Kokoro-no-care seminar in Sapporo (Naru Fukuchi)

1. 災害とこころのケア活動
～被災後1年を迎えるにあたって～
みやぎ心のケアセンター 福地 成
narufuku@za.cyberhome.ne.jp
2019.8.5 令和元年度 相談援助技術研修 トラウマケア研修 『災害時のこころのケア研修』

2. お話しの流れ
心のケアセンターとは?
急性期に大事だったこと
1
2
心のケアセンターの活動からみえること
宮城県の健康調査からみえること
子どもの反応とその支援
4
5
3
緊急時の対人支援指針6
回復時期による課題7

3. 被災者被災者かつ支援者
外部からの支援者
被災地
さらに外側からの支援者

4. こころのケアセンターとは?

5. 超急性期
急性期
中期
⾧期
回復時期ごとの役割
• 市町村＋保健所
• 災害派遣精神医療チーム
DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)
• こころのケアチーム
• 市町村＋保健所
• 心（こころ）のケアセンター
DMHCC (Disaster Mental Health Care Center)
時
間
経
過

6. そもそも論として・・・
大災害後の精神保健として、どちらが有効なのか?

7. 心のケアセンター, Disaster Mental Health Care Center
1995年1月 阪神・淡路大震災（マグニチュード7.3）
• 1995年6月に兵庫県こころのケアセンター開設
• 組織の再編成をして、研究機能や診療機能を併設して、現在でも稼働している
2004年10月 新潟県中越地震（マグニチュード6.8）
• 2005年8月に新潟県精神保健福祉協会こころのケアセンター開設
• 10年間の活動を経て、2015年3月で終結した
2011年3月 東日本大震災（マグニチュード9.0）
• 2011年12月にみやぎ心のケアセンター開設
• 2012年2月に岩手県こころのケアセンター開設
• 2012年2月にふくしま心のケアセンター開設
2016年4月 熊本地震（マグニチュード7.3）
• 2016年10月 熊本こころのケアセンター開設

8. 当センターの常勤職員推移
（単位:人）
4 3 4
7 8 8
11 121 2
3
2
2 3 3 3
6 6
8
8
8 6
7 713
18
23
25 23
22 20 16
4
6
5
5 3
2 2
2
0
20
40
2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
医師
臨床心理士
精神保健福祉士
保健師
看護師
作業療法士
社会福祉士
事務
30
42

9. Go to the people. Go to the communities.
対象者の生活している場所へ直接『行く』ことを大事にしています

10. 急性期に大事だったこと

11. 職員研修のスライド①

12. 職員研修のスライド②

13. 職域のメンタルヘルス講話でのスライド

14. 心のケアセンターの活動から
みえること

15. 支援方法の推移
（単位:件）
3,302
3,922
4,443 4,538
3,188 3,010
1,190
967
1,043
1,306
1,492 1,903
1,945 1,310
1,566
1,668
1,843
2,131
0
2,000
4,000
6,000
8,000
2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
その他
ケース会議
電話
来所
訪問

16. 相談の経路
0%
20%
40%
60%
本
人
か
ら
の
依
頼
家
族
・
親
族
か
ら
の
依
頼
近
隣
・
職
場
か
ら
の
依
頼
健
康
調
査
_
全
戸
訪
問
に
よ
る
ピ
ッ
ク
ア
ッ
プ
他
の
保
健
医
療
関
係
者
か
ら
の
紹
介
行
政
機
関
か
ら
の
依
頼
そ
の
他
2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度（単位:総支援数に占める割合％）

17. 年代別・性別の相談者推移
0
200
400
600
800
1,000
1,200
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度
2017年度
0
200
400
600
800
1,000
1,200
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度
2017年度
（単位:件）
男性 女性
（単位:件）

18. 疾患分類および発症時期ごとの対象者数
F1
精神作用物質使用による
精神及び行動の障害
F2
統合失調症・統合失調症
型障害及び妄想性障害
F3
気分〈感情〉障害
F4
神経症性障害・ストレス
関連障害及び身体表現性
障害
（単位:総支援数に占める割合 ％）

19. これまでの活動を振り返って
 当センターはアウトリーチが主体だった
• 地域住民支援の手段は「家庭訪問」が主体だった ⇒ 専門職へのSVにシフト?
• 良くも悪くも「健康調査」を足掛かりとしてきた ⇒ 「健康調査」の対象者が減少
• 地域の資源とのつなぎを行ってきた
 対象者は高齢者、働き盛りの男性に多かった
• 高齢者の孤立、男性の雇用や経済面の課題 ⇒ 引きこもりや自死の対策?
 復興時期によって疾患の対象者がシフトするようだ
• 急性期は統合失調症などの「精神病性疾患」
• 少し時間が経ってからうつ病や不安障害などの「神経症性疾患」
⇒ なかなか良くならない住民への対策が必要

20. 宮城県の健康調査からみえること

21. スクリーニングの⾧所と短所
⾧ 所 短 所
 リスクが高い人を発見できる
 早期発見・早期介入ができる
 おおよその分布を知ることができ
る
 100％正しいわけではない
 心身に負担がかかる
 手間ひま、費用がかかる（集計と
解析、謝礼、人員など）

22. K6を用いたスクリーニング
過去1か月のあいだにどれくらい・・・ 全くない 少しだけ ときどき たいてい いつも
① 神経過敏に感じましたか。 0 1 2 3 4
② 絶望的だと感じましたか。 0 1 2 3 4
③ そわそわしたり、落ち着かなく感じましたか。 0 1 2 3 4
④ 気分が沈み込んで、何が起きても気が晴れないように感じましたか。 0 1 2 3 4
⑤ 何をするにも骨折りだと感じましたか。 0 1 2 3 4
⑥ 自分は価値のない人間だと感じましたか。 0 1 2 3 4
過去１ヵ月のあいだ、あなたがどのように感じたかお尋ねします。
 合計24点満点、13点以上を「中等度精神障害相当」とする。
 一般人口では13点以上は3％とされている。
 震災前の宮城県は6％とされている。

23. 『民賃』と『プレハブ』の健康調査結果の推移
0
10
20
30
40
50
60
70
80
0
5000
10000
15000
20000
25000
2011 2012 2013 2014 2015 2016
対象者数
有効回答数
回収率
0
10
20
30
40
50
60
70
80
0
5000
10000
15000
20000
25000
2011 2012 2013 2014 2015 2016
対象者数
有効回答数
回収率
民賃（みなし仮設住宅） プレハブ（応急仮設住宅）
（人） （人）（％） （％）
 年数を経過するにつれて、仮設で生活する住民が減り、健康調査の対象者も減っている
（宮城県被災者健康調査の結果から）

24. ハイリスク者割合の推移
（宮城県被災者健康調査の結果から）
（%） （%）民賃（みなし仮設住宅） プレハブ（応急仮設住宅）
 抑うつ傾向は経年的に減少
 プレハブ仮設には無職の独居高齢者が残る
0
5
10
15
20
25
30
35
40
2011 2012 2013 2014 2015 2016
独居高齢世帯
抑うつ傾向
飲酒傾向
無職
不眠
相談相手がいない
0
5
10
15
20
25
30
35
40
2011 2012 2013 2014 2015 2016
独居高齢世帯
抑うつ傾向
飲酒傾向
無職
不眠
相談相手がいない

25. 子どもの反応とその支援

26. 感情と行動の『出し入れ』
安全地帯 冒険
危険・恐怖
満足・充足

27. 緊急時に必要なのは
『個別のカウンセリング』ではなく『あそび場』だと思う
一般社団法人プレーワーカーズより写真提供

28. づくりが最も大事‼
子どものこころのケアにおいては

29. 子どもにやさしい空間（CFS, Child Friendly Spaces）
 緊急事態のときにいかにして子どもの遊ぶ空間を作るかのマ
ニュアル
 UNICEFが作成したものを翻訳し、日本でも普及している
 場所や設備、時間割、人員の配置など学ぶ
 専門家による講義、グループワーク、ディスカッションで構成
 3時間が標準版
 https://www.unicef.or.jp/cfs/

30. 急性ストレス障害の子ども達
 子どもがえり : 母親にベタベタする、一人で行動できない（トイレ、入浴、
就寝、暗い場所へ行く）、夜泣き、夜尿など。
 びっくり反応 : 大きな音への反応、余震への過剰反応
 過剰な備え : 懐中電灯を枕元に置く、パジャマで眠れない
対応としては「ノーマライゼーション」で説明、リーフレットを配布。
丁寧に面接や家庭訪問を重ねるうちに1～2ヵ月で収束していった。

31. ゲームに没頭する子ども達
 避難所の一角にあるコンセントを占領し、ゲームに没頭する子ども達
 大抵は話しかけても素気なく、返事をしてくれない
 ゲームの内容は殆どが『バトル系』、対戦型で遊ぶ子どもはいない
周囲に保護者はいない。保護者は役所への各種届け出のために外出。
外傷体験を負ったはずなのに、しがみつく対象がない。
退行することができず、ゲームの世界に回避

32. トラウマ体験後のあそび
つらい体験をした子どもは、体験そのものを遊びとして繰り返すことがある
• 地震の後の『地震ごっこ』
• 交通事故の後にミニカー同士を衝突する遊びを繰り返す
• 性被害にあった子どもが人形の服を脱がせる
 無理に中止させる必要はない
 暴走し、他児に悪影響がある場合は制限する

33. 4～6歳
周り（保護者）の様子をみて状況
を理解しようとする
7～12歳
自分の経験から状況を推察する
13～18歳
成人と同様にすぐに理解する
保護者および職員
状況を全て理解する
茫然とする
キョトンと
している
しがみつく
迷惑をかけない
ようにする
手伝いをする
生徒を守るための
行動をとる
自分の子どもの
安否確認をする
ガマンする
落ち着きが
なくなる
罪悪感
0～3歳
何が起きたのかさっぱりわからな
い
あわてる
顔色をうか
がう
泣き叫ぶ
手伝いをする

34. 呼吸をととのえる
風ぐるま 紙風船 しゃぼん玉 吹き上げパイプ
 緊張すると呼吸は浅く、早くなります
 呼吸を深く、ゆっくりするとストレスがやわらぎます
 身体の感覚を味わうようにする

35. 緊急時の対人支援指針

36. 心理的支援の階層
精神医学的な専門治療
低強度の心理的な支援
シンプルな助言や支援
CFS PFA for children
SPR SOLAR program
認知行動療法 TF-CBT EMDR
PFA

37. PFA
Psychological First Aid
サイコロジカル・ファースト・エイド
心理的応急処置

38. アメリカ版PFA
 アメリカ国立トラウマティックストレス・ネットワーク、ア
メリカ国立PTSDセンターが作成
 認知行動療法のエッセンスも含まれているため、ある程度の
知識を有する専門職向け
 あらゆる年代（乳幼児～高齢者）に対応している
 兵庫県こころのケアセンターが中心に翻訳して普及
 http://www.j-
hits.org/psychological/pdf/pfa_complete.pdf#zoom=100

39. WHO版PFA
 世界保健機構（WHO）、War Trauma Foundation、World
Vision Internationalが主体となって作成
 あらゆる緊急事態を想定している
 非専門職を対象として開発されている
 国立精神・神経医療研究センターが主体となって翻訳して普
及している
 http://saigai-kokoro.ncnp.go.jp/pdf/who_pfa_guide.pdf

40. 子どものためのPFA
 WHOが開発したPFAをベースにして、セーブ・ザ・チルドレ
ン・デンマークが子どもに特化した形に再編したもの
 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが翻訳して普及
 日本では一日版（6時間）が普及している
 講義、グループワーク、ロールプレイ、ディスカッションなど
で構成
 要請があった地域に講師を派遣し、研修会をデリバリーしてい
る
 http://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=1596

41. PFAの原則
Look 見る
• 安全確認する
• 急を要する基本的ニーズ
がある人を確認する
• 深刻なストレス反応を示
している人を確認する
Listen 聞く
• 声をかける
• 必要なものや気がかりな
ことについてたずねる
• 人々に耳を傾け、気持ち
を落ち着かせる手助けを
する
Link つなぐ
• 情報を提供する
• 必要な社会的支援と結び
つける
• 自分で問題に対処できる
ように手助けする

42. 反射的な反応
守られている感覚がない
自分で自分を守るための臨戦態勢
（逃げるか戦うか）
衝動的 落ち着きがない 怒りっぽい
少しの刺激にも過剰に反応回避・孤立 脅え・敏感

43. 心理的デブリーフィング
つらい出来事の後、できるだけ早くに介入し、体験の内容に踏み込んで感情の表
出を促すこと
• 元々は消防士のPTSDの予防法としてアメリカで開発されたもの
• 1995年の阪神淡路大震災では主流だった
現在では有害もしくは無効とされている

44. 回復時期による課題

45. 住まいの変化と必要な支援
避難所 仮設住宅 災害公営住宅
• 精神症状の評価
• ノーマライゼーション
• コミュニティーづくり支援
• 孤立の防止
• もう一回コミュニティーづ
くり支援
• 住民の自治体制づくり

46. 時期による取り組みの変化
急性期
• トリアージ:緊急支援
を要する人を発見し、
適切な支援につなげる
• 地域住民に対する
心理教育が中心
中期
• ハイリスクアプロー
チ:簡易なスクリーニ
ングによりハイリスク
を抽出し、フォローす
る
• 地域では非専門職への
普及・啓発が中心
⾧期
• ポピュレーションアプ
ローチ:地域全体を対
象とした健康づくり
• 人材育成、
個々のスキルアップ
（事例検討やSV）
ハイリスクアプローチ
ポピュレーションアプローチ
いまココ??

47. コミュニティーの開閉
大きく開く
• 「猫の手も借りたい」
• 支援者の高揚感
• 力仕事が中心、数日単
位でも受け入れOK
固く閉じる
• 「このままじゃいけな
い」
• 支援者の脱力
• コミュニケーション能
力が必要、数週～数ヵ
月での役割
小さく開く
• 「これからどうしてい
くか・・・」
• 支援者の安定化
• マネージメントや特別
な能力の需要、年単位
での役割
発災から時間が経過するにつれて、地域の支援受け入れ体勢に変化が生じる
時間経過

48. チームとして必要なこと
きちんと事例をみること
ができるようにする
• 事例検討は欠かせない
• 外部からのスーパーバイズ
も大切
• 他流試合も推奨
現状の分析をする
• 情報やデータを収集・分析
する
• 過去の同じ領域の報告を調
べる
• 同じ領域で活動する人々と
のネットワークを構築する
必要な介入を考える
• ポピュレーションアプロー
チもバランスよく行う
• 過剰な焦点化にならないよ
うに気を付ける
• 予防としての観点も大事
いまココ??

50. つながることが大切です
平時からの地域の資源開発を心掛けましょう

51. ここから本日の全体スライドをみることができます
本日より1週間を目途に削除させて頂きます