精神障害をもつ人々の回復の語りの
テキストマイニング
メンタルヘルスマガジン『こころの元気+』
100の表紙モデル記事における話題の特徴
小 平 朋 江(聖隷クリストファー大学看護学部)
いとう たけひこ(和光大学)take@wako.ac.jp
2017年3月25日(土)
ポスターP2-3-1「地域生活」13:30~14:55
第12回日本統合失調症学会
米子コンベンションセンターBiG SHiP
ポスター会場(情報プラザ)
1
問題
• 小平・いとう(2012)は精神障
害の体験の語りをメディアの
種類に着目し、7つに分類し
た上で統合失調症の闘病記
217冊のリストを作成した。
• 『こころの元気+』は、
(3)「定期刊行物」 ⇒
に位置づけた。
• 表紙に当事者が素顔
で登場し、その語りから
病いの経験を知ること
ができると意義づけた。 2
統合失調症闘病記217冊のリスト化
問題
• 笠井(2015)
「リカバリーのプロセスを歩んだ体験者の語り(ナラ
ティブ)から学ぶことが必要」
• 『こころの元気+』
当事者が表紙モデルになり、その経緯を記した記
事も掲載され、リカバリーの語りの共有を可能にし
ている。
4
目的
• 「私モデルになっちゃいました!」の
記事のテキストを分析する。
• リカバリーをしている人
の語りの表現の特徴を
明らかにする。
5
方法
• 2007年3月号(通巻1号)から、
2015年7月号(通巻101号)までの
「私モデルになっちゃいました!」
100記事の全文をテキストマイニン
グ分析した。
• テキストの量的分析には、
Text Mining Studio Ver.5.2を用いた。
単語の出現回数の多い表現を集計
し、好評語・不評語分析でポジティ
ブに用いられている単語、ネガティ
ブな単語を抽出した。
• 【倫理的配慮】本研究の分析対象は一般に出
版・公開されている雑誌であり、著作権に配慮
し著者の表現や言葉などを改変せず、引用部
分を明示し、出典を明記した。
• 本発表においてメンタルヘルスマガジン『こころ
の元気+』の表紙や記事は、NPO法人コンボの
ホームページおよび雑誌本体より引用しました。 6
結果 基本情報
7
(=記事数)
(=平均文字数)
(タイプ・トークン比
=0.30)
結果
• 100記事中に、
「統合失調症」(44)
「精神分裂病」(1) の記述が確認できた。
• 100表紙に登場したのは、
男性(34) 女性(56)
トランスジェンダーでレズビアン(1)
セクシャル・マイノリティ(1)
男性+女性(2) 男性+男性(1)=松本ハウス
夫+妻(1) 夫+妻+犬(1)
父+母+子(1) 母+子(2)
※表紙および記事の記述内容からの判断8
結果
• 出現頻度の多かった形容詞の上位10単語
「よい」(74)「楽しい」(54)「うれしい」(33)「強い」(18)
「多い」(18)「つらい」(17)「やさしい」(14)「悪い」(14)
「苦しい」(11)「新しい」(9)
• 好評語(ポジティブ表現)の上位単語(名詞)
「経験」「撮影」「人」「笑顔」「気持ち」「時間」
「思い出」「体験」「夢」「症状」「生活」「メイク」「写真」
• 不評語(ネガティブ表現)の上位単語(名詞)
「病気」「気持ち」「具合」「心」「緊張」「調子」「仕事」
「経験」
9
形容詞(上位20位)
10
ポジティブ表現とネガティブ表現
11
名詞(上位20位)
12
原文参照 「よい」「楽しい」「うれしい」
• 私のリカバリー、そして自分の人生をよりよくするための旅は、
元気になり自分の人生をもっとよりよいものにしようと決断した
ところから始まりました。(ジーニー・ホワイトクラフトさん)
• 病気をもって今はよかったと思うからです。(菅原俊光さん)
• 私が統合失調症と言われたのは、二〇代前半でした。何回も
人退院をくり返しましたが、今は毎日楽しくデイケアに通ってい
ます。(藤崎伸一さん)
• 今は統合失調症だからこそできること、セクシュアル・マイノリ
ティだからこそできることをのんびり楽しく自然体でやっていき
たいです。(鈴木里奈さん)
• 「人って変われるんだ」と、ほんの少しでも伝えることができた
らうれしいです。(川北誠さん)
• 夢は、自分が体験したつらさを、苦しんでる人のお役にたてら
れたらうれしいです。(沼田大市さん) 13
原文参照 「統合失調症」
• 私は…統合失調症による幻聴で入院をし…(富山恵梨さん)
• 統合失調症の当事者として、サービス提供者に働きかけをしております。(古川奈都子)
• 僕は二一歳のとき、東京で植木屋の見習いをしていて統合失調症を発病しました。(藤原
直樹さん)
• 私は、統合失調症です。看護師として、大学病院に正職員で勤務していた時期もあります
が…(伊藤克子さん)
• 統合失調症と診断されて一三年になります。(犬嶋哲司さん)
• 二三歳のとき、統合失調症を発病し、もう三一年がたちました。(土屋晴治さん)
• 私たちは、統合失調症です。(小林竜也さん・宗田千麗さん)
• 私の病名は、統合失調症です。平成三年三月、二三歳のときに発病しました。今年で、通
院して二〇年になります。(柳田幸子さん)
• 私は二七歳の統合失調症が発症して一〇年の安達博人と申します。
• ボクの父ちゃんと母ちゃんは、統合失調症という病気なんだって。(中田孝博・幸さん・心く
ん)
• こんにちは!か・が・やで~す!統合失調症をもっておりまして、現在は服薬をしていれば
寛解状態です。(ハウス加賀谷さん・松本キックさん)
• 統合失調症ですが、5年位前から注射のおかげで薬もずいぶん減り、症状も幻聴がなけれ
ば病気でないのかと思うくらいよくなりました。(佐々木長英・池田智香さん)
• はじめまして、梨木と申します。統合失調症と診断されて15年くらい経ちます。(梨木建治
さん)
14
考察
• 記事の内容は、
モデルになった経
過や理由、撮影
中のワクワクした
気持ち、これまで
の人生の振り返り
などが述べられて
いた。
15
考察
• 分析結果より、記事の表現の特徴から、
リカバリーをしている人は、病いと共に生
きる経験をポジティブに捉え、その経験
を人々と共有したい思いから、社会に発
信している人が多いことが示された。
• Ridgway(2001)のいう、病いからくる苦労
にめげずに自らの体験を残すことが当
事者の重要な役割だとする「サバイ
バー・ミッション」が多くの撮影参加者に
みられた。 16
考察
• 小平・いとう(2010)は当事者が闘
病記を書くことにより自分を表現
する重要性を指摘している。モデ
ルの表現活動がリカバリーにとっ
て同様の意義をもつと指摘できる。
17
考察
• 本雑誌は、記事内容のみならず当事者
の登場する表紙それ自体、多様な回復
のあり方が病名や素顔の開示と共に記
述された貴重なものである。
18
謝辞
• このような貴重な研究の機会を下さ
いましたNPO法人地域精神保健福祉
機構・コンボの丹羽大輔さんに記し
て感謝いたします。
【これまでの関連研究】(www.itotakehiko.comからダウンロード可能)
●R130 小平朋江・いとうたけひこ・大高庸平(2010).統合失調症の闘病記の分析:古川奈都子『心
を病むってどういうこと?:精神病の体験者より』の構造のテキストマイニング 日本精神保健看護学
会誌 19(2), 10-21.
●小平朋江・いとうたけひこ (2013) 『こころの病を生きる:統合失調症患者と精神科医師の往復書
簡』の当事者と医者の語りのテキストマイニング 第33回日本看護科学学会学術集会講演集,p639.
●G222 小平朋江・いとうたけひこ (2014) 『当事者が語る精神障害とのつきあい方』の5人の統
合失調症を持つ人たちの回復の語りのテキストマイニング第34回日本看護科学学会学術集会
●G232 小平朋江・いとうたけひこ (2015)当事者研究の可視化:テキストマイニングによる探求 第12
回当事者研究全国交流集会 浦河大会
●G239 小平朋江・いとうたけひこ (2015)ある統合失調症闘病記のリカバリーとヘルパー・セラピー
原則 西純一『精神障害を乗り越えて:40歳ピアヘルパーの誕生』の内容分析およびテキストマイニン
グ 日本心理学会第79回大会
●G244 Kodaira, T.,& Ito, T. (2016, March)Visualization of Tojisha Kenkyu studies: A text mining
approach to recovery (and discovery). Poster session presented at the 19th East Asian Forum of
Nursing Scholars (EAFONS 2016), Chiba, Japan.
●G247 Kodaira, T., & Ito, T. (2016, July) Psychological approach to Tojisha Kenkyu studies of people
with mental illness. Poster session presented at ICP2016,Yokohama.
●G259 Ito, T., & Kodaira, T. (2016, October) Soul and science unite in Tojisha Kenkyu studies of people
with mental illness. Poster Session presented at Global Human Caring Conference Wuhan, China
●小平朋江・いとうたけひこ(2017)浦河べてるの家の当事者研究の語りとリカバリー:テキストマイニ
ング分析 心理科学 38(1) (印刷中)
●G264 小平朋江・いとうたけひこ (2017)精神障害当事者の自己開示とリカバリー:メンタルヘルス
マガジン『こころの元気+』表紙モデルの動機と理由および特集タイトルの分析 日本発達心理学会
第28回大会 ←あさって3/27(月)10:00~広島国際会議場にてポスター発表します。 20
ありがとうございました
• 本研究はJSPS科研費15K11827の助成を受けた。
• ご自由にお取りください。あさって3/27発達心理学会発表。↓
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COI 開示
• 筆頭演者は演題発表に関連し、開示すべきCOI関係にあ
る企業・組織および団体はありません。
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G264小平朋江・いとうたけひこ (2017, 3月). 精神障害をもつ人々の回復の語りのテキストマイニング:メンタルヘルスマガジン『こころの元気+』100の表紙モデル記事における話題の特徴 第12回日本統合失調症学会 米子市