2020/11/22の大阪市立自然史博物館でのシンポジウムでお話した佐久間の問題提起です

1. 自然史標本レスキューの
課題
佐久間大輔
大阪市立自然史博物館
西日本自然史系博物館ネットワーク

2. 東日本大震災時の体制：例岩手県
• 被災館 陸前高田市立博物館、同海と貝のミュージアム、山田
町海と鯨の科学館、他多数 現地の学芸員がいた
• 現地支援拠点 岩手県立博物館 岩手県の事業として、輸送費
用などが負担されたことは非常に大きかった 拠点にネット
ワークを持つ学芸員がいた
• 後方拠点 国立科学博物館、大阪市立自然史博物館など多数
• ネットワーク 昆虫学芸員ネットワーク、西日本自然史系博物
館ネットワーク、様々なつながりのある全国の学芸員
後に植物系学芸員のメーリングリストなどが

3. 自然史標本の特殊性
• 文化財保護法上の取り扱い
それでも博物館資料として大切、地域の民有資料も？
• 取り扱い、価値や重要性を知っている人が限られる
• 剥製から液浸、乾燥標本、昆虫から植物まで多様
• 「修復」の優先ポイントはなにか、も異なる
（ラベルの重要性、標本の作られた目的など）

4. 多様な標本、多様な処置

5. 標本の何が大事か
• 採集時の情報を伝える「ラベ
ル」論文などの記述と結び
つけるインデックス
• 形態、微細形態、DNA、成分
など、分類群や利用の目的に
よって保存すべき特徴は異な
る。その見極め

6. 被災博物館現場の課題
• 博物館が十分な防災対策をとっているか
被害を最小限にする工夫ができているか
• 周辺の博物館や専門家は自館のコレクションを知っているか
初動に影響 行政的な初動と、技術相談を切り離して動ける
か
• 市町村「文化財」関係者が自然史標本を自分の所管だと認識し
ているか？
「行政の動き」にできるかどうかの分かれ目
• 文化財レスキューの対象になっているか
上記と連動。文化財関係者に自然史標本レスキューを理解し
てもらうことが大切

7. 文化財関係者への理解形成重要
• 文化財関係者向けのマニュアル
作成や研修実施は重要
• 文化財担当者へどのような通知
分が出せるか
• 文化財担当者がコンタクトでき
る専門家は
• ネットワーク推進室が作った
ビデオのような文化財担当者向
けの紹介は重要
• （YouTubeで見られます）

8. 地域拠点の課題
• 拠点が被災地にある資料を事前把握しているか？
地域と博物館の関係。博物館の中だけでなく、地域文化遺産の保
全の拠点としても博物館は期待されている。自然史系も同様。
• 拠点に専門家がいるか？（他の専門家とつながっているか？）
誰でも拠点にならなければならないケースがあるかも
• レスキュー課題の主体は誰か？
誰が誰に依頼するのか？依頼状の雛形のようなものを作っておく
べきか
• 必要費用負担の問題
原則は所蔵者？公的な負担？ルール化必要
• 出口戦略を被災館とともに描くことも重要

9. 全国的な体制の課題
• 自然史標本レスキューの全国拠点はどこか？
たとえば、科博の任務に書き込めるのか？
NPOである西日本自然史系博物館ネットワークが「自主的
に」活動することを基本とするのか
• 有事即応ができるのか
事務局体制
• 過去のノウハウや失敗は蓄積できるのか
• 資金を持っているか
• 冷凍庫が十分に確保できるか

10. ノウハウの蓄積は大切
• 熊本地震では、人吉水害では、
川崎市民ミュージアムでは
何ができて
何ができなかったのか
検証が必要
• 技術的な蓄積・継承はされて
いるか
どうすればできる
• 自然史標本に関する被災標本
保存科学

11. 必要なこと
• いざというときに、どこに、どう連絡すべきか、地域内のネッ
トワークづくりと全国のネットワークづくり
• 誰でもが被災館、地域の救援拠点になる可能性があるので、ス
タートアップマニュアル
• 失敗、成功事例の蓄積、技術開発、トレーニング
• 文化財関係者へのアピールと教育、そして文化庁などの方針へ
の書き込み、仮称？文化財救援法への書き込み

12. 明日は我が身＋博物館人としての原則
• 資料を後世に伝える、という
使命は所属を超えて、博物館
関係者の基本的な使命。
• 被災してその使命を果たせな
いときには、いかに相互扶助
するのか
• その相互扶助をしやすくする
ための制度、支援体制をどの
ように作っておくか。
• 支援者を増やすことも必要