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サービスインタフェースの
 国際標準化戦略による
  事業効果の分析
    2010/1/16
      中越
研究の背景
• 近年、通信、情報、電機などの産業において、
  多くの大企業は標準化活動に参画している。

 標準化活動への参画の可否判断は、事業戦略に基づいて行われ、事前評価の
 過程で便益を定量的に予想することはほとんどない。

                                    三菱電機の標準化戦略
    NECの標準化活動の残存課題

標準化活動のコスト・パフォーマンス評価
・標準化活動を行った場合、行わなかった場合の、
製品コスト差異、顧客獲得差異、研究開発の成
功・不成功確率の定量化による、経営層へのア
ピール
出典:第4回事業戦略と標準化シンポジウム
「 One NECとしての標準化活動強化」、原崎
                           出典:ICT国際競争力強化を目指した標準化・地財戦略シンポジウム
                           「企業活動で重要性を増す国際標準」、野間口




                                                              3
研究の目的
標準化が進められている技術の一つに近年活発化しているサービスインタフェースが
ある。
        ネットワーク越しに提供されるサー   例:「Yahoo!地図Web API」ホー
        ビス(Webサービス等)の使い方
                           ムページに地図を表示し、スク
                           ロールさせたり、吹き出しを表示
                           したり、ルート再生させたりでき
                           る
サービスインタフェースの差異は、ソフトウェアにより吸収しやすく、従来
数多く行われてきたソフトウェア製品、ハードウェア製品の標準化とは異な
る便益の性質を持つと考えられる。


• 企業の視点で、サービスインタフェースの国際標準化活動の
  有効性、事業への貢献について分析する
  –   「事業への貢献」とは、利益を得ること、社会貢献すること。

• 事業戦略にとって、国際標準化活動に参画するべきか、また
  参画する場合にはどのような方針で臨むべきかの指針を検討
  する
                                                   4
標準化のタイプ
             法律によ
             り義務付
             けられる
              標準
                           サービスインタフェースの標準化活動が主に行われるエリ

                                          正の効果          負の効果
公的な標       デジュー                       市場強制力がある       当該国内市場限定
 準                  強制標準   強制法規
             ル                        寿命が長い          企業関与困難

                                      市場影響度大         合意形成困難
                           国際機関標準
                                      信頼性高い          改正困難

  公開標準                                信頼性高い          合意形成困難
                    合意標準   国内標準
                                      地域特性可能         改正困難

市場の実勢により   デファク            フォーラム標準    短期間でハイレベルな標準   規格乱立の可能性
事実上の標準とみ     ト               業界標準     知財組み込みが容易      信頼性保証なし
なされる規格や製
    品
                                      技術的自由度高い       市場拡大機能弱い
                    単独標準   企業内標準
                                      技術秘匿性高い        信頼性保証なし
  非公開標
    準                      コンソーシアム標   短期間でハイレベルな標準
                    合意標準                             市場拡大機能なし
                             準        技術秘匿性高い

                                       引用:新宅純二郎、江藤学、「コンセンサス標準戦略」
            意思のあるす
            べての企業が                       同様の目的で形
            自発的に合意                       成された企業連
            によって策定                       合で策定、閉鎖
                                            的
                                                                   7
仮説と課題

仮説:サービスインタフェースの国際標準化では、便益を
  得られないことがある




課題:便益を得るためには、企業はどのように行動するべ
  きか?




                             10
仮説の検証方法
標準化経済性研究会のレポートにより、企業・事業レベルでは、仮想評価法
(CVM;Contingent Valuation Method)法か費用便益法が適している

文献(ISO、松浦、「標準化の便益」、1983)では、標準化の便益分析方法として
定量的評価の間接法が示されている。

• 過去の標準化について、間接法により純利益の累積現在価値を算定する
• 算定した値が公表値や現状に見合った便益を示しているかどうかを確認する
• 便益がマイナスになる場合があるかどうかを確認する
                                               純利益とは、標準化による品種の減尐効果
•   調査対象                                       として金額に換算された基本収入、品種の
     – サービスインタフェース以外の標準化事例                     増加防止収入、過渡期損失を合計した収益
                                               から標準化のためのコストを差し引いた値
        • 3Com社のEDI
     – サービスインタフェースの標準化事例
        • デジュール標準
             – Atom Publishing Protocol
        • フォーラム標準
             – Parlay X, Open Social, OpenID
        • デファクト標準
             – Open Search
                                                                     11
定量的評価・間接法の目的変数

                                 参考文献(ISO、松浦 四郎訳、
                                 「標準化の便益」 、日本規
             名称           変数名    格協会 、1984)に記載の目
品種減尐比                       v         的変数群
指数                          g
基本収入率                      rb
定数                        1+q
                            q
                          1+k
                            k
                            d
全収入の累積現在価値                 sa
平均年間収入率                    ra
過渡期損益率                     st
投資コスト                     Cinv
運用コストの現在価値                 Cn
規格に影響される全活動量のうち期待される実施量    Qj
純収入の累積現在価値                 Sn
規格の存続期間中の平均年間純収入           Ra     この値で有益性を判断
純利益の累積現在価値                  P
投資利益率                     Rinv
                                  する。コストを上回る
回収期間                      Tpb     便益が得られることを
                                  示すため、プラスであ
                                  る必要がある            13
間接法の計算式
品種減少比           v                                                  P0
                                                                   P1
指数              g                                                  4z
                                                                7(z + 7)
基本収入率           rb                                              1 − v −g
                                                                                       g/n
定数              1+q                                      1 + i (1 + n × p)
                q
                1+k                                          1 + i (1 − rb)        −1/t

                k
                d                                             1 + (1 − rb)−1/t
                                                                   2
全収入の累積現在価値      sa                   −n                                 −n                       −t                       −t
                       1 − (1 + i)                    1 − (1 + q)                 1 − (1 + i)               1 − (1 + k)
                                          − 1 − rb                            −                        −d
                              i                              q                           i                         k

平均年間収入率         ra                                                 i × sa
                                                              1 − (1 + i)         −n

過渡期損益率          st                                             −t                                     −t
                                               1 − (1 + k)                             1 − (1 + i)
                                           d                        − (1 − rb)
                                                      k                                       i

投資コスト           Ci
                 nv                                          Cd + Cp + Ci + Cc
運用コストの現在価値      Cn                                                                 −n
                                                                1 − (1 + i)
                                                         Ca
                                                                       i

規格に影響さ れる全活動量   Qj                                                   Q × fj
のうち期待される実施量
純収入の累積現在価値      Sn                                              sa × Qj − Cn
規格の存続期間中の平均年    Ra                                              ra × Qj − Ca
間純収入
純利益の累積現在価値      P                                                   Sn − Cinv
投資利益率           Rinv                                                   Ra
                                                                      Cinv
回収期間            Tpb                                                   Cinv
                                                                       Ra

                                                                                                                               14
定量的評価・間接法の説明変数の本研究での適用指
           針
         • 説明変数
      名称     変数名                     本研究
標準化以前の品種数     P0   標準化時点の品種数を「標準化以前の品種数」とする

標準化以後の品種数     P1   標準化時点から過渡期間経過後の品種数を「標準化以後の品種数」とする

活動段階数              一般的なソフトウェア開発工程数に合わせて「10」に設定する
              z    (企画、基本設計、機能設計、詳細設計、コーディング、単体テスト、機能テスト、
                   システムテスト、導入、保守)
規格の存続期間       n    10年と仮定する

過渡期間          t    Webサービスは短期間の普及が期待されるため2年とする

品種増加率の算定      p    標準化前後1年間の品種数の増加率を最小二乗法による線形近似により算定

利子率           i    10%と設定

開発コスト              フォーラム標準、デファクト標準の場合20百万円に設定、デジュール標準の場合50
              Cd
                   百万円に設定
提出コスト         Cp   10百万円に設定

実施コスト         Ci   5百万円に設定

消費者コスト        Cc   5百万円に設定

年間運用コスト       Ca   1百万円に設定

規格に影響される活動         100百万円に設定
              Q
量
実施率           fj   フォーラム標準、デファクト標準の場合0.5、デジュール標準の場合0.75に設定   15
標準化による基本収入の考え方

                                標準化で価値
    貨幣換算価値                        が変化



                                           両方を合わせたも
                                           のが、
    総                 ユーザの便益(価値)
    便                                      標準化自体から得
    益   累積総便益                              られる基本収入
総
価                                          Rb
値                    供給者が得る価値(利益)




                                    累積台数

引用:京極他、「標準化の経済性分析のための枠踏みの整理」の図5 標
準化の経済的分析の基本モデルイメージを一部変更




                                                      18
「標準化の便益」の間接法の妥当性検証

サービスインタフェース以外の実例について、「純利益の累積現在価値」と効果の公表値を比較

3ComのEDI社内標準化の場合
• 間接法                                       • 公表値
      名称    3Com
 標準化以前の品種数              30.00
 標準化以後の品種数               1.00
 活動段階数                  10.00   0.86百万ドル         1.3百万ドル
 規格の存続期間                10.00
                                                 データの出所:3Com社1998年IRおよびドイツ
 過渡期間                    1.00
 記録による品種増加率              0.01          誤差34%で双   Institue of Information Systems,「The
 利子率                     0.10                    Standardization Problem」
 開発コスト             125,000.00          方ともプラス
 提出コスト                   0.00
 実施コスト                   0.00
 消費者コスト
 年間運用コスト
                         0.00
                   403,000.00
                                           ほぼ一致
 規格に影響される活動
                   890,341.20
 量
 実施率                     1.00
 純収入の累積現在価値        988,295.03
 規格の存続期間中の平
                   160,840.47
 均年間純収入
 純利益の累積現在価値        863,295.03




すべての実例について、算定した便益と現状が一致するため、「標準化の便益」間接法は妥当
                                                                                        20
サービスインタフェースへの間接法適用の流れ

 対象となる標準が属するカテゴリに含まれるサービスの増加傾向を調査


 対象となる標準が策定された時期のサービ    標準化以前の品種数
 ス数を取得

 対象となる標準が策定された時期の過渡期
                        標準化以後の品種数
 間後のサービス数を取得

 対象となる標準が策定された時期の前後一
 年間のサービス数の増加率(減尐率)を最小   品種増加率の算定
 二乗法で算出


           説明変数に設定


           目的変数の算定
                                    21
Feed API(Atom Publishing Protocol)の場合
                                                                                                                                         (標準化機関:IETF
                               出典: http://www.programmableweb.com/apisのデータより                                                      名称             変数名     Feed
 14                                                                                                                       標準化以前の品種数            P0                 4
                                                                                                                          標準化以後の品種数            P1                12
                                                                                                                          活動段階数                z                 10
 12
                                                                                                                          規格の存続期間              n                 10 年
                                                                                                                          過渡期間                 t                  2年
 10                                                                                                                       記録による品種増加率           p             3.8856
                                                                                                                          利子率                  i                0.1
  8                                                                                                                       開発コスト                Cd                50 百万円
                                                                                                                          提出コスト                Cp                 5 百万円
                                                                                                                          実施コスト                Ci                 2 百万円
  6                                                                                                              API数     消費者コスト               Cc                 0 百万円
                                                                                                                          年間運用コスト              Ca                 1 百万円
  4                                                                                                              累積       規格に影響される活動量          Q                100 百万円
                                                                                                                          実施率                  fj              0.75
                                                                                                                          品種減尐比                v        0.333333333
  2
                                                                                                                          指数                   g        0.336134454
                                                                                                                          基本収入率                rb      -0.446694706
  0                                                                                                                       定数                   1+q      1.245061469
                                                                                                                                               q        0.245061469
       200501
       200504
       200507
       200510
       200601
       200604
       200607
       200610
       200701
       200704
       200707
       200710
       200801
       200804
       200807
       200810
       200901
       200904
       200907
       200910                                                                                                                                  1+k
                                                                                                                                               k
                                                                                                                                                         0.91454323
                                                                                                                                                        -0.08545677
                                                                                                                                               d        0.915701468
                                                                                                                          全収入の累積現在価値           sa       1.315339346
                                                                                                                          平均年間収入率              ra       0.214065421
品種増加率                                          2007/10 Atom Publishing Protocol仕様公開                                       過渡期損益率
                                                                                                                          投資コスト
                                                                                                                                               st
                                                                                                                                               Cinv
                                                                                                                                                       -0.414699167
                                                                                                                                                                 57
      12                                                                                                                  運用コストの現在価値           Cn       6.144567106
      10                                                                                                                  規格に影響される全活動量のうち期待さ
                             y = 0.3238x + 1.15                                                  ×12カ月                    れる実施量
                                                                                                                                               Qj               75
       8                                                                                                                  純収入の累積現在価値           Sn      92.50588383 百万円
       6                                                                                                                  規格の存続期間中の平均年間純収入     Ra      15.05490659 百万円
                                                                                                                          純利益の累積現在価値           P       35.50588383 百万円
       4                                                                                    Series1                       投資利益率                Rinv    0.264121168
       2                                                                                                                  回収期間                 Tpb     3.786141059 年
                                                                                            Linear (Series1)
       0
                                                                                                               Atom Publishing Protocolの標準化は、コスト
           200610
                    200701
                             200704
                                      200707
                                               200710
                                                        200801
                                                                 200804
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                                                                                            1年前の想
                                                                                            定品種数                     に見合う便益を得られている
       標準化前後1年の増加率
                                                                                                                                                                          22
各APIの分析結果
                                                                                      Atom Publishing
        名称                           Parlay X 2.1                Open Social                               OpenSearch         OpenID
                                                                                      Protocol
        カテゴリ      Telephony                                      Social               Feed                 Search             Security
        純利益の累積現在価
        値                                    -41.3291                     44.1478             35.5059               3.1090               78.6741



主要な事業者は20社だが、Parlay                                                                                                            OpenIDは、国内で
XをサポートするのはBT, Sprint                                Mixi, MySpace,Yahoo!など34                        Yahoo!、MS LiveSearchなど大    Yahoo!Japan,mixi,BIGLOBE,
                                                    のSNS、14の開発者サイトが                                 手がサポートしているが、               楽天など、海外で
Nextelの2社のみ。よって普及し                                                                                  シェア80超を誇るGoogleがサ
                                                    対応し、普及が急速に進んで                                   ポートしていない。便益は小              AOL,Orange,Google,Facebo
ておらず、実際に便益を得られ
                                                    いることから、便益が得られ                                                              okなど25,000サイトが対
                                                                                                    さいと考えられるため、分
ていないと、分析結果と一                                        ており、分析結果と一                                                                 応、5億ユーザが使用して
                                                                                                    析結果と一致する可                  いる
致する可能性が高い。                                          致する可能性が高い。                                      能性が高い。                     普及が急速に進んでいる
• 出展
                                                                                                                               ことから、便益が得られ
                                                                     Six Apart LiveJournal、
• IDATE,「世界の通信サービス市場」の情報
                                                                     Blogger, Yahoo, Google, Mixi                              ており、分析結果と
  http://www.gii.co.jp/report/iu64570-telecom-svc.html
• http://wiki.opensocial.org/index.php?title=Main_Page#Container_I   など多くのブログソフ                                                一致する可能性が
  nformation
• http://en.wikipedia.org/wiki/Atom_(standard)                       ト、サイトが対応。分析                                               高い。
• http://ja.wikipedia.org/wiki/OpenSearch
   http://marketshare.hitslink.com/search-engine-market-
                                                                     結果と一致する可
  share.aspx?qprid=4&qpmr=100&qpdt=1&qpct=3&qptimeframe=M
  &qpsp=128
                                                                     能性が高い。
• http://www.janrain.com/openid


               間接法の結果は妥当と考えられ、予想以上に便益を得られている場合が多い
               と思われる
                                                                                                                                                     27
結論
•       仮説:「サービスインタフェースの国際標準化では、
        便益を得られないことがある」に対する回答


    –    間接法により得られる純利益の累積現在価値は、
         現状と比較して妥当な結果を示していると思われ
         る
    –    サービスインタフェースの国際標準化では、便益
         を得られないことがありえる
    –    サービスインタフェースの標準化事例はまだ尐な
         いが、今後増加することで、説明変数の精度を高
         められると期待できる
                                   28
賛同者を得た標準化の事例
• インテル(ハードウェア)の場合
 – CPUに事業コアを置き、データバスインタフェースをオープンにすることで、マザー
   ボード、周辺機器などの補完業者を育てイノベーションを促進する戦略を実施
     •   インテルのビジョンを補完業者に伝達
     •   影響力のある補完業者の小グループから合意形成
     •   潜在的な補完業者に事業機会を強調
     •   業者間の調整などの業界の調整
     •   補完業者が相互に接続試験をできる環境を提供


• サン・マイクロシステムズ(ソフトウェア)の場合
 – Java Community Process(JCP)のコミュニティ環境を提供し、Javaの育成を事業から分離
     •   APIをコミュニティの中で標準化
     •   補完業者は、グローバルスタンダードの市場を拡大でき、Javaに貢献できるメリット
     •   リファレンス実装を提供し、補完業者の製品開発を促進
 – JCPが迷走しないように、サンがつかず離れずコントロールすることが必要(引用:
   http://japan.cnet.com/blog/watanabe/2005/09/23/entry_post_93/)

          プラットフォームリーダシップが重要
              自社の基盤製品のために、補完企業を巻き込んで、
              産業としてのイノベーションを推進すること
                                                                    29
賛同者を得るための施策
• ハードウェアにおいても、サービスを含むソフ
  トウェアにおいても、リーダシップを取ること
  が企業優位の手段である

• リーダシップを取るためには、単に標準やプ
  ラットフォームを提供するだけでなく情報提供
  やリファレンス実装の提供など、サポートが重
  要である

• 補完業者がメリットを自覚できるビジネスプラ
  ンを示すことも有効と考えられる
                          30

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Analysis of Service Interface International Standardization Benefits

  • 2. 研究の背景 • 近年、通信、情報、電機などの産業において、 多くの大企業は標準化活動に参画している。 標準化活動への参画の可否判断は、事業戦略に基づいて行われ、事前評価の 過程で便益を定量的に予想することはほとんどない。 三菱電機の標準化戦略 NECの標準化活動の残存課題 標準化活動のコスト・パフォーマンス評価 ・標準化活動を行った場合、行わなかった場合の、 製品コスト差異、顧客獲得差異、研究開発の成 功・不成功確率の定量化による、経営層へのア ピール 出典:第4回事業戦略と標準化シンポジウム 「 One NECとしての標準化活動強化」、原崎 出典:ICT国際競争力強化を目指した標準化・地財戦略シンポジウム 「企業活動で重要性を増す国際標準」、野間口 3
  • 3. 研究の目的 標準化が進められている技術の一つに近年活発化しているサービスインタフェースが ある。 ネットワーク越しに提供されるサー 例:「Yahoo!地図Web API」ホー ビス(Webサービス等)の使い方 ムページに地図を表示し、スク ロールさせたり、吹き出しを表示 したり、ルート再生させたりでき る サービスインタフェースの差異は、ソフトウェアにより吸収しやすく、従来 数多く行われてきたソフトウェア製品、ハードウェア製品の標準化とは異な る便益の性質を持つと考えられる。 • 企業の視点で、サービスインタフェースの国際標準化活動の 有効性、事業への貢献について分析する – 「事業への貢献」とは、利益を得ること、社会貢献すること。 • 事業戦略にとって、国際標準化活動に参画するべきか、また 参画する場合にはどのような方針で臨むべきかの指針を検討 する 4
  • 4. 標準化のタイプ 法律によ り義務付 けられる 標準 サービスインタフェースの標準化活動が主に行われるエリ 正の効果 負の効果 公的な標 デジュー 市場強制力がある 当該国内市場限定 準 強制標準 強制法規 ル 寿命が長い 企業関与困難 市場影響度大 合意形成困難 国際機関標準 信頼性高い 改正困難 公開標準 信頼性高い 合意形成困難 合意標準 国内標準 地域特性可能 改正困難 市場の実勢により デファク フォーラム標準 短期間でハイレベルな標準 規格乱立の可能性 事実上の標準とみ ト 業界標準 知財組み込みが容易 信頼性保証なし なされる規格や製 品 技術的自由度高い 市場拡大機能弱い 単独標準 企業内標準 技術秘匿性高い 信頼性保証なし 非公開標 準 コンソーシアム標 短期間でハイレベルな標準 合意標準 市場拡大機能なし 準 技術秘匿性高い 引用:新宅純二郎、江藤学、「コンセンサス標準戦略」 意思のあるす べての企業が 同様の目的で形 自発的に合意 成された企業連 によって策定 合で策定、閉鎖 的 7
  • 6. 仮説の検証方法 標準化経済性研究会のレポートにより、企業・事業レベルでは、仮想評価法 (CVM;Contingent Valuation Method)法か費用便益法が適している 文献(ISO、松浦、「標準化の便益」、1983)では、標準化の便益分析方法として 定量的評価の間接法が示されている。 • 過去の標準化について、間接法により純利益の累積現在価値を算定する • 算定した値が公表値や現状に見合った便益を示しているかどうかを確認する • 便益がマイナスになる場合があるかどうかを確認する 純利益とは、標準化による品種の減尐効果 • 調査対象 として金額に換算された基本収入、品種の – サービスインタフェース以外の標準化事例 増加防止収入、過渡期損失を合計した収益 から標準化のためのコストを差し引いた値 • 3Com社のEDI – サービスインタフェースの標準化事例 • デジュール標準 – Atom Publishing Protocol • フォーラム標準 – Parlay X, Open Social, OpenID • デファクト標準 – Open Search 11
  • 7. 定量的評価・間接法の目的変数 参考文献(ISO、松浦 四郎訳、 「標準化の便益」 、日本規 名称 変数名 格協会 、1984)に記載の目 品種減尐比 v 的変数群 指数 g 基本収入率 rb 定数 1+q q 1+k k d 全収入の累積現在価値 sa 平均年間収入率 ra 過渡期損益率 st 投資コスト Cinv 運用コストの現在価値 Cn 規格に影響される全活動量のうち期待される実施量 Qj 純収入の累積現在価値 Sn 規格の存続期間中の平均年間純収入 Ra この値で有益性を判断 純利益の累積現在価値 P 投資利益率 Rinv する。コストを上回る 回収期間 Tpb 便益が得られることを 示すため、プラスであ る必要がある 13
  • 8. 間接法の計算式 品種減少比 v P0 P1 指数 g 4z 7(z + 7) 基本収入率 rb 1 − v −g g/n 定数 1+q 1 + i (1 + n × p) q 1+k 1 + i (1 − rb) −1/t k d 1 + (1 − rb)−1/t 2 全収入の累積現在価値 sa −n −n −t −t 1 − (1 + i) 1 − (1 + q) 1 − (1 + i) 1 − (1 + k) − 1 − rb − −d i q i k 平均年間収入率 ra i × sa 1 − (1 + i) −n 過渡期損益率 st −t −t 1 − (1 + k) 1 − (1 + i) d − (1 − rb) k i 投資コスト Ci nv Cd + Cp + Ci + Cc 運用コストの現在価値 Cn −n 1 − (1 + i) Ca i 規格に影響さ れる全活動量 Qj Q × fj のうち期待される実施量 純収入の累積現在価値 Sn sa × Qj − Cn 規格の存続期間中の平均年 Ra ra × Qj − Ca 間純収入 純利益の累積現在価値 P Sn − Cinv 投資利益率 Rinv Ra Cinv 回収期間 Tpb Cinv Ra 14
  • 9. 定量的評価・間接法の説明変数の本研究での適用指 針 • 説明変数 名称 変数名 本研究 標準化以前の品種数 P0 標準化時点の品種数を「標準化以前の品種数」とする 標準化以後の品種数 P1 標準化時点から過渡期間経過後の品種数を「標準化以後の品種数」とする 活動段階数 一般的なソフトウェア開発工程数に合わせて「10」に設定する z (企画、基本設計、機能設計、詳細設計、コーディング、単体テスト、機能テスト、 システムテスト、導入、保守) 規格の存続期間 n 10年と仮定する 過渡期間 t Webサービスは短期間の普及が期待されるため2年とする 品種増加率の算定 p 標準化前後1年間の品種数の増加率を最小二乗法による線形近似により算定 利子率 i 10%と設定 開発コスト フォーラム標準、デファクト標準の場合20百万円に設定、デジュール標準の場合50 Cd 百万円に設定 提出コスト Cp 10百万円に設定 実施コスト Ci 5百万円に設定 消費者コスト Cc 5百万円に設定 年間運用コスト Ca 1百万円に設定 規格に影響される活動 100百万円に設定 Q 量 実施率 fj フォーラム標準、デファクト標準の場合0.5、デジュール標準の場合0.75に設定 15
  • 10. 標準化による基本収入の考え方 標準化で価値 貨幣換算価値 が変化 両方を合わせたも のが、 総 ユーザの便益(価値) 便 標準化自体から得 益 累積総便益 られる基本収入 総 価 Rb 値 供給者が得る価値(利益) 累積台数 引用:京極他、「標準化の経済性分析のための枠踏みの整理」の図5 標 準化の経済的分析の基本モデルイメージを一部変更 18
  • 11. 「標準化の便益」の間接法の妥当性検証 サービスインタフェース以外の実例について、「純利益の累積現在価値」と効果の公表値を比較 3ComのEDI社内標準化の場合 • 間接法 • 公表値 名称 3Com 標準化以前の品種数 30.00 標準化以後の品種数 1.00 活動段階数 10.00 0.86百万ドル 1.3百万ドル 規格の存続期間 10.00 データの出所:3Com社1998年IRおよびドイツ 過渡期間 1.00 記録による品種増加率 0.01 誤差34%で双 Institue of Information Systems,「The 利子率 0.10 Standardization Problem」 開発コスト 125,000.00 方ともプラス 提出コスト 0.00 実施コスト 0.00 消費者コスト 年間運用コスト 0.00 403,000.00 ほぼ一致 規格に影響される活動 890,341.20 量 実施率 1.00 純収入の累積現在価値 988,295.03 規格の存続期間中の平 160,840.47 均年間純収入 純利益の累積現在価値 863,295.03 すべての実例について、算定した便益と現状が一致するため、「標準化の便益」間接法は妥当 20
  • 12. サービスインタフェースへの間接法適用の流れ 対象となる標準が属するカテゴリに含まれるサービスの増加傾向を調査 対象となる標準が策定された時期のサービ 標準化以前の品種数 ス数を取得 対象となる標準が策定された時期の過渡期 標準化以後の品種数 間後のサービス数を取得 対象となる標準が策定された時期の前後一 年間のサービス数の増加率(減尐率)を最小 品種増加率の算定 二乗法で算出 説明変数に設定 目的変数の算定 21
  • 13. Feed API(Atom Publishing Protocol)の場合 (標準化機関:IETF 出典: http://www.programmableweb.com/apisのデータより 名称 変数名 Feed 14 標準化以前の品種数 P0 4 標準化以後の品種数 P1 12 活動段階数 z 10 12 規格の存続期間 n 10 年 過渡期間 t 2年 10 記録による品種増加率 p 3.8856 利子率 i 0.1 8 開発コスト Cd 50 百万円 提出コスト Cp 5 百万円 実施コスト Ci 2 百万円 6 API数 消費者コスト Cc 0 百万円 年間運用コスト Ca 1 百万円 4 累積 規格に影響される活動量 Q 100 百万円 実施率 fj 0.75 品種減尐比 v 0.333333333 2 指数 g 0.336134454 基本収入率 rb -0.446694706 0 定数 1+q 1.245061469 q 0.245061469 200501 200504 200507 200510 200601 200604 200607 200610 200701 200704 200707 200710 200801 200804 200807 200810 200901 200904 200907 200910 1+k k 0.91454323 -0.08545677 d 0.915701468 全収入の累積現在価値 sa 1.315339346 平均年間収入率 ra 0.214065421 品種増加率 2007/10 Atom Publishing Protocol仕様公開 過渡期損益率 投資コスト st Cinv -0.414699167 57 12 運用コストの現在価値 Cn 6.144567106 10 規格に影響される全活動量のうち期待さ y = 0.3238x + 1.15 ×12カ月 れる実施量 Qj 75 8 純収入の累積現在価値 Sn 92.50588383 百万円 6 規格の存続期間中の平均年間純収入 Ra 15.05490659 百万円 純利益の累積現在価値 P 35.50588383 百万円 4 Series1 投資利益率 Rinv 0.264121168 2 回収期間 Tpb 3.786141059 年 Linear (Series1) 0 Atom Publishing Protocolの標準化は、コスト 200610 200701 200704 200707 200710 200801 200804 200807 200810 1年前の想 定品種数 に見合う便益を得られている 標準化前後1年の増加率 22
  • 14. 各APIの分析結果 Atom Publishing 名称 Parlay X 2.1 Open Social OpenSearch OpenID Protocol カテゴリ Telephony Social Feed Search Security 純利益の累積現在価 値 -41.3291 44.1478 35.5059 3.1090 78.6741 主要な事業者は20社だが、Parlay OpenIDは、国内で XをサポートするのはBT, Sprint Mixi, MySpace,Yahoo!など34 Yahoo!、MS LiveSearchなど大 Yahoo!Japan,mixi,BIGLOBE, のSNS、14の開発者サイトが 手がサポートしているが、 楽天など、海外で Nextelの2社のみ。よって普及し シェア80超を誇るGoogleがサ 対応し、普及が急速に進んで ポートしていない。便益は小 AOL,Orange,Google,Facebo ておらず、実際に便益を得られ いることから、便益が得られ okなど25,000サイトが対 さいと考えられるため、分 ていないと、分析結果と一 ており、分析結果と一 応、5億ユーザが使用して 析結果と一致する可 いる 致する可能性が高い。 致する可能性が高い。 能性が高い。 普及が急速に進んでいる • 出展 ことから、便益が得られ Six Apart LiveJournal、 • IDATE,「世界の通信サービス市場」の情報 Blogger, Yahoo, Google, Mixi ており、分析結果と http://www.gii.co.jp/report/iu64570-telecom-svc.html • http://wiki.opensocial.org/index.php?title=Main_Page#Container_I など多くのブログソフ 一致する可能性が nformation • http://en.wikipedia.org/wiki/Atom_(standard) ト、サイトが対応。分析 高い。 • http://ja.wikipedia.org/wiki/OpenSearch http://marketshare.hitslink.com/search-engine-market- 結果と一致する可 share.aspx?qprid=4&qpmr=100&qpdt=1&qpct=3&qptimeframe=M &qpsp=128 能性が高い。 • http://www.janrain.com/openid 間接法の結果は妥当と考えられ、予想以上に便益を得られている場合が多い と思われる 27
  • 15. 結論 • 仮説:「サービスインタフェースの国際標準化では、 便益を得られないことがある」に対する回答 – 間接法により得られる純利益の累積現在価値は、 現状と比較して妥当な結果を示していると思われ る – サービスインタフェースの国際標準化では、便益 を得られないことがありえる – サービスインタフェースの標準化事例はまだ尐な いが、今後増加することで、説明変数の精度を高 められると期待できる 28
  • 16. 賛同者を得た標準化の事例 • インテル(ハードウェア)の場合 – CPUに事業コアを置き、データバスインタフェースをオープンにすることで、マザー ボード、周辺機器などの補完業者を育てイノベーションを促進する戦略を実施 • インテルのビジョンを補完業者に伝達 • 影響力のある補完業者の小グループから合意形成 • 潜在的な補完業者に事業機会を強調 • 業者間の調整などの業界の調整 • 補完業者が相互に接続試験をできる環境を提供 • サン・マイクロシステムズ(ソフトウェア)の場合 – Java Community Process(JCP)のコミュニティ環境を提供し、Javaの育成を事業から分離 • APIをコミュニティの中で標準化 • 補完業者は、グローバルスタンダードの市場を拡大でき、Javaに貢献できるメリット • リファレンス実装を提供し、補完業者の製品開発を促進 – JCPが迷走しないように、サンがつかず離れずコントロールすることが必要(引用: http://japan.cnet.com/blog/watanabe/2005/09/23/entry_post_93/) プラットフォームリーダシップが重要 自社の基盤製品のために、補完企業を巻き込んで、 産業としてのイノベーションを推進すること 29
  • 17. 賛同者を得るための施策 • ハードウェアにおいても、サービスを含むソフ トウェアにおいても、リーダシップを取ること が企業優位の手段である • リーダシップを取るためには、単に標準やプ ラットフォームを提供するだけでなく情報提供 やリファレンス実装の提供など、サポートが重 要である • 補完業者がメリットを自覚できるビジネスプラ ンを示すことも有効と考えられる 30