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ユーザ価値をデザインする
システムの概念構造化モデリング手法
ソニーでの経験から
「PReP モデル」開発までの経緯
2
PReP モデル®
プレップモデル

Products Relationship Process の略称

ソニーでのSoC開発プロセス改善の過程で生まれたプロセスの概念構造モデリング手法。

現在は、業務システムの超上流工程、業務や製造プロセス改善など生産的活動のモデル化と
生産活動を支援するシステム要件定義で幅広く用いられている。

日立製作所の超上流工程での標準手法に指定されている。
PReP モデルは、日本での登録商標です。
PReP model は、日本、北米、EU、イギリスでの登録商標です。
3
本日の内容
1. 自己紹介

2. ソニーでの経験からPRePモデル開発の経緯

• ユーザ視点との遭遇

• ユーザ中心設計の推進

• ソフトウェアプロセス改善へ

• プロセス記述手法研究への突然のシフト

• 過去の経験が蘇る

• そしてすべてがつながる

3. システムの概念構造化モデリング手法「PRePモデル」

4. PRePモデルの適用

• 業務/製造プロセス改善とシステム要件定義

• プロセスモデルから見た新製品・新サービス開発

5. SFマンガ駆動システム開発
4
自己紹介
5
1986 2006
田中 康(たなか やすし)

・有限会社ケイプラス・ソリューションズ 代表取締役

・奈良先端科学技術大学院大学 客員准教授

・ソフトウェア設計学研究室

・大阪芸術大学 客員教授
Now
NAIST(奈良先端科学技術大学院大学)
東工大
大阪芸術大学
私(田中)の職歴と現在のポジションです。
6
1986 2006
体験
Now
ユーザ価値と設計をつなげる
NAIST(奈良先端科学技術大学院大学)
東工大
大阪芸術大学
振り返ると、ソニー時代から現在まで同じテーマに取り組んできました。
また、トッパンでの経験が、PRePモデルの構想に影響しました。
7
本日の話のフレームワーク
市場・ユーザ 機械
それは、ユーザと機械の仕様の間をどうやってつなぐかというテーマです。
8
ソニーでの経験からPRePモデル開発の経緯
9
1986 2006
商品部 デザインセンター ソフト設計推進部 SoC事業本部
HI Lab.
• 取扱説明書制作

• ソニーマニュアル制作ガイ
ドライン策定

• オンラインマニュアル開発

• マニュアルの仕様書化

• UIデザイン
ソニー K-plus solutions
凸版印刷
Macintosh ワープロ発売
衛星デジタル放送
商品テストラボ
• HIデザインプロセス研究 

• ソニーUIデザインガイドライン策定

• デジタルオーディオ機器の操作標準策定

• ISO13407規格策定に参画

• デジタルテレビ方法送出規格策定に参画
ISO13407 CMM
カーナビ発売

MD発売
• 全社ソフトウェア
プロセス改善プロ
ジェクト「SE3」

• CBA-IPIリードア
セッサ取得
• 半導体事業
部立直しPJ

• SoCコンカレ
ント開発プ
ロセス設計
研究

• NAIST社会人
学生
• システム開発超上流工程

コンサルティング

• システム開発PBL演習開発

(東工大)

• マンガ駆動設計演習

(NAIST/大阪芸大)
起業
東工大 NAIST/大阪芸大
中大規模ソフトウェア開発PJ
ワープロ
(PRODUCE)
パームトップコンピュータ MD録再機 デジタル放送規格 SEI NAIST
電子事業部
• 微細加工
技術研究
Photomask
PReP model
®
PRePモデルに影響があった経験です。
この表に従って順番に説明します。
10
ユーザ視点との遭遇
11
1986 2006
商品部 デザインセンター ソフト設計推進部 SoC事業本部
HI Lab.
• 取扱説明書制作

• ソニーマニュアル制作ガイ
ドライン策定

• オンラインマニュアル開発

• マニュアルの仕様書化

• UIデザイン
ソニー K-plus solutions
凸版印刷
Macintosh ワープロ発売
衛星デジタル放送
商品テストラボ
• HIデザインプロセス研究 

• ソニーUIデザインガイドライン策定

• デジタルオーディオ機器の操作標準策定

• ISO13407規格策定に参画

• デジタルテレビ方法送出規格策定に参画
ISO13407 CMM
カーナビ発売

MD発売
• 全社ソフトウェア
プロセス改善プロ
ジェクト「SE3」

• CBA-IPIリードア
セッサ取得
• 半導体事業
部立直しPJ

• SoCコンカレ
ント開発プ
ロセス設計
研究

• NAIST社会人
学生
• システム開発超上流工程

コンサルティング

• システム開発PBL演習開発

(東工大)

• マンガ駆動設計演習

(NAIST/大阪芸大)
起業
東工大 NAIST/大阪芸大
中大規模ソフトウェア開発PJ
ワープロ
(PRODUCE)
パームトップコンピュータ MD録再機 デジタル放送規格 SEI NAIST
電子事業部
• 微細加工
技術研究
Photomask
PReP model
®
ソニーでの最初の仕事は取扱説明書の制作でした。
12
PRODUCE1000, 1989.
市場・ユーザ 機械
PRODUCE1000
マニュアル
1000ページ超
ユーザ視点への大きな経験はワープロのマニュアル製作でした。
担当した多機能ワープロPRODUCE1000のマニュアルは1000ページを超えるものでした。
13
PRODUCE1000, 1989.
市場・ユーザ 機械
PRODUCE1000
マニュアル
1000ページ超
当時のマニュアル制作は写植から文字起こしをするため大変な時間がかかるものでした。
そのため、マニュアル制作が製品開発よりも先行することになりました。
14
マニュアルの機能
開発者
ユーザ
仕様
利用
どのように機能するか
利用目的をどう実現するか
マニュアル
マニュアルは機械の仕様をユーザ視点で再構成するものです。
15
外部仕様記述としてのマニュアル
市場・ユーザ 機械
マニュアル
1000ページ超
ユーザ
利用の観点から見た機能構造
外部機能要求定義書
PRODUCE1000, 1989.
先行して制作をはじめたマニュアルが、
機械の外部機能の要求定義書として機能したのです。
16
機能構造設計としてのUIデザイン
市場・ユーザ 機械
Palm Top PTC-500
UIデザイン

GUIのアイコンデザインではない
ユーザ
利用の観点から見た機能構造とGUIデザイン
外部機能・操作仕様要求定義
ワープロでの実績から、Palm Topコンピュータ開発では、
ユーザ視点から見た機能構造とGUIデザインを担当するこよとになりました。
17
ユーザ視線による商品開発
黒木靖夫さん
渡辺英夫さん
本社
  デザインセンター
CSセンター
  デザインセンター
  商品テストラボ
  お客様ご相談センター
このようなユーザ視点からの商品開発は、当時のソニーでの重要な戦略でした。
これを推進していたのは、黒木さんと渡辺さんでした。
ソニーのロゴをデザイン
された方です。
18
ユーザ中心設計の推進
19
1986 2006
商品部 デザインセンター ソフト設計推進部 SoC事業本部
HI Lab.
• 取扱説明書制作

• ソニーマニュアル制作ガイ
ドライン策定

• オンラインマニュアル開発

• マニュアルの仕様書化

• UIデザイン
ソニー K-plus solutions
凸版印刷
Macintosh ワープロ発売
衛星デジタル放送
商品テストラボ
• HIデザインプロセス研究

• ソニーUIデザインガイドライン策定

• デジタルオーディオ機器の操作標準策定

• ISO13407規格策定に参画

• デジタルテレビ方法送出規格策定に参画
ISO13407 CMM
カーナビ発売

MD発売
• 全社ソフトウェア
プロセス改善プロ
ジェクト「SE3」

• CBA-IPIリードア
セッサ取得
• 半導体事業
部立直しPJ

• SoCコンカレ
ント開発プ
ロセス設計
研究

• NAIST社会人
学生
• システム開発超上流工程

コンサルティング

• システム開発PBL演習開発

(東工大)

• マンガ駆動設計演習

(NAIST/大阪芸大)
起業
東工大 NAIST/大阪芸大
中大規模ソフトウェア開発PJ
ワープロ
(PRODUCE)
パームトップコンピュータ MD録再機 SEI NAIST
電子事業部
• 微細加工
技術研究
Photomask
PReP model
®
ユーザ視点での商品開発をさらに推進するために、HIラボ設立に参加しました。
20
esign
D
U
I
as
ser
nterface
yasushi tanaka
Sony Human Interface Lab. 1995
ユーザインタフェース設計の指針と方法, 1995
HIラボ在籍時には、ユーザインタフェースを、単なるGUIデザインとしてではなく、
開発プロセスの位置付けとして定義したガイドブックを書き起こしました。
ソニーの許可を得て、PReP会員に公開しています。
21
MD試作機のインタフェース
1 2 3
4 5 6
7 8 9
0
20 30
10
Read
Write
Move
Enter
7
MD
ユーザ視点を考えるときに印象に残っているのはMD(ミニディスク)の
ユーザインターフェース仕様についてです。
22
MD試作機のインタフェース
1 2 3
4 5 6
7 8 9
0
20 30
10
Read
Write
Move
Enter
7
MD
MD試作機開発メンバーは、図のようなテンキーとWriteやReadといった操作系を考えました。
これに対して、「これは使えない」と当時の大賀社長が憤慨しました。
23
MDの概念モデル
MD
将来の音楽の操作系はファイル操作になるのだ!
MD試作機開発メンバーの主張は、将来の音楽の操作系はファイル操作になるというものでした。
その考えかたは、ある意味では正しかったと言えます。
1 2 3
4 5 6
7 8 9
0
20 30
10
Read
Write
Move
Enter
7
24
ユーザの概念モデル分析
MD
しかし、ユーザはどのように考えるのでしょうか。
音楽操作の根底にある概念モデルについてユーザ調査と分析を行いました。
ユーザ
25
デジタルオーディオ機器の操作標準
テープの概念モデル
再生 ポーズ
FW
BW
resume
その結果、音楽の再生コントロールに関しては、テープ媒体のような
シーケンシャルな操作の概念が非常に根強いことがわかりました。
例えば、再生を停止したところからレジューム再生することなど
26
仕様確定の順序
再生
ポーズ
FW
BW
Progress indicator
曲を再生する
ユーザモデル 概念構造定義
再生の進 を把握する
ミュージックプレイヤー
実装
認知モデル
機器の機能の概念とその構造は、ユーザモデルによって定義されます。
27
設計のための要求関係
再生
ポーズ
FW
BW
Progress indicator
曲を再生する
ユーザモデル 概念構造定義
再生の進 を把握する
ミュージックプレイヤー
実装
認知モデル
しかしこれは逆で、機械を設計し実装するためには、機能の概念定義とその構造モデルが 必要 であり、
機能の概念構造を定義するには、ユーザモデルが必要という関係なのです。
28
考えかたの順序が逆
ロイスの有名なウォーターフォールモデル。
重要なことは、「要求を定義してから設計をする」のではありません。
29
考えかたの順序が逆
設計には要求が必要
設計という活動をするためには、その前提として要求を定義することが必要なのです。
30
考えかたの順序が逆
要求はどうやって決まるのか
では、開発活動の最初にある要求はどうやって決まるのでしょうか。
31
これは間違いだったのか?
1 2 3
4 5 6
7 8 9
0
20 30
10
Read
Write
Move
Enter
7
MD
MD開発メンバーの間違いは、機械への要求の間違いではなく、
要求の、さらにその前提にあったと考えられます。
32
エンジニアの責務を巡る

もうひとつの物語
33
1986 2006
商品部 デザインセンター ソフト設計推進部 SoC事業本部
HI Lab.
• 取扱説明書制作

• ソニーマニュアル制作ガイ
ドライン策定

• オンラインマニュアル開発

• マニュアルの仕様書化

• UIデザイン
ソニー K-plus solutions
凸版印刷
Macintosh ワープロ発売
衛星デジタル放送
商品テストラボ
• HIデザインプロセス研究

• ソニーUIデザインガイドライン策定

• デジタルオーディオ機器の操作標準策定

• ISO13407規格策定に参画

• デジタルテレビ方法送出規格策定に参画
ISO13407 CMM
カーナビ発売

MD発売
• 全社ソフトウェア
プロセス改善プロ
ジェクト「SE3」

• CBA-IPIリードア
セッサ取得
• 半導体事業
部立直しPJ

• SoCコンカレ
ント開発プ
ロセス設計
研究

• NAIST社会人
学生
• システム開発超上流工程

コンサルティング

• システム開発PBL演習開発

(東工大)

• マンガ駆動設計演習

(NAIST/大阪芸大)
起業
東工大 NAIST/大阪芸大
中大規模ソフトウェア開発PJ
ワープロ
(PRODUCE)
パームトップコンピュータ デジタル放送規格 SEI NAIST
電子事業部
• 微細加工
技術研究
Photomask
PReP model
®
要求仕様の前提に関する問題は、デジタル放送の送出規格に参加した際にも経験しました。
34
デジタル放送送出規格策定, 1990後半
市場・ユーザ 機械
データ放送
データ放送
1局に割りあてる帯域
ARIB

一般社団法人電波産業会
デジタル放送の中のデータ放送にどれだけの帯域を割り当てるかという問題がありました。
35
デジタル放送送出規格策定, 1990後半
市場・ユーザ 機械
データ放送
データ放送
1局に割りあてる帯域
ユーザ要求調査
グループインタビュー手法
そこで、データ放送サービスに対するニーズ調査を行いました。
36
デジタル放送送出規格策定, 1990後半
市場・ユーザ 機械
データ放送
データ放送
1局に割りあてる帯域
ユーザ要求調査
参加者が自然と本音を語り出すグーループインタビューを開発して調査したところ、
考えていたデータ放送にはニーズがほとんどないことがわかりました。
使わないわよね…
37
デジタル放送送出規格策定, 1990後半
市場・ユーザ 機械
データ放送
データ放送
1局に割りあてる帯域
ユーザ要求調査
そんなものは要らない
報告書
その結果を報告したところ、規格検討メンバーから外されてしまいました。
エンジニアの責務範囲に疑問を持ったひとつの経験でした。
38
ソフトウェアプロセス改善へ
39
第2次ソフトウェア危機
1990年代後半、日本の製造業は組み込みソフト開発で第2次ソフトウェア危機に直面しました。
規模が大きくなった組み込みソフトをうまく作ることができなかったのです。
40
1986 2006
商品部 デザインセンター ソフト設計推進部 SoC事業本部
HI Lab.
• 取扱説明書制作

• ソニーマニュアル制作ガイ
ドライン策定

• オンラインマニュアル開発

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ソニー K-plus solutions
凸版印刷
Macintosh ワープロ発売
衛星デジタル放送
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• ISO13407規格策定に参画

• デジタルテレビ方法送出規格策定に参画
ISO13407 CMM
カーナビ発売

MD発売
• 全社ソフトウェア
プロセス改善プロ
ジェクト「SE3」

• CBA-IPIリードア
セッサ取得
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部立直しPJ

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ント開発プ
ロセス設計
研究

• NAIST社会人
学生
• システム開発超上流工程

コンサルティング

• システム開発PBL演習開発

(東工大)

• マンガ駆動設計演習

(NAIST/大阪芸大)
起業
東工大 NAIST/大阪芸大
中大規模ソフトウェア開発PJ
ワープロ
(PRODUCE)
パームトップコンピュータ MD録再機 デジタル放送規格 SEI NAIST
電子事業部
• 微細加工
技術研究
Photomask
PReP model
®
ソニーも例に漏れずに同じ問題に直面していました。
ソフト設計推進部に異動となり、全社ソフトウェアプロセス改善プロジェクトに参画しました。
41
CMMのアプローチ
市場・ユーザ 機械
開発プロセス改善
Software Engineering Institute - Carnegie Mellon University
ベストプラクティスの現象論的適用
SE3プロジェクト
当時、プロセス改善のアプローチにCMMを採用しました。
これは、うまくいっている開発組織に見られる傾向を真似るというもです。
当時の全社ソフトウェア開発プロセス改善プロジェクト
42
プロセス記述手法研究への突然のシフト
43
1986 2006
商品部 デザインセンター ソフト設計推進部 SoC事業本部
HI Lab.
• 取扱説明書制作

• ソニーマニュアル制作ガイ
ドライン策定

• オンラインマニュアル開発

• マニュアルの仕様書化

• UIデザイン
ソニー K-plus solutions
凸版印刷
Macintosh ワープロ発売
衛星デジタル放送
商品テストラボ
• HIデザインプロセス研究

• ソニーUIデザインガイドライン策定

• デジタルオーディオ機器の操作標準策定

• ISO13407規格策定に参画

• デジタルテレビ方法送出規格策定に参画
ISO13407 CMM
カーナビ発売

MD発売
• 全社ソフトウェア
プロセス改善プロ
ジェクト「SE3」

• CBA-IPIリードア
セッサ取得
• 半導体事業
部立直しPJ

• SoCコンカレ
ント開発プ
ロセス設計
研究

• NAIST社会人
学生
• システム開発超上流工程

コンサルティング

• システム開発PBL演習開発

(東工大)

• マンガ駆動設計演習

(NAIST/大阪芸大)
起業
東工大 NAIST/大阪芸大
中大規模ソフトウェア開発PJ
ワープロ
(PRODUCE)
パームトップコンピュータ MD録再機 デジタル放送規格 SEI NAIST
電子事業部
• 微細加工
技術研究
Photomask
PReP model
®
全社のプロセス改善に取り組んでいる最中、
今度は、SoC(システム・オン・チップ)事業部の立て直しに急遽異動となりました。
44
SoC開発プロセス改善:エンジニアリングプロセスの中身に手を付ける
Requirements
RD TS PI
Ver Val
REQM
Customer
Product and product component
requirements
Requirements
Alternative

solutions
Product

components Product
Product components, work products,
verification and validation reports
Customer needs
The Engineering Process Areas
CMMI エンジニアリングプロセス領域
Black Box
SoCの開発プロセス改善は、CMMのように管理系の改善では解決できないことがわかりました。
CMMは、開発プロセスの中身はブラックボックスなのです。
45
開発プロセス改善アプローチの探求
コンカレント開発プロセス
ハードウェア ソフトウェア
コミュニケーション
ハードウェア
ソフトウェア
制約
As-is
To-be
SoC開発
SoC開発は、開発ライフサイクルが大きく異なるハードとソフトが複雑に関係しあって開発が進みます。
開発コミュニケーションに問題があると睨みました。
46
開発プロセス改善アプローチの探求
コンカレント開発プロセス
ハードウェア ソフトウェア
コミュニケーション
• ウォーターフォール

• Vモデル

• インクリメンタルモデル

• 反復モデル

• RADモデル

• スパイラルモデル

• アジャイル
開発ライフサイクル戦略の問題ではない
開発プロセスをハードとソフトとのコミュニケーションとしてモデル化する方法を探しました。
ソフトウェア工学の教科書にあるようなモデルではうまくいきませんでした。
47
開発プロセス改善アプローチの探求
コンカレント開発プロセス
ハードウェア ソフトウェア
コミュニケーション
• Workflow Diagram

• IDEF

• UML

• BPMN

• Business Object

• …
粒度のばらつき
抽象度定義
複雑
そもそもノーテーションの問題ではない
また、開発プロセスの中身を記述する方法も探索しましたが、どうもうまくいきませんでした。
48
過去の経験が蘇る
49
フォトマスクの線幅不良
プロセスのモデル化方法で悩んでいたとき、トッパン時代の経験を思い出しました。
50
開発プロセス改善アプローチの探求
処理
歩留

30%
半導体のフォトマスクはいくつかの工程を経て作られます。
当時、その歩留まりは30%程度でその多くは線幅不良でした。
51
開発プロセス改善アプローチの探求
Photo Mask
処理
歩留

30%
歩留

80%
モノ(中間成果物と材料)に着目
線幅不良を無くすためにとったアプローチは、作られるモノ(フォトマスク)に着目するものでした。
その結果、線幅不良がほぼ無くなったのです。
20%近くの不良はゴミの付着
52
開発プロセス改善アプローチの探求
コンカレント開発プロセス
成果物 成果物 成果物 成果物
SoCのコンカレント開発にも、開発過程で管理されるモノに着目する成果物視点での
プロセスのモデル化方法を適用してみました。
53
開発プロセス改善アプローチの探求
コンカレント開発プロセス
コミュニケーション
成果物
ハードウェア
成果物
ソフトウェア
成果物
ハードウェア
成果物
ソフトウェア
コミュニケーション コミュニケーション
成果物でプロセスを記述すると、
成果物とコミュニケーションの関係が対応することがわかりました。
54
開発プロセス改善アプローチの探求
コンカレント開発プロセス
コミュニケーション
成果物
ハードウェア
成果物
ソフトウェア
成果物
ハードウェア
成果物
ソフトウェア
コミュニケーション コミュニケーション
概念設計における要求関係
MDで経験したように、工程間の関係は後工程が前工程を要求するという関係でした。
同じように、成果物に紐づくコミュニケーション関係も要求関係となります。
55
そしてすべてがつながる
56
解決しようとしていた問題
市場・ユーザ 機械
開発コミュニケーションのありかた
利用の観点から見た機能構造の設計方法
要求はどこでどうやって決まるべきか
開発プロセス改善アプローチの探求
コンカレント開発プロセス
コミュニケーション
成果物
ハードウェア
成果物
ソフトウェア
成果物
ハードウェア
成果物
ソフトウェア
コミュニケーション コミュニケーション
概念設計における要求関係
要求コミュニケーション構造の問題
この要求関係を っていくと、私が解決したいと考えていた
ユーザの要求と機械の仕様とをつなぐことができるのではないかと考えました。
57
ソフトウェア開発をコミュニケーション問題として捉える考えかた
このような、ソフトウェア開発をコミュニケーションの問題として捉える考えかたは、
実は、すでに提起されていたものなのです。
58
ソフトウェア工学の2つの流れ
2000
1970 1990
W W.Royce
Water

fall

model
Michael Jackson
Problem
Frames
SW-CMM
CMMI
The Elements
of Friendly
Software
Design
Paul Heckel
Christiane Floyd
A Paradigm
Change in
Software
Engineering
Bashar Nuseibeh
Requirements 

engineering:

a roadmap
ソフトウェア開発:ステークホルダー間の相互学習およびコミュニケーションの活動
ソフトウェア開発:構築とプロジェクト管理
ソフトウェア開発を構築とプロジェクト管理として捉える考えかたとは別の流れに
ソフトウェア開発を学習とコミュニケーションとして捉える考えかたがあります。
59
A Paradigm Change in Software Engineering
ソフトウェア開発:
•ステークホルダー間の相互学習およびコミュニケーションの活動である
3つの重要な概念:
•参加型デザイン(Participatory Design)
•Activity Theory
•認知言語学
Christiane Floyd, A Paradigm Change in Software Engineering , ACM SIGSOFT News Letter, April 1988.
Floydらによって提起されたこの考えかたは、しかし、ソフトウェア工学の本流とはならずに
今日に至っています。
60
システムの概念構造化モデリング手法
PReP model
®
このようにしてたどり着いたプロセスのモデル化方法がPRePモデルです。
61
1986 2006
商品部 デザインセンター ソフト設計推進部 SoC事業本部
HI Lab.
• 取扱説明書制作

• ソニーマニュアル制作ガイ
ドライン策定

• オンラインマニュアル開発

• マニュアルの仕様書化

• UIデザイン
ソニー K-plus solutions
凸版印刷
Macintosh ワープロ発売
衛星デジタル放送
商品テストラボ
• HIデザインプロセス研究

• ソニーUIデザインガイドライン策定

• デジタルオーディオ機器の操作標準策定

• ISO13407規格策定に参画

• デジタルテレビ方法送出規格策定に参画
ISO13407 CMM
カーナビ発売

MD発売
• 全社ソフトウェア
プロセス改善プロ
ジェクト「SE3」

• CBA-IPIリードア
セッサ取得
• 半導体事業
部立直しPJ

• SoCコンカレ
ント開発プ
ロセス設計
研究

• NAIST社会人
学生
• システム開発超上流工程

コンサルティング

• システム開発PBL演習開発

(東工大)

• マンガ駆動設計演習

(NAIST/大阪芸大)
起業
東工大 NAIST/大阪芸大
中大規模ソフトウェア開発PJ
ワープロ
(PRODUCE)
パームトップコンピュータ MD録再機 デジタル放送規格 SEI NAIST
電子事業部
• 微細加工
技術研究
Photomask
PReP model
®
PRePモデルを、開発プロセスの改善だけではなく、
広く適用してみようという思いで2006年に独立起業しました。
62
1986 2006 Now
ソフトウェア開発プロセス改善への適用から
システム開発の超上流工程の適用へ
PRePモデルをシステム開発の要求工程にスコープを伸ばして適用したいと考えていたとき、
日立製作所様から相談をいただきました。
63
日立製作所の課題
市場・ユーザ 機械
要求の曖昧さが
赤字プロジェクトの原因に
要求
日立製作所では、顧客と合意した要求の曖昧さが
プロジェクトの赤字の原因となっていると分析されていました。
64
ユーザと機械の間をつなぐ技術
市場・ユーザ 機械
PReP model
®
そこで、顧客と開発するITシステムとの間をつなぐ技術として
PRePモデルを適用してみようということになりました。
65
ユーザと機械の間には何があるのか
市場・ユーザ 機械
?
ところで、顧客と機械との間には何があるのでしょうか。
66
ユーザと機械の間には何があるのか
市場・ユーザ 機械
従来の考えかたは、そこには顧客の要求があるというものです。
しかし、それではうまくいかなかったのです。
要求
67
思考法に関する型
【システム】

組織的で複雑
ランダムの度合い
複雑さ
【大集団】

非組織的で複雑
【機械】

組織的で単純
Gerald Weinberg. An Introduction to General Systems Thinking. John Wiley, 1975.
この図は、人の対象の理解の方法を分類したものです。
ワインバーグが一般システム思考で示しました。
68
思考法に関する型
【システム】

組織的で複雑
ランダムの度合い
複雑さ
【大集団】

非組織的で複雑
【機械】

組織的で単純
Gerald Weinberg. An Introduction to General Systems Thinking. John Wiley, 1975.
市場・ユーザ
機械
市場やそこで生まれるユーザニーズは、統計的に扱う大集団です。
機械は、構成される要素の和として仕様が記述できるものです。
69
思考法に関する型
【システム】

組織的で複雑
ランダムの度合い
複雑さ
【大集団】

非組織的で複雑
【機械】

組織的で単純
Gerald Weinberg. An Introduction to General Systems Thinking. John Wiley, 1975.
市場・ユーザ
機械
大集団と機械との間にあるものが(一般)システム(以下「システム」)として定義されています。
システムは組織的に動くが、要素の和として単純に記述できない複雑性を持つものです。
70
PReP model のシステム設計への適用
市場・ユーザ 機械
システム
PReP model
®
システムの記述が「モデル化」です。
PRePモデルはシステムを記述、すなわち分析し設計する方法として位置づけることができます。
71
システムモデル
システム
環境
境界
入力 出力
それでは、システムのモデル化について改めて考えてみましょう。
図は、一般的なシステムの概念図です。システムは、入出力を持つあるひとまとまりのものです。
72
工学的思考法
必要な値 手続き 解
アラン・チューリング
Alan Mathison Turing (1912-1954)
手続的計算の概念
システムの内部手続きに対する関心は、チューリングの計算モデルとして知られているように
工学的な思考と関心ごとの基盤になっています。
73
工学的関心ごと
システム
環境
境界
入力 出力
手続きの構築
同様に、システムの設計も、その手続の中身とその構築が、
工学の重要な関心ごととなっています。
74
システムの価値は何によって評価されるか
しかし、システムの機能、すなわちシステムの働きとしての価値は
どの視点から評価されるでしょうか。それはシステムの内部設計にあるのでしょうか。
75
システムの評価
システム
環境
境界
入力 出力
システムの外部から評価
システムの価値は、システムからの出力が外部に対する働きとして評価されます。
つまり、出力物がシステムの機能として「そのシステムは何か」を表します。
76
システム機能の評価
システム
環境
境界
入力 出力
システムの外部から評価
要求
また、システムへの入力は、システムが出力を実現するために外部に要求するという関係にあります。
77
成果物間の関係による記述
システム
入力 出力
システム システム
実装対象
システム機能構造モデル
要求
要求
要求
全ページのシステムを、上位システムを構成するサブシステムと考えると、
サブシステムからの入出力の関係の記述がシステムの機能構造のモデルとして考えられます。
78
一般システム
ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィ
Ludwig von Bertalanffy(1901年 - 1972年)
概念システム

Artificial:純粋な人工物(記号によって記述される)
抽象システム
実在システム
ハーバート・アレクサンダー・サイモン
Herbert Alexander Simon(1916年 - 2001年)
サイモンによると、記号で記述される概念システムこそがある目的のもとに作られる純粋な人工物です。
実在するシステムは、概念システムの中で実在物が抽象化されて記述されます。
79
成果物とタスクとの関係
タスク視点
成果物視点
実在システム
Aを生成
A B C D
概念実体の状態遷移
構造関係
Bを生成 Cを生成 Dを生成
A B C D
システム
要求
システム システム システム システム
積み木で作る家を例に考えると、積み木という成果物で定義される家の組み立て方が概念システムです。
成果物の生成は、実在させる機械への要求としてシステム内で記述されます。
80
成果物視点によるシステムモデル
概念システム
抽象システム
実在システム
システム システム システム
システム実装要件
成果物
システム機能と要求関係を示す成果物関係の定義がシステムの内部機能構造を表す記述であり、
成果物を生成する抽象システムが実在(機械)システムへの要求です。
システムレベルの設計
81
成果物視点によるシステムモデル
概念システム
抽象システム
実在システム
システム システム システム
システム実装要件
成果物
システムレベルの設計
トレーサビリティー確保
抽象システムと実在システムとの関係が
システム開発で重要な、トレーサビリティーの確保になります。
82
PReP model の構成
プロセス 実現手段
分離
ここまでをまとめたPRePモデルの構成を示します。
成果物の関係として構造化したシステムのプロセスとそれを実現する手段との分離の観点は重要です。
83
PReP model のイメージ
コーヒー
抽出された
(量, 味, 温度)
コーヒー豆
かれた
(量, ロースト度, 粒度)
コーヒー豆
ローストされた
(量, ロースト度)
お湯
沸いた
(量, 温度, 硬度)
水
(量, 硬度)
熱
(温度)
抽出速度
コントロールされた
(抽出速度)
プロセス 実現手段
例えば、コーヒーを淹れるプロセスはどのような手段でも構造的には同じです。
同じプロセス構造に対して、要求される品質や制約から、様々な手段を考えることができます。
84
エンジニアの職能領域
市場・ユーザ
機械
システム
価値

(仮説)
要求 要求 要求
システム実装要件
例:1級建築士
例:施工業者
システムレベルの設計
問題は、このようなシステムレベルの設計を誰が行なっているのかということです。
もしくは、行っている人がいるかです。
85
誰がシステムレベル設計を行うか
市場分析と
ゴール仮説
システムレベル
設計
UXデザイン
市場分析と
ゴール仮説
UXデザイン
検証
(Validation)
市場分析と
ゴール仮説
Type 1
Type 2
Type 3
UXデザイン
システムレベル
設計
検証
(Validation)
検証
(Validation)
システムレベル
設計
Type 4
市場分析とゴール仮説
UXデザイン
システムレベル設計
検証
(Validation)
ユーザと機械との間をつなぐシステムレベルの設計が行われる工程では
様々な技能が必要となります。
86
エンジニアの責務(職能)
システムレベルの設計に対する責務を考えることは、
エンジニアの職能の定義にもつながります。
87
新国立、聖火台の置き場なし 場外案に組織委反発

:朝日新聞デジタル 2016年3月3日22時35分
「組織委から聞き取った要望の中に、聖火台を競技場内に置くという話は
なく、(白紙撤回後の)公募時にも設置場所は想定しなかった」(幹部)
聖火台が忘れられたのは「要求がなかったから」であって、
設計者の責任ではないのでしょうか?
88
PRePモデルの適用
それでは、PRePモデルをどのように適用するかについて説明します。
89
業務/製造プロセス改善とシステム要件定義
PRePモデルを、プロセス改善とそこからのシステム要件定義に適用する場合を考えてみます。
90
従来の要求定義
実装
詳細設計 単体テスト
基本設計 結合テスト
ITシステム仕様 ITシステム要件 受入テスト
経営目標 経営評価
業務からの
要求
経営からの
要求
企画からの
要求
SE
従来のシステム開発は、要求の獲得と分析がスタートでした。
91
逆Vモデル
Validation
リバースエンジニアリング
Verification
実装
詳細設計 単体テスト
基本設計 結合テスト
ITシステム仕様 ITシステム要件 受入テスト
As-is業務モデル プロセス評価
経営目標 経営評価
Vモデル
超上流工程
逆Vモデル
設計
プロセスモデル
To-be業務モデル
PRePモデルでは、システムレベルの分析と設計の「逆Vモデル」の中の、
As-is業務のモデル化と分析、そしてTo-be業務プロセスの設計で用います。
92
PReP Tool
1
2
3
4
5
ID 1-1
2018/10/14
Goal
In Out
Actor
ID:o-1
ID:o-3
ID:o-2
ID:o-6
ID:o-5
ID:o-4
業務ゴール
機能グループ1
外部機能1 in
機能要求
操作要求
外部機能2 in
機能要求
操作要求
機能グループ2
外部機能3 in
システムモジュールへの
割り振り
業務目的視点からの
機能グルーピング
モジュール間関係
Entityの入出力関係等
業務プロセス視点から顕
在化した機能・操作要件
システムモジュールA
システムモジュールB
システムモジュールC
システムモジュールD
業務
業務ゴール
業務プロセス
サブプロセス*
機能構造モデル
成果物
処理モデル
プロセス構造
システム要件マトリクス
として変換
PRePモデルでは、設計したプロセスモデルからシステム要求定義を自動構成するツールも利用可能です。
93
宣伝
PReP MODEL

現実世界を設計する

- PRePモデルによる業務レベル設計 -

Amazon出版

188ページ 2,100円(税抜)
PRePモデルについて詳しく説明した書籍が販売中です。
94
プロセスモデルから見た新製品・新サービス開発
PRePモデルを、サービス開発に適用する考えかたについて説明します。
アウトプット
95
製品・サービス開発
環境

(市場・社会)
顧客のビジネスシステム
目的的活動
顧客
価値の評価
手段
リソース
プロセス
サービスは、顧客の目的を持った一連の活動、すなわち顧客のシステムがサービス対象です。
アウトプット
96
製品・サービス開発への適用
環境

(市場・社会)
目的的活動
価値の評価
手段
リソース
製品・サービス提供者
未充足領域
顧客のビジネスシステム
顧客
顧客システムの、目的とするアウトプットを阻害するプロセス上の領域に対する支援が
サービス対象として考えられます。
サービス
97
製品・サービス開発のための6つの問い
アウトプット
環境

(市場・社会)
目的的活動
価値の評価
手段
リソース
製品・サービス提供者
未充足領域
① 顧客は誰?
④ 顧客プロセスは?
⑤ プロセスへの適用手段とリソース制約は?
③ 顧客のアウトプットは?
② 顧客の市場は?
⑥ 顧客の未充足領域は?
顧客のビジネスシステム
顧客
サービスをシステム視点で描くと、
サービスを開発する場合に考えるべき項目とそれらの関係を整理することができます。
98
SFマンガ駆動システム開発
最後に、最近の取り組みについて紹介します。
99
1986 2006
商品部 デザインセンター ソフト設計推進部 SoC事業本部
HI Lab.
• 取扱説明書制作

• ソニーマニュアル制作ガイ
ドライン策定

• オンラインマニュアル開発

• マニュアルの仕様書化

• UIデザイン
ソニー K-plus solutions
凸版印刷
Macintosh ワープロ発売
衛星デジタル放送
商品テストラボ
• HIデザインプロセス研究

• ソニーUIデザインガイドライン策定

• デジタルオーディオ機器の操作標準策定

• ISO13407規格策定に参画

• デジタルテレビ方法送出規格策定に参画
ISO13407 CMM
カーナビ発売

MD発売
• 全社ソフトウェア
プロセス改善プロ
ジェクト「SE3」

• CBA-IPIリードア
セッサ取得
• 半導体事業
部立直しPJ

• SoCコンカレ
ント開発プ
ロセス設計
研究

• NAIST社会人
学生
• システム開発超上流工程

コンサルティング

• システム開発PBL演習開発

(東工大)

• マンガ駆動設計演習

(NAIST/大阪芸大)
起業
東工大 NAIST/大阪芸大
中大規模ソフトウェア開発PJ
ワープロ
(PRODUCE)
パームトップコンピュータ MD録再機 デジタル放送規格 SEI NAIST
電子事業部
• 微細加工
技術研究
Photomask
奈良先端大と大阪芸大とで取り組んでいる
SFマンガ駆動システム開発です。
100
マンガ駆動システム開発とは
マンガ技法そのものを新サービス構想と

要件定義および妥当性検証に応用する
A Manga-Driven System Requirements Development
PBL Exercise
Yasushi Tanaka
Nara Institute of Science and Technology,
Osaka University of Arts,
K-plus Solutions Co. Ltd.
Kobe, Hyogo, Japan
yasushi-tanaka@is.naist.jp
Hajimu Iida
Nara Institute of Science and Technology
Ikoma, Nara, Japan
iida@itc.naist.jp
Yasuhiro Takemura
Osaka University of Arts
Osaka, Japan
yasuhi-t@osaka-geidai.ac.jp
ABSTRACT
We conducted a Project-Based Learning (PBL)-type exercise
incorporating Japanese cartoon (“manga”) techniques into
Requirements Development (RD) processes. Manga has
established techniques, such as those for character setting and
story development, that we thought are also valid for RD
processes. Using this manga-driven method, students were able to
clarify high-level project goals early in the development life-cycle,
and succeeded in defining high quality and unique system ideas.
KEYWORDS
PBL, requirements development, manga
1 INTRODUCTION
In planning this exercise to prepare students for upstream
software development, we had three objectives. First was to
introduce students to the Requirements Development (RD)
process. Added to Capability Maturity Model Integration (CMMI)
in 2000 [1]. 1, the RD process is now considered an integral part
of software engineering. RD is a technique for eliciting customer
needs and translating those needs into product requirements.
Software engineers are required to know not only “how” but also
“what” to develop in software. However, the “what” part of
development is still little taught in most software engineering
courses.
The second objective was to bring interdisciplinary work into the
classroom. When an enterprise develops a new product, it is
usually with a team of specialists from different fields, such as
marketing, design, engineering, and manufacturing. We
envisioned a collaborative exercise with engineering students and
students in design or arts fields working together to reflect a real-
world setting.
The third objective was to explore a novel technique that would
improve the RD process when it comes to building the right
product. This technique would complement other approaches,
such as Design Thinking [2], UX Design [3], and Business
Analysis [4].
To meet these objectives, we decided to create a PBL-type exercise
focusing on upstream development. Cooperation between Nara
Institute of Science and Technology (NAIST), a specialized science
and technology graduate school, and the Character Creative Arts
Department at Osaka University of Arts (OUA) enabled us to
create a mixed class profile of both engineering and arts students
as shown in Fig. 1. Furthermore, participation of manga majors
from OUA gave us the idea of using manga in software
development. In this paper, we explain the manga technique we
experimented with in comparison to conventional methods used
in RD processes, and describe the contents of this exercise, which
started in 2014.
Fig. 1: A mixed course with students of information science
and students of manga majors.
Permission to make digital or hard copies of all or part of this work for personal or
classroom use is granted without fee provided that copies are not made or distributed
for profit or commercial advantage and that copies bear this notice and the full
citation on the first page. Copyrights for components of this work owned by others
than ACM must be honored. Abstracting with credit is permitted. To copy otherwise,
or republish, to post on servers or to redistribute to lists, requires prior specific
permission and/or a fee. Request permissions from Permissions@acm.org.
SEEM'18, May 27-June 3, 2018, Gothenburg, Sweden
© 2018 Association for Computing Machinery.
ACM ISBN 978-1-4503-5750-0/18/05…$15.00
https://doi.org/10.1145/3194779.3194788
ICSE2018>SEEM2018 査読付き論文通過
SFマンガ駆動システム開発とは、UXデザインでよくあるカスタマージャーニーをイラストで表現するといっ
たものではなく、マンガ技法そのものを新サービス構想と要件定義および妥当性検証に応用するものです。
101
漫画技法の体系
マンガ技法の体系です。
漫画では特に、キャラクターの綿密な設計が重要となります。
102
日野日出志 先生
マンガ技法の調査の中で印象に残った、日野日出志先生の言葉を紹介しましょう。
103
マンガの力
ドラえもんの1話1話は覚えていなくても、ある状況設定のとき
に、のび太がどのような行動をとるかは誰でも想像できる。

きちんと設計されたマンガは、自ら物語を語り出す。
これは、キャラクター設計の重要性についての言葉です。
104
クリエイターの仕事
本当の物語は、ストーリーが終わってからはじまる。

私たちの仕事は、漫画が読者の手にわたって、それを読み終えた
あとの、読後の世界観を創り出すことなんだ。
物作りに関わる人にとって、大切な示唆の含まれた言葉だと感じました。
105
PRePモデルへの入力となる価値の仮説と検証への適用
【システム】

組織的で複雑
ランダムの度合い
複雑さ
【大集団】

非組織的で複雑
【機械】

組織的で単純
Gerald Weinberg. An Introduction to General Systems Thinking. John Wiley, 1975.
価値の仮説
PRePモデルの領域
マンガの適用
要求定義
SF漫画駆動開発は、PRePモデルがカバーするシステムレベル設計への入力となる
社会や市場からの要求を仮設する方法として取り組んでいます。
106
SFマンガ駆動システム開発演習授業
奈良先端科学技術大学院大学 大阪芸術大学
【授業形態】奈良先端科学技術大学院大学と大阪芸術大学との文理合同授業

【授業内容】新サービス開発構想フェーズにSFマンガ制作を適用する

【教室】

   ・大阪あべのハルカス24階 大阪芸大スカイキャンパス

   ・コロナ禍の状況によってハイブリッド

【日程】

・初回授業:4月23日(土)

・以降、ほぼ隔週の土曜日15時から2コマ(180分)授業
企業からの参加者募集中!
ご興味がある方は、お問い合わせいただければ、授業参加できます。
107
最近の授業成果
20年度

テーマ「幸せな共感」

作品:メタバース空間におけるコミュニケーションと倫理

内容:AIによって安心なコミュニケーションが約束された空間に、
ある日生じた綻びからコミュニケーション空間が崩れ出した。主人
公たちは真のコミュニケーションのあり方にたどり着けるのか。
21年度

テーマ「2028年のヘルスケア」

作品:両親のハラスメントから立ち直る少年の物語

内容:ある試合の敗戦からラケットを手に取ることをやめた天才卓
球アスリートであったジュン。彼はラケットを再び手にすることが
できるのだろうか。
この手法を用いることによって、2020年には学生はメタバース空間での倫理問題を取り上げました。
また、昨年はメンタルヘルスから立ち直るためのサービスを提案しました。
108
質問
以上、ご清聴ありがとうございました。
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ソニー講演 20220310(説明付)

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