SIG-AUDIO 2024 Vol.04
オンラインセミナー
「GDC2024 オーディオ報告会」
AAAタイトルの作り方 GDC2024 ver.
講演者:渡辺 量
(株式会社バンダイナムコスタジオ サウンドディレクター/マネージャー)
渡辺 量(わたなべ りょう)
株式会社バンダイナムコスタジオ
技術スタジオ制作部サウンドユニット2 ディレクター/マネージャー
【担当製品】
ACE COMBATシリーズ、アイドルマスターシリーズ、電音部 etc.
本日ご紹介するセッション
・A SOUND STRATEGY: AUDIO PROJECT PLANNING FOR 'MARVEL'S SPIDER-MAN 2’
・MIXING 'MARVEL'S SPIDER-MAN 2’
・BALDURS GATE 3: A FIRESIDE CHAT (PRESENTED BY DOLBY LABORATORIES)
・MIXING, MUSIC, AND MODS: 'CYBERPUNK 2077' AUDIO TECHNICAL PIPELINES
(豆情報)ゲームクリエイターサーベイ
• Game Sound Conが毎年行っている、
海外クリエイター事情のアンケート調査(600名程度返答)
北米のゲームサウンドクリエイター事情を理解するのに役立ちます。
https://www.gamesoundcon.com/post/game-audio-industry-survey-2023
TUNES OF THE KINGDOM:
EVOLVING PHYSICS AND SOUNDS
FOR ‘THE LEGEND OF ZELDA:
TEARS OF THE KINGDOM’:
コンポーザー/サウンドデザイナー/サウ
ンドエンジニア向け
・全体内容についてこちらの記事に内容網羅されています。
https://www.4gamer.net/games/578/G057883/20240321087/
・セッションの注目度が異次元な件について。。。
一つの廊下が200mくらいあるのですが、
三回曲がっても並んでいる。。。
ここまでの行列は初めて見た次第で、注目度の高さが伺えます。
お昼のコンサート
が楽しかった件
• 今年から始まったという試みで、お昼はメイ
ンホールにてゲームミュージックをテーマに
したコンサートが開かれました。
• 風の旅人/HADESなどで著名なオースティン
ウィントリーが指揮しました。ラスアスやバ
イオショックインフィニット等の主人公の声
優であるトロイ・ベイカーが司会。
• バイオショックインフィニットのメインテー
マでは副旋律しか歌っていなかったのですが、
ラストは主旋律をソロで歌い切りつつ、プレ
イした事のある人にとってはストーリー的に
も重要な意味を持つので超胸熱で。。
• (ただのヲタク)
A SOUND STRATEGY: AUDIO
PROJECT PLANNING FOR
'MARVEL'S SPIDER-MAN 2’:
サウンドプロセスマネジメント/
ダイアログ/ミックスに関わるメ
ンバー向け
• タイトル:『Marvel's Spider-Man 2』
のサウンド制作戦略
• インソムニアックのサウンドチーム大ベ
テラン勢(3人で、70本以上のAAAゲー
ム)がオーディオチーム(サウンド・デ
ザイナーだけで30名!!!)の進行管
理を取りまとめており、そのプロセスマ
ネジメント術に関わるセッション。
• 「全体工程」「音声関連」「ミックス関
連」の3本立てとなっている。
サウンドプロマネのお仕事がたくさん。。。
• 13週間にわたって
40以上のゲームミッションをファイナル
ミックスし、
30人のサウンドデザイナーと
13人のダイアログアーティストにプラン
を提供し、
12,000以上のJIRAタスクを解決し、
何とか全員のワークライフバランスを保
つ。。。
• サウンドセクションは、すべての上流の依
存関係の影響を受けるので、組織と計画は
絶対に欠かせない。
録画しつつ、気になった箇所を
メモ追加共有できるデバッグシステム
• (ハリウッドのデイリーコンセプトを参考に)
週に数回、ディレクターとデザイナーによる
フル・プレイスルー・セッション
(with録画)が行われる。
録画されたビデオには、特定のタイムコードで
メモを追加でき、内部サーバーに投稿される。
右クリックで簡単にJiraのタスクに変換できる。
• 単にマネージャーがタスクを出し合うだけでは
なく、問題を認識した人と、解決修正する人と、
双方向の会話となった。
ダイアログ周り進行課題を解決
• 1言語につき85,000ラインの音声(とんでもない量。。)。550回の音声収録。。
• ゲームプレイのセリフの約50%が、アルファ版以降に収録できるようになった。当初は約2時間半の
コンテンツと見積もられていたものが、5時間以上になった(185%オーバー!)。
→シナリオとダイアログが、1つのマイルストーンで同じ作業をしており、
承認される前のセリフが録音されたり、ミスリードが発生したりと混乱を極め、計画は破綻していった。
そこで、それぞれに期限を与えて、交互に作業をしてもらう事にした
(シナリオ→ダイアログREC→シナリオ→ダイアログREC)。
• 極めつけとして、ゲームの最終コンテンツの20%がデータロック前の最後の3ヶ月で収録可能となっ
た。成長機会として受け入れていたと言いたいが、当時はチーム一同、ブチ切れていた。
→間に合わせるための「小規模の」ストライク・チームを作ったり、キャスティングやスケジューリン
グには外部の力を借り、RECの準備専門チームを作り、各部門で協力しながら対応していった。
ファイナルミックスまでの工夫
「SFX CHECK LIST(実装のルール
が記載)」を全員に配布
• 前作からの反省点として「統一的な実装ができて
いないこと」が開発メンバーアンケートから上
がってきた。
Wwiseの減衰カーブやリバーブカーブを、どのサ
ウンドデザイナーも違うカーブを入れて、200種
類、300種類のカーブを作っていた。
プロジェクトが架橋に差し掛かり、ミックスに入
ると、全てを調整し直すことになった。
• その解決手段として活躍したのが
「SFX CHECK LIST」である。
実装する際の全てのルールが入ったガイドライン
になっている。
※リストは、スライドよりもずっとずっと長いと
の事。
新規の機能実装について、
1ページのスペックシートにまとめる
• 今作でも、新しいシステムや既存のシステムの改良
をたくさん盛り込んだ。
• 私たちが解決しようとしている問題は何か、ゴール
は何か、可能性のある解決策は何か、本当にハイレ
ベルなものを
「1ページのスペックシート」にまとめた。
優先順位の高いもの、リスクの高いもの、多くの時
間が必要なもの、他部署からのサポートが必要なも
のなどを特定し、それらの機能の実装をどのように
計画するかについて、集中する事ができて本当に良
かった。
ファイナルミックスで導入したソリューション
• ミキシングの全工程を、ゲームの最後に2、3週間、あるいは1、2ヶ月かけても、求める品質に到達できなかった。
• メンバーの多くが遠隔地にいる。オフィスにいるのが3分の1、ロサンゼルスにいるのが3分の1、その他全国にいるの
が3分の1。全員が飛行機で移動することなく、効果的にミックスする方法を考えなければならなかった。
• 解決するために2つの技術を活用
1.VME(Virtual Mixing Environment)活用。HRTFを作成してリスニング環境を再現。
リスニング環境をバーチャルに揃えた。
※360VMEなどSony独自の技術を使っているかは、紹介がありませんでした。
市販の技術であれば色々ありますね。
2.Evercast
https://www.evercast.us/
コンテンツを共有したりストリーミングするためのプラットフォームとしてEvercastを使用。
Evercastは、5.1chのストリーミングが可能で、すべてが同期されたまま維持される信頼性の高いプラットフォーム。
• 最終的には、1年(毎日2~3時間のセッション)ミックスに掛かった。
MIXING 'MARVEL'S SPIDER-MAN 2’:
全サウンド職種向け(特に実装担当者向け)
所感
• インタラクティブミックスの最新手法を網羅しつつ伝導してくれる内容で、
最高でした。
• GDC2018で、スパイダーマン1の街行く車のサウンドの実装を専任担当
していた講演者が、スパイダーマン2ではファイナルミックスまで任せら
れるようになっており、講演者の成長を実感しました。
• 合わせて、大規模プロジェクトにおいてもパートパートを任せる事で、
人を実際に育てていく仕組みがインソムニアックにはあると感じました。
(スパイダーマン2における)ミックスの基本哲学
1.明確なナラティブのダイアログを最優先し、
2.次にプレイヤーのフィードバックを重視する。
3.ゲームの音楽スコアは感情的な土台を形成し、
4.最後に環境音や非クリティカルなディテールが続く。
これらの要素が常に同じ音量であるわけではなく、
必要に応じて何を最も強調すべきかを判断することが重要。
アセットを作るサウンド・デザイナーに向けて
(デカい音で作るのではなくて、全体と調和する音量で作る)
・アセット単独ではなく、フルミックスの中で素晴らしいサウンドである
必要がある。DAW上で、静寂の中で最も大きな音量でプレイして、どれだ
け良い音に聞こえるかは問題ではなく、フルミックス(インゲームの最終
ミックス)で成功しなければ意味が無い。
・サウンドをデザインしている場面に似ているオーディオ(他のコンテン
ツ)をキャプチャーしたものをDAWに並べておく。
最終ミックスでどのようなサウンド(音量)になるかをすぐに比較するこ
とができる。
・DAW上で最大音量で再生するだけでなく、小さな音量で、賑やかなサウ
ンドに混じって再生されることに満足できれば、成功の準備は整ったこと
になる。
ミックスのスケジュール
(最後の段まで、個別対処のミキシング対応を控えていくのがおすすめ)
• ミックス工程はR&Dフェーズから始ま
り、パッチまでずっと続く。
重要なのは、制作の最後まで、粒度の
細かいオーダーメイドのミキシングを
最小限に抑えること。
• 失敗事例:前作マイルズモラレスにお
いて、アルファにおいてオーダーメイ
ドのカスタムミックス(場当たり的に
用意した)を多数準備した。
そのマイルストーンでは良い音になっ
たが、その数カ月後においては、多く
のグローバルシステムやゲームに変更
が掛かっており、ネズミの巣のように
複雑な修正となってしまった。
ターゲットラウドネスについて
• ターゲットラウドネスがなければ、
やみくもに値を上下させることになる。
• -24 ± 2LKFS
がSCEプラットフォームにおいては推奨されている。
• インソムニアックでは、通常、最初の90分間を測定する。
→最終的には、-22LKFSとなり、高い値を取った
(アクション格闘ゲームなので仕方ないと捉えている)。
• ダイアログを絶対基準音量として設定できれば、
別の効果音グループに対してラウドネス目標を設定することができ
るようになる。
各サウンドカテゴリー毎の基準音量のリスト
HDRについて
• HDRは鮮明でパンチのあるミックスを作るのに役立つ。
これはゲームプレイの効果音にのみ使用している。
(音楽、ダイアログ、UI、シネマティックにはHDRを
使っていない)
• 音楽と効果音を足し合わせた音量をMeterプラグイン
(BUSに入ってきた音量を測定してRTPCに引っ掛けた
りできるWwiseプラグイン)で観測していて、これが
あまりに大きくなるときつめのレシオに切り替わって
飽和を制御しに行くように設定している。
• ビープ音のような警告系のサウンドは、アクティブレ
ンジをゼロにしてダッキングが起こらないようにして
いる。
※HDRで音量が上下するのもおかしいし、攻撃警告音
のために全体のサウンドがダッキングするのもおかし
い。
サイドチェイン
について1
• 近接戦闘の衝撃音BUSでは、近接戦闘の
衝撃ばかりではなく、ボスからの大きな
衝撃とか、必殺技的な音の音量を測る。
→このメーターはマスターリバーブバス
のリバーブをダッキングしている。
リバーブはワサワサしたノイズのような
音で、大きなインパクト音の際にリバー
ブを短くカットしたり、短く落としたり
するだけで、パンチが出る。
サイドチェイン
について2
• 戦闘音楽がドタバタとかなり
うるさくなるような場面においては、
環境音を少し下げている。
サイドチェイン
について3
• アッパーダッキング。
音楽とサウンド・エフェクトの
合算値が上がってきたら、
ダイアログをブーストする。
※セリフはミックスの基準であるべきと
伝えたが、周囲のサウンドがピークまで
上がってきたら、抜きん出る処置を入れな
ければならない。
ダイナミックEQ
について
(セリフに引っ掛
けて音楽をリダク
ションする)
• 最もよく使ったのは、ダイアログを音楽に作用させるもので、ダイアログが音楽の成分
を減算する効果。
• セットアップの初期段階で行ったことのひとつは、典型的な音楽トラックと典型的なダ
イアログを取り込んで、fabfilter pro q3を使って周波数帯域で競合が多い場所を分析す
ることだった。
また、メインのダイアログが飛び出す必要がある場所や、そうでない場所を調べた。
音楽に作用する周波数は最終的に「250、660、2000」に決めた。
かなり幅広いキューで、基本的にこれらはダイアログの入力に基づいて動的に引き下げ
られる。
• 最初はかなり優しく、ダイアログをトリガーに音楽の各周波数帯をリダクションした。
ソニーのミックスエンジニアも連れてきてアドバイスをもらいつつ。
音楽チームがこれを見たら、殺されるかと思った。
• 掛け過ぎに気を付けつつも、しっかりEQで減算すれば、音楽を更に盛り上げる事に使え
る、という事も分かってきた。
→実際のデモ。音楽単体で聴くと、正直な所、音は悪く聞こえますが、セリフと音楽と
合わせて聴くと、実際にEQが掛かっている事は気にならなくなる絶妙なバランスでした。
ダイナミックEQの作用する判定
• 「ダイナミックな減算的EQ処理を静かな瞬間に発生させたくない」と考えた。
ダイナミックEQが必要ないときに、静かなアンビエンスで変なダッキングが聴こえると、
とても目立つ。
• そこで、、、基本的に音楽と、音楽と効果音を合計した全体的なミックスを測定し、そ
の値でメーターを動かす量を決めるというアイデアを思い付いた。
つまり、ゲームがとても静かであれば、ダイアログメーターはあまり送信されない(ダ
イナミックEQが動かない)が、ゲームの音量が特筆すべきくらい大きくなってきたら、
送信量が多くなる(ダイナミックEQが動き出す)。
Meterプラグイン
祭り・・・!!!
• 約87のMeterプラグインが使用され、
(※処理負荷的にモノラルにしない
と無理だったそう。)
その内訳は、ダイアログが21、ボス
が6、音楽が7、ライセンスタイプの
特定の音楽に3、戦闘効果音が20、
UIが6、その他に24。
→音量の状態をいかに適切に把握し
て、それをトリガーに他の音量をコ
ントロールしに行くか。
結論
・早い段階で優先順位とミックス哲学を確立すること
・そしてミックスが忙しくなったら、まずノイズをカットすることを意識すること。
→ミックスに明瞭さがなかったり、台詞が聞こえなかったり、戦闘がわからなくなっているような場合、プロファイラーでその
瞬間を一時停止して、不要に再生されている音をカットしてみる。ヘリコプターがうるさかったら、ローエンドをカットする。
・ミキシングは早い段階から始めるが、幅を持たせること(ターゲット音量など)。
・マクロでグローバルな相互作用(複数対象に作用する全体機能)に集中するようにして、完璧主義的な判断はできれば最後ま
で取っておく。
・行き過ぎたら、必要に応じて引っ込め、複数の手法やツールを使って明確にする。
※HDRやダイナミックEQだけでは全体制御できなかった。
・全体像を見失わないように。(特にサウンドデザイナーやコンポーザー、ダイアログ専門職のバッ
クグラウンドを持っている人にとっては、とても、とても難しいこと)
一歩引いて、30分のゲームではなく、20数時間掛かるゲームである事を認識し、
効果音、音楽、音声がそれぞれ大事になってくる場面や瞬間がある事を認識してください。
BALDURS GATE 3: A
FIRESIDE CHAT (PRESENTED
BY DOLBY LABORATORIES):
サウンドデザイナー/サウンドテ
クニカルデザイナー向け
• ドルビー社のスポンサーセッション。
Larian Studiosの最新作『Baldur's Gate
3』における音響設計の詳細と、それが如何
にしてプレイヤー体験を豊かにしているかを
対談形式で話すセッション。※スライドなし
• 所感:6年掛けてタイトルを作っている最後
の9ヶ月で、UBI等で活躍してきたオーディ
オディレクターが加入。
効果音の素材等には手を入れず、「どうした
らより良く聞かせられるか」にフォーカスし
て大幅テコ入れ。
最終調整がいかに大事であるか、身に沁みる
セッション内容。
ピックアップ
・約200万語のボイスファイル。170時間のカットシーン。1,100種類の呪文。
・オートフォーリーを入れている。体の動きと、体の動きに関する物理、動く速さに基づ
いて再生。どのような鎧や服を着ているかも音に反映。
・RPGにおいて、「一人称だから、カメラがリスナーポジション」ではダメ。
ポジショニングが非常につまらないミックスになってしまう。
※サラウンドにすると、目の前にあるものがすべて聞こえ、そこに再生される音のフィールドが狭まってしまう。
→ゲームにもよるが、70%とか30%とか、リスナーが、カメラとキャラクターとのちょう
どその間にいるような感じ、キャラクターの動きに適応させた相対的な位置に置く。より
広いステレオ・セットアップと、定位感が得られる可能性を探る。
・HRTFのプラグインを持っているユーザーは思っている以上に多い(数字は明かされな
かった)。多くのプレイヤーがヘッドフォンでプレイするが、立体音響に挑戦する価値は
あると認識している。
ピックアップ
・6年開発し、出荷の6ヶ月前に立体音響対応することになった(!)。
Wwiseの古いミキシング・アーキテクチャを取り除くスクリプトまで作って、そのスク
リプトに基づいて新しいミキシング・アーキテクチャを作った。
・ミックスについて。
周波数ベースのダッキングが超重要。ある呪文にどの周波数が含まれているかを、Wwise
のランタイムプラグインで読み取れるようにした。(スパイダーマン2と同じ)
→音楽が一番優先度高く、呪文を唱える際には、曲とぶつかる不要な帯域を下げに行く。
呪文は高音域と低音域に少し寄せて、真ん中(中域)は常に音楽のために空けておくこと
にした。
・ラウドネスについて。
-22~-24LUFSという既定値に対して、戦闘シーンでは、大音量になり+激しく+インパ
クトがあり、18~15LUFS辺りを目指した。
ピックアップ
・ダイアログについて。
ナレーションは7.1.4ではハイトスピーカーから再生される
(テーブルトークRPGのゲームマスター=天の声的な演出として上手い。。。)
・リモートワークについて。
オーディオチームはケベック、ダブリン、ロンドンに分散しており、オーディオディレク
ターはドイツのデュッセルドルフにいる。
それぞれの時間帯で働く事で、24時間プロジェクトが稼働している状態を保ちつつ残業
は減らせる。
・カットシーンミックスについて。
タイムラインエディターがあり、そこから鳴らしている(決め打ちのストリームを持って
いない)。インゲームとの整合性を保つため。
カットシーンも、カメラがどの状態でどこから写しても自然に聞こえるように作ってある。
MIXING, MUSIC, AND MODS:
'CYBERPUNK 2077' AUDIO
TECHNICAL PIPELINES:サウン
ド全職種向け
• タイトル:ミキシング、音楽、MOD
「Cyberpunk 2077」のオーディオテク
ニカルパイプラインについて
• CD Projekt Redのエンジニアリングディ
レクターであるColin Walder氏と音響ス
タッフエンジニアのGiuseppe Marano氏
による「サイバーパンク2077」のオー
ディオ技術に関するプレゼンテーション。
• 特に、ミキシング、音楽、およびMODに
関連する技術に焦点を当てた内容。
ダイナミック
ミキシング
• ゲームの環境音や効果音のバランスをリアルタイム
で調整できる機能を実装。
これにより、プレイヤーのアクションや周囲の環境
に応じて、ミックスバランスが自動的に変化する。
例えば、戦闘中は爆発音が強調され、静かな探索時
には環境音が豊かになるなど、状況に応じた音響が
体験できる。
ミキシングには、「静的ミキシング」と「動的ミキ
シング」の二つのアプローチがある。静的ミキシン
グはゲーム全体のオーディオバランスを決定し、動
的ミキシングはゲームの文脈に基づいてリアルタイ
ムにミックスを変更。
サウンドタグ
ダイナミックミキシングするにあたって、、、
「サウンドタグ」の実装は最もシンプルで強力な
方法の1つ。
左側はWwiseのEvent ID、右側はゲームにロード
して保存するメタデータ。
Wwiseの実装用IDが、プログラム実装側で「サウ
ンドタグ」付けされる。Wwise側の階層が既にイ
ベントヒエラルキーを作成しているので、追加作
業がない点が利点。
サウンドデザイナーがサウンドを構成した方法、
階層構造を実装した方法に基づいているので、タ
グ付けはもちろん、サウンド・デザイナーが考え
ている階層構造と一致したタグを付けられる。
Guns
→Casings
→Casings
→old
→Brass_small
の階層化に位置する効果音データに対して
「Guns」「Casings」「 Casings 」「old」
「Brass_small」のタグを付与する。
「VO Context」
の活用
• クエスト、戦闘、コミュニ
ティ、マイナーアクティビ
ティなど音声がグループ化さ
れている。
• オーバーライド(上書き)す
ることもできるので、より重
要度の高い音声とみなしてカ
テゴリーをその時だけ上書き
して、ミックス優先度を変え
たりもできる。
アクター名の活用
• キャラクターを選ぶだけで、
音声も、そのキャラクターか
ら再生される効果音も全てつ
かめる(すごい。。。)。
• ミキシングをする際に、「場
面で一番強調したいキャラク
ター」のミックス(音声も足
音も)を上げたりできる。
ゲーム中の階層構造
の活用
• もちろん、ゲーム中の階層構造(操作不能なカット
シーンにいる。操作可能なカットシーンにいる。街中
を散策している、戦闘中であるなど)もミックスに活
かせる。環境音再生用のエリアもミックスに活かせる。
• あらゆる要素やパラメーター、状態を駆使して、
-フィルタリングやリバーブなどの調整
-距離減衰の調整
-ある音をリスナーが向いている方向に近づけたり、遠
ざけたり
することで、「特定の音に焦点を当て、プレイヤーの注
意を引く」こともできるし、「ミックスの邪魔にならな
いように遠ざける」こともできる。
ステートマシン
• シーンプリセットなどという生易しい
ものじゃなく、
「各シーンでミックスに関わるあらゆ
る情報を収集しながら、条件分岐もし
つつ、最終的にミックスを決定してい
るステートマシン」が入っている。
• Redエンジン(Cyberpunkを開発して
いる自社エンジン)のデータパイプラ
インをすでにサポートしており、開発
エンジンとWwiseの間で、様々な役割
をこなしている。
音楽の再生制御
への活用
• ダイナミックミキシング用に作ったステートマシンは、音楽演出にも
使えることが段々分かってきた。
• プランナーが使う超複雑な分岐のクエストエディット用ツールを、普
段そのツールを使わないコンポーザーに、音楽再生を仕込むためだけ
に使わせるのは可哀想だと思った。
• ステートマシンを使えば、「このシチュエーション(ミキシングシー
ン)になったらこの曲流してね」という事もできるので、膨大なクエ
ストの中で音楽再生のフラグを一々立てなくて済む。
※再生命令は、クエストプランナー側からも上書き可能。
MODツール
• サイバーパンク2077では、ユーザーがゲームの
オーディオをカスタマイズできるMODツールを
提供している。
これにより、プレイヤーはゲームのオーディオ
ファイルを独自のものに置き換えたり、新たな
音響効果を追加することが可能。
• 通り沿いで聴こえるようなもの、あるいは街全
体で聴こえるような大きな減衰が必要なもの、
例えば街の上空を飛んでいる大きな乗り物のよ
うなもの、さらにオクルージョンのオプション
もある。
ユーザーは制作者が準備したオーディオアセッ
トカテゴリーに引っ掛けるだけで、それなりの
演出が可能。
ご静聴ありがとうございました

SIG-AUDIO 2024 Vol.04 GDC2024 オーディオ報告会「AAAタイトルの作り方 GDC2024 ver.」