VRアドベンチャーゲーム
「ディスクロニア: CA」サウンドデザイン
Sig-Audio 2023-12-8 田中孝
◆このセッションで得られるもの
- サウンドの演出と実装のヒントとアイデア
- VRでのサウンドデザイン
- リリースした実際のデータ(CRI・ミドルウェアADX2データ)
◆注意事項
- 最適解や万能な手法ではないです
- 特定の条件下での解決を挑んだ話になります
はじめに
自己紹介
VRゲームテクニカルオーディオエンジニア 田中孝
武蔵野音楽大学作曲学科卒業
1999年 株式会社セガAM2
内製サウンドツール
の開発
(5年)
2004年 株式会社CRI・ミドルウェア
サウンドツールの開発
(15年)
2019年~ MyDearest株式会社にて
(4年)
VRゲームに特化した
内製サウンドツール
・データ作成
アルトデウス: BC
ディスクロニア: CA EP I,EP II,EP III
Brazen Blaze
@tatmos
サウンドツール開発
(SoundFactory、CRI Audio(V1 V3)、
CRI Atom Craft)
様々なゲームのサウンドのサポート経験
VRゲームのサウンド挑戦
Cycling74 Max/mspとかメディアアート作成
コンピューターやMIDIデバイスでの表現に興味
ゲームジャム
(GGJ、福島ゲームジャム)
サウンド系ハッカソン
音楽制作
OculusDK1の開発機を触る
→ Mac・Unityで開発していたが、めっちゃ酔う
解像度もフレームレートも死ぬほどひどかった
公開されていたアプリとかも死ぬほど酔うものばかり
ただ、いろいろな試みが新鮮なものが多かった(ジャンプしたり、段ボールだったり)
OculusTouchに出会う
→ コントローラが優れている事に気が付く
楽器が作れないか試したりした
→新しいデバイスのサウンド環境に興味
MyDearestの夢の相談所に出会う
→ 音声が飛びぬけて良かった(当時のアプリと比較して)
VRChatに出会う
→ 草の根ネット的な懐かしさ・無法地帯感(新しいものに出会える)
自己紹介・VRとの出会い
MyDearestのVR作品紹介
◆東京クロノス VRアドベンチャー
◆アルトデウス: BC
◆ディスクロニア: CA
◆ブレイゼンブレイズ( 3vs3通信対戦・運営型)
これらのタイトルに挑んだ歴史の概要を紹介
VRサウンドに挑んだ4年
◆2019 ~2021年
東京クロノス (Oculus Go、PCVR)
UnityAudio + DearVRによる立体音響を利用していた
3Dオーディオやバイノーラル技術を利用して音を鳴らしていた
CRI ADX2へ移行(PSVRから)
PSVRでDearVRは動作しないため、代替ミドルウェアが必要になった
DearVRにある残響・減衰・バイノーラル再生を CRI ADX2上で再現するため
既存の機能(AISACによる距離減衰・機種固有のバイノーラル)
プラットフォームによって再生ミドルウェアが異なるため、
目的の音に近づけるための調整がとても大変だったとのこと。
MyDearestのVRサウンドの歴史(初期)
VR上でキャラを動
かすだけでも苦労
した
◆2019年~2023年
MdsCanonという内製サウンドライブラリを作成
Unityのパッケージ機能を利用
別パッケージ化しゲームに依存しないバージョン管理
サウンドミドルウェアCRI ADX2を採用
再生機能の簡易化
起動後ならいつでもどこでも再生可能(全ストリーム再生
)
インタラクティブミュージック制御
各種フェード処理、複数レイヤー・ブロック構成の
BGM
リアルタイムのボイスエフェクト
波形側の加工を最小限にして、開発効率優先
アルトデウス: BC (Oculus Quest、PCVR、PSVR)
ディスクロニア: CA EP I、EP II、EP III
Meta Quest2、Pico4、PSVR2、Switch、PCVR
IRリバーブ、6DOF空間音響、サウンドの空間配置、足音システム
MyDearestのVRサウンドの歴史(中期)
CEDEC2021講演
slide
◆2024年~
MdsDostiという内製サウンドライブラリを更新
よりシンプルな設計
ADVに特化していたSE、VOICE、BGMという区別のないコントロール
イマーシブサウンド(
7.1.4ch)
大量の発音管理、高速移動
適切な座標更新処理・リソース管理・最適化・
72fps、ボイスチャット
通信タイトルに耐えうるデータ構造
1キュー1キューシート・分割ダウンロード・キャッシュ・バージョン・整合性管理
ブレイゼンブレイズ( 3vs3通信対戦・運営型) Meta Quest2、PCVR、他
MyDearestのVRサウンドの歴史(現在)
本格的なアクション
ゲームサウンドの技術を VRに
という挑戦(次回)
・今回の紹介する内容
- アドベンチャーゲームに特化していて 音楽重要
- 制作負荷軽減しつつもサウンドの要望を多く取り入れる
- VRサウンド固有の表現・処理・実装
- BGM、ボイス処理優先
・次回予告
- アクションゲームでも耐えうる性能
MyDearestのVRサウンドの歴史まとめ
VRアドベンチャーゲーム
「ディスクロニア: CA」の作成を通して得た
サウンドにおける
以下の知見を紹介します。
- 音像定位で気を付ける点
- VRならではの残響と移動効果の話
- VRとBGM
- サウンド演出事例集
(BGM、足音、環境音などADX2データ)
- まとめと質疑応答
アジェンダ
ユーザー視点で考察
迷わせない
聴き心地を最適に→ わかりやすさ
音に優先度をつけて制御(不要な音は鳴らさない)
体験を倍増させる
横から、後ろから 声がする実在感
空間にいるという納得感を体験できるようにする VRらしさ
自由度をなるべく制限しない
ステレオミックスの音響はなるべく避ける(音楽は例外?)
本来空間にあるべき音は空間に配置する
音像定位で気を付ける点
制作面
監督の意図・ゲームの意図をねじまげない
ちゃんと意図を組みとり
できるだけコミュニケーションをとる
シーンごとの
聞こえさせるべき音・物理的な表現(距離減衰・遮蔽)
心の声の制御
を押さえておく(意識しておく)
音像定位で気を付ける点
音像定位いろいろ
声の位置・距離感の違い
アニメ的
声の距離が近い 音の位置が記号的(残響付与など)(わかりやすい)
舞台的か
声の距離が遠い 音の位置が物理的(情報量が多い・没入感)
映画的かホームビデオ(GoPro)的か (視点とマイク位置)(画面
or主観空間)
センターを意識して鳴らすか
サラウンド側で鳴らすか
演出ごとに最適なものを選ぶ (視界の範囲・視界の外)
話を聞かせたい場合 長尺 → アニメ・映画的
没入感を強調したい 短尺 → 舞台・ホームビデオ
疲れさせないようにする調整
例:没入シーン(激しい)を連続で長尺にしすぎない
うまく 効果的に それぞれの演出を利用するように心がける
音像定位で気を付ける点
音楽的整合性を可能なかぎり優先する (サウンド屋の意識)
残響による明瞭さ不足を避ける
不必要な残響や、過度なぼかし表現になっていないか
例:声を聞かせたいのにぼやけていないか
音の分離感に気を使う
同時に再生されてもそれぞれ分離して聞こえるように
自然に空間配置できないかなど検討する
→常にどこで鳴るかを気に掛ける (誰もが気にかけてほしい)
例:音源位置不明な音は意図的か・設定ミスか (不明な場合は聞いてほしい)
利用できる音響材料 (サウンド屋の仕事)
音の再生位置、広がり感、音域差、
時間差、音響エフェクトの差など
例:ボイスはセンター、BGMはステレオ、環境音はサラウンド
BGMの帯域と声の帯域、効果音によるダッキング、演出の微調整
遠くの音はハイカット&残響など (データ作成・調整)
音像定位で気を付ける点
◆VRならではの残響と移動効果の話
「ディスクロニア: CA」で挑戦した点
移動が伴うVRで残響変化させたい
- 自由移動x距離変化
- 音源方向とIRリバーブ
- 残響ヘッドロック問題
- 疑似アコースティックサウンド
VRの残響 自由移動 x 距離変化
- ボイスは聞きやすく
- 環境の雰囲気も残す
- 配置に無理がある場合の対処
相反する要望
残響を付与すると不明瞭になる
距離減衰をかけると聞こえなくなる
向きによる変化で不明瞭になる
例:遠くにいるキャラのセリフ
:動き回るキャラのセリフ
:後ろから話しかけるキャラのセリフ
VRの残響 部屋鳴り(実在感)
◆距離感の表現
残響付与+ローパスフィルターで表現
→残響は、場所の空間表現に特徴づけができる
↑音量はほとんど変わらない
(グラフ:右に行くほど遠い)
場の表現としての部屋鳴り
壁や床、天井の質感、空間の広さ
などの
詳細情報を音に追加できる 高級感がでる
- SEはおおむね良い(小さな音量のもの)
- ボイスは聞き取りづらくなりがち
実在感が増す(音響が良い感じに聞える)
↓遠いほど残響がかかる
(グラフ:右に行くほど遠い)
距離が離れると
若干残響が増える
VRの残響 残響に高品質のIRリバーブ
リアルな反響効果
残響の雑味からくる空間情報
負荷が高い(同時に多用できない)
低スペックなマシンでは
ノイズになる
指向性が無い
サンプリングされたものなので
向き・位置による変化がない
飽和しがち
大きな音など響きすぎる傾向がある
静かなシーンに向いている
◆鳴らし分けの必要性
あらかじめ音に残響があるような音は不向き
例:銃声・爆発音 ←なるべくドライな音の方がリアルに感じる、迫力を出したい場合など悩みどころ
爆発音が箱の中で鳴っているみたいになってしまった(正しいのかもだけど、 IR掛けない方が映画的・劇的だったか
も)
気持ち良い音を目指すなら掛けない選択肢も要検討
緻密な残響変化を再現できるので 空間表現がしやすい
反面 サンプリングしたみたいな印象になる面も
部屋なり感は
付与しやすい
VRの残響 構造物とIRリバーブ
エリアによって残響が変わる設定
反響しそうなエリアや
建物近くは響きを変えている
プリセットから
スナップショットを選択する
ことで残響設定
気が付かないくらいの微妙な変化
VRの残響 危機感の表現
◆ボイスの発音場所が動き回る
相手がしゃべりながらこちらを探している
距離の変化が残響だけでは 不十分
危険な状態
このシーン自体は長時間ではないため
少し過剰な距離表現
近接だと声がかなり大きい ←残響も増える
やりすぎると不自然=疲れ・酔いにつながる
(何かの要因が酔いに繋がっている可能性)
→危機状態かなどを BGMの変化でも補う (相乗効果)
例:狙われている時はドラムやブラスが強く鳴る
:隠れいている時は全体に静めになる
ボイスに関しては、
距離で音量変化をつけている
ステルスパートでは敵キャラが発話しながら
近づいてくる
VRの残響 残響ヘッドロック問題
一般的に残響の処理負荷が高いためモノラルの残響が提供さ
れることが多い。
VRでは首を動かせるため、モノラルは不自然
残響が頭に追従し不自然 な現象が起こる
例:部屋鳴りが頭と一緒に動いてしまう
酔いの問題なのではと仮定
InputSeparatorを使うことで、
左右の分離した入力と出力 を得られるため、
残響成分の偏りを作ることができる。
本来固定の結果になりがちのところを
左右差が発生することで回避した
しかし、まだ足りない印象が残った InputSeparatorを使うことで左右の残響成
分の分離が行える
VRの残響 疑似アコースティックサウンド
空間に音が響く現象は、壁に音が跳ね返ってくる音で認知する。
壁に近ければ、最も近い壁から反射音が聞こえてくる。
VRでは首を自由に傾けることができる。
真面目に行うと、あらゆる方向へレイを飛ばして距離を図り、音速分遅延した反射音を提
供することでらしくなるが、それは負荷の問題がおこる。
非常にシンプルに4方向(左右前上)のディレイをリアルタイムに操作することにした
メリット: ゲームの空間内の配置状況によって音が変化する
(空間にいる気がする)
デメリット:近接の壁からも音が発生するため 音像定位が曖昧になる
負荷もかかる
今回は変化のある残響を重視し、音像がぼやけてもよしとすることにしたが、音の濁りが
激しいため、かなり調整で弱めに設定することになった
工夫した点
- 曖昧なのを良いことにレイを飛ばす時間間隔を減らし負荷軽減
(キャラが高速移動しない前提)
- CRIのマルチタップディレイでは水平角度指定のみのため
上下のディレイ位置の変化はディレイの密度での変化で代用
SpatialDelayを使うことで壁反射をとりいれた
VRの残響 疑似アコースティックサウンド
外の空間では反射音の変化はおきない
どの向きでも変わらない
四方が壁に囲まれている場合は効果が高
い
前方が開けている向きであれば、ディレイの
数が変わることで向きや位置の変化が生ま
れる
配信だと伝わらないので体
験してほしい
VRでないと
脳内と脳外の違いはわから
ない
故に2Dコンテンツでは
無視しても問題ないが、
昨今のイマーシブサウンドは
この違いの表現が出始めて
いる
動画では違いが伝わらない
◆やはり疑似なので未解決問題がある 改善したい点
- マルチタップディレイの位置が不自然問題
水平面にしか角度指定できない ディレイ音だけ特定の平面にしか発生しない。
頭を上や下に傾けるとおかしくなる。
ディレイの鳴っている方向を見ても、それが水平面に落とされた位置からに追従してしまう。
- ディレイ音がヘッドロックしている
動的に角度を変更しているが、本来ディレイの音は発生した場所の位置に残っているべきな
のに頭の動きに追従してしまう
例えるなら反射板が頭と一緒に動いているような違和感 (どこまでシミュレーションするか問題)
まだ違和感(疑似アコースティックでも)
◆Unityからネイティブの関数を呼び出すコスト問題
- サウンドは可能な限り高速でパラメータを変化させないと
ぎざぎざした変化がおこる。(量子化問題)
72fpsは12msecほどなので、その間は値が変わらない。(連続変化だとばれてしまう)オーディオ
サーバー周期は4msecくらいなので3段階くらいの補間をしてほしいところもあるかもしれない。
あるいは補間前提のパラメータ指定方法が音的には必要そう。DSP処理側で必要そう
- なるべく多く呼ぶことでごまかせるが、
そもそもエフェクトのパラメータは数が多く(角度、ディレイ時間を
4タップ分)
ネイティブ関数を多く呼ぶことによるコストが高い印象(別スレッドへの呼び出しは何かしらブロックが
発生する←回数分ブロックが増える印象)
- エフェクトパラメータの変更とスナップショット変更が競合している
→ミドルウェアの進化orシグナル処理を自作? そこまでは自分はいけていないが課題
余談:Unityとミドルウェアの問題
VRの残響 まとめ
- ステルスで敵のボイス距離変化に音量変化の誇張表現を加えた
- IRリバーブで雑味のある残響はなかなか良い印象が得られた
- 残響のヘッドロック回避のためにステレオ分離した残響
- 残響変化の単純さ回避のために壁反射を簡易シミュレーションしてみた
- もっと改善・追及したいところ
@tatmos
ボイス(声)にかける効果について
◆現在
空間の部屋の響き・空調音あり 自然(建物内表現)
◆過去回想・メモリーダイブ時
回想エフェクト(ディレイ・エコーが強い)
◆拡張夢(AR)
響きなし・空調音(環境ノイズ)なし (静寂)
◆審問空間・異空間・塔
響き多め
◆審問の再現パートで憑依したとき
フランジャー・ピッチシフター
◆立体音響焼きこみ
一部のカットシーン・かくれんぼ時の遮蔽効果
ボイスのエフェクトの話
ゲームの音楽はどこから鳴っているか
→ 現実的には
ラジオから
スピーカーから
車のラジオ、店内放送
良い感じに聞かせるのが難しい
アニメ的BGM再生 感情を動かすBGM
具体的な再生位置はない → 2D再生
今回はこちら。ただし
なるべく脳内再生にさせないように工夫
(センターを避ける)
音像定位と音楽の定位
オブジェクトオーディオ
チャンネルベースオーディオ
サイド多めサラウンド感のあるス
テレオ再生
Switch版の移植作品を5.1ch環境で遊ぶと
音楽はLRからステレオ再生
LR LsRsの4chから ボイス・SE・環境音が再生 (センターは未使用)
立っている位置で環境音が裏側に勝手に回り込む
例:後ろ側でしまるドアの音がリアスピーカーから出る
→VRミックスをそのまま5.1chにもっていける
(厳密にはセンターと
LFEもケアする必要があるかもですが)
余談・脱線話:イマーシブミックス?
意外な効果 VRミックス→サラウンドミックス
チャンネルベースオーディオ
ここからは、実際の演出で使ったデータから一部抜粋して
どういう意図で作成したかと
実際どうやってADX2ツール上でデータを作成したかの
の説明をします。
実例
タイトル演出 空間に配置されたイマーシブな立体音響配置
◆首の向き応じた変化
ボイスがランダムに空間定位するように
刻んだボイスが並べられている
刻んだタイミングで位置が毎回変化する
ADX2のランダム機能を利用している。
3回ディレイさせて鳴らすことで、ランダム再生時の偏りを軽
減させている。
(ランダムの偏りを指定したいところ)
◆タイトルでの変化
ゲームの進行に合わせて、声の主の生存状態に応じて、声
が聞こえない場合もある。
首動かすと差が現れる
飽きさせるBGMはいらない
→ 飽きさせない・聞き心地の良さを大事に
適度な長さ、繰り返し感を希薄に
主張が強すぎない程度に変化をさせる
体験を倍増させる
→ 熱くなるシーンや泣けるシーンの展開
感情遷移など音楽が伴奏・付き添ってくれる
自由度をなるべく制限しない
→ 音楽的整合性が保てる範囲でのアダプティブミュージック
インタラクティブミュージックで気を付ける点
作曲家の意図・ゲームの意図をねじまげない
→ ちゃんと意図を組みとり できるだけコミュニケーションをとる
→ ゲームがメイン・付随音楽としての徹底(バレエ音楽、舞台音楽、映画音楽的)
大きくとらえるとインタラクティブミュージック
→ 音の止め方・再生のフェードイン、曲の切り替え・飛び道具音響エフェクト
(DJプレイ)
音楽がインタラクティブではなく、ユーザー操作や演出が音楽に合わせる
→ 最強の音楽とゲームの連携は、
分岐しないシューティングゲームや音ゲー、ライブ鑑賞 ( VJ、照明、舞台演出)
音楽的整合性を可能なかぎり優先する
→ 意図しない不協和音・不正なコード展開・不規則リズム(切り替えタイミング)
音の濁り・音の急激な変化など避ける
音程感のある効果音と BGMの濁りが無いか、ビートに同期して演出を切り替えるべきか、
尺感(短すぎ・長すぎ)はないか など
インタラクティブミュージックで気を付ける点
◆音楽とゲームの連携
→ オープニング、エンディング曲
ゲームのシーンに寄り添った内容で、選択したエンディングと相乗効果を生む。
歌詞にも意味がある
- 演出が入る (ただのスタッフロールでは終わらない工夫)
→効果音が入る
→エンディングへの入り方
→いわゆるCパートへのつなぎ
インタラクティブミュージックで気を付ける点
◆重要なセリフのシーン
→ セリフ送りに合わせて楽器が増えたり、横に遷移したり
◆審問・ステルス・パズル・各種インタラクティブパート
→ 要所で楽器が増えたり、横に遷移したり
ピアノ・ギター・ドラム・ベース・ストリングス・シンセ
◆フィールド移動中・イベント発生後のシーン転換
ゲームの進行状況や時刻(昼・夜)に応じてミックスが異なる
ピアノやギターが増える
→イベントのシーケンスに直接埋め込み
インタラクティブミュージックで気を付ける点
謎を解いて扉が開く
話の真相が明かされる
イベント現場で変化
◆寂しい音楽(切ない・死)
オルゴール・アコギソロ・ピアノソロ
◆明るい音楽(日常)
バンド編成・かっこいい系
◆審問パート
ドラマチック系・シリアスなかっこいい系
◆ステルス・移動が多い
アクション映画系
◆パズル
謎解き・不思議系
◆不穏な音楽
ノイズ・アンビエント
◆OP・ED
歌もの
音楽の傾向
◆汎用的な音楽か固有イベントの音楽か
作曲の段階でデザイン
前作アルトデウス:BCでBGM足りなくて追加することがあった
→あらかじめ汎用で使える曲が多め (特定のキャラ・テーマを持たない)
いくつか用意した
→特定用途が途中で変わってしまった曲も (シーンが削られたなど)
違うところで使うなど
汎用音楽vs固有音楽
サウンドデザイン 良きBGMとは
凄く盛り上がる音楽だが
CDでしか最期まで聴けない
使いどころの想定は難しい
オープニング演出と音量効果
オープニングBGM
エンディング・スタッフロールBGM
基本的に再生のみで、
音楽に合わせて映像が作られている。
音は基準よりここだけ+6dB!
体験版や製品で
PV:https://youtu.be/0nKiPNSzZd0?si=ro6tBlKElboOBB6k
サウンドデザイン 良きBGMとは
曲をそのまま流しても十分だが
物語に合わせて
さらにこの部分を聞かせたい
→レイヤー・ブロックで分割
と奮い立たせる物語のあるゲーム
→アドベンチャー
VRでは
没入感
ここはピアノソロルバートで切
なく
とか
ブラスヒットで豪華に
とか
曲数は少なく 細かく扱う想定で作曲
曲数について
多ければ良いのか問題 たくさん用意するのは大変
ユーザーの記憶に残るか否か
記憶に残すことが重要かどうか
少ない曲数でも仕組みや、演出で解決できること
→コンピュータプログラムによる音楽再生
ゲームならではの音楽
開発規模
予算
スケジュール
クオリティ
場所による音楽の変化
◆場所によるBGM変化
市街地などで流れる、特にイベントのない時の通常
曲
6つのレイヤー+拡張夢の7レイヤー
4つのブロックの組み合わせでできている
通常曲はとてもよく流れる
エリアによってミックスが変わる
市街地 (全パート再生)
管理局 (弦なし、ドラムなし)
ゴンドラの市街地側 (弦が消える)
ポートエリア (音少なめ)
移動速度と音楽変化の課題
フィールドの位置で音楽変化
歩いている人・ワープ移動
ゲームのテンポ調整で歩く速度が変化
VRだとワープ移動で瞬間移動してしまうと
音楽の尺を変化が間に合わないなど不自然に
→広いエリアでのゆったりとした変化なら良さそう
→音楽の進行がはっきりしすぎていると音楽的破綻が目立ってしまう
もっと曖昧なピアノフレーズとか 間が多いとか そういうのなら大丈夫そう
市街地での音楽のパート単位でのクロスフェード
市街地の例
ドラムパートはゆっくりとフェードインする
弦は0.5(標準) 5秒かけて
ピアノは0.5(標準)3秒かけて
ギターは0.5(標準) 3秒秒かけて
ドラム・ベースは0.5(標準) 7秒かけて
リズムループは0.5(標準) 5秒かけて
シンセは0.5(標準) 5秒かけて
拡張夢は0 0秒かけて
ドラムベースがあ
とから入ってくる
ピアノ・ギターが
先行
弦が入ってきて
楽器ごとにフェードタイミングを調整
管理局の例
弦は0(無音) 5秒かけて
ピアノは0.5(標準)3秒かけて
ギターは0.5 3秒秒かけて
ドラム・ベースは0 5秒秒かけて
リズムループは0.5 3秒かけて
シンセは0.5 3秒かけて
拡張夢は0 0秒かけて
各パートごとにフェード値と目標値を指定して
エリアが切り替わった時に切り替わる
弦・ドラムベース
はゆっくり消える
ピアノ・ギターが
先行
エリア間で
同じ楽曲
同じパートレベルの場合
継続
リアルタイムエフェクトのみの変化 素材少なく
ホテルのBGM
1章リリース時はエントランスからラウンジにかけて音がクリアに聞こえてくるように
シーンベースで、フィルター設定されていた。
2章以降でホテルでのイベントが増えたため、
イベントドリブンでBGMが変化するように変更された。
→イベントでの変化とシーンでの変化の
両立は難しい(音楽的につなげにくい)
ゆったりとした
空間演出
1曲を細かく分割し ユーザーの進行度や演出に合わせて変化
1章再現パート
7レイヤー、12ブロック
裁判のシーンで現場再現を行う
場所が変わるたびに曲が進行していく
謎解きものの
王道の演出
徐々にパートが
増えていくなど
例:正解が多いと曲のパートが多くなる
条件達成率によるBGMの変化
インタラクティブミュージックの課題
仕組みはできても
どこで どの部分を どのように鳴らすのか
その設定方針や設定作業・調整作業は誰がいつどのように行うのか問題
演出にお願いする場合や
プログラマにお願いする場合 資料のフォーマット・再生の正しさなどの判断やチェックが難しい
サウンドが行う場合 サウンドは理解しているが、仕組みの理解が必要
演出が変わった場合の再調整はいつどのタイミングで行うか
どこまで立ち戻るか(音楽まで変更が必要な場合の対応時間はあるかどうか)
ミドルウェアでできること 波形差し替えでできること
Unity上のパラメータ変更でできること スクリプトの書き換え
うまく取り入れる
ユーザーの進行度に合わせて素材を分割
2章パズルシーンの曲
7レイヤー 17ブロックに分割されてい
る
パズルのシーンは順番に謎を解いて
行く中で、主人公の過去の真実に
迫っていく
後半では雷雨の環境音とともに悲し
い展開が訪れる
謎解きものの
王道の演出
徐々にパートが
増えていくなど
ユーザーの状況に応じて変化
1章ステルスパート
敵に見つからずに ロックを解除していく。
解除するたびにブロックが進む。
敵に見つかるとブラスパートが増える。
しゃがんで隠れている時にもパートの音量が変化する。
最後の鍵を解除するタイミングで曲が終わる。
謎解きものの
王道の演出
徐々にパートが増え
ていくなど
緊迫感による
変化
追加パート
エンディングでの効果音と各パラメータリセット
1章エンディング曲
言語別と長さ別の4バリエーションある
短いバージョンはSwitch版での演出違いに
よるもの。
曲の途中で鐘の音が鳴る
SEは曲側に合わ
せている。
スタッフロールなどの演出も音楽に合わせた
形で作られている。
ピアノ曲のノート単位での再生速度の変わる演出
ピアノの音が(激しい・穏やか)変化する
テンポも変化するためノートごとに音を用意し分割している
時計の針を回転させる方向によって動的に変化する
効果音も合わせて再生される ユーザーインタラクションによる
テンポ変化
ストリーム再生では難しい演出
足音のバリエーション
足音システム
床属性と靴属性で鳴らし分けをしている
カーペット、タイル、木、コンクリート、ガラス、金属、光の
道、泡、沼地、水、金属パイプ、砂
ヒールブーツ、ヒール、ブーツ、革靴、シューズ
足音のバリエーションは
無限にこだわれてしまう
◆ユーザーの移動量・速度に合わせて鳴らす
スティックの傾ける量 × フィールド規定の移動量
◆階段は斜め移動なので多めに鳴る
→あまり早く鳴りすぎないように調整している
足音の鳴らすタイミング
足音のメロディー化
足音の奏でるメロディー
光の道という特殊な世界での足音
BGMのキーに合わせたメロディーの音が鳴る
テーマの音を
ひっそりと
忍び込ませる
メロディー足音の転調対応
光の道のシーンによっては曲が転調してしまう
演出が追加されて
メロディーが合わないことが発覚し
→転調しても問題の無い共通音の足音を追加した
キーの共通音を
割り出して適用
◆主観の足音は足元から鳴らしたい
- 主観のゲームのキャラの足音はどこから鳴る?
LRスピーカーから鳴っている?
非VRでは主観の音はセンターや
LFEなどを使うようだが・・・
- 既存のシステムに足元側に音源が置けない問題
DolbyAtmosの7.1.4chとしても上にしかスピーカーが増えない
- 主観視点で上を見上げた時、顎側の定位はどこになる?
→耳の高さまで移動してしまっている? 異質な音響空間
→酔い・違和感問題
課題
足音の再生位置問題
動画再生ボイスの空間配置とモノローグボイス
水面に過去の回想シーンが流れるに合わせて
音が鳴る
主人公のモノローグボイスは主観
(脳内定位で鳴らせる)
動画内の回想シーンの音は
3D空間で再生
ボイスの
空間的な
競合を避ける
どこから
鳴らすか
特殊な空間での空間配置シンセパッド音
回想シーンでは、足音のキーもタイトルと同じに合わせてあり、
シンセパッドの音が3 D空間でランダムに再生されるようになっている。
基本的にドローン音のような弱い変化で構成されている。
空間に音楽の一部の要素
を配置
普段と違う印象の空間
環境音は短い素材を並べてランダム再生
環境音は断片的な素材を組み合わせ 3D空間に配置するように
再生している
鳥のさえずり、風の音、波の音、空調音
エリアによって異なる音がシーン上に配置されて再生される
細かい断片を
空間配置
ゆらぎを与えつつ
変化をもたせる
短い素材で長時間
ループに感じさない
環境音のガヤボイス
ガヤボイスは、ボイスが魚群から聞こえてくるボイス
拡張夢可能なエリアの数バリエーションが用意されている
(市街地、ポートエリア、ホテルロビー、ラウンジルーム、ゲストルームフロ
ア、ゴンドラステーション、博士の家、管理局)
クラウドファンディングのリターンとして作中のモブセリフに参加する権利と
して集められたボイスを
近接の魚群の位置からランダムに聞こえるようにした。
ボイスと合わせて泡の音も聞こえる。
本編ボイスとかぶらないようにダッキングや
エフェクト効果での差をつけている
雑踏のような声
本編ボイスと
かぶらない工夫
環境音の空調の音
環境音
ほぼすべての空間で空調の音が鳴っている
首を動かすと音像も定位しているのを感じられる
拡張夢は空調の音がしない (息苦しさ)
ロード中でも音は継続
次のシーンの読み込み時に変化する
-48dB付近の音なのでほぼ無音
エリアが建物の中か外か
部屋の広さ
快適な空間か
ラボと居住空間の差
室内・室外の差
風はあるのか
無音は特別な演出のために
とっておく
ロード中などシステム的な都合での意図しな
い無音を避ける
◆VRアドベンチャーサウンドデザイン
これからのVRサウンドを作りたい
- VRサウンドに挑む体制
MyDearestのサウンド人
- 質疑応答
なでなさい
VRアドベンチャーサウンドデザイン VRサウンドに挑む人
サウンドプロデュース
ディレクション
サウンド制作・監修・予算管理
作曲、収録ディレクション
音響監督
サウンドクリエータ
インゲームでの BGMインタラクティブ調
整、演出、SE制作と管理、
外部管理・調整
収録ディレクション・アシスタント
仮歌、仮ボイス
サウンドエンジニア・サウンドプログラム
VRサウンド研究開発、立体音響調整、音量調整、
ADX2データ管理、インタラクティブ楽曲データ調整
ボイスツール、仮合成ボイス生成
プログラム・演出・アニメータ
サウンドリクエストの配置
停止方法、フェード設定
モーションとの同期のための調整作業
インタラクティブ操作による
サウンドリクエスト(UI操作音など)
VRアドベンチャーサウンドデザイン おわりに
VR自体の表現方法も発展途上で、答えが決まっていないため
曲の作り方やフォーマットも変わる可能性もあります。
さらに高度な音響技術や技術革新、スペック向上により
VRに特化したエフェクトや演出技術が開発される余地があります。
新しい体験(VRやXR)に対してユーザーの
耳がVRサウンドの表現に慣れる必要もあります。
(より心地よい立体音響など)
VRゲームサウンド ← 未知のもの (まだまだこれから)
VRゲームサウンドデザインについて情報共有や
新しい話題で盛り上げていきましょう。
@tatmos
質疑応答
と
ADX2データによる
実演
配信だと伝わらないので
体験してほしい!

SIG-AUDIO #22 オンラインセミナー「VRのサウンド演出」VRアドベンチャーゲーム 「ディスクロニア CA」サウンドデザイン.pdf