More Related Content Similar to Analysis of Service Interface International Standardization Benefits Similar to Analysis of Service Interface International Standardization Benefits (20) Analysis of Service Interface International Standardization Benefits2. 研究の背景
• 近年、通信、情報、電機などの産業において、
多くの大企業は標準化活動に参画している。
標準化活動への参画の可否判断は、事業戦略に基づいて行われ、事前評価の
過程で便益を定量的に予想することはほとんどない。
三菱電機の標準化戦略
NECの標準化活動の残存課題
標準化活動のコスト・パフォーマンス評価
・標準化活動を行った場合、行わなかった場合の、
製品コスト差異、顧客獲得差異、研究開発の成
功・不成功確率の定量化による、経営層へのア
ピール
出典:第4回事業戦略と標準化シンポジウム
「 One NECとしての標準化活動強化」、原崎
出典:ICT国際競争力強化を目指した標準化・地財戦略シンポジウム
「企業活動で重要性を増す国際標準」、野間口
3
3. 研究の目的
標準化が進められている技術の一つに近年活発化しているサービスインタフェースが
ある。
ネットワーク越しに提供されるサー 例:「Yahoo!地図Web API」ホー
ビス(Webサービス等)の使い方
ムページに地図を表示し、スク
ロールさせたり、吹き出しを表示
したり、ルート再生させたりでき
る
サービスインタフェースの差異は、ソフトウェアにより吸収しやすく、従来
数多く行われてきたソフトウェア製品、ハードウェア製品の標準化とは異な
る便益の性質を持つと考えられる。
• 企業の視点で、サービスインタフェースの国際標準化活動の
有効性、事業への貢献について分析する
– 「事業への貢献」とは、利益を得ること、社会貢献すること。
• 事業戦略にとって、国際標準化活動に参画するべきか、また
参画する場合にはどのような方針で臨むべきかの指針を検討
する
4
4. 標準化のタイプ
法律によ
り義務付
けられる
標準
サービスインタフェースの標準化活動が主に行われるエリ
正の効果 負の効果
公的な標 デジュー 市場強制力がある 当該国内市場限定
準 強制標準 強制法規
ル 寿命が長い 企業関与困難
市場影響度大 合意形成困難
国際機関標準
信頼性高い 改正困難
公開標準 信頼性高い 合意形成困難
合意標準 国内標準
地域特性可能 改正困難
市場の実勢により デファク フォーラム標準 短期間でハイレベルな標準 規格乱立の可能性
事実上の標準とみ ト 業界標準 知財組み込みが容易 信頼性保証なし
なされる規格や製
品
技術的自由度高い 市場拡大機能弱い
単独標準 企業内標準
技術秘匿性高い 信頼性保証なし
非公開標
準 コンソーシアム標 短期間でハイレベルな標準
合意標準 市場拡大機能なし
準 技術秘匿性高い
引用:新宅純二郎、江藤学、「コンセンサス標準戦略」
意思のあるす
べての企業が 同様の目的で形
自発的に合意 成された企業連
によって策定 合で策定、閉鎖
的
7
7. 定量的評価・間接法の目的変数
参考文献(ISO、松浦 四郎訳、
「標準化の便益」 、日本規
名称 変数名 格協会 、1984)に記載の目
品種減尐比 v 的変数群
指数 g
基本収入率 rb
定数 1+q
q
1+k
k
d
全収入の累積現在価値 sa
平均年間収入率 ra
過渡期損益率 st
投資コスト Cinv
運用コストの現在価値 Cn
規格に影響される全活動量のうち期待される実施量 Qj
純収入の累積現在価値 Sn
規格の存続期間中の平均年間純収入 Ra この値で有益性を判断
純利益の累積現在価値 P
投資利益率 Rinv
する。コストを上回る
回収期間 Tpb 便益が得られることを
示すため、プラスであ
る必要がある 13
8. 間接法の計算式
品種減少比 v P0
P1
指数 g 4z
7(z + 7)
基本収入率 rb 1 − v −g
g/n
定数 1+q 1 + i (1 + n × p)
q
1+k 1 + i (1 − rb) −1/t
k
d 1 + (1 − rb)−1/t
2
全収入の累積現在価値 sa −n −n −t −t
1 − (1 + i) 1 − (1 + q) 1 − (1 + i) 1 − (1 + k)
− 1 − rb − −d
i q i k
平均年間収入率 ra i × sa
1 − (1 + i) −n
過渡期損益率 st −t −t
1 − (1 + k) 1 − (1 + i)
d − (1 − rb)
k i
投資コスト Ci
nv Cd + Cp + Ci + Cc
運用コストの現在価値 Cn −n
1 − (1 + i)
Ca
i
規格に影響さ れる全活動量 Qj Q × fj
のうち期待される実施量
純収入の累積現在価値 Sn sa × Qj − Cn
規格の存続期間中の平均年 Ra ra × Qj − Ca
間純収入
純利益の累積現在価値 P Sn − Cinv
投資利益率 Rinv Ra
Cinv
回収期間 Tpb Cinv
Ra
14
9. 定量的評価・間接法の説明変数の本研究での適用指
針
• 説明変数
名称 変数名 本研究
標準化以前の品種数 P0 標準化時点の品種数を「標準化以前の品種数」とする
標準化以後の品種数 P1 標準化時点から過渡期間経過後の品種数を「標準化以後の品種数」とする
活動段階数 一般的なソフトウェア開発工程数に合わせて「10」に設定する
z (企画、基本設計、機能設計、詳細設計、コーディング、単体テスト、機能テスト、
システムテスト、導入、保守)
規格の存続期間 n 10年と仮定する
過渡期間 t Webサービスは短期間の普及が期待されるため2年とする
品種増加率の算定 p 標準化前後1年間の品種数の増加率を最小二乗法による線形近似により算定
利子率 i 10%と設定
開発コスト フォーラム標準、デファクト標準の場合20百万円に設定、デジュール標準の場合50
Cd
百万円に設定
提出コスト Cp 10百万円に設定
実施コスト Ci 5百万円に設定
消費者コスト Cc 5百万円に設定
年間運用コスト Ca 1百万円に設定
規格に影響される活動 100百万円に設定
Q
量
実施率 fj フォーラム標準、デファクト標準の場合0.5、デジュール標準の場合0.75に設定 15
10. 標準化による基本収入の考え方
標準化で価値
貨幣換算価値 が変化
両方を合わせたも
のが、
総 ユーザの便益(価値)
便 標準化自体から得
益 累積総便益 られる基本収入
総
価 Rb
値 供給者が得る価値(利益)
累積台数
引用:京極他、「標準化の経済性分析のための枠踏みの整理」の図5 標
準化の経済的分析の基本モデルイメージを一部変更
18
11. 「標準化の便益」の間接法の妥当性検証
サービスインタフェース以外の実例について、「純利益の累積現在価値」と効果の公表値を比較
3ComのEDI社内標準化の場合
• 間接法 • 公表値
名称 3Com
標準化以前の品種数 30.00
標準化以後の品種数 1.00
活動段階数 10.00 0.86百万ドル 1.3百万ドル
規格の存続期間 10.00
データの出所:3Com社1998年IRおよびドイツ
過渡期間 1.00
記録による品種増加率 0.01 誤差34%で双 Institue of Information Systems,「The
利子率 0.10 Standardization Problem」
開発コスト 125,000.00 方ともプラス
提出コスト 0.00
実施コスト 0.00
消費者コスト
年間運用コスト
0.00
403,000.00
ほぼ一致
規格に影響される活動
890,341.20
量
実施率 1.00
純収入の累積現在価値 988,295.03
規格の存続期間中の平
160,840.47
均年間純収入
純利益の累積現在価値 863,295.03
すべての実例について、算定した便益と現状が一致するため、「標準化の便益」間接法は妥当
20
13. Feed API(Atom Publishing Protocol)の場合
(標準化機関:IETF
出典: http://www.programmableweb.com/apisのデータより 名称 変数名 Feed
14 標準化以前の品種数 P0 4
標準化以後の品種数 P1 12
活動段階数 z 10
12
規格の存続期間 n 10 年
過渡期間 t 2年
10 記録による品種増加率 p 3.8856
利子率 i 0.1
8 開発コスト Cd 50 百万円
提出コスト Cp 5 百万円
実施コスト Ci 2 百万円
6 API数 消費者コスト Cc 0 百万円
年間運用コスト Ca 1 百万円
4 累積 規格に影響される活動量 Q 100 百万円
実施率 fj 0.75
品種減尐比 v 0.333333333
2
指数 g 0.336134454
基本収入率 rb -0.446694706
0 定数 1+q 1.245061469
q 0.245061469
200501
200504
200507
200510
200601
200604
200607
200610
200701
200704
200707
200710
200801
200804
200807
200810
200901
200904
200907
200910 1+k
k
0.91454323
-0.08545677
d 0.915701468
全収入の累積現在価値 sa 1.315339346
平均年間収入率 ra 0.214065421
品種増加率 2007/10 Atom Publishing Protocol仕様公開 過渡期損益率
投資コスト
st
Cinv
-0.414699167
57
12 運用コストの現在価値 Cn 6.144567106
10 規格に影響される全活動量のうち期待さ
y = 0.3238x + 1.15 ×12カ月 れる実施量
Qj 75
8 純収入の累積現在価値 Sn 92.50588383 百万円
6 規格の存続期間中の平均年間純収入 Ra 15.05490659 百万円
純利益の累積現在価値 P 35.50588383 百万円
4 Series1 投資利益率 Rinv 0.264121168
2 回収期間 Tpb 3.786141059 年
Linear (Series1)
0
Atom Publishing Protocolの標準化は、コスト
200610
200701
200704
200707
200710
200801
200804
200807
200810
1年前の想
定品種数 に見合う便益を得られている
標準化前後1年の増加率
22
14. 各APIの分析結果
Atom Publishing
名称 Parlay X 2.1 Open Social OpenSearch OpenID
Protocol
カテゴリ Telephony Social Feed Search Security
純利益の累積現在価
値 -41.3291 44.1478 35.5059 3.1090 78.6741
主要な事業者は20社だが、Parlay OpenIDは、国内で
XをサポートするのはBT, Sprint Mixi, MySpace,Yahoo!など34 Yahoo!、MS LiveSearchなど大 Yahoo!Japan,mixi,BIGLOBE,
のSNS、14の開発者サイトが 手がサポートしているが、 楽天など、海外で
Nextelの2社のみ。よって普及し シェア80超を誇るGoogleがサ
対応し、普及が急速に進んで ポートしていない。便益は小 AOL,Orange,Google,Facebo
ておらず、実際に便益を得られ
いることから、便益が得られ okなど25,000サイトが対
さいと考えられるため、分
ていないと、分析結果と一 ており、分析結果と一 応、5億ユーザが使用して
析結果と一致する可 いる
致する可能性が高い。 致する可能性が高い。 能性が高い。 普及が急速に進んでいる
• 出展
ことから、便益が得られ
Six Apart LiveJournal、
• IDATE,「世界の通信サービス市場」の情報
Blogger, Yahoo, Google, Mixi ており、分析結果と
http://www.gii.co.jp/report/iu64570-telecom-svc.html
• http://wiki.opensocial.org/index.php?title=Main_Page#Container_I など多くのブログソフ 一致する可能性が
nformation
• http://en.wikipedia.org/wiki/Atom_(standard) ト、サイトが対応。分析 高い。
• http://ja.wikipedia.org/wiki/OpenSearch
http://marketshare.hitslink.com/search-engine-market-
結果と一致する可
share.aspx?qprid=4&qpmr=100&qpdt=1&qpct=3&qptimeframe=M
&qpsp=128
能性が高い。
• http://www.janrain.com/openid
間接法の結果は妥当と考えられ、予想以上に便益を得られている場合が多い
と思われる
27
15. 結論
• 仮説:「サービスインタフェースの国際標準化では、
便益を得られないことがある」に対する回答
– 間接法により得られる純利益の累積現在価値は、
現状と比較して妥当な結果を示していると思われ
る
– サービスインタフェースの国際標準化では、便益
を得られないことがありえる
– サービスインタフェースの標準化事例はまだ尐な
いが、今後増加することで、説明変数の精度を高
められると期待できる
28
16. 賛同者を得た標準化の事例
• インテル(ハードウェア)の場合
– CPUに事業コアを置き、データバスインタフェースをオープンにすることで、マザー
ボード、周辺機器などの補完業者を育てイノベーションを促進する戦略を実施
• インテルのビジョンを補完業者に伝達
• 影響力のある補完業者の小グループから合意形成
• 潜在的な補完業者に事業機会を強調
• 業者間の調整などの業界の調整
• 補完業者が相互に接続試験をできる環境を提供
• サン・マイクロシステムズ(ソフトウェア)の場合
– Java Community Process(JCP)のコミュニティ環境を提供し、Javaの育成を事業から分離
• APIをコミュニティの中で標準化
• 補完業者は、グローバルスタンダードの市場を拡大でき、Javaに貢献できるメリット
• リファレンス実装を提供し、補完業者の製品開発を促進
– JCPが迷走しないように、サンがつかず離れずコントロールすることが必要(引用:
http://japan.cnet.com/blog/watanabe/2005/09/23/entry_post_93/)
プラットフォームリーダシップが重要
自社の基盤製品のために、補完企業を巻き込んで、
産業としてのイノベーションを推進すること
29
17. 賛同者を得るための施策
• ハードウェアにおいても、サービスを含むソフ
トウェアにおいても、リーダシップを取ること
が企業優位の手段である
• リーダシップを取るためには、単に標準やプ
ラットフォームを提供するだけでなく情報提供
やリファレンス実装の提供など、サポートが重
要である
• 補完業者がメリットを自覚できるビジネスプラ
ンを示すことも有効と考えられる
30