SoilSense:土壌微生物燃料電池を用いた
自発電型タンジブルインタフェースの構築
塚越雄真1), Tian Min1), 杉浦裕太1)
1)慶應義塾大学
インタラクション 2025
• 実世界センシングにおけるSDGs課題へのアプローチ
• 製造コスト
• 環境にやさしい資材の使用
• リサイクルの可能性
• 電子廃棄物が世界的に増加[1]
• リサイクル率の低下により,多くが埋め立てられている
• 消費電力のコスト
• 持続可能エネルギ
• 微生物燃料電池 (Microbial Fuel Cells)が新たな電力源として注目[2]
2
背景
[1]国際電気通信連合(ITU)・国連訓練調査研究所(UNITAR). (2024). The Global E-waste Monitor 2024 – Electronic Waste Rising Five Times Faster than Documented E-waste Recycling: UN. Global E-waste
Monitor. https://ewastemonitor.info/the-global-e-waste-monitor-2024/ ,(参照 :2025/01/31)
[2]MudWatt. Microbial Fuel Cell Kit. Retrieved November 22, 2024, from Fuel Cell Store website: https://www.fuelcellstore.com/mudwatt-microbial-fuel-cell-kit, (参照 :2025/01/31)
MudWatt toolkit[2]
3
[1] Bill Yen, Laura Jaliff, Louis Gutierrez, Philothei Sahinidis, Sadie Bernstein, John Madden, Stephen Taylor, Colleen Josephson, Pat Pannuto, Weitao Shuai, George Wells, Nivedita Arora, and Josiah Hester. 2024.
Soil-Powered Computing: The Engineer's Guide to Practical Soil Microbial Fuel Cell Design. Proc. ACM Interact. Mob. Wearable Ubiquitous Technol. 7, 4, Article 196 (December 2023), 40 pages. https://doi.org/10.1145/3631410
土壌微生物燃料電池(Soil-based Microbial Fuel Cells )
• Soil-Powered Computing[1]
• 微生物が土壌中の微生物を利用し有機物を分解
• 発生する電子を収集し電力を生成
• カソード反応(還元反応)
• 2O2 + 8H+
+ 8e−
→ 4H2O
• アノード反応(酸化反応)
• CH3COO−
+ 3H2O
→ CO2 + HCO−
+ 8H+
+ 8e−
Anode
Electron Flow
Load
Electrolyte
Bacteria
e-
e-
e-
e-
e-
e-
e-
Atmosphere
Cathode
SMFC 概略図
• SMFCを用いて,土壌をセンサ素材に転換
• 静電容量センサや力センサに類似したセンシング機能を提供
• 柔軟な素材を用いたモジュール型コンテナの設計・製作
• 各種物理入力(押す,曲げる,捻る)に対するリアルタイムの応答性を測定
4
提案手法
不要時
土は自然に返し,
カーボンフェルトは水洗いで再利用
製作時
カーボンフェルト2枚で
土を挟むだけで構築可能
SMFC
• 接触面積の増加
• 圧力でカソードが土壌に沈み込み,カーボンフェルトと土
の間の隙間が密着
• 土壌の物理的特性
• 外力が加わると土壌が圧縮され水素イオンの輸送を円滑化
• 有機物分解の促進
5
原理
力が加わることで接触面積が増加
水素イオンの輸送が円滑化
2O2 + 𝟖𝑯+
+ 8e−
→ 4H2O
𝐶𝐻3𝐶𝑂𝑂−
+ 3𝐻2𝑂 → 𝐶𝑂2 + 𝐻𝐶𝑂−
+ 𝟖𝑯+
+ 8𝑒−
• デバイス構造
• 2枚のカーボンフェルトと土のみ使用
• 他の複雑な部品を使用せず,低コストで実現可能
• 機能性
• センシング機能
• 外部刺激による電圧変化を検知し,センサとして活用
• 発電機能
• 微細ながらも継続的な発電が可能
6
設計 : デバイスの設計
7
設計 : デバイスの設計 (デモ)
• 柔軟な容器と硬質な蓋の組み合わせ
8
設計:動作モードの原理
9
設計:動作モードのデモ (押す)
10
設計:動作モードのデモ (曲げる)
11
設計:動作モードのデモ (捻る)
• 製造コスト
• 2枚のカーボンフェルトと土壌のみを使用し低コストな製造を実現
• 環境にやさしい資材の使用
• 土壌は自然に還元され化学物質や複雑な電子部品を使用せず,エコフレンドリな設計が可能
• リサイクルの可能性
• 使用する土壌は自然に返され,カーボンフェルトも水洗いで再利用可能
• クリップやワイヤーは廃棄物となる可能性がある
• 消費電力のコスト
• SMFCを活用した自己発電型センサとして,外部電力の一部を補助的に供給
12
本研究が解決する課題とアプローチ
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[2] Christian Rendl, Patrick Greindl, Michael Haller, Martin Zirkl, Barbara Stadlober, and Paul Hartmann. 2012. PyzoFlex: printed piezoelectric pressure sensing foil. In Proceedings of the 25th annual ACM symposium on User
interface software and technology (UIST '12). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 509–518. https://doi.org/10.1145/2380116.2380180
[3] Ilya Rosenberg and Ken Perlin. 2009. The UnMousePad: an interpolating multi-touch force-sensing input pad. ACM Trans. Graph. 28, 3, Article 65 (August 2009), 9 pages. https://doi.org/10.1145/1531326.1531371
[4] Satoshi Nakamaru, Ryosuke Nakayama, Ryuma Niiyama, and Yasuaki Kakehi. 2017. FoamSense: Design of Three Dimensional Soft Sensors with Porous Materials. In Proceedings of the 30th Annual ACM Symposium on User
Interface Software and Technology (UIST '17). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 437–447. https://doi.org/10.1145/3126594.3126666
関連研究:力覚センサの開発と運用の課題
関連研究 センサデバイス 再利用性 製造の容易性 環境適合性 省電力性
PyzoFlex[2]
○ × △ ○
UnMousePad[3]
△ × △ △
FoamSense[4]
○ △ ○ △
SoilSense ○ ○ ○ △
• 流れ
• 実験の事前準備
• 性能特性の検証
• 動作モードの検証
• 目的
• フォースゲージを用いたインタラクション実現に向けた性能特性の検証
• 入力速度による電圧応答の違いの測定
• 持続的な圧力適用時の電圧安定性と減衰特性の評価
• SoilSenseを用いた動作モードの検証
• 性能特性の検証結果をもとにSoilSenseのセンサとしての機能を実証
• 押す・曲げる・捻るといったジェスチャ入力への応用可能性を評価
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実験:流れと目的
• 土,電極,水分センサ,マルチメータ,フォースゲージの準備
• 実験環境
• 平均室温25 ℃
• 平均湿度60 %
• 水分センサを利用しVWC(体積含水率)の値は90%に調整したSMFCを採用※1
• マルチメータを用いてmV単位までの電圧を測定
• フォースゲージを用いて1N単位で加える圧力を調整
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事前準備 性能特性の検証 動作モードの検証
実験:事前準備
(a)土壌 (b)カーボンフェルト (c) 水分センサ (d) マルチメータ (e) フォースゲージ
※1 VWCが大きいほど発生する電圧が大きく,性能特性を測定するにあたり電圧変化が顕著なほど結果が明確に分かりやすくなるため採用(補足資料: 各電極サイズの組み合わせと電圧の変化 を参照)
• スタンドの降下速度を 10mm/min と 80mm/minに設定
• フォースゲージの値が200Nに達するまで降下させ同じ速度でスタンドを上昇させる
• 電圧の変化は3回記録
• アノードサイズは90mmで固定※2
• カソードサイズは90mm,45mmで電圧を測定
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事前準備 性能特性の検証 動作モードの検証
実験: 入力速度による電圧応答の違いの測定
※2 アノードサイズの大きさは発生する電圧に関係ないため固定にしている.(補足資料: 各電極サイズの組み合わせと電圧の変化を参照)
1. カソードサイズ 90mm ① 降下速度 10mm/min
2. カソードサイズ 45mm
② 降下速度 80mm/min
• 入力速度による電圧への影響
• 入力速度が遅いほど回復時間※3は長い
• 45mm カソードでは,10mm/minと80mm/minとで
回復時間に4倍の差が生じた
• 力の種類とSMFC の応答特性
• 力の種類(急速 or 持続)がSMFCの応答性に関与
• カソードに加えられる力と電圧の関係は非線形
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事前準備 性能特性の検証 動作モードの検証
結果: 入力速度による電圧応答の違いの測定
カソードサイズと降下速度における電圧の関係
(色付きの領域は変動範囲を示していて,
縦の棒線は力が0 Nとなった時間を指している)
※3 回復時間:加える力が0Nになってから,電圧の値が初期値に戻るまでの時間
60s 15s
• カソードに10N~50Nまで10N間隔,100N,200N,300Nと力を加える
• 各力の値においてフォースゲージを1分間静止させ電圧の変化を記録
• 電圧の変化は3回記録
• アノードサイズは90mmで固定※2
• カソードサイズは90mm,45mmで電圧値を測定
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事前準備 性能特性の検証 動作モードの検証
実験: 持続的な圧力適用時の電圧安定性と減衰特性の評価
※2 アノードサイズの大きさは発生する電圧に関係ないため固定にしている.(補足資料: 各電極サイズの組み合わせと電圧の変化を参照)
30N, 40N, 50N...100N,200N
1. カソードサイズ 90mm ① 10 Nに設定し加圧
2. カソードサイズ 45mm
1分静止
② 20 Nに設定し加圧 ⑧ 300 Nに設定し加圧
• 電圧の変化傾向
• 90mm および 45mm のカソードで緩やか
な減少を確認
• 1 分間で初期値の90%→80%に低下
• 減少の要因
• 土壌構造の変形により力が分散
• 土壌の圧縮性に基づく現象
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事前準備 性能特性の検証 動作モードの検証
結果: 持続的な圧力適用時の電圧安定性と減衰特性の評価
1分間持続的な力を加えた際の電圧の変化
• 押す
• 0Nから30N まで圧力を加え電圧の変化を測定
• 曲げる
• 蓋の左右に加わる力による2つのカソードの電圧変化を測定※4
• 電圧変化の差を読み取ることで方向性を検出
• 捻る
• ねじり角度に対する電圧の変化を測定
• カメラを装置の真上に配置し,蓋に取り付けたマーカの回転変位を記録
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事前準備 性能特性の検証 動作モードの検証
実験:動作モードの検証
押す
曲げる
捻る
※4 補足資料: 曲げ を検知するためのコンテナ設計 を参照
21
事前準備 性能特性の検証 動作モードの検証
結果:動作モードの検証
押す:圧力を加えるほど電圧増加 捻る:捻る角度が大きいほど電圧増加
曲げる:曲げた方向の電圧が増加し,方向の識別も可能
Left
Left
Right
Right
22
利用シナリオ:ゲームコントローラ
23
利用シナリオ:植物の水分量の通知
24
利用シナリオ:人の通過を検知するシステム
25
Ground Sensingのプロトタイプの制作
…
電圧の立上り
• 外部環境への影響
• 十分な体積含水率(VWC)が必要
• 乾燥環境では性能が低下
• 外力による土壌の構造変化で性能が低下
• 持続可能性への課題
• 土を入れるソフトコンテナや配線材料が分解性に欠ける
• 持続可能な材料への置き換えが必要
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制約・課題
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SoilSense:土壌微生物燃料電池を用いた自発電型タンジブルインタフェースの構築
塚越雄真1)
, Tian Min1)
, 杉浦裕太1) 1)
慶應義塾大学
背景 実世界センシングにおけるSDGs課題へのアプローチ
関連研究 力覚センサの開発と運用の課題
提案
SMFCを用いて,土壌をセンサ素材に転換し
モジュール型コンテナの設計・製作
原理 カソードと土壌表面の接触面積の増加,土壌の物理的特性
実験 性能特性と動作モードの検証
結果
圧力入力速度や連続圧力適用時の出力電圧特性を確認
各入力ジェスチャによって異なる電圧の波形を記録
制約・課題
外部環境に大きく影響する,
土を入れるソフトコンテナや配線材料が分解性に欠ける
補足資料
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補足資料: 微生物の活動に変化を与える6つのパラメータ
Oxygen Temperature Nutrients
Other microbes Force Moisture
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[3] Bill Yen, Laura Jaliff, Louis Gutierrez, Philothei Sahinidis, Sadie Bernstein, John Madden, Stephen Taylor, Colleen Josephson, Pat Pannuto, Weitao Shuai, George Wells, Nivedita Arora, and Josiah Hester. 2024.
Soil-Powered Computing: The Engineer's Guide to Practical Soil Microbial Fuel Cell Design. Proc. ACM Interact. Mob. Wearable Ubiquitous Technol. 7, 4, Article 196 (December 2023), 40 pages. https://doi.org/10.1145/3631410
補足資料: 発生する電力量と用途
• 実験室の最適な条件下では200 µWの電力と731 mVの開回路電圧を発生
• 最適な実験条件: [3]
• カソードが酸素にさらされている
• アノードが無酸素状態であること
• VWCが42%以上であること
• 砂利などが入っておらず均一であること
2kΩ の抵抗を接続した状態で3 つのコンテナを接続
電力を測定した結果,約 30μW であることを確認
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補足資料: 発電用途での利用例
• 企業の取り組み[5]
• ボタニカルライトとして蓄電
• 江ノ島シーキャンドルといったイベントで利用[6]
[5] Green Display. (2024年5月27日). 「溜めた電気で何をする?渋谷キャストにて植物発電ボタニカルライト蓄電実験中!」. note. https://note.com/green_display/n/n45f3364190aa
[6]一般社団法人 夜景観光コンベンション・ビューロー. (2022年11月18日). 「新時代の明かりが登場.「江の島」の植物の生命力が創り出すSDGsイルミネーション!」. 夜景観光コンベンション・ビューロー. https://yakei-
cvb.or.jp/news/3267
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補足資料: 異なるVWCと電圧変化の関係
• 異なるVWCにおいて32時間の出力電圧を測定
• VWCが高いほど出力電圧は高くなる
各VWCにおける時間経過による電圧変化
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補足資料: 各電極サイズの組み合わせと電圧の変化
• 電極サイズと電圧値の関係
• カソード面積の影響
• カソードの面積と電圧には正の相関がある
• アノード面積の影響
• 明確な相関は見られない
各電極サイズの組み合わせと電圧の変化
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補足資料: インタラクション手法の選定
ジェスチャカテゴリ
土の構造の
耐久性
日常での
使用頻度
電圧変化 備考
押す/押し付ける ○ ◎ ◎ 繰り返し使用可能,電圧変化が明確
つまむ/握る △ ○ ○ 土が流出・破壊される可能性
触れる/叩く ◎ ○ △ 電圧変化が小さく精度が低い
曲げる/捻る ○ ◎ ◎ 日常動作が多い電圧変化を確認可能
スライド/
引っ張る △ △ △ 土の構造を破壊するリスクあり
振る/ 動かす △ ○ △ 土壌センサとして構造の破壊の可能性
撫でる/擦る ◎ ○ △ 電圧の変化を読み取りにくい
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補足資料:曲げ を検知するためのコンテナ設計
• 共通のアノードを1枚持ち,カソードは2枚に分割
Cathode_2
Anode
Soil
Cathode_1
Left
Right
左に曲げた場合の電圧波形図
右に曲げた場合の電圧波形図
Cathode_1
Cathode_2
[s]
[mV]
[mV]
[s]
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補足資料: 異なる動作モードにおける設計の示唆
• インタラクションの頻度が高いほど使用する電圧は増加し,外部の電源
からの供給が必要

SoilSense : 土壌微生物燃料電池を用いた自発電型タンジブルインタフェースの構築