今回は、マレーシアの健康事情として肥満と糖尿病についてまとめてみた。以前から、マレーシアの肥満と糖尿病は国内で大きな問題とされており、政府も啓もう活動を展開しているが、年々深刻な状況になっている。 世界銀行の報告によると、2019年におけるマレーシアの糖尿病有病率は16.7%であり、これはアジアで最も高い数字となっている。また、世界保健機構の報告書によると、2016年の死亡原因において糖尿病が全体の3%を占めており、無視できない状況とされている。その背景には、国民の37.3%が太りすぎ、12.9%は肥満、そして半数が運動不足という現実がある。 子供たちはさらに深刻な状況に置かれており、マレーシア保健省は2025年までに165万人の子供が太りすぎ・肥満になると予想しており、糖尿病や高血圧、脂肪肝といった疾患が懸念されている。成人においても、現状が続けば2025年までには3人に1人が糖尿病患者になると予想している。 これら背景には、糖分やカロリーの高い食品や飲料を好む傾向にあること、運動をほとんどしない国民性などを挙げることができる。自動車社会であることから通勤・通学でもあまり歩かないし、最近はスマートフォン中心の生活環境がさらに拍車をかけているように感じる。実際の統計資料においても、一人当たりの砂糖消費量は58.2kgで日本の約3.5倍にもなるし、週当たりの運動時間は1~2時間が最も多く、全く運動しない人も10%近くになる。 さらに、糖尿病患者の増加は国の医療負担を増しており、2011年には医療予算の13%を占める20億リンギットが使われている。そのため、政府は2019年7月1日に砂糖税を導入し、非伝染性疾患の社会的有病率を減少を目指しているし、NCD Prevention and Control Program in Malaysia(2016-2025)では2025年までの非感染性疾患の目標値が示されている。こうした措置や政策により、飲料メーカー各社は低糖・無糖をアピールした商品の販売を開始しており、コカ・コーラにおいては2019年第3四半期でCoca-Cola Zeroが2桁成長を記録し、同社の増益に大きく寄与している。実際ハイパーマーケットのマネージャーに聞いた話では、無糖のお茶など飲料は普通に売れているし、最近は健康志向から乳酸菌飲料に対する人気が高いとしていた。 とは言え、マレーシアにおいて肥満と糖尿病は当面は国民が抱える問題として台頭を続けると思われる。ただ、中間層以上は食生活に対して注意を払う傾向になっているし、15年前と比較するとランニングやサイクリングを楽しむ国民は増えており、フィットネスジムの数も確実に伸びてきていると感じる。