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憲法草案発表 第二部スピーチ
日時:6 月 7 日(日)13:00~
場所:よみうり大手町ホール
ちょうど 70 年前、私が 10 歳のころでした。日本は戦争に負けました。
長く 苦しい戦争でした。「欲しがりません、勝つまでは」。
この言葉をみなさんも 聞いたことがあるでしょう。
戦時中の戦意高揚のためのキャッチコピーだ、と いうようなイメージだと思います。
しかし、この言葉の本当の意味を理解できるのは当時の明日食べるものも、
寝るところもなく、ただ生きるためだけに必 死だった時代を生きた者だけでしょう。
欲に負けそうになることも何度もあり ました。
しかし、この言葉と日本への愛が私を思いとどめました。
そして日本 が戦争に負けた日、ラジオから天皇陛下の声が聞こえてきたときの喪失感、
悔 しさの入り混じったあの感情は今も色褪せません。
そして食べられる幸せ、欲しがることは悪ではないんだ、
と気付いた感動も同様に私の心に残り続けています。
現代の日本では生きられることに感謝することは難しいでしょう。
治安もよく、平和で機能的な生活環境、日本という国に対して大きな不満を持っている人
は少ないのではないでしょうか?今の日本があるのは日本国憲法という国の土台があって
こそのものです。戦後から高度経済成長、世界 2 位の経済大 国にまで上り詰めました。
しかしバブル経済が崩壊してからというもの、日本 の経済成長は陰りを見せ、決定的な打
開策も打ち出せないままです。今後は少 子高齢化が進み、さらに状況は悪化し、このまま
では国民の皆さんの生活水準 も下がってくるでしょう。そうなれば今は不自由なく暮らせ
て、ある程度の贅 沢ができる皆さんの生活もそうではなくなってくるのです。私は戦時中
のもの が枯渇していた時代から、豊富な時代を迎える、という幸せな体験ができました。
しかしこの豊かな生活が失われた時の喪失感は皆さんにとって非常に大きいものになるで
しょう。我々つばめ組はこの豊かな生活を皆さんに提供し続けるために、必要な部分を改
憲し、新たな時代に適応しつつ、日本の良さを維 持・向上させていけるような憲法改正を
成し遂げたいのです。
一部でも申し上げたように、我々つばめ組が改憲をするもっとも重要な目的は 日本が平和
の上に成り立つ経済繁栄を永遠に続けるためなのです。
そのために 9 条以外に改正する条項を 3 つ取り上げたいと思います。
我々は現状認識として、国の中央と地方の関係性に問題があると考えています。それを解
決するために憲法第八章地方自治における第 92 条~97 条を改正いたします。
二つ目は統治機構に関してです。我々が現在の統治機構において問題認識としているとこ
ろは政治決定の遅れ、政治の停滞、国民の意思が平等に国政に汲み取られていないことの 3
つです。 国民の信頼のもと、政府が長期的な視点 を持ち、一貫性のある政治が国益を最
大限得るために必要なのです。そのため に憲法 47 条 59 条を改正します。
最後に緊急事態条項の追加です。ここでいう緊急事態とは国家の存立の危機 や、国民の生
命・財産が侵される切迫した状態です。緊急事態を乗り切るうえで個人の権利を制限する
必要が出てくる場合があります。そのとき、法律では 憲法に規定されている権利を制限す
ることは難しいため、憲法に緊急事態条項 を新設して国民の協力のもと国家の危機を乗り
越える必要があります。
ここから条項ごとに具体的に説明していきます。まず地方自治に関して、つばめ組の目指
す地方分権のあり方とは小さな政府と自立した地方行政・地方財 政です。現在、地方と国
の歳出と歳入のバランスはとれていない状態です。歳出は国が 4 割、地方が 6 割、逆に
歳入は国が 6 割、地方が 4 割。このズレを解消するために国がとっている施策としては
地方交付金などを通じた国の地方への財源配 分があります。この施策では自治体が国に安
易に依存できてしまうのです。 (例え 今の地方はチェーン店のやとわれ店長、今後は自営
業者になろう) 地方交付税は地域の自助努力を妨げ、巨大な累積債務を生み出しました。お
よそ 150 年前、明治政府は富国強兵のため、強力な官僚機構を作り中央にお金を集めまし
た。そして補助金を出して産業を育成し、軍事費に充てていきました。結果として大国に
なった日本は、こうした成功体験を引きずり、戦後もずっと「中央にお金や権力を集め、
ルールまですべて作って地方に再配分する」という、統治機構の在り方を続けてきました。
しかし今や、この体制が限界を迎えています。先進国の仲間入りをし、国家運営の主な目
的が「富国強兵」から「国民の福祉や幸福」といったものに変わった今でも、統治機構は
変わらず、各地域の膨大な数の橋の建設まで一つ一つ中央がチェックしてお金を出す、と
いうおかしなことが未だに続いています。そ して地方自治体も、国がお金を出してくれる
ならと、各地にコンサートホール などの箱物を作り続け、これがバブルの象徴となりまし
た。そうしているうち に、世界一の借金大国となってしまったのが今の日本です。
もちろん「経済の自立」は、地域にとっていいことばかりではありません。厳 しい地域間
競争が待っており、経済格差が拡大する可能性もあります。しかし、 経済のグローバル化
によって、隣の自治体との補助金をどちらがもらったかと いう、限られた資源の奪い合い
ではなく、各地域が海外を含めた企業と直接交 渉し、交流と発展を図る共存共栄型の競争
に、競争の質が変わるのです。企業 誘致は生き残りをかけた地域間競争の現場になり、世
界のあらゆる企業とどう 協力して、新しい価値と活力を生み出すかという創造的な競争が
行われるであろう。 自らの自治体の強みを生かし、癒やしを求めるリゾート地や高齢者の
リタイア メントタウンなどで生計立てるという選択をとってもいいでしょう。地域間競争
が熾烈になればなるほど、地域の個性や資源が引き出され、国全体の経済活力は確実に増
大する。 国は地方に対して最低限の支援をする小さな政府をめざし、地方は今までの国 に
依存していたころと違い、大いなる責任と希望を持って自主・自立 を目指す。これこそが
不屈の経済大国日本の土台を支える地方自治のあり方だと我々は考 えます。
現日本国憲法第十四条 「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信 条、性別、
社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係におい て、差別されない。」 と
規定されています。この法の下の平等を根拠として、全ての有権者に等しい 権利、1 票の
価値が与えられるべきです。 最近の国政選挙においてもっとも有権者の数が多かった選挙
区と最も少なかっ た選挙区の有権者数の比率は、2012 年衆院選の 2.43 倍、2013 年参院
選の 4.77 倍でした。これを最高裁は「違憲状態」と判決を出しています。普通選挙は一 人
一票を原則としています。しかしそれは全有権者に投票権を与えるだけでは 成し遂げられ
ません。平等な選挙区割振りがあってこその普通選挙です。この 問題の原因はどこにある
のかというと、1994 年の小選挙区制の導入の際に規定 された「一人別枠方式」にあると
我々は考えます。 ※一人別枠方式…衆院の小選挙区 300 議席のうち、まず 47 都道府県
に 1 議席 ずつを「別枠」として割り当て、残り 253 議席を人口に比例して配分する方式。
人口の少ない地方に比例配分より多めに議席を配分し、過疎地の国民の意見も 国政に反映
させることが目的。 ⇓ しかし、過疎地への配慮だった施策は、一票の重みの格差という違
う問題を生 み出しました。最高裁の判決には格差を是正する猶予期間というものが付与さ
れています。政府はこの猶予期間に甘んじて抜本的対策をとっていないのが現 状です。人
口というものは常に一定であるものではないので、格差が完全に是 正されることはありま
せんが、現在の状態を無視しておくのは明らかに政府が 国民を軽んじているといえるでし
ょう。我々は憲法に選挙区の割り振りにおけ る規定を明記することで、政府に法整備を促
し、国民の皆さんの投じる一票の 重み、民意の重みを平等にすることを目指します。政府
が長期的視点をもった 国会運営を通して、不屈の経済大国を目指す上で国民の皆さんの意
思を平等に 組み入れることは非常に重要な事項だと考えております。我々は現日本国憲法
第 59 条における法案成立までの国会運営に問題があるととらえています。法案成立の流
れを説明すると、衆議院に提出された法案が衆 議院の過半数で可決され、参議院で否決さ
れたとき、もう一度衆議院で 3 分の 2 以上の多数で可決されなければ法律は成立しませ
ん。我々の改憲案ではその 再可決に必要な人数を二分の一に引き下げ、政治の停滞の解消、
政治決定の遅 れを改善できると考えました。我々は衆議院で過半数を占めている与党が、
参 議院では過半数を持っていない、いわゆるねじれ国会の状態を問題視しているのではな
く、現憲法下ではねじれ国会に陥った時に法案成立に時間がかかりすぎて政治決定が遅れ
ることや、法案が再可決するうえでハードルが高すぎて政 治が停滞してしまうことが問題
であると感じています。これでは長期的視野を持った国会運営、行政が難しいのです。ね
じれの弊害は法案審議だけでなく、外交にも影響 を及ぼし、あらゆる国益の損失につなが
ります。福田康夫首相時代、与党主導 で法案審議の段取りが決まらないため、相手国と早
めに日程調整できず、結果として外遊断念するケースが出てきていた。外交において会談
を重ねてお互いの理科を深めることが重要である。それが失われることは国際社会におい
て日 本の発言力が弱まることに繋がります。さらには、政治決定が遅れることにより、首
相や閣僚が(国会)予算委員会に張り付けになるという問題もあります。本来であれば、
主要国の首相や閣僚とのネットワークづくりや信頼関係づくりにもっと時間を割き理解を
深めることによって、(日本の)影響力や信頼感も増して、懸案事項の解決を前進させるこ
とが国家・政治家に求められていると 思いますが、今の状況では実行できません。これは
国家にとっても不幸な状況 ではないでしょうか。政治決定の遅れ、政治の停滞が今よりも
解消されれば、内閣が中長期的なビジョンを見据えて、一貫性をもった”ぶれない政治”
というのが実現できるはずです。そのぶれない政治を続けることは、国益の最大化 に不可
欠な要素でもあります。それはまた不屈の経済大国を目指す上で欠かせない土台になるの
です。
緊急事態とは国家の独立と安全における危機や、国民の生命・財産が脅かされる重大で切
迫した事態であります。具体的に言うと、外部からの攻撃、内乱、 地震などの天災、疫病
の蔓延などとともに、徐々に増加傾向にあるサイバー攻 撃もこれに含まれます。緊急事態
条項の新設はこのような緊急事態に総理に情 報と権限を集中させて、迅速かつ的確な措置
を行えるような体制を整えるという目的のもとに行いました。 現在日本国憲法には緊急事
態条項の規定がありません。この規定がないのは、 イギリスやアメリカのような憲法に規
定されていなくても緊急事態に国のリー ダーが対処できるような仕組みが整っている国
であって、そういった国以外の 先進国のなかでは日本が唯一です。この規定がないことは
日本が緊急事態に陥った際に大きな損失を被ってしまう危険性を高めてしまっています。
日本には 災害や安全保障に関する法律が数多くあります。この法律では対処できない点
として、憲法に規定されている個人の権利を制限してでも緊急事態に対処しな ければなら
ない場合があります。国民の権利や自由の制限は、より多くの国民 の生命、財産を助ける
ものであって、一時的なものです。少しでも早く平時の秩序を回復するためにも緊急事態
条項は必要不可欠であり、国民の権利や自由 を制限する範囲は必要最小限の範囲です。そ
の時法律のみで憲法に規定されて いる個人の権利を制限するのは難しいのです。たとえ法
律で「権利・自由の制 限」が認められていても憲法に根拠規定がなければ違憲とされる恐
れがあると いうことです。現在ある緊急事態に対処するための法律である国民保護法や災
害対策基本法では、避難措置などは各自治体が判断しており、そのような事態に自治体が
壊滅状態に陥る可能性もあり得ます。また自治体ごとに持っている 情報が異なっていて国
民をより混乱させてしまうことも想像できます。あらゆる場面に対応するためにも、政府
に情報とリーダーシップを集中させて迅速かつ的確に対処できる体制を整えておく必要が
あるのです。また現憲法には緊急 事態時に議会が解散している事態も考えられます。国会
議員の任期や選挙期日 は憲法に直接規定されているので、法律でその例外を規定すること
はできませ ん。そのために、緊急事態の宣言の効果として、国会議員の任期や選挙期日の
特例を法律で定め得るとするとともに、衆議院はその間解散されないこととし ました。 以
上のような内容を憲法に盛り込むことで、国民の安全・財産を守れる体制を 整えておくこ
とが不屈の経済大国を目指す土台として不可欠なのです。
自立した地方自治、国益を最大限生かすための統治機構の仕組み、緊急事態に 対する備え。
以上の三つの分野の改憲を果たすことが我々の目指す国の理想像、 不屈の経済大国を実現
するために不可欠であると判断しました。
以上で 2 部のスピーチを終わりにします。
つばめ組特別顧問 知念善吉

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  • 1. 憲法草案発表 第二部スピーチ 日時:6 月 7 日(日)13:00~ 場所:よみうり大手町ホール ちょうど 70 年前、私が 10 歳のころでした。日本は戦争に負けました。 長く 苦しい戦争でした。「欲しがりません、勝つまでは」。 この言葉をみなさんも 聞いたことがあるでしょう。 戦時中の戦意高揚のためのキャッチコピーだ、と いうようなイメージだと思います。 しかし、この言葉の本当の意味を理解できるのは当時の明日食べるものも、 寝るところもなく、ただ生きるためだけに必 死だった時代を生きた者だけでしょう。 欲に負けそうになることも何度もあり ました。 しかし、この言葉と日本への愛が私を思いとどめました。 そして日本 が戦争に負けた日、ラジオから天皇陛下の声が聞こえてきたときの喪失感、 悔 しさの入り混じったあの感情は今も色褪せません。 そして食べられる幸せ、欲しがることは悪ではないんだ、 と気付いた感動も同様に私の心に残り続けています。 現代の日本では生きられることに感謝することは難しいでしょう。 治安もよく、平和で機能的な生活環境、日本という国に対して大きな不満を持っている人 は少ないのではないでしょうか?今の日本があるのは日本国憲法という国の土台があって こそのものです。戦後から高度経済成長、世界 2 位の経済大 国にまで上り詰めました。 しかしバブル経済が崩壊してからというもの、日本 の経済成長は陰りを見せ、決定的な打 開策も打ち出せないままです。今後は少 子高齢化が進み、さらに状況は悪化し、このまま では国民の皆さんの生活水準 も下がってくるでしょう。そうなれば今は不自由なく暮らせ て、ある程度の贅 沢ができる皆さんの生活もそうではなくなってくるのです。私は戦時中 のもの が枯渇していた時代から、豊富な時代を迎える、という幸せな体験ができました。 しかしこの豊かな生活が失われた時の喪失感は皆さんにとって非常に大きいものになるで しょう。我々つばめ組はこの豊かな生活を皆さんに提供し続けるために、必要な部分を改 憲し、新たな時代に適応しつつ、日本の良さを維 持・向上させていけるような憲法改正を 成し遂げたいのです。
  • 2. 一部でも申し上げたように、我々つばめ組が改憲をするもっとも重要な目的は 日本が平和 の上に成り立つ経済繁栄を永遠に続けるためなのです。 そのために 9 条以外に改正する条項を 3 つ取り上げたいと思います。 我々は現状認識として、国の中央と地方の関係性に問題があると考えています。それを解 決するために憲法第八章地方自治における第 92 条~97 条を改正いたします。 二つ目は統治機構に関してです。我々が現在の統治機構において問題認識としているとこ ろは政治決定の遅れ、政治の停滞、国民の意思が平等に国政に汲み取られていないことの 3 つです。 国民の信頼のもと、政府が長期的な視点 を持ち、一貫性のある政治が国益を最 大限得るために必要なのです。そのため に憲法 47 条 59 条を改正します。 最後に緊急事態条項の追加です。ここでいう緊急事態とは国家の存立の危機 や、国民の生 命・財産が侵される切迫した状態です。緊急事態を乗り切るうえで個人の権利を制限する 必要が出てくる場合があります。そのとき、法律では 憲法に規定されている権利を制限す ることは難しいため、憲法に緊急事態条項 を新設して国民の協力のもと国家の危機を乗り 越える必要があります。 ここから条項ごとに具体的に説明していきます。まず地方自治に関して、つばめ組の目指 す地方分権のあり方とは小さな政府と自立した地方行政・地方財 政です。現在、地方と国 の歳出と歳入のバランスはとれていない状態です。歳出は国が 4 割、地方が 6 割、逆に 歳入は国が 6 割、地方が 4 割。このズレを解消するために国がとっている施策としては 地方交付金などを通じた国の地方への財源配 分があります。この施策では自治体が国に安 易に依存できてしまうのです。 (例え 今の地方はチェーン店のやとわれ店長、今後は自営 業者になろう) 地方交付税は地域の自助努力を妨げ、巨大な累積債務を生み出しました。お よそ 150 年前、明治政府は富国強兵のため、強力な官僚機構を作り中央にお金を集めまし た。そして補助金を出して産業を育成し、軍事費に充てていきました。結果として大国に なった日本は、こうした成功体験を引きずり、戦後もずっと「中央にお金や権力を集め、 ルールまですべて作って地方に再配分する」という、統治機構の在り方を続けてきました。 しかし今や、この体制が限界を迎えています。先進国の仲間入りをし、国家運営の主な目 的が「富国強兵」から「国民の福祉や幸福」といったものに変わった今でも、統治機構は 変わらず、各地域の膨大な数の橋の建設まで一つ一つ中央がチェックしてお金を出す、と いうおかしなことが未だに続いています。そ して地方自治体も、国がお金を出してくれる ならと、各地にコンサートホール などの箱物を作り続け、これがバブルの象徴となりまし た。そうしているうち に、世界一の借金大国となってしまったのが今の日本です。 もちろん「経済の自立」は、地域にとっていいことばかりではありません。厳 しい地域間
  • 3. 競争が待っており、経済格差が拡大する可能性もあります。しかし、 経済のグローバル化 によって、隣の自治体との補助金をどちらがもらったかと いう、限られた資源の奪い合い ではなく、各地域が海外を含めた企業と直接交 渉し、交流と発展を図る共存共栄型の競争 に、競争の質が変わるのです。企業 誘致は生き残りをかけた地域間競争の現場になり、世 界のあらゆる企業とどう 協力して、新しい価値と活力を生み出すかという創造的な競争が 行われるであろう。 自らの自治体の強みを生かし、癒やしを求めるリゾート地や高齢者の リタイア メントタウンなどで生計立てるという選択をとってもいいでしょう。地域間競争 が熾烈になればなるほど、地域の個性や資源が引き出され、国全体の経済活力は確実に増 大する。 国は地方に対して最低限の支援をする小さな政府をめざし、地方は今までの国 に 依存していたころと違い、大いなる責任と希望を持って自主・自立 を目指す。これこそが 不屈の経済大国日本の土台を支える地方自治のあり方だと我々は考 えます。 現日本国憲法第十四条 「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信 条、性別、 社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係におい て、差別されない。」 と 規定されています。この法の下の平等を根拠として、全ての有権者に等しい 権利、1 票の 価値が与えられるべきです。 最近の国政選挙においてもっとも有権者の数が多かった選挙 区と最も少なかっ た選挙区の有権者数の比率は、2012 年衆院選の 2.43 倍、2013 年参院 選の 4.77 倍でした。これを最高裁は「違憲状態」と判決を出しています。普通選挙は一 人 一票を原則としています。しかしそれは全有権者に投票権を与えるだけでは 成し遂げられ ません。平等な選挙区割振りがあってこその普通選挙です。この 問題の原因はどこにある のかというと、1994 年の小選挙区制の導入の際に規定 された「一人別枠方式」にあると 我々は考えます。 ※一人別枠方式…衆院の小選挙区 300 議席のうち、まず 47 都道府県 に 1 議席 ずつを「別枠」として割り当て、残り 253 議席を人口に比例して配分する方式。 人口の少ない地方に比例配分より多めに議席を配分し、過疎地の国民の意見も 国政に反映 させることが目的。 ⇓ しかし、過疎地への配慮だった施策は、一票の重みの格差という違 う問題を生 み出しました。最高裁の判決には格差を是正する猶予期間というものが付与さ れています。政府はこの猶予期間に甘んじて抜本的対策をとっていないのが現 状です。人 口というものは常に一定であるものではないので、格差が完全に是 正されることはありま せんが、現在の状態を無視しておくのは明らかに政府が 国民を軽んじているといえるでし ょう。我々は憲法に選挙区の割り振りにおけ る規定を明記することで、政府に法整備を促 し、国民の皆さんの投じる一票の 重み、民意の重みを平等にすることを目指します。政府 が長期的視点をもった 国会運営を通して、不屈の経済大国を目指す上で国民の皆さんの意 思を平等に 組み入れることは非常に重要な事項だと考えております。我々は現日本国憲法 第 59 条における法案成立までの国会運営に問題があるととらえています。法案成立の流 れを説明すると、衆議院に提出された法案が衆 議院の過半数で可決され、参議院で否決さ れたとき、もう一度衆議院で 3 分の 2 以上の多数で可決されなければ法律は成立しませ
  • 4. ん。我々の改憲案ではその 再可決に必要な人数を二分の一に引き下げ、政治の停滞の解消、 政治決定の遅 れを改善できると考えました。我々は衆議院で過半数を占めている与党が、 参 議院では過半数を持っていない、いわゆるねじれ国会の状態を問題視しているのではな く、現憲法下ではねじれ国会に陥った時に法案成立に時間がかかりすぎて政治決定が遅れ ることや、法案が再可決するうえでハードルが高すぎて政 治が停滞してしまうことが問題 であると感じています。これでは長期的視野を持った国会運営、行政が難しいのです。ね じれの弊害は法案審議だけでなく、外交にも影響 を及ぼし、あらゆる国益の損失につなが ります。福田康夫首相時代、与党主導 で法案審議の段取りが決まらないため、相手国と早 めに日程調整できず、結果として外遊断念するケースが出てきていた。外交において会談 を重ねてお互いの理科を深めることが重要である。それが失われることは国際社会におい て日 本の発言力が弱まることに繋がります。さらには、政治決定が遅れることにより、首 相や閣僚が(国会)予算委員会に張り付けになるという問題もあります。本来であれば、 主要国の首相や閣僚とのネットワークづくりや信頼関係づくりにもっと時間を割き理解を 深めることによって、(日本の)影響力や信頼感も増して、懸案事項の解決を前進させるこ とが国家・政治家に求められていると 思いますが、今の状況では実行できません。これは 国家にとっても不幸な状況 ではないでしょうか。政治決定の遅れ、政治の停滞が今よりも 解消されれば、内閣が中長期的なビジョンを見据えて、一貫性をもった”ぶれない政治” というのが実現できるはずです。そのぶれない政治を続けることは、国益の最大化 に不可 欠な要素でもあります。それはまた不屈の経済大国を目指す上で欠かせない土台になるの です。 緊急事態とは国家の独立と安全における危機や、国民の生命・財産が脅かされる重大で切 迫した事態であります。具体的に言うと、外部からの攻撃、内乱、 地震などの天災、疫病 の蔓延などとともに、徐々に増加傾向にあるサイバー攻 撃もこれに含まれます。緊急事態 条項の新設はこのような緊急事態に総理に情 報と権限を集中させて、迅速かつ的確な措置 を行えるような体制を整えるという目的のもとに行いました。 現在日本国憲法には緊急事 態条項の規定がありません。この規定がないのは、 イギリスやアメリカのような憲法に規 定されていなくても緊急事態に国のリー ダーが対処できるような仕組みが整っている国 であって、そういった国以外の 先進国のなかでは日本が唯一です。この規定がないことは 日本が緊急事態に陥った際に大きな損失を被ってしまう危険性を高めてしまっています。 日本には 災害や安全保障に関する法律が数多くあります。この法律では対処できない点 として、憲法に規定されている個人の権利を制限してでも緊急事態に対処しな ければなら ない場合があります。国民の権利や自由の制限は、より多くの国民 の生命、財産を助ける ものであって、一時的なものです。少しでも早く平時の秩序を回復するためにも緊急事態 条項は必要不可欠であり、国民の権利や自由 を制限する範囲は必要最小限の範囲です。そ の時法律のみで憲法に規定されて いる個人の権利を制限するのは難しいのです。たとえ法
  • 5. 律で「権利・自由の制 限」が認められていても憲法に根拠規定がなければ違憲とされる恐 れがあると いうことです。現在ある緊急事態に対処するための法律である国民保護法や災 害対策基本法では、避難措置などは各自治体が判断しており、そのような事態に自治体が 壊滅状態に陥る可能性もあり得ます。また自治体ごとに持っている 情報が異なっていて国 民をより混乱させてしまうことも想像できます。あらゆる場面に対応するためにも、政府 に情報とリーダーシップを集中させて迅速かつ的確に対処できる体制を整えておく必要が あるのです。また現憲法には緊急 事態時に議会が解散している事態も考えられます。国会 議員の任期や選挙期日 は憲法に直接規定されているので、法律でその例外を規定すること はできませ ん。そのために、緊急事態の宣言の効果として、国会議員の任期や選挙期日の 特例を法律で定め得るとするとともに、衆議院はその間解散されないこととし ました。 以 上のような内容を憲法に盛り込むことで、国民の安全・財産を守れる体制を 整えておくこ とが不屈の経済大国を目指す土台として不可欠なのです。 自立した地方自治、国益を最大限生かすための統治機構の仕組み、緊急事態に 対する備え。 以上の三つの分野の改憲を果たすことが我々の目指す国の理想像、 不屈の経済大国を実現 するために不可欠であると判断しました。 以上で 2 部のスピーチを終わりにします。 つばめ組特別顧問 知念善吉