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「本は脳を育てる「本は脳を育てる
~北大教員による新入生への推薦図書~」大教員 る新入 推薦図書 」
企画立ち上げとその狙い
北海道大学附属図書館
情報管理課図書受入係
野中雄司
1
本は脳を育てる ~北大教員による新入生への推薦図書~
(http://ambitious.lib.hokudai.ac.jp/book/index.php)
2
「本は脳を育てる」って?本 脳を育 る」
 箱としての工夫はいろいろしたつもりだけど、
中身は単純に本の紹介文を公開しているだ中身 単純 本 紹介文を公開 る
け
ありきたりな企画 ありきたりな企画
 ただし、学生に公開することだけが目的では
なく 別の狙いも →広報的な狙いなく、別の狙いも →広報的な狙い
3
広報って?(広報活動とPR活動)広報 て (広報活動 活動)
 広報(広報活動→狭義の広報 PR活動→広義の広報)
広報活動( bli it k) 広報活動(publicity work)
図書館のPR活動の一つで、サービス対象者に対し、まず図
書館の存在を知らせ 図書館の概要 規模 蔵書 サービス書館の存在を知らせ、図書館の概要、規模、蔵書、サービス
内容をアピールする活動
 PR活動(public relations) PR活動(public relations)
特定の組織と一般の人々が相互理解を確立し、その関係を
維持、促進させていくための組織側からの働きかけ
「図書館情報学用語辞典」より
 PR活動はより双方向的であり、コミュニケーションをはかっ
良 な 係を築 う う 動て良好な関係を築いていこうという活動
 PR活動としての「本は脳を育てる」:その狙い
4
企画図書館背景画図書館背景
 企画立ち上げ図書館=附属図書館北分館(職員:8名)
全学教育( 1 2年生 詳細後述)のサポ トが主 全学教育( 1,2年生:詳細後述)のサポートが主
 学習図書館としての機能に特化
開架 万冊 書庫 万冊 貸出の が開架資料 開架7万冊・書庫20万冊。貸出の98%が開架資料。
学部一年生のみの数字 開館日数:約350日 1年生学生数:約2600人
入館者数
(年間)
貸出冊数
(年間)
一日当
入館者数
一日当
貸出冊数
一人当年間
入館回数
一人当年間
貸出冊数
 平成12年度~16年度における平均値(年間単位)
187,081人 26,687冊 約535人 約76冊 約72回 約10冊
 平成12年度~16年度における平均値(年間単位)
 北分館の性格から1年生のみの数字とした
5
全学教育学教育
 全学で共通性の高い教育=全学教育(「教養教
育」と「基礎教育」)
 対象は主に1年生~2年生前期
 基礎教育=各学部での専門教育の基礎となる
ももの
 教養教育=コアカリキュラム教養教育 アカリキ ラ
6
コアカリキュラム
 (中略)すべての専門教育に必須の教養科目を本学では「コアカリ
キュラム」と呼んでいます。本学の卒業生であれば、専門分野に関わ
らず必ず身につけておかなければならない大学レベルの素養がこの
カリキュラムには表現されています。その内容は、普遍性の高いものカリキュラムには表現されています。その内容は、普遍性の高いもの
であると同時に、現代社会の問題と何らかの形で結びついていること
を目指しています (中略)本学はこの「教養教育」を「最良の専門家を目指しています。(中略)本学はこの「教養教育」を「最良の専門家
による最良の非専門家教育」と呼んでいます。(以下略)
「北海道大学の全学教育について より 「北海道大学の全学教育について」より
http://infomain.academic.hokudai.ac.jp/syllabus/zengaku.html
7
ジレンマジ
 もっと学習・教育サポートがしたいけど、教員や
授業との関係が希薄?
 学習図書館=教員は足を運ぶ機会が少ない
→先生方からの要求もあまりない→先生方からの要求もあまりない
→何も期待していない?
→自習のための図書があればそれでいい?→自習のための図書があればそれでいい?
 もっと教員の教育サポートがしたいけど、どうす
ればれば?
8
ジレンマ部分(教育・学習面から)ジレンマ部分(教育 学習面から)
学生学生
強い。 まあまあ。
こちらからは口を だけどもうち とこちらからは口を だけどもうちょっと!
挟む余地は少ない でもそれが難しい!
教員 図書館教員 図書館
ここが一番イマイチ繋がりが弱い気がする。
を強 すれば「学生 「 書館 も強くなここを強化すれば「学生」⇔「図書館」も強くなるのでは?
9
ジレンマを解決するために
まずは北分館のスタンスを再確認まずは北分館のスタンスを再確認
 やはり自習用図書の充実した蔵書構築が最大
の役割、かつ望まれていること
蔵書構築の指針・ベ スとなる選定指針等の見 蔵書構築の指針・ベースとなる選定指針等の見
直しなど
北分館職員の意思統 の狙いも→北分館職員の意思統一の狙いも
→全学教育のサポートが最大の役割であり、そ
のベ スとなる蔵書構築の重要性を再確認のベースとなる蔵書構築の重要性を再確認
10
選定体制(教員への依頼分)選定体制(教員 の依頼分)
バ 掲載参考 書 全購 シラバス掲載参考図書の全購入
→授業単位(シラバスに参考図書として掲載=授業関連)
 部局単位で資料選定依頼
→部局取りまとめ部局取り
 全学教育担当教員へ資料選定依頼
年2回:対象は約500~600人年2回:対象は約500~600人
先生個人宛に依頼
(コアカリキュラムの理念から授業とは直接関係ない資料で(コアカリキュラムの理念から授業とは直接関係ない資料で
も推薦可能としている)
→これが特徴!
11
ジレンマを解決するために
何をする?(企画の選択)何をする?(企画の選択)
蔵書構築がらみ (最大求められ るサ ビ 蔵書構築がらみで(最大求められているサービ
スで)
 アンケートなどの単発意見吸い上げではなく、関
係強化(PR活動)のなかで意見吸い上げしたい
 よって、継続できるもの
 選定の特徴を生かして 選定の特徴を生かして
 教員・学生共に楽しめる企画
授業にからみたいけど いきなりは難しい? 授業にからみたいけど、いきなりは難しい?
 ベタだけど、まずは本の紹介を選択
12
狙い
表向きは単なる本の紹介だけど・・・
 教員との直接やり取りを増加させ関係強化=PR
 自分が利用する図書館としてではなく、教育サポー 自分が利用する図書館としてではなく、教育サポ
トとしての図書館へ目を向ける(考える)機会を増や
す。す。
→図書館がなんかやってる
 図書館は教育サポートがしたいんだというアピール 図書館は教育サポ トがしたいんだというアピ ル
次 プ が 次のステップへの足がかり
13
結果と反応結果 反
 従来の全学教育担当教員への資料選定依頼と
同時に依頼同時に依頼
 43人の先生から109件の推薦文
数字的にはち とさみしい?(対象 5 600人) 数字的にはちょっとさみしい?(対象:5~600人)
 先生方は自主的な気持ちから→悪くない数字?
先生方から 応 先生方からの反応
 励ましのお言葉(おもしろい企画ですね!)
 必読書リストのような性格のほうがいいのでは?
 学科・講座の推薦図書リスト
 大学生協から
 名前について
14
次のステップって?次 テッ
 中長期PR戦略(方向性の確認)
 学生・教員への研究サポートサービス
 学生への学習サポートサービス
 教員への教育サポートサービス
 やはり一括要望調査も?(戦略策定のための)
 全学教育組織全体や先生方、各教科単位との関係を深
める活動(PR活動)を地道に
 個別化サービスも?
 大学における予習・復習・自習の重視傾向
 なんでもいい(PR=関係強化できれば)。例えば・・・
15
次のステップって?(2)次 テッ ( )
 蔵書構築(最大要望)をベ スとし 全学教育関連 蔵書構築(最大要望)をベースとし、全学教育関連
組織等とも連携しながら、教員への教育サポート
サービスを強化する 個別サービスも視野に入れサ ビスを強化する。個別サ ビスも視野に入れ、
地道に信頼関係を築く。
 以上は中長期戦略の中で展開する 方向性を定 以上は中長期戦略の中で展開する。方向性を定
め、期待される組織として相談されやすい環境を
構築し、相互に教育サービスの質を高めていきた構築し、相互に教育サ ビスの質を高めていきた
い。
 結果 学生の学習サポートも含め図書館全体の 結果、学生の学習サポ トも含め図書館全体の
サービス底上げや存在意義のアピールにも繋が
ると信じて・・・。
16
ると信じて 。
広報の定義についての参考文献
幸治 学 情報 教育 広報 ジ戦 仁上幸治.学術情報リテラシー教育における広報イメージ戦
略:司書職の専門性をどう訴求するか.情報の科学と技術.
vol 55 no 7 2005 p 310 317vol.55,no.7,2005,p.310-317.
 田中均.総論:図書館における広報.情報の科学と技術.vol.
55 no 7 2005 p 284-28855,no.7,2005,p.284 288.
 日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編.図書館情報
学用語辞典.東京,丸善,2002,273p.(ISBN 4621070770 )学用語辞典.東京,丸善,2002,273p.(ISBN 4621070770 )
・広報
・PR活動
17

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