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MSA communication disturbance
- 3. 神経難病のコミュニケーション障害に対する支援は重要な課題 3 理由 快適な療養生活を送る上で、コミュニケーションは必須である 直接生命予後には関与しないものの、QOLに大きく影響する 患者のみならず、家族、介護者からのコミュニケーション支援へのニーズは高い
- 4. 当科が行っているコミュニケーション支援 4 「難病コミュニケーション支援研修会」を開催の要望があった場所で行った 平成29年～現在まで、全医療圏で10回開催 対象:医療従事者 内容: コミュニケーション支援の導入方法 コミュニケーション支援に関する制度 相談依頼があった疾患は、全例ALS 岐阜市
- 6. しかしコミュニケーション障害は、ALSだけの問題ではない 6 （補装具費判定状況に関する照会調査 2013） ALS 72.4% 神経筋疾患以外 16.1% MSA/SCD 6.6% 補装具費支給決定内訳 意思伝達装置（レッツチャット）
- 7. しかしコミュニケーション障害は、ALSだけの問題ではない 7 （補装具費判定状況に関する照会調査 2013） 意思伝達装置（伝の心） ALS 72.4% 神経筋疾患以外 16.1% MSA/SCD 6.6% ALS 52.2% 神経筋疾患以外 28.6% MSA/SCD 16.3% 補装具費支給決定内訳 意思伝達装置（レッツチャット） MSA/SCDへの取り組みが必要！
- 8. MSAのコミュニケーション障害の課題 8 声帯開大不全、睡眠関連呼吸障害に対して行われる気管切開術や人工呼吸器など、 難しい治療の自己決定を行う必要がある しかしこの自己決定に関する臨床倫理学的議論はほとんど行われていない その原因の一つに、MSAでは患者の意思表示能力が低いことがあげられる （浅川ら．神経内科. 2016） MSAのコミュニケーション障害に対する支援方法の確立は急務である
- 10. 対象 10 2017年～2018年に当院、往診専門在宅クリニックの2施設へ通院中で コミュニケーション障害を有するMSA 患者 コミュニケーション障害の定義 1） 発語による意思疎通に支障をきたしているもの 2） 発語以外の意思伝達手段を必要とするもの この両者を満たすもの
- 11. 方法 11 stage I 文章にて意思表出が可能 stage II 単語のみ表出可能 stage III yes/noのみ表出可能 stage IV 残存する随意運動はあるが、 yes/noの確認が困難なことがある stage V 全随意運動が消失して意思伝達不能な状態 意思伝達能力のstage分類 （改変:林健太郎ら 臨床神経 2013） コミュニケーション支援介入時の意思伝達状態を以下のstageに分類
- 12. 方法 12 運動機能、認知機能を評価 運動機能の指標 Nsコールが押せるか・・・・・・・・・・・・・ タッチパネルが操作できるか・・・・・・ 一点凝視可能か・・・・・・・・・・・・・・・・・ 関連する機器の入力 スイッチ操作 タッチ操作 視線入力操作 認知機能の指標 簡単な指示動作が可能か（例:指示された文字を選択する） コミュニケーション機器導入後の意思伝達の改善の有無を評価
- 13. 結果 13 コミュニケーション障害を有するMSA 患者6例 男性:女性 MSA-P : MSA-C 罹病期間 気管切開術 4例:2例 4例:2例 平均5.8年（2－9年） 3例（全てMSA-P）
- 14. 結果:臨床的特徴 14 意思伝達 stage分類 年齢・性別 MSA-P/-C 罹病期間 UMSARS part II コミュニケーション Stage I （文章） 51歳女性 MSA-C 5年 33 聞き直しが必要 Stage II （単語） 54歳男性 MSA-P 5年 35 単語レベルの発語 66歳男性 MSA-P 2年 NA 気管切開あり 筆記 Stage III （yes/no） 50歳女性 MSA-P 9年 36 気管切開あり 頷き 72歳男性 MSA-C 8年 34 頷き Stage IV （yes/no不確実） 75歳男性 MSA-P 7年 44 瞬目や足指の微かな動き コミュニケーション障害の程度は罹病期間，重症度と関連する可能性
- 15. 結果:介入結果 15 意思伝達 stage分類 年齢・性別 MSA-P/-C 運動機能 認知機能 介入方法 結果 Nsコール タッチパネル 一点凝視 Stage I （文章） 51歳女性 MSA-C × × × ○ 文字盤 不可 Stage II （単語） 54歳男性 MSA-P ○ ○ ○ ○ 携帯用会話 補助装置 改善 66歳男性 MSA-P ○ ○ ○ ○ 文字盤 （指差し） 改善 Stage III （yes/no） 50歳女性 MSA-P ○ △ △ ○ 文字盤 （指差し） 改善 72歳男性 MSA-C ○ ○ ○ × 文字盤 意思伝達装置 （オートスキャン、 視線入力） 不可 Stage IV （yes/no 不確実） 75歳男性 MSA-P × × × × 意思伝達装置 （視線入力、 脳波） 不可
- 16. 結果:コミュニケーションは改善しうる 16 意思伝達 stage分類 年齢・性別 MSA-P/-C 運動機能 認知機能 介入方法 結果 Nsコール タッチパネル 一点凝視 Stage I （文章） 51歳女性 MSA-C × × × ○ 文字盤 不可 Stage II （単語） 54歳男性 MSA-P ○ ○ ○ ○ 携帯用会話 補助装置 改善 66歳男性 MSA-P ○ ○ ○ ○ 文字盤 （指差し） 改善 Stage III （yes/no） 50歳女性 MSA-P ○ △ △ ○ 文字盤 （指差し） 改善 72歳男性 MSA-C ○ ○ ○ × 文字盤 意思伝達装置 （オートスキャン、 視線入力） 不可 Stage IV （yes/no不確 実） 75歳男性 MSA-P × × × × 意思伝達装置 （視線入力、 脳波） 不可 錐体外路障害の場合，時間をかければ機器の調整可能
- 17. 改善例（50歳女性 MSA－P、意思伝達分類stage III） 17 文字盤（指差し） 穴あき文字盤（フィンガーボード®）
- 18. 結果:運動機能障害（動作時振戦）による機器操作困難 18 意思伝達 stage分類 年齢・性別 MSA-P/-C 運動機能 認知機能 介入方法 結果 Nsコール タッチパネル 一点凝視 Stage I （文章） 51歳女性 MSA-C × × × ○ 文字盤 不可 Stage II （単語） 54歳男性 MSA-P ○ ○ ○ ○ 携帯用会話 補助装置 改善 66歳男性 MSA-P ○ ○ ○ ○ 文字盤 （指差し） 改善 Stage III （yes/no） 50歳女性 MSA-P ○ △ △ ○ 文字盤 （指差し） 改善 72歳男性 MSA-C ○ ○ ○ × 文字盤 意思伝達装置 （オートスキャン、 視線入力） 不可 Stage IV （yes/no不確 実） 75歳男性 MSA-P × × × × 意思伝達装置 （視線入力、 脳波） 不可
- 19. 結果:認知機能障害（指示の理解不良）による機器操作困難 19 意思伝達 stage分類 年齢・性別 MSA-P/-C 運動機能 認知機能 介入方法 結果 Nsコール タッチパネル 一点凝視 Stage I （文章） 51歳女性 MSA-C × × × ○ 文字盤 不可 Stage II （単語） 54歳男性 MSA-P ○ ○ ○ ○ 携帯用会話 補助装置 改善 66歳男性 MSA-P ○ ○ ○ ○ 文字盤 （指差し） 改善 Stage III （yes/no） 50歳女性 MSA-P ○ △ △ ○ 文字盤 （指差し） 改善 72歳男性 MSA-C ○ ○ ○ × 文字盤 意思伝達装置 （オートスキャン、 視線入力） 不可 Stage IV （yes/no不確 実） 75歳男性 MSA-P × × × × 意思伝達装置 （視線入力、 脳波） 不可
- 21. 考察 21 錐体外路障害が主体の運動機能障害の場合、 ゆっくりと時間をかければ、病期に応じた種類の機器使用が可能である 小脳性運動失調が主体の運動機能障害の場合、 動作時振戦によりスイッチ操作が困難となるため、 今後，その選択や操作性改善のための検討を行っていく必要がある 認知機能障害を認める場合、代替コミュニケーション機器の利用が困難となるため、 定期的かつ経時的な認知機能の評価が必要である。 支援する際の課題は何か?
- 22. 結語 22 多系統萎縮症のコミュニケーション障害に影響を及ぼす要因には、 運動機能障害（錐体外路障害，小脳性運動失調）と認知機能障害がある 小脳性運動失調が主体の運動機能障害では、 スイッチの選択や操作性改善のための検討をより詳細に行う必要がある 認知機能障害を認める場合、代替コミュニケーション機器の利用が 困難となるため、定期的かつ経時的な認知機能の評価が必要である