聖フランシスコ病院　スキンケア1〜皮膚の構造と役割〜

1. スキンケア ①
～ 皮膚の構造と役割 ～
聖フランシスコ病院作成
2015年1月16日作成 Version1

2. スキンケアの定義
皮膚の生理機能を良好に維持する，あるいは
向上させるために行うケアの総称である．
具体的には，皮膚から刺激物，異物，
感染源などを取り除く洗浄，皮膚と刺激物，
異物，感染源を遮断したり皮膚への光熱刺激や
物理的刺激を小さくしたりする被覆，
角質の水分を保持する保湿，皮膚の浸軟を防ぐ
水分の除去などをいう．

3. スキンケアの種類
【 予防的スキンケア 】
皮膚の健康を維持・増進させるスキンケア．
日々のケアで重要となるものである．
【 治療的スキンケア 】
皮膚の健康が損なわれた時に，皮膚の健康を
取り戻すとともに，損傷した皮膚の治癒を促進
するような創傷ケアを応用したスキンケア．

4. スキンケアを正しく理解し，
実践するためには，
まず皮膚の構造，機能を
しっかりと理解しておくことが
必要である．

5. 皮膚の構造と役割
WOC Nursing 2015.1.Vol.3 No.1 P8より引用
＊ 皮膚は全身を覆う人体最大の臓器．
＊ 総面積は1.5～2㎡，重量は体重の
約15％である．
＊ 皮膚は表皮，真皮，皮下組織の3層
構造．
＊ 厚さは各部位で異なり，眼瞼や包皮
が最も薄く，手掌・足底が最も厚い．
＊ 皮膚には爪，毛，汗腺などの皮膚付
属器や血管，リンパ管，神経，筋肉
などが分布している．

6. 皮膚の構造と役割
WOC Nursing 2015.1.Vol.3 No.1 P8より引用
【 表皮 】 4層で構成される．
＊ 基底層では，絶えず新しい細胞
が作られ，分裂を繰り返しながら
表層まで押し上げられ，垢と
なって毎日剥脱している．
＊ この流れを表皮の回転周期
（ターンオーバー）といい
約28日かけて繰り返される．
【 表皮 】

7. 皮膚の構造と役割
【 角質層 】
＊ 角質細胞間脂質（セラミド），皮脂，
天然保湿因子などにより，体内環境
と外部環境のバリアを作っている．
＊ これらに異常があるとドライスキン
などの皮膚疾患が起こる．
WOC Nursing 2015.1.Vol.3 No.1 P8より引用

8. 皮膚の構造と役割
【 真皮 】
＊ 皮膚の弾力性を保つ，膠原線維と弾性
繊維が存在する．
＊ 毛包，脂腺，汗腺があり，さらに血管や
神経が包布に分布しており，主として
表皮への栄養供給や酸素運搬などを
行っている．
WOC Nursing 2015.1.Vol.3 No.1 P8より引用

9. 皮膚の構造と役割
【 皮下組織 】
＊ 真皮と筋膜の間に存在し脂肪組織
が大部分を占めている．脂肪を貯蔵
し外力に対するクッションの役割を
担っている．
また，体温喪失の遮断や保温を行う．
＊ その厚さは，年齢，性別，部位，
栄養状態によって影響される．WOC Nursing 2015.1.Vol.3 No.1 P8より引用

10. 皮膚の構造と役割
【 皮膚付属器：毛・毛包 】
＊ 口唇，手掌・足底，粘膜を除く全身に
分布している．
＊ 機能として触覚機能の補助的な役割
や外力や光線の保護，高温や低温
からの保温を行う．
＊ 頭髪，髭，体毛は見た目の問題も
大きい．WOC Nursing 2015.1.Vol.3 No.1 P8より引用

11. 皮膚の構造と役割
【 皮膚付属器：汗腺 】
＊ エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類
が存在する．
＊ 汗の役割で最も重要なものは，体温を
低下させる作用である．
＊ 汗の過剰漏出はアルカリ性に傾き，
細菌の増殖や真菌感染を助長しやすい．
＊ 加齢とともにエクリン腺は減少し，発汗
能力が低下する．
WOC Nursing 2015.1.Vol.3 No.1 P8より引用

12. 皮膚の構造と役割
【 皮膚付属器：脂腺 】
＊ 毛包に不随する外分泌腺である．
＊ 脂質が合成され，毛孔を経て表皮に
分泌され皮脂膜を形成する．
＊ 皮脂膜はpH4～6の弱酸性を保つ
ことで，感染や有毒物質の侵入を
防いでいる．
WOC Nursing 2015.1.Vol.3 No.1 P8より引用

13. 皮膚の生理機能
静菌・緩衝作用
温度調整作用
経皮吸収作用
免疫機能
排泄作用
ボディイメージ
社会的
コミュニケーション
弱酸性 PH4.5～5.5 バリア機能

14. 皮膚の生理機能
【 静菌・緩衝作用 】
＊ 皮脂膜はpH4～6の弱酸性であり酸外套といわれ，
抗菌作用を発揮する．
＊ pHの異なる刺激物が皮膚に接触すると皮膚の
pHは一時的に刺激物と同じpHへ傾くが，
一定時間経過すると皮膚本来の弱酸性のpHの皮膚へ戻す
はたらき（緩衝能）がある．
＊ この緩衝能により生活の中で身体は細菌にさらされていても感
染が起きにくくなっている．
静菌・緩衝作用
弱酸性 PH4.5～5.5 バリア機能

15. 皮膚の生理機能
【 温度調整作用 】
＊ 脂肪組織による保温
＊ 真皮内の血管収縮による熱放出の抑制
＊ 発汗による熱の放散
【 経皮吸収作用 】
＊ 毛孔，皮脂腺，表皮細胞層を通じて吸収する．
【 免疫作用 】
＊ 各種サイトカインの分泌を行う．
温度調整作用
経皮吸収作用
免疫機能
弱酸性 PH4.5～5.5 バリア機能

16. 皮膚の生理機能
【 排泄作用 】
＊ エクリン汗腺，アポクリン汗腺からの
汗の排泄．
【 社会的コミュニケーション・ボディイメージ 】
＊ 皮膚とその付属器である毛や爪などは「見た目」を
構成する非常に重傷な要素である．
排泄作用
ボディイメージ
社会的
コミュニケーション
弱酸性 PH4.5～5.5 バリア機能

17. 引用・参考文献
・ 排泄と予防的スキンケア，臨床看護，Vol.39 No.6 2013．5 ヘルス出版
・ 渡邊 成・監：キーワードはS・O・W・N・E・T；基礎からわかるスキンケア・ストーマケア・
創傷ケア・栄養支援・排泄ケア．臨床看護 臨時増刊号 Vol.39 No.4 2013．3
ヘルス出版
・ 高齢者のかゆみ－見逃しで痛い眼にあう前に－．WOC Nursing Vol.3 No.1 2015.1
医学出版

18. 2015年1月16日作成 Version1
作成者
聖フランシスコ病院 益冨美津代
辰田由香
山口久美子