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予防医学・ヘルスプロモーション ポートフォリオ
- 1. 青木拓也
日本医療福祉生活協同組合連合会 家庭医療学開発センター、東京ほくと医療生活協同組合 北足立生協診療所
家庭医が日常診療において行う疾病予防として、性教育{避妊やSTI(Sexually Transmitted Infections)予防}は非常に重要である。しかしその対象は若年者が中心になりやすく、
高齢者には殆ど教育が行われていないのが現状である。今回性器ヘルペスの高齢患者を契機に、高齢患者の性活動性調査およびヘルスプロモーション(STI予防についての性
教育)に取り組んだ事例を報告する。
考察
当院における調査でも先行調査と類似した結果が得られ、高齢者の性活動は予想以上に活
発であることが明らかになった。家庭医が高齢者と性について語り、必要な教育を行うことは
タブー視されるべきではなく、時代に則した重要なヘルスプロモーションと考えられる。
高齢者の性教育はhidden needsであり、今後も日常診療における予防医療の一環として継続
していきたい。
NEXT STEP
予防医学・ヘルスプロモーションにおいては、既知でEvidenceのある介入を実践する他、
臨床経験を契機にhidden needsを発見し、新たな予防医学的介入を提案する視点も
持ち続ける必要がある。
参考文献
1)熊本悦明. 年齢別男女の性交渉回数調査 ; 1993
【背景】
契機となった事例:70歳男性
陰部の皮疹と疼痛を主訴に当院を受診した。診
察の結果、陰嚢に小水疱及び潰瘍の多発がみ
られ、性器ヘルペスと診断した。
病歴聴取を行ったところ、受診の2か月前に妻以
外の女性と性交渉を持ったということであり、関
連が疑われた。普段から不特定多数の女性と
性交渉を持っている訳ではないということである
が、コンドームなど避妊具の使用は全くしていな
かった。そのため高齢者にもSTIが流行している
現状や、STI予防のためコンドームを使用するこ
と等、外来で性教育を行った。
抗ウィルス薬内服による治療を行った結果、皮
疹は軽快した。
【方法】
当院を定期通院している65歳以上の男性患者を対象と
した。
受診時に下記のパンフレットを提示しながら、STI予防
についての性教育を行った。同時に性交渉に関する調
査を実施した。
実施に当たり留意した点は
①対象が高齢者であるため、パンフレットの内容は要点
を絞り簡素にした。
②性活動性の有無に関わらず、パンフレットは配布せ
ず、外来で提示するのみとした。(プライバシー保護の
ため)
先行調査
男女の性交渉回数調査(日本、1993年)
年齢 性別 性交渉が月1回以上
65〜69歳 男性 49.2%
女性 25.1%
70〜74歳 男性 37.1%
女性 15.3%
75〜79歳 男性 12.9%
女性 8.3%
【結果】
調査対象者は計35人であり、うち65〜69歳は16人
(45.7%)、70〜79歳は16人(45.7%)、80歳以上は3人
(8.6%)であった。
対象者のうち、現在性交渉の機会があると回答し
たのは11人(31.4%)であった。中には不特定多数の
女性と性交渉を行っている者もいた。
また性交渉の機会があると回答した者のうち、STI
予防のためコンドームを使用している者は0人で
あった。
介入時または介入後の対象者の反応(一例)
◇「もう年寄りだから、避妊具なんて考えたことがなかった」
◇「自分と同世代でそんなに元気な人いるの?」
◇「勃起不全治療薬(バイアグラなど)を処方できないか?」
◇「性病は性器に触っただけでも感染するのか?」
性交渉なし
68.6%
性交渉あり
31.4%
使用した自作パンフレット