ソーシャルゲームにおける音声収録から実装までの実態について

1. ソーシャルゲームにおける
音声収録から実装までの実態について

2. 牛島正人（ウシジママサト）
株式会社ソノロジックデザイン/代表取締役
Berklee College of Music Music Synthesis 学科にて音響/音楽理論習得。帰国後サウンドデザイナーとしてキャリアをスタート、WWEシリ
ーズでは約3年間サウンドデザイン/ディレクション/仕様作成/通訳担当。2015年フリーランスサウンドデザイナーとして独立。2021年4月、株
式会社ソノロジックデザインとして法人化。ゲーム業界を中心にサウンドデザイン/ディレクション/仕様作成も含めた統合的なサウンド制作業
務を提供。2017年3月〜2022年3月、audiokinetic株式会社プロダクトエキスパート担当。
過去講演/執筆
● CEDEC2022『誰もいない東京"への没入感を最大限高めるためのサウンド実装』
● CEDEC2020『ゲームサウンドにAmbisonicsは必要？Ambisonicsから紐解くゲームサウンドの3DPanningの可能性』
● 2018 AES International Conference on Spatial Reproduction『Ambisonic Recording and Mixing for Live Music Performance in 3D Space』
● 韓国情報通信産業振興院VR教育センター主催「２０１９海外専門家招待セミナー VR空間でのサウンドデザイン」登壇
● CEDEC2018『ソーシャルゲームでラウドネスコントロールを実現するためのワークフロー構築と考察』
● CEDEC2018『リニアとノンリニアの融合！ VRコンテンツ制作の未来』
● CEDEC2017『基礎から応用 3DサウンドAmbisonicでなにができる？』
● CEDEC2017『サウンドリストはもう不要！？インタラクティブ・サウンドデザインのアウトソーシング事例』
● CEDEC2017『神っているダイアログ（ボイス、台詞）ワークフローの決定版！ 劇的工数削減をモバイル、AAA、VR/ARへ』
● Media Integration Proceed Magazine 2017-2019 『解説VR！深く知るAmbisonicsの世界』
● InterBee2017-2018 Media Integration/Sennheiser Japan Ambisonic Mixチュートリアルセッション

3. 音声収録作業の特徴
1. 数万、数十万ファイルと、膨大なファイル数を扱う
2. かかわる関係者が多い＝予算管理も多岐に
3. データ管理、チームマネジメントやコミュニケーション力が必要
4. 音声はサウンド演出の基準
5. 声はなまもの、作業コストカットには限界あり

4. 音声収録の大まかな流れ
1. シナリオ作成：プランナー、シナリオライター
2. 台詞のデータベース化：管理、プログラムコールのデータベース
3. 配役：声優の依頼、スケジューリング
4. 収録準備：収録資料作成、収録機材と方法
5. 収録：音質、演技、OKだし
6. 整音：トリミング、音量調整、ファイル名
7. 実装：トリガー確認、ゲーム内音量調整、タイミング確認
8. （ローカライズ：言語違いの尺調整、字幕対応）

5. シナリオ作成
企画から上がってくるキャラクター
情報やストーリーライン
● 性別
● 年齢
● 国籍
● 性格
● プロフィール
● 台本資料
ここが決まらないと何も始まらない

6. 台詞のデータベース化
実装管理の為に情報を整理
IDを発行し命名規則を徹底
● キャラクター番号
● シーン番号
● セリフ番号
● アクション番号
● 字幕番号
各チームと連携して命名規則を策定
し、データベースを共有

7. 配役
どの声優に依頼するのか
● 声質
● 演技
● スケジュール
● 歌唱力
● マーケティング
企画、ディレクター等が基本的に判断

8. 収録準備
収録スタジオの機材確認
● 使用DAW
● マイク、マイクプリ、リミッター
● マイキング
● プラグイン処理
● オンライン立ち合いの方法、機材について
● カットシーンの場合は映像必須（mov等）。タイムコードや
字幕表示の準備。
収録台本
● 各声優さんの収録スケジュールに合わせて台本準備
● ト書き台本に変換（個人的には大嫌い）
● 収録時の円滑なコミュニケーションのためにＩＤを用意

9. 収録現場
レコーディングエンジニアと連携
● 音質チェック、リップノイズ、吹かれ
● テイク管理
● 収録時間、休憩時間の管理
● 声優の声の状態チェック
企画側と連携（リモートが多い）
● キャラ設定と演技
● 感情表現
● ストーリーラインの整合性

10. 整音
トリミング
● 不要な空白を削除
● フェードインアウト処理
● 場合によってはセリフの間を調整
音量調整
● 大量のデータなので、基本バッチ処理
● 音量、音圧、ディザリング、EQなど
● 個別チェックで手作業の最終調整
● ラウドネス高すぎ問題
https://www.izotope.jp/jp/products/rx-9/
Waves Vocal Rider Waves Renaissance Comp

11. 実装
トリガー確認
● プログラムコールのデバッグ
● データベースとファイル名の齟齬
ゲーム内音量調整
● 距離減衰
● サイドチェーンダッキング
● モバイル端末向け調整
再生タイミング
● Sequence上でタイミング指定
● プログラム呼び出し
https://docs.unrealengine.com/5.0/ja/animation-notifies-in-unreal-engine/
https://www.audiokinetic.com/ja/courses/wwise301/?source=wwise301&id=Attenuat
ion_Spheres

12. （ローカライズ：言語違いの尺調整、字幕対応）
プロジェクトによって必要な対応が多岐にわたる。
● 多言語収録するのか、しないのか。
● 字幕表示をするのか、しないのか。
● 翻訳の文字数、尺の問題をどうするのか。
● 字幕表示のタイミング、表示サイズ、改行、UIに関する問題をどうするのか。
● Auto Lipsync, STT, TTSなどの技術を導入するのか、しないのか。
プロデューサーと予算と相談

13. まとめ
● 多くの人が関わる為、チームマネジメントが最重要
● 大量のデータを扱う為、ルール作りで作業量が大きく変わる
● ゲームに合わせてデータベースを最適化。エクセル最重要。
● ゲームのサウンド演出は音声が全ての基準。収録段階からバッチ処理まで一
定のクオリティを維持できるワークフローの構築。
● ソーシャルゲームもコンソールゲームも求められるものは変わらない