がんのことだけじゃない、人生のことを話し合おう

旭川医科大学病院緩和ケア診療部
阿部泰之
平成28年度厚生労働省委託事業緩和ケア普及啓発活動
街かどイベント・・・「緩和ケア」が当たり前の世の中になるよう
に
「じぶんできめる」を支える緩和ケア

誰とどんなことを話しますか？
どんなことをじぶんできめますか？

人生は、選択・決定の連続
がんになると、がんが進行すると、より困難で重大な決定を
することになる
いい決定をするにはどうしたらよいのでしょう

自分のことは自分で決めたい
自分で選んだのなら、責任は自分にある
家族に心配はかけたくない
医者の思い通りにされたくない
・・・
「じぶんできめる」は案外難しい

 68才女性
 肺がんの治療中
 今やっている抗がん剤の効果がなくなり、次をどうするか決めな
いといけない
 同時に今後どこで過ごすかについても選択を迫られている
 実は、Aさんは次の抗がん剤に乗り気ではない
 家族（夫、息子夫婦）はしてほしいと思っている

 医師
「僕にまかせておけば大丈夫。明日から次の抗がん剤始めるか
らね」
「具合が悪くなったら入院が一番だから。救急車に乗って病院
に来なさい」
 Aさん
「先生にお任せします・・・」

 医師
「抗がん剤をするとこういうメリットがありますが、良くないこ
とも起こる可能性があります。どれくらい効くかはやってみな
いと。私はあなたではないので決められません。十分説明しま
すので、ご自身で決めてください」
 Aさん
「じぶんで、ね・・・はい・・・」

「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な」できめてもいい？
決められない人、決めたくない人はどうする？
自分で選んだんだからそいつの責任だ？
・・・

針を刺されるのが嫌いなので、点滴は拒否します。でも、が
んの治療はしてください
看てくれる家族はいません。でも、家で身の回りのことを全
部してもらえるようにお願いします
私、絶対死にたくないので、治療はずっと続けてください
・・・望めば叶うわけではない、残念ながら

 じぶんが知る「じぶん」には限界がある
 話し合うことで「じぶん」がわかることがある
 話し合うことで、大切なものに気づくことがある
 話し合うことで、「納得」することができる
 その人にとって一番よい決定をするには、その人の大切にしてい
ること（その人の人生）を知らないといけない

 医師
「たしかに次の抗がん剤の可能性はあります。どうすべきかは人
それぞれ考え方で、変わると思います。治療や、今後のことに
ついて考えを聞かせてもらえませんか？ご家族も含めて一緒に
考えていきましょう」
 Aさん
「はい、実は○○って思ってたんです！」

私たち（緩和ケア）は話し合いたいと思っています
がんのことだけじゃなく、あなたの人生のことを
あなたの「じぶんできめる」を支えるために

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