                                                                                     38
                               5+



                                           5+



                                                       5+



                                                                   5+



                                                                               5+



                                                                                           5+



                                                                                                       5+



                                                                                                                   5+
                             .7



                                         .2



                                                     .7



                                                                 .2



                                                                             .7



                                                                                         .2



                                                                                                     .7



                                                                                                                 .2
35.25-38.75   37.00   2
                           10



                                       14



                                                   17



                                                               21



                                                                           24



                                                                                       28



                                                                                                   31



                                                                                                               35
     ※ 実はちょっといけない図だったりするけれど,今回は気にしないことに…

                                           56
散布図

• 2変数の関係を知りたい場合に描く


• x増加   & y増加:正の相関

• x増加   & y減少:負の相関

• 関係が見出せない場合(団子状          or ばらばら):無相関

                     57
散布図を描く目的

• 「とりあえず描いてみる」となにか見えるかも


‣   異常値(外れ値)がないか調べる

‣   層別(グループ分け)の必要性がないか調べる

‣   相関の傾向と程度をつかむ

               58
相関係数; CORRELATION COEFFICIENT

• 2変数の相関の程度(直線関係)を定量的に示す方法


• n組のデータ               (x1, y1), (x2, y2), ..., (xn, yn)

• xの平方和(Sx),yの平方和(Sy),xとyの偏差積和(Sxy)

                  1            2        2
• Sxy = ∑ xi yi −
                  n
                      (∑ x ) (∑ y )
                           i        i


         Sxy
• r=
        Sx ⋅ Sy
                                             59
相関係数の読み方

• -1   ≦r≦1

• +のとき正の相関,−のとき負の相関


•r   ≒ 0 のとき無相関

• 一般的に±0.6で相関あり,±0.8で強い相関というが,

 必ずしもそうであるとは限らない(状況に依存する)

                  60
演習(ANSCOMBE’S QUARTET)
    F. J. Anscombe, “Graphs in Statistical Analysis”, The American Statistician, Vol.27(1), pp.17-21, 1973




• X及びYの平均・標準偏差,XとYの相関係数を求めよ
                                                     61
こたえあわせ(すみません分散です)




•
            62
図を描いた人はいますか




    出所: ”Anscombe's quartet”, Wikipedia:en
                     63
ここまでのまとめ

• とにかく,まずは図を描こう(PCが使えるのだから)


• 図はひとつではない,描き方もひとつではない


• 目的にあった適切な図を選択して提示する訓練を


‣   (   すような図を描いてはいけない,とは言わない)

                 64
表を用いた集計

• 多くの人は経験したことがあるはずだが…


• できそうで,意外とできない


• 生データを入力する表と分析用の表は別に


‣   入力しやすい表をつくる

‣   集計・分析しやすい表をつくる
                  65
入力・訂正がしやすい表

• これまでの経験でどんなものがあったか考えてみる


‣   入力用はシンプルな表で構わない

‣   入力する文字を極力少なくする

‣   「有」「無」などは0-1に置き換えると便利

‣   紙に通し番号を振って,番号と行を対応させておく
               66
行と列




行 列
  67
集計・分析しやすい表

• 情報量が多いとき,生データの表のまま分析しない


• 生データの表から,その分析に必要な項目のみ抽出


• 符号化のし過ぎに注意(対応が分からなくなる)


• 職業などは「粒度」に注意して表記は統一


‣   分析したいレベルで分ける(e.g. 開業医と勤務医)
                68
統計量は表の上の方がいい
             (たぶんその方が見やすい)


• 行が多いとき,下にあると見づらい

• でも,行が少ないと気持ち悪かったりしなくもない
    #        性別               住所    職業     試験成績
             M        F                    疫学            統計学         合否
    合計            4       4                                               5
    平均                                          73.125     64.375
         1        1           東京    会社員            75           80        1
         2                1 東京      無職             60           40        0
         3                1 千葉      保険師            95          100        1
         4                1 秋田      大学院生           90           70        1
         5        1           埼玉    大学生            50           50        0
         6        1           海外    自営             55           55        1
         7        1           神奈川   開業医           100           40        0
         8                1 福岡      技師             60           80        1

                                    69
クロス集計
          ( 単純集計)


• 2つないし3つの項目をひとまとめにする


• ある選択肢群に対する回答に加えて,別な項目(主と

してデモグラフィック項目の一部)への回答も加えて
集計し,表を作成する技法のこと

• 多重クロス集計(三重以上)もあるが,分かりにくく

なるだけなので,ほかの方法と比較検討してから使用
             70
クロス集計表の例
            (クロス集計表→多重クロス集計表)

        疾患X
性別     あり     なし      (合計)
 M       71    988     1059                     疾患X




                             }
 F       29    912      941        性別   煙草     あり       なし     (合計)
(合計)    100   1900     2000
                                        喫煙者      51      607     658
                                   M
                                        非喫煙者     20      381     401
        疾患X                             喫煙者      20      769     789
                                   F
煙草     あり     なし      (合計)              非喫煙者        9    143     152
喫煙者      71   1,376    1447    (合計)             100     1900    2000
非喫煙      29    524      553
(合計)    100   1,900    2000             ※ すべて架空のデータです



                              71
分析は誰とやるべきか


      ひとりで黙々とやるか

アンケート同様に複数の視点で確認しながらやるか



  (経験も踏まえつつ,少し考えてみる)


           72
べ,別に,私はアンタのために分析をやってるんじゃない
んだからねっ!自分の研究で必要だからやってるの.  
でも…ちょっとくらいは…一緒にやって…ほしい…かな…


• 臨床研究などのインパクトの大きな研究では,「統計

解析計画書」を作成し,その文書に則って解析する

• 試験方法,標本数,具体的な解析手法などを記載


• そこまで行かなくても「手順書」くらいは作るとよい


• 文書化することで共有は容易になり,課題も見える

             73
分析を終えたら報告書

• 正確には「集計・分析・解析」が終わったら

• 簡単でも必ず考察を書く癖をつけよう

• 考察は統計学的な知識だけでは太刀打ちできない

• 相関関係はいえても,因果関係の判断は簡単ではない

• 先行事例,先行研究は必ず確認しておく

• 考察から次の研究につながる疑問点が生まれる

             74
第二部:グループワーク
(YULE–SIMPSON EFFECT, E.H.SIMPSON, 1951)




                   75
おわりに

• 今日紹介したのは,ほんの一部分かつひとつの考え方


• 正解はありそうでない(基本統計量などは別)


• ここまでくると,統計の教科書はある程度は読める


• 「検定・推定」についても自分でできる…かも


• e-Learning…やりましょう.
                   76
おつかれさまでした

• これで「アンケート作成編」「集計・分析編」終了


• 次回は「検定・推定編」もしくは「自由記述分析編」


• Weblog: http://www.thiroe.net

• Twitter: @taka_hiroe   / Facebook: takanorihiroe

• SlideShare: http://www.slideshare.net/thiroe

                                77

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