浦河べてるの家におけるビジュアル・ナラティヴ
当事者研究とべてるまつりにおける多様に外在化されたもの
小平朋江 聖隷クリストファー大学 看護学部
いとうたけひこ 和光大学 心理教育学科
2018年9月25日(火)
一般研究発表
「4.臨床,障害」(1AM-043)9:20-11:20前半在席
日本心理学会 第82回大会
仙台国際センター
(展示棟展示室ポスター会場)
1
問題 ビジュアル・ナラティヴとは
2018年1月30日発行 遠見書房
『N:ナラティヴとケア』第9号
やまだようこ編
特集:ビジュアル・ナラティヴー視覚イメージで語る
小平朋江・丹羽大輔・いとうたけひこ
メンタルヘルスマガジンの表紙になる
:精神障がい者の自己開示とリカバリー
ビジュアル・ナラティヴとは、やまだ(2018)
・視覚イメージとことばによって語ること
・多様な生きたイメージとなり、新たなもの語り
を生みやすくなる
・関係性も変革する。人と人が並んで共に
おなじものを見る関係
共同注意をもたらす三項関係
2
浦河べてるの家
ビジュアル・ナラティヴの宝庫
当事者研究とは、
「病気を体験した当事者自身が、仲間や関係者と一
緒に自分の生きづらさの意味を考えたり、解消策な
どについて研究し合う活動」(向谷地,2015)
・素顔と実名で病名や障害を公開して語る
・当事者が「経験専門家」(野村,2017)
3
浦河べてるの家の理念
当事者研究
• 研究テーマとは、
「悩みや行き詰まり」
(向谷地,2009)
• 自己病名とは、
「自分たちで一番実感できる
自己流の病名」
(伊藤知之,2007) 表紙:伊藤知之さん
自己病名:「統合失調症全力疾走依存あわてる誤作動タイプ」
5
自己病名の分析
• 「統合失調症」の表記を含む57の自己病名
を記述内容に沿って4カテゴリーに集約
(分析対象はNPOコンボの雑誌『こころの元気+』120回連載の記事)
「症状とのつきあい」(28)
「自分とのつきあい」(15)
「人とのつきあい」(13)
「仕事とのつきあい」(1)
↓
「 しょう(症)じ(自)ひと(人)し(仕)とのつきあい」
の方法を発見するのがリカバリーのポイント
(小平・いとう,2017;2018) 6
UDR‐Peerサイクル
小平・いとう(2018)
語りを 公開(Uncovery)
対処法を 発見(Discovery)することと
回復(Recovery)は、関連が深い
仲間(Peer)とリカバリーの
プロセスを楽しみながら
「人としてのリカバリー」 (Slade,2013/2017)
を支え合う、「UDR-Peerサイクル」が重要
*2008年から闘病記・手記・当事者研究の研究に
取り組み、当事者が語りを公開する場に居合わせ、
毎年、幻覚妄想大会で知られる「べてるまつり」に参
加。2016年から『こころの元気+』を研究している。
「UDR-peerサイクル」は特に最近の3年間で分析し
た単行本4冊と『こころの元気+』 の254記事から、
公開されたリカバリーの語りにより生成したモデル
といえる。 7
目的
本研究は、
• 浦河べてるの家と当事者研究の実践について、
ビジュアル・ナラティヴの視点からみて、
多様に外在化されたものを整理し分類することの
試みである。
• 精神障害をもつ人のリカバリーへの支援において
ビジュアル・ナラティヴが果たす役割について考察
することである。
https://bethel-net.jp/noho.html 8
方法
• 研究者らは、2008年から約10年に渡り、浦河町で開催の
べてるまつり(当事者研究や幻覚妄想大会が行われる)に
参加してきた。
• 浦河町以外で開催される当事者研究全国交流集会などで
も語りを聞き、資料を収集し、公開された語りの量的質的
な分析に取り組んできた。
• やまだ(2018)が提案している考え方を参照し、
浦河べてるの家および当事者研究にみられる
多様なビジュアル・ナラティヴ
について、公開されている
ものを対象に、その特徴に
注目して整理・分類する。 9
結果1.視覚イメージとことばによるビジュアル・ナラティヴ
1)えがく(書く、描く)
• マンガ、アニメ、イラスト
• グラフィックレコーディング
ホワイトボードで幻聴さんの姿形など体験世界が表現されることで対話を可視化
10
べてるの家における当事者研究18スタイル 1/2
綾屋紗月(2017). 当事者研究をはじめよう!:当事者研究のやり方研究 熊谷晋一郎
(編) みんなの当事者研究 臨床心理学 増刊第9号, pp74-99. より引用 イラストは
鈴木裕子
べてるの家における当事者研究18スタイル 2/2
綾屋紗月(2017). 当事者研究をはじめよう!:当事者研究のやり方研究 熊谷晋一郎
(編) みんなの当事者研究 臨床心理学 増刊第9号, pp74-99. より引用 イラストは
鈴木裕子
1.視覚イメージとことばによるビジュアル・ナラティヴ
1)えがく(書く、描く)
• 当事者研究の執筆は科学論文形式で雑誌や単行本に発表されることがある
• 当事者研究の発表は学術学会と同様に口頭発表やポスター発表で行われること
がある
• 自己病名は医学用語と体験的な表現の両方からなる
佐藤太一さん
雑誌、単行本、ポスター、VR、DVDで発表
自己病名:統合失調症無人島漂着タイプ
多飲水の苦労のメカニズムを研究
13
14
1.視覚イメージとことばによるビジュアル・ナラティヴ
2)うつす(映す、写す、移す)
• パワーポイント(写真、動画)
• 映画(DVD含む)
• 実写にコンピュータ・グラフィックスが加わる(佐藤太一さんの「うらちゅう」)
• ラジオ中継のライブでは見る聞くが同時にある
• スカイプで遠隔地の当事者とリアルタイムで対話する
• テレビで放映(NHK教育番組やニュースなど)される
• バーチャルリアリティによる360度映像で疑似体験
• 「統合失調症『幻聴さん』とつきあう日常」、「統合失調症 幻聴をことばにして、み
んなのものに」(NHK VR)
• https://www.nhk.or.jp/vr/
15
2.身体を活用するビジュアル・ナラティヴ
1)あそぶ(演じる)
• 即興性を特徴としたプレイバックシアターやロールプレイでは、身体を活用して、
幻覚や妄想を演技だけでなく、衣装や小道具などの色や形などにより豊かに表現
し、声による語りやオノマトペ(幻聴さんがぞろぞろ、わいわいがやがや、など)に
よる表現も見られる
• プレイバックシアターでの対話、
「それはいつ頃ですか?」「どんな気持ち?」
などの対話があり、
「役者さんを選んでください」(電波や幻聴さんの役)と続き、
「見てみましょう」で演じられる
16
2.身体を活用するビジュアル・ナラティヴ
2)まとう(着る、着ける)
• 幻聴さんイラスト入りTシャツやポロシャツを着る
• 幻聴さんの形のバッジを身に着ける
3)あじわう(食べる)
• 幻聴さんクッキーつきの幻聴パフェ(幻聴さんを味わう)
• べてる名物の幻聴カレー
17
3.多様な方法で表現するビジュアル・ナラティヴ
1)かなでる(演奏する)
• バンドの演奏に映像(パワーポイントなど)が加わる
2)うたう(歌う)
• 当事者作詞の替え歌により病いの語りをする
• 「幻聴さんありがとう」
と症状とのつき合い方を歌う
• 歌詞がパワーポイントで映像とともに舞台に映し出される
18
考察
19
• やまだ・山田(2018)
「三項関係ナラティヴによる新しい心理支援モデル」
• 向谷地(2015)
「並立的傾聴」「横並び」の関係
• 小平・いとう(2018)
「UDR-Peerサイクル」
「ならぶ」関係の
仲間=ピア、聞き手、読み手
の存在が重要
*当事者研究におけるビジュアル・ナラティヴ
・聴き手にとっては経験の共有が容易に、
・語り手(当事者)にとっては自己開示の経験を
通して「人としてのリカバリー」(Slade,2013/2017)
のプロセスへの道程を導く。
謝辞
• このような貴重な研究の機会を下さいま
した北海道医療大学/浦河べてるの家の
向谷地生良先生、浦河べてるの家の
皆さまに記して感謝いたします。
【これまでの関連研究】(www.itotakehiko.comからダウンロード可能)
●R130小平朋江・いとうたけひこ・大高庸平(2010).統合失調症の闘病記の分析:古川奈都子『心
を病むってどういうこと?:精神病の体験者より』の構造のテキストマイニング 日本精神保健看護学
会誌 19(2), 10-21.
●G201-2小平朋江・いとうたけひこ (2013) 『こころの病を生きる:統合失調症患者と精神科医師の往
復書簡』の当事者と医者の語りのテキストマイニング 第33回日本看護科学学会学術集会講演集
,p639.
●G222 小平朋江・いとうたけひこ (2014) 『当事者が語る精神障害とのつきあい方』の5人の統
合失調症を持つ人たちの回復の語りのテキストマイニング第34回日本看護科学学会学術集会
●G232 小平朋江・いとうたけひこ (2015)当事者研究の可視化:テキストマイニングによる探求 第12
回当事者研究全国交流集会 浦河大会
●G239 小平朋江・いとうたけひこ (2015)ある統合失調症闘病記のリカバリーとヘルパー・セラピー
原則 西純一『精神障害を乗り越えて:40歳ピアヘルパーの誕生』の内容分析およびテキストマイニン
グ 日本心理学会第79回大会
●G244 Kodaira, T.,& Ito, T. (2016, March)Visualization of Tojisha Kenkyu studies: A text mining
approach to recovery (and discovery). Poster session presented at the 19th East Asian Forum of
Nursing Scholars (EAFONS 2016), Chiba, Japan.
●G247 Kodaira, T., & Ito, T. (2016, July) Psychological approach to Tojisha Kenkyu studies of people
with mental illness. Poster session presented at ICP2016,Yokohama.
●G259 Ito, T., & Kodaira, T. (2016, October) Soul and science unite in Tojisha Kenkyu studies of people
with mental illness. Poster Session presented at Global Human Caring Conference Wuhan, China
●G263 小平朋江・いとうたけひこ (2017)精神障害をもつ人々の回復の語りのテキストマイニング:メ
ンタルヘルスマガジン『こころの元気+』100の表紙モデル記事における話題の特徴 統合失調症研
究7(1),第12回日本統合失調症学会プログラム・抄録集 139.
●G264 小平朋江・いとうたけひこ (2017)精神障害当事者の自己開示とリカバリー:メンタルヘルスマ
ガジン『こころの元気+』表紙モデルの動機と理由および特集タイトルの分析 日本発達心理学会第
28回大会論文集 577.
● R207小平朋江・いとうたけひこ(2017)浦河べてるの家の当事者研究の語りとリカバリー:テキスト
マイニング分析 心理科学 38(1),55-62.
21
【これまでの関連研究】(www.itotakehiko.comからダウンロード可能)
●G272 小平朋江・いとうたけひこ(2017)べてるの家の当事者研究における自己病名と研究テーマ
のテキストマイニング:メンタルヘルスマガジン『こころの元気+』を分析対象にして 日本質的心理学
会第14回大会in東京プログラム抄録集,p74.
●R218 小平朋江・丹羽大輔・いとうたけひこ(2018)メンタルヘルスマガジンの表紙になる:精神障が
い者の自己開示とリカバリー N:ナラティヴとケア 第9号 82-88.
●G280 小平朋江・いとうたけひこ(2018)精神障害をめぐる「家族のストーリー」におけるアンカバリ
ー(公開)・ディスカバリー(発見)・リカバリー(回復):連載記事のテキストマイニングからみた家族会
などの活動の重要性 統合失調症研究8(1),第13回日本統合失調症学会プログラム・抄録集 133.
●G281 小平朋江・いとうたけひこ(2018)メンタルヘルスマガジン『こころの元気+』を研究する。 第5
回公益財団法人こころのバリアフリー研究会総会抄録集 ,p35.
第15回当事者研究全国交流集会名古屋大会
10/7(日)愛知淑徳大学長久手キャンパス7号棟
大会テーマ:終わり(尾張)から始まる当事者研究
*現在、参加申し込みは9/25まで延長(事前申込制)
小平・いとうは、ポスター発表申込み中です。
研究テーマは、
「当事者研究を研究する」 22
ありがとうございました
• 本研究はJSPS科研費15K11827の助成を受けた。
• ご自由にお取りください。
23
浦河町とべてるの家
24
べてるまつり会場の様子
25
浦河の町・海・空・牧場
浜松には「じゃんだらにぃ」がある。
静岡県浜松市「じゃんだらにぃ」の活動 http://www.npo-e-jan.com/
じゃんだらにぃとは?
2009年度から始まった取り組みで、精神科利用者が自身の病気の体験や回復までの過程
な
どを、自身の歴史や苦労、楽しみや夢も交えながら語る会です。年1回開催されます。
27
• 現地でこの位置にじゃんだらにぃチラシ現物
を貼る
28
• 演題発表に関連し、開示すべき利益相反は
ありません。
29

G297小平朋江。いとうたけひこ(2018, 9月). 浦河べてるの家におけるビジュアル・ナラティヴ: 当事者研究とべてるまつりにおける多様に外在化されたもの 日本心理学会第82回大会 9月25-27日 仙台国際センター