【問題と目的】 2006年に自殺対策基本法が施行されたが、自死遺児(以下遺児)への支援は十分でない。社会的スティグマや、親が自死であると知らされていない「情報や意思疎通のゆがみ」(大倉,2016)などの問題があり、そもそも遺児の存在が見えにくい。とりわけ、社会的スティグマの付与はセルフスティグマとなり、自尊心や自己効力感を低下させる要因となるため、子どもの発達上の危機と言え、支援が急がれる。水津(2011)は、遺児の手記『自殺って言えなかった。』(自死遺児編集委員会・あしなが育英会,2002)を対象に、「悲嘆(grief)」をめぐる遺児の「語り」の変容可能性について検討し、語りの特徴を見出すとともに、スティグマにより、封じられていた“語り”が可能になった理由が明らかにされていない点を問題にしている。困難がありながら、語れるようになった過程を明らかにすることは、遺児支援のための知見として有効と考え、自死遺児としての体験及び自助グループでの体験が綴られた同手記をテキストマイニング分析し、どのようにして自己開示に至ったか、その契機について検討することを目的とした。